フェイト・クロス・オーダー   作:罪袋伝吉

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 やはり、ドクター・カオスとマリアははずせません。

 あと、なんか横島ばかり目立って、肝心のクロスの主人公達も本来の主人公もまーったく目立たないという。

 やっとこ立香ちゃん登場です。


プロローグ⑦~ドクター・カオス。あとロマニ。

 ヨーロッパの古びた屋敷。

 

 かつて『ヨーロッパの魔王』、『天才錬金術師』と呼ばれたドクター・カオスだが、その頭脳はもはや1000を過ぎて認知症を発症し、そこで人造人間のマリアに介護され、療養しながら日々を過ごしていた。

 

 とはいえ、彼の認知症は通常の認知症ではない。

 

 天才錬金術の彼、ドクター・カオスは300歳の時点で彼は自らの脳を秘薬や錬金術の秘法などで100%使えるようにしてしまったのだが、その年齢が1000歳を超えた時点で、脳の記憶容量の限界を超えてしまったため、物覚えが悪く新しいことを覚えると、ところてん式に昔のことを忘れてしまうようになってしまった。

 

 通常の認知症は脳神経の老化や空洞化や変質によって起こるが、ドクター・カオスの場合、脳そのものの異常では無く、脳の記憶容量の限界によるものである。

 

 では、その記憶領域をなんとかして増やせたならば、と彼は自分の病に立ち向かう為にヨーロッパのかつての彼の隠れ家に戻り、療養しながらも治療薬の研究をしていたのであった。

 

 たとえ認知症になっていても彼は天才錬金術師である。記憶が抜け落ちても、その知能、才能は衰えてはいない。

 

 彼は自分の助手であるマリアにその研究を映像記録として逐次残させて、忘れたらそれを見、思い出したら続きを行うといった方法で記憶の欠損を補い、日常生活動作以外の事を極力しないようにしつつ、地道で過酷な研究を続けていたのだ。

 

 だが、その彼の療養生活も終わりを告げる時が来た。

 

「ふふ、ふはははは、出来た。完成じゃ!」

 

 ドクター・カオスはフラスコを振り、中の薄紫色がかった透明な水薬『記憶容量倍増薬』を見て、にやりと笑う。

 

「くくくくく、これさえあれば、ワシの脳みその記憶は最適化され記憶容量は倍増する。マリア、再びワシはかつての『ヨーロッパの魔王』として復活する!!」

 

「イエス・ドクター・カオス!」

 

 彼の創造物の中でも最高傑作であり、そして最高の助手、最高の相棒である人造人間のマリアが答える。

 

「本当に、お前には今まで苦労かけたなぁ」

 

「いいえ、ドクター・カオス。それは言わない・約束です」

 

 彼女は実に健気である。

 

「くぅぅっ、すまんなぁ本当に感謝しとるぞ、マリア。じゃが、それもこれまでの話!復活の暁には、もう苦労はさせん!!さぁ、ドクター・カオス復活の時じゃ!!」

 

 ドクター・カオスはフラスコに口を付けると、一気に飲み干した。

 

「ドクター・カオス?」

 

 何故かマリアがドクター・カオスを止めようと動いたが

 

 ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ、ぷはーっ!!

 

 時すでに遅し。もうドクター・カオスは薬を飲み干してしまった。

 

「ふはははははは、これで!」

 

 喜色満面のドクター・カオスだが、マリアは少し落ち込んだように見えた。何故、マリアはドクター・カオスが水薬を飲むのを止めようとしたのか。

 

「ドクター・カオス!」

 

「あん?なんじゃ?」

 

「……記憶容量倍増薬は・頭に・掛ける薬だと前に言ってましたが?」

 

 マリアは、ドクター・カオスが薬の成分や使用法を忘れた時の為に自分で調剤用のデスクの真ん前に貼り付けていたメモを指差した。

 

 そう、つまり『記憶容量倍増薬』は頭皮から浸透させる薬品だったのだ。

 

「………なんじゃと?!」

 

 ドクター・カオスはマリアの人差し指の方のメモに顔を突き出して読もうとしたが。

 

「老眼でよく読めん!誰だこんな細かい文字で書いたやつは!」

 

 カオス本人である。

 

