フェイト・クロス・オーダーが今、はじまる!!
「ひゃーぁ、寒いのう~!」
人員輸送のヘリのタラップを降りつつ、赤い防寒ジャケットに身を包んだ小牟が身体を震わせて言った。
このヘリポートのある場所はまだ吹雪も酷くはないが、向こうに見える目的地、山脈の中腹にあるという施設周辺は、こちらから見える通りかなり吹雪いているようだ。まるで白い靄のカーテンで隠されているかのように、山の全景が見えない。
自然の結界に秘匿され、魔術的な防御を有するという特務機関『フィニス・カルデア』。これはかなりのものなのだろう。
俺は、白い溜め息を深く吐き、小牟の後からタラップを降りる。
どこの国家にも属さない南極という場所、そして観測衛星の目すらからも見えない、太古の曰く付きの山脈、狂気山脈の超古代遺跡に作られた施設。
森羅のエージェントである俺、有栖零児がこれから向かう場所はそんな場所だった。
「どうもすみません、ここからは常時ブリザードが吹き荒れている地域ですので、このヘリポートからは雪上車に乗り換えていただいての移動となります」
カルデア機関のエージェントが申し訳無さそうにそう言う。エージェントと言っても彼女は諜報員とかそういうエージェントでは無く、あくまでもカルデア機関側の、他の組織ーーーつまり俺達のようなーーーに対する仲介人、という意味でのエージェントだ。まぁ、そこそこの戦闘訓練は受けているだろうが、俺から見れば素人同然……というか、タラップをそんなおっかなびっくり降りるような玄人は普通いない。
フィニス・カルデア機関は国連に属する機関であり、無論、俺達森羅ともある程度繋がりのある組織でもある。今回の俺達の訪問は所謂、視察調査である。
とはいえ、魔術とか云々は実際のところ俺にはわからない。そこのところ、小牟頼りなのだがはっきり言ってあいつが役に立つかどうかなど俺にもわからない辺りが頭が痛い。いや、頭の古傷が痛むとか言うのではなく、慣用句で、だ。
俺達も日本政府にもその手の魔術師関連のエージェントもいるにはいたが、今回の件では彼らを動かせない理由があった。
その理由というのは、カルデア機関に存在すると言われている万能願望器と呼ばれる物のせいである。
万能願望器と言う物がなんなのかは俺にはわからない。見たことも無い。だが、如何なる願望をも叶える奇跡の宝物であるという。
それを巡っての魔術師達同士の殺し合いが日本でもかつて何度もあり、当時の森羅のエージェントも出動したと言うが、残念ながらそのエージェントはその魔術師達の万能願望器を巡る争いに巻き込まれ、帰らぬ人となったという。
直接の原因は、そのエージェントがその時に協力者として雇った魔術師の裏切りだったという。
その万能願望器と言う物がいかなる物なのか、当時のエージェントが残したという記録は断片的で、何か得体の知れないものだというのはわかったが、残念ながらその正体すら森羅も日本政府のどの機関も掴んではいない。
ただ、万能願望器というものは魔術師達にとって特別な意味を持つ物らしく、わかっていることは『根源に至る為』に必要な物らしく、古い血筋の魔術師、力のある魔術師ほど、それがらみの案件に関わらせるわけにはいかないと言う。
局長曰く、何をしでかすかわかったものではない、だそうで、それが今回の調査、査察に魔術師の協力を仰げない理由だ。
では、それを所有するカルデア機関とはなんなのか?と言えば、これまた事前に目を通した情報だけではよくわからない。人理継続保障機関という名称なのだが、人理とはなんなのか。それがまたわからない。人の歴史を守るとかいう組織のようだが、それがまた何故こんな辺鄙な場所にあるというのか。
『有栖さん、こちらです!』
カルデアのエージェントが雪上車の所で俺に手を降る。まぁ、あのエージェントをみる限りでは、なんとものほほんとした感じがして気が抜けそうになるのだが。
わけのわからない機関とか組織とか、この世だけでなくとも過去現在未来、異世界にすらあるのだ。俺と小牟はそれを嫌と言うほど体験させられたのだ。
出来れば荒事も厄介事もない方向で、視察などとっとと終わらせて日本に帰りたいものだがどうも嫌な予感がする。
俺は仕事道具の詰まったトランクの持ち手を握り、その感触を確認すると、雪上車へと歩きだした。
雪上車は、雪と氷の悪路をひた走る。
乗り心地は悪く、ヒーターはさほど効いていない。窓の外はブリザード真っ只中で、本当に目的地の場所を向いて走っているのか?と疑いたくなるようなほどに視界が悪い。
「とんだ視察じゃのう、零児。うーっ、なんちゅう寒さじゃ。シタバでホットなカフェラテ飲みたい!」
シタバ、とはシタール・バード・カフェというコーヒーの店だ。紙コップで出されるコーヒーはあまり俺は好きではないが、小牟はどうも今時の若者を気取ってそういうところに行きたがる。
