そんな機会はなかった(仮)   作:ヤサカ

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4話です。


ジョウ、原作介入やめるってよ。

はい落ちましたー。

 

受験に失敗しましたー。

 

さよなら私立聖祥大学付属小学校―。

 

何が悪かったんだろうねー。

 

学力は大丈夫だったはずだよー。

 

じゃあ何かな?

 

答えは簡単、面接でしたー。

 

緊張のあまりに意思疎通ができなくて、後ろにいた親もびっくりしてましたー。

 

面接してくれた先生の引きつった顔が忘れられないや、メモリー、メモリー、メメント・モリー…………

 

……マジでやばい

 

もう前世に魂を引かれたレベルじゃ済まされないぐらいに、おれのコミュニケーション能力はマイナスを帯びている。

 

これはいく作品を間違えたかもしれん。魚の名前が主人公のジャンプ漫画ならこのマイナス、きっと利用価値あったのに。

 

とにかく認めたくないが、おれは私立聖祥大学付属小学校の受験に失敗し、海鳴市立海鳴小学校へ入学することになった。

 

あれね、義務教育で普通にいく小学校ね。私立聖祥大学付属小学校と比べたらまさに天と地の差、月とすっぽん、ナチュラルとコー……は例えとしてダメか。

 

落ちたものは仕方がない。受かる人間もいれば落ちる人間もいるということだ。気持ちを切り替えよう。さよなら、高町さん。

 

現在、おれは海鳴大学病院にいる。

 

怪我はしてない。リスクを負うようなことはチキンで落ちこぼれなおれにできるはずがないだろう。魔法なんて恐ろしい。

 

ということはアニメ第2期『魔法少女リリカルなのは A's』に出てくるヒロイン、八神はやてさんと接触するためと思うだろ? はじめの一歩で躓いてしまったから、挽回のため今のうちにA'sへの布石を打っておくという作戦だと思うだろう?

 

だが残念、今回はとても私的なことで来たのだ。

 

それは「ジョウくん、始めるよ」ん、時間になったか。

 

先生に声を掛けられ部屋に入る。

 

「じゃあまず、いつも通り挨拶からはじめようか」

 

「は、はい。せんせぃ、ぉはようござぃますぅ」

 

「うん、よくできました。それでは今日も元気にトレーニングをしよう」

 

「は、はい。がんばりみゃす」

 

……そう、おれは対人コミュニケーションのリハビリを受けている。

 

今のまんまでも生きていけるさと楽観視していたのだが、現実は甘くはなかったと実感させてくれたお受験。(ちなみに他の転生者は全員合格)

 

両親も面接で問題の大きさに気付いたようで、事態の解決にのり出し、言語療法のある海鳴大学病院に週3回ほど通院することになったというわけだ。

 

さすがは大きな病院だな。なんでもそろってる。

 

先生は優しくて、辛抱強くおれなんかの言葉を待ってくれて、きちんとできたときは我がことのように喜んでくれる。いい先生だ。

 

男だけど。

 

熊が白衣を着たみたいな男だけど。

 

あれがよかったな。初対面のとき診察室で、鮭一匹を咥えて事もなげに座っていた先生。あれを見て吹き出しまい、一気に距離が縮まった感じがする。

 

そんな熊な先生とのリハビリの経過としては、徐々にだが成果があらわれてきている。素直にうれしい。前は挨拶すらできなかったしな。これで普通の日常に一歩近づいたわけだ。よかったよかった。

 

もう、原作なんてどうでもいいくらいに。

 

 

 

 

……

 

………

 

…………さて、勘のいい人ならもうお気づきかもしれないが、お受験を経ておれの心にも少し変化があった。

 

単刀直入に言うと、原作介入なんてやめようということだ。

 

なにを弱気な、と考える人もいるだろう。

 

だがな、教室に入って誰かとおしゃべりしたいのに、声が緊張で変になって気味悪がれ、次第に孤立していく感じは筆舌しがたいものがあるんだよ。

 

これが大学生とかだったらいいよ。最初からひとりだったりするし。

 

でもここは小学校。友達100人できるかなの空気で友達候補がいなくなっていく喪失感は、人生2回目のおれだからこそ余計にくるものがある。

 

特典を持っても、心は昔と変わらないひび割れたガラスさ。

 

だからこそ、リハビリを繰り返しおれは普通の日常をもぎ取ってみせる。

 

そう、アニメじゃないんだ!

