あ、ヤバい。
家族との夕食を終えて、普段通り自分の分の食器を片付けようと立ち上がろうとして瞬間的にそう思った。
動かない。
いや、動かせないのだ、体が。
感覚的に表現すれば『ス◯ンド攻撃を受けているッ!』って感じだ。
受けた事ないんだけどね!
「ルディ……?」
立ち上がろうとして止まっている俺の様子がおかしい事に気付いたのか、シルフィが様子を伺いに近付いてきた。
そりゃあそうだ。
骨折した直後に体がおかしいのにまだ痛みが届いていない時の様に、今の俺の額には脂汗が滲み出ている。
旦那が突然そんな風になったら誰だって心配してくれるはずだ。
「どうしたの? お腹でも痛い?」
「いや……なんでもないよ。大丈夫」
実に説得力のない言葉が俺の口から出た。
体が動かない理由は分かっているし、こんな事で家族に心配はかけたくないのだけれど、シルフィの心配そうな様子に気付いたらしく、食器を片付けた皆が俺の所に戻ってきていた。
「ルディ、一体どうしたのですか」
「ルーデウス……?」
イカン。
食器を洗っていたアイシャ達まで戻ってきたせいで、家族大集合オールキャスト総出演だ。
相変わらず俺の体は動かせないままだが、全く大騒ぎするような事ではないんだ。
誰か助けてくれ。
トテトテトテ、とレオが近付いてきた。
スンスンと、二度三度鼻を鳴らした後、俺の未だ中に浮いた太ももに顎を乗せ──。
「あふんっ!?」
俺は変な声を噴き出した。
皆が目を白黒させているのが最高に辛い。
でも皆だって同じ事をされたら 俺みたいになると思うのよ。
「…………パパ」
レオに続くようにしてララが近付いてくる。
その顔には「全部分かってるから大丈夫だよ」という優しそうな──悪意に満ちた笑顔が浮かんでいた。
「ラ、ララ……?」
「パパはさあ……」
わざとらしく、それでいて絶妙な力加減で俺の太ももをつついてきた。
「足が痺れてるだけだよね?」
フフン、と勝ち誇ったように嫌らしく笑う。
ウチの次女は、人の弱みを教えてはいけないタイプだと、改めて確認した。
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「もう、ルディったら心配させるような事せずにちゃんと説明してよ」
「いやあの、シルフィエットさんや、太ももをつつくのを止めてもらえませんか……」
「えー? 足の痺れなんてすぐ治るから大丈夫だよ」
何も大丈夫ではないんですがそれは。
「そうですよルディ。皆を心配させたんですから」
「ロキシーまで……」
太ももをつつきつつもロキシーの力加減は優しい。
流石先生愛してるぜ。
「ルーデウスはバカね!」と言いつつも、エリスは俺をいぢめて来ない。
今日のエリスは女神だ。
代わりと言わんばかりに子供達が俺の太ももを遠慮無しにひっぱたいてくる。
パパこんな事で子供に囲まれても嬉しくないよ……。
終いには遠慮してたノルンを差し置いて母さんが一つつきしてきた。
もう勘弁してくれ……。