……756歳の仙狐が、若者気取りというのもどうかと思うのだが、それは言わぬが花だろう。
ぼやく相方を無視して、車内を見る。
申し訳無さそうにしているカルデアのエージェントが、
「流石に、このブリザードでは空調もなかなか効きが……。カルデアに着きましたらカフェラテとは行きませんが、コーヒーをお出しいたしますので……」
と、小牟に言って宥めている。
運転手は筋肉質の中年で、苦笑をしている。余裕が見られるところを見ると、特に遭難の心配はなさそうだ。
「悪いね、ここんところブリザードが酷いんだ。ヒーターも全開にしてるんだがこれが限界さ。乗り心地悪いのもまぁ、あと30分程度で着くから我慢してくれよ」
「ああ、まぁ、徒歩よりは充分助かっている。しかし良くこの猛吹雪の中で目的地が解るもんだな?」
「ハハ、ビーコンの位置情報と、俺の記憶、後は感覚さ。こう見えても元ラリーレーサーでね。目隠ししてても正確に目的地に着けるってのがラリーには必要スキルでね。無事に送ってみせるぜ?」
運転手の発言に小牟が何かいらんことを言うような気配がしたのでとりあえず頭に軽く拳骨を落としつつ、俺は
「なに、心配はしてないが、目隠しは止めてくれ。疑うわけじゃないが、いきなりされたらこっちは生きた心地がしない」
「ハハハハ、しねぇって。まぁ安心しな。ホレあそこに見えて来たぞ、あれがカルデアのある山さ。麓に着きゃあ、後は搬入エレベーターで登って行くだけさ」
運転手は人懐っこい性格のようだが、外部の人間にやたらと口が軽いようだ。ある種の秘密基地であるのだが、特に情報の機密化はされていないように話す。
まぁ、基地の場所から察するに教えたところで行きも帰りも彼らの手を借りねば、無理な話だ。だからなのだろう。たとえ何かあっても、俺と小牟の二人だけでは到底このブリザードの過酷な環境から日本へ帰るなど不可能だ。
もっとも、運転手もエージェントもそんな事は全く考えている様子もない。おそらくは彼らが知ることは多くなく、そして特に制限も受けてはいないと考えるべきか。
……何もなければ良いのだが。
そう思った俺の顔を小牟が覗き込み、ニタリと笑って言った。
「のう、零児。人、それをフラグと言う」
長い付き合いだが、こういう時に考えを読まれるのは正直面白く無い。というかムカつく。
「うるさい、黙れ。人の思考を読むな!」
ゴチン、と小牟の頭にもう一度拳骨を落とした。
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日本:冬木市
一人の格闘家と、そして闇そのもの、いや、死、そのものと言っても良いと思わざるを得ぬ、髑髏の兜、髑髏の鎧、そして髑髏の意匠をあしらった大剣を持った男と対峙していた。
街中、それも先ほどまで日が射し暖かかったというのに今は辺りは薄暗く、そして大通りの真ん中だというのに人気も無い。
そう、さっきまで街は人で溢れ、賑やかな喧騒に包まれていたというのに、商店の店主も働く者も買い物客、歩道を歩いていた人々さえもが神隠しに会ったかのように、忽然と消えてしまっていた。
「…………これは、お前がやったのか?」
「…………」
白い道着の男の問いに髑髏のマスクを被った男は何も言わず、ただ両手にチャキリ、と大剣を握って構えた。
「問答無用か」
表情無き髑髏の目が青く鬼火を灯した。
「む?」
突然、髑髏の男が消えた。いや、常人の目では捉えられぬほどの速度で白い道着の男に詰め寄り、そしたその首筋を断たんと大剣を横に薙いだ。
ブォン!と風切りの音がなった。だが。
「……この程度やはり、かわすか」
白い道着の男は最小の動きで髑髏の男の攻撃をかわしていた。
「……やはり本気では無かったか」
「合格だ」
「最初から殺気は無かったが、腕試しはこれでいいか?」
「リュウ。正しき道を往かんとする者よ。我はハサン。最初のハサン・ザッパーハにして、ハサンを斬るものなり」
「ハサン?」
しかし髑髏の男はリュウの言葉など聞いていないように通りの向こうを指差し
「……東へ行け。共に往く者がお前を待つ」
と、言った。
「東?共に往く者?わからんが……」
「急げ」
髑髏の男は、それだけ言い、すうっと消えて行った。
「……また何かあるのか」
リュウはふむ、とあっさり納得すると、道端に置いた自分の荷物を掴み、背負うと髑髏の男が言ったように東に続く道を見据えて歩き出した。
なんだかんだでも、もう厄介事に巻き込まれるのは慣れっこであり、なによりこれまでも様々な人物……豪鬼、、ダルシム、ローズ……によって導かれて来たのである。
今回も何かしらあるのだろう、と特に悩んだり苦悩したりすることなく平然とリュウは進んでいった。
主人公枠は決定なのが三人。
有栖零児、ぐだ子、横島忠夫。
現在、以上が決定してます。
とにかく混ぜる。
あと、変態も出ます。多分。