 もうドクター・カオスは先ほどまでの記憶をすぐに忘れてしまうほどにその認知症を悪化させており、メモを残す事で自分にメッセージを残すのを習慣としていたのだが、近頃では何を書いていたのかすら忘れる事があり、急いで書くため、早く書き留めるようになったのだがその為に往々にして文字も小さくなっていた。

 

 さらに彼は認知症のせいですぐにメモを読む事すらも忘れてしまって、また老眼で細かい文字が読みにくくなっていたのである。

 

 哀れなりドクター・カオス。

 

「ドクター・カオスは・胃液の酸で・薬品の成分の効果が・半減すると・仰ってました」

 

 マリアの声には悲しみと憐れみの色があった。ドクター・カオスは老眼鏡を掛けてメモを読んで、自分が失敗したことを知った。確かに胃液の酵素が成分の一部を中和して効かなくなる、とある。

 

「……ごほん!あ~、こんな失敗はいつもの事じゃ、マリア。後でこのメモを拡大コピーしてまた貼り付けておいてくれ。それにこのメモがあれば薬の成分を忘れてもまた作れるんじゃ、また忘れるだろうからワシに教えてくれ。ん……?いや、この成分じゃと、頭に掛けなくても効くはずじゃ。はて?いや……」

 

「ドクター・カオス?どう・しましたか?」

 

「……マリアや、半分ほどは成功じゃ。確かに頭に掛けねば100%の効き目は無い。確かに胃に入ると消化液で成分の効き目は落ちるが完全に効かんわけでは無いようじゃ。ふむ、ふむふむ!おおっ、頭がすっきりしとる!」

 

 ドクター・カオスは懐から電卓を取り出し、

 

「胃液のペーハーがぁ、こんだけだから、薬の成分の変質がこうでー、と、そいでもってこうなって……」

 

 だいたいの効き目を計算しだし、ふむふむ、と唸る。

 

「……正しくは約20%の効き目じゃな。計算器使っててもいつもは変な操作して間違うのが、今はまーったくそれがない。うむ、つーか、計算器などまだるっこしい!暗算で一瞬で追計算しても同じ値がでるわい!おおっ、記憶容量がちょっと増えただけでこれか!!」

 

「ドクター・カオス、おめでとう・ございます」

 

「いいや、まだ終わりではないぞ、マリア!そう、今ならば完全な記憶容量倍増薬、いや、それよりもさらに効果のある薬を作り出せるじゃろう!よしっ、早速材料を集めに行こうではないか!行くぞ、マリアよ!!」

 

「イエス・ドクター・カオス!」

 

 そうして、認知症がある程度治ったドクター・カオスとマリアの二人は館の研究室のドアから元気に出て行った。

 

……そこに、サーちゃん、つまり魔族側の最高権力者による巧妙に貼られた転移門が有るなど、神でも悪魔でも無い彼らが気付く訳も無く。

 

 あっさりと冬木へと転移して行った。

  

 哀れなり、ドクター・カオス。彼の認知症の全快は当分先のようである。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 

 

 

 

 

 

 さて、ところは南極はカルデア。

 

 有栖零児と小牟の二人はドクター・ロマニの案内でとりあえず宿泊するための部屋へと案内された。

 

「はぁ、私の休憩(サボり)ルームだったんだけどね。まぁ、君達の世話を仰せつかったんだし、まぁ、遊びに行ってもいいだろう?」

 

「うむ、ゲーム機持参で来るが良い!ついでに茶菓子もな!」

 

「仕事をサボる口実に俺達を使うな。あと小牟。後で尻叩き100発な」

 

「そ、そうは言うがな、零児ぃ、ワシとてここの研究の邪魔は極力したくないと思ってだな?ショチョさんのあの剣幕、相当なものじゃったし?」

 

「研究所の職員と遊ぶ、人、それを邪魔という!」

 

「あはは、君達は本当、仲が良いんだねぇ。っと、ここが君達の部屋だよ……っと?」

 

 ドクター・ロマニがカードキーを使って部屋のドアを開けると、そこにはカルデアの制服を来た少女と白衣の少女が居た。

 

 カルデアの制服を来た少女は東洋系の顔立ちをしており、赤茶色の髪をサイドテールにしており、どことなくあどけない。

 

