フェイト・クロス・オーダー   作:罪袋伝吉

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 横島編はサーヴァント出現まで。

 さぁ、誰かなー?


プロローグ③ シアターの怪人

 

 事務所にて、神月かりんは横島に事件の経緯を語った。

 

「……この冬木のドリームシアターのある土地は、廃棄された森を神月財閥が買い取って、新しい冬木市の区画として整備したものです」

 

 数年前の地図と現在の地図を広げ、場所を指し示す。

 

 確かに地図を見比べて見れば数年前にはこの街のこの土地は広い森だった。

 

 かりんはその森の中心部、ちょうど区画が広がる前の冬木市の中心街からちょうど東のある場所をトントン、と指で軽く叩いた。

 

「このドリームシアターのある場所には、日本には珍しい西洋風の洋館、いえ、城の廃墟があったのです」

 

 しかし、かりんが指で示した場所には建物らしき物は何も書かれてはいない。現在の地図にはドリームシアターが記されているのだが。

 

 かりんはその地図の上に、何枚かの写真を広げた。

 

 当時の上空からの写真と、東西南北の廃城の外観の写真、そして内部の写真である。

 

 横島はその写真の中に気になる物が映っているのを見つけた。

 

「……これは、魔法陣?」

 

 小さくしか写ってはいないが、部屋の赤い絨毯に何かの塗料で書かれていた。

 

「……何かを召喚するためのものか?しかしこれは初めて見るな。うーん、神月さん、この部屋はもう?」

 

「ええ、ドリームシアターを建てる際に、元の城は全て撤去いたしましたわ。何より、建物を補修しようにもあちこち破壊されていて、補修工事に危険が伴うほどでしたもの」

 

「……魔法陣も壊された?」

 

「……それが、城の解体を行った部署にも問いただしましたが、その魔法陣を見たという者は一人もおらず、また、ここに写っている、ここ。この壁の所に大きな亀裂が入っているのがわかりまして?こんな亀裂の入っていた部屋は、無かったと」

 

「……ちなみにこの写真を撮った人には?」

 

「コンタクトが取れませんの。その人物は確か……」

 

 かりんは、ファイルをパラパラパラとめくって、ちょうど真ん中のページを示した。

 

「この方ですわ。名前は……エミヤと言う人物ですわね。今は海外に在住しているらしいのですが、所謂、曰く付きの方で、ここ、冬木市で昔にあった大規模なテロ事件に関わっていたのではないか、とか、言われてますし、それにその筋では有名な暗殺者『キリツグ・エミヤ』の養子だと言う話もある人物です」

 

 ファイルには、浅黒い肌に白い髪の男の顔写真があった。横島はその顔を見て、思った。

 

(イケメンなのかっ!イケメンなのかっ!イケメンなのにテロリストなのかっ!!)

 

 非常に、まったく的外れな感想だが、この男の場合それを心の中で思うだけで留めているだけ進歩しているといえよう。

 

……昔ならばどこからともなく藁人形を取り出して金槌で五寸釘を打っている所なのだから。

 

「あの、どうかしまして?」

 

 横島の様子がおかしいことに気づいたかりんが、顔を覗いてくる。

 

 ハッ!と横島は写真から顔を上げて

 

「いやーははは、いや、テロ事件に暗殺者の養子、というのが引っかかってね?」

 

 と言いつつ。

 

 上げた顔の前には、かりん。そしてワンピースの胸元からは……。

 

(少し身を乗り出した神月かりんの……谷間っ?!)

 

 そう、横島を覗きむ為に身を乗り出した事で、かりんの胸の谷間が見えている。ワンピースの布地がひらひらなのて、白く清楚なレース模様のブラジャーの柄までも。

 

(ええ乳やぁ、おぢょおさまの、乳……!)」

 

 目が釘付けである。

 

 かりんはスレンダーな体型に見えて、しかし胸は普通サイズ以上にある。しかも女子高生だった頃から成長しており、さらにスタイルは大人びたものになっている。

 

 しかも、並みの女性ではないのだ。神月財閥の令嬢にして総帥。優雅で上品で、さらに……。

 

 ごちん!

