そんな機会はなかった(仮)   作:ヤサカ

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2話です。


スタートダッシュで

はい転生しましたー。

 

この世に生を受け5年が経ちましたー。

 

生まれてから5年の間、何があったかって?

 

そんなもの、何にもありませんでしたー。

 

自分が思っていたほど、赤ん坊は無力だと実感しましたー。

 

身をもって知りましたー。

 

人に身の回りの世話してもらうのは恥ずかしー。

 

でも慣れたらこのままでもいいかなってちょっと思いましたー。

 

そんなこんなで転生しましたー、転生しましたー、転生しましたー…………

 

……現実逃避はこのぐらいにしておこうか。

 

改めて、自己紹介しよう。

 

おれはオグリ ジョウ。元サイトウ タケルだ。

 

転生してから気づいたのだが、日本に生まれない可能性だってあるんだよな。

 

そのことを思いついて恐怖し、日本語が耳に入ってきたときは、もう泣いちまったね。

 

……赤ん坊だから毎日泣いてるけど。

 

まあとにかく、これで紛争地帯なんぞに生れ落ちていたのなら、原作どころじゃなかったわけだ。日本でよかった。

 

ついでに言うと、男として生まれてこれて良かった。おれの精神は男としてほぼ確立している。その魂が女体に入れば、今後の人生において悩み続けること間違いないだろう。

 

これも神様(?)の計らいかもしれないと思うと、ちょっと信心深くなりそう。

 

とにかくおれは男でかつ日本人で、おまけに五体満足という好条件で生まれることができました。

 

じゃあなんで現実逃避なんかしていたのかって?

 

それは、そうだな…… たとえば「重力に魂を引かれた人間」という名称を聞いたとしよう。これを聞いて人はどう思うだろうか。地に足をつけたしっかりとした人? いつまでも変わらない力強い人? いや、おそらくは空や未来へ羽ばたくことのできない頭の凝り固まったろくでもない地球れ……ではなくそういうマイナスなイメージを想像するだろう。

 

では、「前世に魂を引かれた人間」という名称ではどうだろうか。これはつまり前世の記憶を何らかの方法によって保持したまま、今の世に生を受けた人と表すのがいいだろうか。転生者と言い換えてもいい。

 

おれは前に、前世の記憶を持つことはアドバンテージだと言った。それはそうだろう。知識と人生経験を引き継いで1からやり直せるんだ、しかも今回は生前と同じ地球。マイナスなどなさそうに見える。

 

しかしながら、ことおれにとっては決して良いことばかりではない、むしろマイナスの要素をともなうことが分かってしまった。自分限定で「前世に魂を引かれた人間」は「重力に魂に引かれた人間」の類義語だと気づいてしまったのだ!

 

発覚したのは入園時。おれは新品の園児服に身を包み、小さい鞄を引き下げて立っていた。正直いまさら幼稚園(笑)とか、これからガキの子守をしなくちゃいけなのかとか、はやくこの幼稚時代終わらないかなとか思っていたんだ。

 

しかし、だがしかし、現実はおれの傲慢な心を打ち砕いた。

 

まあ愚痴をこぼしても仕方がない。とりあえず仲のいい子でも作るかと、近くにいた男子園児Aに声をかけようとした、その時だった。

 

「こっ…………!」

 

なんだ!? のどが締まりうまく声が出ない。顔もひきつってうまく笑顔を浮かべることができなった。

 

声をかけられたのに気が付いたのか、男子園児Aは頭を傾けてこちらに問いかける。

 

「どうかしたの?」

 

なんて優しい子なんだ、男子園児A! 何とか返事をしてあげたい。けど動悸と息切れが起こってうまく声が出ない。それでも出ろ、一言「一緒に遊ぼう」と!

 

「ッカ、カキャキャキャキャ!(訳:い、一緒に遊ぼう!)」

 

よし言えた、いや言えてない!

 

「ひ、うぇーん! こわいよぉ~!」

 

突然の奇声に驚いたのか、泣きながら横を走り抜けていく男子園児A。

 

振り返り、待ってくれと伸ばした手が虚しく空を掴んだ。

 

そのまま逃げていく姿を、おれは見送ることしかできなかった……

 

傷つくおれをよそに、先ほどの寸劇を見ていたのか、女子園児Aと女子園児Bがこっちを指さし、とどめを放つ。

 

「なにあれ、気持ち悪いー」

 

「うん気持ち悪い、怖いねー」

 

あっち行こー、と残酷なコメントを残して二人はいなくなった。

 

残ったのは口をあけて呆然としている、いや真っ白になっている調子にのっていた5歳児だけだった。

 

それ以降おれは園児たちと最小限の接触を保ち、仲のいい子のいないボッチの称号を得たのでした。ちゃんちゃん。

 

この出来事がなぜ前世と関係しているのかお分かりだろうか。

 

その答え、何を隠そう生前おれは子供にもうまく話しかけられないコミュ障な引きこもりだったのだ!