 白衣の少女の方は白衣を除けばまんまどこかの学生のような格好をしており、メガネを掛けてシャツにネクタイ、セーターに、というような文学少女のような雰囲気である。人種はおそらくは白系であるという事しかわからないが、やや色素の少ない髪は薄い桜色か紫に見える。

 

「ドクター・ロマニ?」

 

 白衣の少女は少し目を見開いて部屋を開けたロマニを見て驚いたような表情をしている。

 

「やぁ、マシュ。ええっと、どうしてこの部屋に?」

 

「いえ、先輩がファーストミッションを外されたので部屋に案内していた所です」

 

「先輩?」

 

「はい、先輩です」

 

「あ、一般枠の最後に来た子かぁ……。状況はなんとなくわかったよ。つまりその子は所長のカミナリを受けてファーストミッションから外されたってところだろ?というか、あー、そうなると困ったなぁ」

 

 ロマニは頭をポリポリ掻いた。

 

「ええと……そちらの方達は?」

 

「日本から来た査察の方達だよ。開いてる部屋に泊まってもらおうと適当に連れて来たんだが……」

 

「おい、今テキトーとかこのゆるふわ男、言ったぞ零児?!」

 

「まぁ、そんな事だろうと思った。つまりこの子の部屋になってしまったわけだな?」

 

「まぁ、ドクター・ロマニのする事ですから」

 

 マシュと呼ばれた少女は苦笑しながらそう言い、零児は、ここの職員の皆にそんな感じで認知されてるんだこの男は、と思った。

 

「ええっと、そうなると私はどうなるの?」

 

 サイドテールの少女は少し不安そうにしたが、しかしロマニは、あはははは、と笑って、

 

「いや、普通に他にも部屋あるしね?隣の部屋も空き部屋だから……って、君の肩に乗っかってるのって、もしかして噂の怪生物?うわぁ、初めて見た?!」

 

 ロマニはサイドテールの少女の肩に乗っているリスのような、猫のようなモフモフの生き物を見て驚いた。

 

「……フォウさんです」

 

 マシュがにこにこしつつ、その生き物の名前を紹介した。

 

「うーむ、本当にいたんだねぇ。……どれ、ちょっと手なづけてみるかな。はい、お手。うまくできたらお菓子をあげるぞ?」

 

 にこにこ顔でロマニはフォウさんなる生物に手を出した。

 

「なんかワシらほったらかしじゃのう。つかこの男、マイペース過ぎるじゃろ」

 

 小牟が呆れ顔で言うがロマニは全く動じず、ほーらお手、などとやっている。

 

「…………フゥ」

 

 しかしフォウさんは知性を感じさせるような、哀れなものを見るような目でロマニを無視した。

 

「…………小動物に哀れまれるとはのう」

 

「差し出した手のこのやる方の無さ、ええっと、おーい、お菓子いらない?」

 

「……(ぷいっ)」

 

 フォウさんは思い切りそっぽを向いた。

 

「た、多分、フォウさんの機嫌が悪かったんですよ、きっと」

 

 マシュがなんとかフォローしようとロマニを宥める。

 

「いや、小動物にかまけてる場合か?」

 

 零児はこの脱線だらけの状況を修正するために口を挟んだ。

 

「話を戻そう。今の現状は俺達の部屋はここの隣と言うことなんだな?ドクター・ロマニ」

 

「まぁ、そうなるね。ただカードキーは管理室だからまた取りに行かなきゃいけない。めんどうだけど仕方ない!」

 

「面倒言うな。つかとっとと取りに行けぃ!あと、最上級のホテル並の部屋を要求するっ!!」

 

「いや、無茶言うな。……まぁ、寝泊まり出来るだけで良いんだ」

 

「あー、カードキーを持ってくるまで、それまではここにいて欲しいな。動き回られると探すの面倒だし。えーと、良いかな、っと、まだ先輩くんの名前を聞いてなかったね?私はロマニ・アーキマン。医療部門のトップだよ。何故かみんなからはDr.ロマンと略されていてね。理由は分からないけど言いやすいし君も遠慮なくロマンと呼んでくれて良いとも。実際ロマンって響きはいいよね……」

 

 どうもこのロマニという男はやたらと思考が飛び飛びになる癖があるようで、すぐに話を脱線させる。

 

 それに小牟が苛立ち、

 

「ええい、とっととカードキーを取りに行かんかっ!!フリーダムなのか?!自由君なのかっ!?」

 