 

ぼくらはみんな生きている、二次元のキャラクターじゃありませんえん!

 

いつもなのはなのはと呼び捨てにしてすいませんでした! 土下座します!

 

Yes平穏No魔法! 

 

……まあ魔法使えないんだけど。

 

あ、だからと言ってすっぱり断ち切る気はないよ?

 

これから海鳴市へ危険がやってくると知っているのに、何も情報がないのは死につながるわけで。

 

そこは「いどえのにっき(改)」を使って収集させていただきます。

 

頑張ってくれよ、介入組。炭酸飲料飲んで待ってるから。

 

介入組といえば、原作サイド(あっち)ではひと波乱あったみたいだ。

 

アーカイブで紹介しよう。

 

『◇月▽日 アオヤマ トウジュウロウ

予定通り、私立聖祥大学付属小学校に入学してしばらくたった。

協定を結んだ3人も入学しており、原作の人間含め皆同じクラスだ。

教室ではアリサ・バニングズが権威をふるっている。

月村すずかをからかい始めるのも時間の問題だ。

それに対して転生者は協定を守り、静かにしている。

出だしは順調といったところか。

……順調なはずなのにこの胸騒ぎはなんだ?

何かを見落としている? もう1人の転生者のことか。

やつはこの学校には来ていないという結論に至った。もしうまく隠れて同級生になっているのだとしても、原作が始まれば尻尾を出すに違いない。そのときに対処すればいいだけのこと。

ではなんだろう。僕は何を見落としているのだろう』

 

『◇月●日 イシグロ レイナ

アリサ・バニングズの専横な振る舞いが、ついに月村すずかにむかった。

高町なのはがこの両者と仲良くなるイベントだ。

原作の流れを変えてはいけない、という協定通りスルーすることにする。

というか、ケンカの仲裁とかめんどくさい。

メリットもないし、ケンカの様子でも見てメシウマでもしようかしら? でも結果ありきのケンカをみても楽しくないか。

あら? 高町なのはの後ろを金と赤が追いかけてるわ。

我慢の限界なのかもね。忍耐力なさそうな顔してるし。

ふふ、これはちょっと見ものね。

面白くなりそう』

 

『◇月●日 アカマツ シロウ

原作介入するのなら過程・流れを変えずに結果を変えろ、とアオヤマは言った。

この場合なら、ケンカをして3人が仲良くなる流れを変えずに、結果の「3人が」を「4人が」に変えろということだな。

造作もないことだ。

待ってろよ、3人とも。

今までは流れを気にして話しかけられなかったが、今日から解禁だ。

さあ、そのスカートの中身をわが手に!

ウヒヒヒヒ』

 

『◇月●日 コンゴウ ヒデオ

またアカマツか!!

前は邪魔されたが(結局なのはは我らを覚えてなかった)、今回はやらせんぞ!

途中でアカマツを追い抜き、そしたらアカマツが我を追い抜く。また我が抜き去る。その繰り返しをしながら花壇へ到着する。

そこでは、今まさになのはがアリサにビンタをしようと手を振り上げていた。

まだわって入るには早いな。

そう思い、足を止めようとした、その時だった。

石に躓いて、転んでしまう。……横のアカマツをまき込んで。

競走していたスピードそのままで3人の足元まで転がってしまう。……アカマツと一緒に。

痛みを抑えながら起き上がり見た光景は、アリサがカチューシャをすずかに投げつけ、その場を後にするところだった。

……こんなシーンあったっけ?』

 

とまあ、アカマツくんとコンゴウくんがケンカの途中でやってきてしまい、空気がしらけてアリサさんはどこかへ行ってしまいましたとさ。

 

簡単にいうと、原作からずれたようです。

 

この2人、碌なことしないな。

 

この出来事によってアリサさんの横暴は影を潜めたみたいだが、なのはさん・すずかさんの2人とは仲良くなっておらず、元凶の赤金コンビが仲をとり持とうとしても、それが逆にアリサさんを意固地させて溝が深まっているようだ。

 

原作からずれたことでイシグロさんは笑い、アオヤマくんはおかんむり。

 

これによってどんな乖離があらわれるのかは分からない。でも、必ずどこかで影響するだろうなあ。

 

願わくは、海鳴で悪影響を及ぼしませんように。

 

あ~、のど乾いたな。コー●飲もっと。

 




4話終了。
うまく書けないものですね。
5話へ。

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