 

思い返せば第二の人生になってから、親以外とまともに会話をしたことがない。

 

両親とは普通に話せていたから、今日の今まで事態の発覚が遅れていたようだ。

 

前世の影響がこんな悪い形で出てくるとは、露ほどにも思わなかったよ……

 

ま、まあおれは原作介入して特定の人間と仲良くなるから、モブの方々には興味ないし。問題ないし!(震え声)そもそも……

 

――言い訳タイムが続きます、しばらくお待ちください――

 

ふう、取り乱してしまった。話を戻すとしよう。

 

さて、実はもう一つ、おれを現実逃避へと誘う事柄がある。

 

……特典だ。

 

単刀直入に言ってしまえば、使い方がわからない。

 

転生すれば自然と使い方が頭に入っているもんだと思っていた。

 

だがおれの中にあったのは前世の記憶のみで、能力とかの説明は一切なかった。

 

そのうち神様(?)が説明に来てくれるのかと期待していたが、5年経ち未だ来る気配がない。

 

もしかして特典なんておれの幻想だったのではと自分を疑っているのが現状だ。

 

ついでに言うと、魔力も感じない。感知しないからトレーニングのしようもなく、八方塞である。

 

このままだと介入もできず、前世からの負債でニート再びの危機に陥ってしまう!

 

そんな焦燥感にさいなまれているおれに一通の手紙が来たのは、その日の午後のことだった。

 

差出人は神様(?)。

 

「おお、神はおれを見捨てなかった」と「よくもここまで待たせやがって」という二つの感情ぶつかり、手紙をくしゃくしゃにしてしそうになったが、何とか抑えて手紙を読んでいく。

 

一枚目は転生者各位と書いてあった。

 

『転生して5年が経過し、いかがお過ごしでしょうか。

本日転生者の皆様全員が5歳になったことにより、この手紙を送らせていただくことになりました。

そろそろ自由に動き回れる年齢になられたのでないでしょうか。

同封しました中に、特典の使用方法などを説明した紙がございます。

原作が始まるのはまだ先ですが、この間に二枚目を読み、練習して力をつけていただければ幸いです。

次からはこの世界の注意事項を記させていただきます。

 

・この世界はたやすく改変されます。原作通りになるとは限りません。

・仮に高町なのは、つまり主人公が亡くなる事態にあっても世界は続いていきます。ご安心ください。

・転生者が死んでしまっても、その転生者に関する記憶・影響はなくなりません。安易な行動は慎みましょう。

 

以上をもちまして説明を終了します。悔いのない人生をお送りください』

 

読み終わると一枚目の紙はスッと透明になって消えた。

 

なるほど、下手に転生者を殺害すれば大事になる可能性があるわけだ。これで転生者に殺される危険性は少なくなっただろう。ラッキー。

 

二枚目に目を通す。

 

『オグリ ジョウ(旧姓サイトウ タケル)様へ

 

転生おめでとうございます。

 

この紙ではあなたに関する情報を記させていただきます。

 

はじめに、あなたにはリンカーコアはございません。

 

残念ながら――』

 

ここまで目を通して、一旦中断する。

 

リンカーコアがない? これは何の冗談だ?

 

リンカーコアとは、おれもよく知らないが、たしか魔力を作り出す核のことだったはず。

 

これがない=魔法を使えないわけで、原作に介入しようとしている身としては致命的な事態である。

 

恐る恐る目を戻す。

 

『残念ながら、この地球では魔力資質を持つ者はほとんど生まれないという設定が反映されます。あなたは特典で魔力を願わなかったため、このような結果になりました』

 

マジかよ…… だったら最初の時に説明しとけよ、神様(?)!

 

あまりのエリ・エリ・レマ・サバクタニ状態で、頭を抱えうなだれてしまう。出だしから道を踏み外してるな、おれ。

 

……いや、王道など邪道。最近の流行はヒトクセあった方がかっこいいという風潮じゃないか、そうだろう?

 

リンカーコアなんかなくて結構。持てる力を使っておれは立ち向かうぜ!

 

よし、意気込みは良好。目が死んでる? そんなことはない。

 

『次に特典の件について説明させていただきます。

オグリ様が願われた特典をこらちで解釈した結果、それに類する作品の能力を付けることとなりました。それでも差異のあるものは若干の改造を加えることで願ったものに準じたものとして付加しました。

以下は各々の解説となります――』

 

結局、どこからかの作品からの能力をもらうことになったのか。しかし、その能力を改造するなんて、ちょっと萎えるなぁ。二次創作でも原作そのまんまの能力を転生者が改良するのはありだと思うけど、何の努力もなくはじめから改造された能力をもらうなんて、少し面白味が欠けるっていうか。はぁ。

 

 

ちゃんとチートに改造してくれてるんだろうか。

 

 

ん? 確かに面白みに欠けるとは言ったよ? でも、してほしくないなんておれ、一言も言ってないよ?

 

さぁ神様(?)! おれに能力を示したまえ!!

 

こうして親に呼ばれるまでおれは、肢体をなめまわすように紙を熟読していたのであった。

 




2話終了。
あまりの適当さに自分が怖いです。
3話へ。
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