 と、バチコーン!!とドクター・ロマニの尻を叩いた。

 

「痛ったぁっ?!何をするんだ君はっ?!というか今日初対面なのに尻を叩くなんてっ?!叩いたね!親にも叩かれたこと無い……訳ではないけどっ!!」

 

「叩いて何が悪い!とっとと行かぬかっ、話が続かんではないかっ!」

 

 ひぃぃっ!とロマニは逃げるようにして小牟から飛び離れると、小走りに部屋のドアへ向かって出て行こうとした。

 

 その後ろから、サイドテールの少女が、

 

「ええっと私、藤丸立香と言います、ロマンさん!」

 

 と、声を掛けた。それにロマンは手を上げつつ、隣のカードキーを取りに駆けていった。

 

「……まぁ、悪い男では、無いな」

 

「そうじゃな。ああいう男は大抵は実は全ての黒幕だった!とかそういうケースが多いんじゃが、あれはただの天然じゃ」

 

「ええっと?あの、私、マシュ・キリエライトと言います。あの、任務があるので私はもう行かなければなりません。すみませんが、先輩、後はよろしくお願いします」

 

「あ、行ってらっしゃい!気をつけてね!」

 

「はい!先輩!」

 

 マシュが部屋を退出していった。どうやら急いでいるようだ。

 

 ロマニとマシュが部屋から出て行って、残りは三人となった。

 

「ふむ、すまないな。俺達は日本の森羅のエージェントだ。俺は有栖零児。こっちは小牟だ」

 

「よろしくのう、ええっと藤丸……立香、じゃったか?お隣じゃのう」

 

「はい、藤丸立香です。ええっと森羅というと、情け無用の赤ジャケット、逆らう者には打ち首獄門、のあの?」

 

「フォウ?!」

 

「おい、零児、なんじゃろう、ワシ等巷じゃそんなJ9な連中だと思われとるんか?つかこの小動物、なんかえらいビビっとるんじゃが?」

 

「……全くの誤解だ。俺達は霊的な害意に対しての特務機関だ。言ってみればゴーストスイーパーの公的機関版、もしくは怪異に対する警察官、か?そういうものだ。一応、俺達はこう見えても日本の公務員だからな?」

 

 どうも、以前の事件(ナムコクロスカプコン)以来、なにかやたらと一般人にも森羅という組織は有名となってしまったが、しかしどういうわけか話に尾鰭葉鰭がどんどんついてしまったようで、人斬り集団とかジェノサイド機関のようなイメージを持たれてしまっているようだ。

 

 実際は全く違うのだが。

 

「……公務員ですか。日本の。……はぁ、良いなぁ、公務員。給料安いとか言いながら、普通のサラリーマンより良いし、ボーナスは良いし。私なんて就職活動頑張っても内定取れずに派遣社員でブラック過ぎる仕事ばっかりで……。ようやく条件の良い仕事にスカウトされて給料に釣られて契約したら、いきなりヘリに連れ込まれて、なんかめちゃくちゃ厳しい環境の雪山に連れて来られて私、こんな感じですよ、ええ」

 

 ……どうやら立香はまだ若いのにいろいろと苦労してきたようだ。

 

「……公務員舐めとるんかこの小娘は、とか言いたくもあるが、なんじゃろう、現代社会の闇を背負っとる感たっぷりじゃな、この娘は」

 

「俺達は普通の公務員とはかなり違うが……。まぁ、雪山にあるとは言え、ざっとみた感じではこの機関の建物も職場環境は悪くは無いと思うがな。まぁ、ブラックだったら俺達がいる間に言え。国連に報告しておいてやるから」

 

「はい……お願いします」

 

 立香は頭を軽く下げた。と、

 

「ちょっとちょっと!物騒な事を言わないでくれよ?!というかどういう話になったらこのカルデアがブラック企業に?!」

 

 ロマニが息を切らせて帰ってきた。

 

「あ、戻って来おったわ、ゆるふわ天然男が」

 

「まぁ、世の中の辛酸を舐めた若者の闇を見たところだが、ドクター・ロマニのような医者がいられるような職場だ。ブラックというのは無いだろうな」

 

 零児は立香に笑ってそう言った。

 




 ドクター・カオス参戦。

 あと、なんかロマニが単なるゆるふわ天然男になって行っているような……。
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