 

「一体、どこを見てますの?」

 

「どわっ?!」

 

 かりんの拳が横島の脳天に落ちた。そりゃあバレる。

 

「たはははは、いい眺めだったんでつい……」

 

「真面目にやって下さいな。ほんとに!」

 

 顔を真っ赤にしつつ胸元を腕で隠す。その仕草はあどけなく年相応の女の子に見えた。

 

 おそらくはこれが神月かりんの素なのだろう。財閥の総帥として君臨する仮面の下が見られたようで、横島は何か得をしたような気分になった。

 

(おおう?!普段、気のキツい女の子がたまに見せるレアな素顔……イイッ!)

 

「……もう一撃、喰らいたいですか?」

 

「いやいやいや、はい、真面目にやります!真面目にっ!……まぁ、こうしてファイルを見ていても仕方ないので、実働に入りますか」

 

 横島はよいしょっと、とソファの横に置いた自分の荷物をごそごそと探り、そこから仕事道具を取り出した。

 

 それは『見鬼くん』と呼ばれるゴーストスイーパー御用達の悪霊や妖怪を探知するレーダーであり、箱の上に陰陽師をディフォルメされたような人形が付いている。

 この『見鬼くん』は横島用であり、ドクターカオスが改造した高性能チューン版である。

 

 こなカオスチューンの見鬼くんの特徴は、霊視ゴーグルとセットで使うと、霊の居場所をラインで示してくれるという、なんとも便利な機能がついている。

 

 また、霊視ゴーグルにもチューンが施されており、現地の地図データがあれば現在地の表示が出来、さらに現在地がわからなくともマッピング機能さえついている。

 

 この二つはもう至れり尽くせりの道具なのである。

 

 だが、そんな道具を持っているというのに、何故美神令子がそれを取り上げないのか?と言えば、この二つの道具は完全に横島用に作られている為、ほかの霊能者には使えない点が一つ。

 

 ならば美神令子も同様の物を作らせればいいではないか?と思われるかも知れないが、ドクターカオスはこれを作った後に、すぐにこの道具の設計図や作り方を忘れてしまっていたのである。

 

 故に、ワンオフ。解析して同様の物を作ろうとしても並みの発明家では作るのに100年以上かかってしまうらしい。恐るべしドクターカオス。あと老人ボケ。

 

「ええっと、その地図、記録します。ああ、こっちの古い方のも撮っとくか。あとは……このファイルの、エミヤ?この人物の写真も記録しておこう。霊気か何か……ああ、微かに気が残っているな。登録出来た」

 

「はぁ、その道具って、見た目は変ですのにやたら高性能ですのね」

 

「ええ、まぁ。ドクターカオスの魔改造ですから。……まぁ、今は老人ボケが酷いんですけど」

 

「ヨーロッパの魔人も認知症には敵わないのですね……」

 

「ずっと相棒のマリアが甲斐甲斐しく介護してますが……。まぁ、時折正気に戻る時がありますので、まだ……」

 

 ちーん。

 

 二人はなんとも言えない悲痛な気分になったが、いつまでもこうしてはいられない。

 

「まぁ、行きましょうか。霊が活性化する夜までにいろいろと仕掛けとかも作りたいので」

 

「はい、あの怪人は日中は現れた事はありません。調査をするなら……」

 

 かりんはそう言いかけたが、そこへ神月かりんの執事である柴崎が慌てて事務室に駆け込んで来た。

 

「お嬢様、大変です!!怪人がシアターに現れました!!現在、さくら様と劇場視察に来られたモモ様と、フェリシア様が応戦してます!!」

 

 

 




ちょっと短めですが、次のリュウと零児、それにグダ子を出さないといけませんので、切りがいいのでこの辺で。
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