「そろそろ試合を始めませんか?」
今日はFF全国大会2回戦……雷門VS千羽山の試合がある日だ。
だが、試合開始の時間になっても雷門がピッチに入らず、審判員が響に聞く。
「すいません。もう少しだけ待ってください」
響に代わって木野が審判員に謝った。
「監督。いい加減にしてください!」
「いや、まだだ。もう一人来る」
風丸が全員を代表して響に言うが、響はずっと「もう一人来る」の一点張りで他には何も語ろうとしなかった。そしてその様子を疑問に思わなかったのはその場で円堂、豪炎寺、神向の三人だけである。
「もう一人もう一人って、もう全員揃ってるじゃないですか! っておい、壁山は!?」
「トイレです」
その場に壁山が居らず、辺りを見回す染岡に少林が言う。
「すぐ戻ってきます! とにかく、全員いますよ!」
「いいですか。あと三分以内にピッチに入らないようなら、大会規定により試合放棄と見なします」
「いいですよ。あと三分……それまでにあと一人は必ず来ますから」
審判員にそう言ったのは、神向だった。
そして、雷門イレブンのメンバーが彼を見る。
「神向! お前までどうしたんだよ!? ここには全員いるんだぞ!?」
「いったい、誰が来るんですか!?」
半田と宍戸が神向に聞く。
「すぐに分かるさ。だからもう少し待ってろ」
神向がそう言う間に残り時間は一分になっていた。
(……お前は絶対に来るよな。だからあの日、お前は俺にあんなことを言ったんだろ?)
神向は絶対の自信を持ち、まったく動じないまま響と同じで腕を組んだポーズのまま動かなくなった。
「円堂くん。キャプテンでしょ? 監督と神向くんに何か言ってよ」
「うーん。けど、二人ともこう言ってるんだし。待ってみようぜ」
木野は円堂に頼むも、当の円堂は響と神向を信じて二人に何も言わなかった。
そして時間はあと三十秒まで迫る。
その時点で豪炎寺も含めたほとんどのメンバーに緊張が走る。
まったく動じていないのは依然として神向と響、そして円堂の三人だけだ。
そして、彼らの元に遠くから足音が聞こえてきた。
「来たか……」
「やれやれ。豪炎寺顔負けに待たせやがって」
響と神向が顔を向けた方に全員が目をやると、そこには鬼道の姿があった。
『嘘ぉ!!!!』
「さて、じゃあ試合を始めましょうか」
驚くメンバーを放っといて、神向は審判員に言った。
『き、鬼道! 間違いありません! 帝国学園のキャプテン、鬼道です!』
突然の鬼道の登場にざわつく会場。
さらには観客からそんなことが許されるのか等の声が上がる。
『えー、少しお待ちください。あー、ありました! 大会規定第64条第2項、選手は試合開始までに転入手続きを終えていれば。大会中でのチーム移籍も可能とのことです!』
実況者である角馬王将からの説明に再度会場がざわつくが、鬼道はそんなことを気にしてなかった。
「あのままでは引き下がれない。世宇子には必ずリベンジする!」
「鬼道! 俺には分かってたぜ。お前はあのまま諦めるような奴じゃない!」
「なんて執念なんだ」
「そう言うなよ染岡。大好きなことだからこそ絶対に諦めたくない。そんなバカの集まりだよ。サッカーやってる奴は」
世宇子へのリベンジを誓う鬼道に円堂が、そしてそんな鬼道の執念に驚く染岡に神向が言う。
そして宍戸に代わって鬼道が入ることで試合が始まった。
『さあー、雷門VS千羽山の試合いよいよ開始です! ……おーっと、これはどうしたことか!?』
FW 染岡 豪炎寺
MF 鬼道 風丸 半田 マックス
DF 神向 壁山 栗松 土門
GK 円堂
『雷門中! 本来MFであるはずの神向がDFの位置で試合が開始します。これは、新しく加わった天才ゲームメーカー鬼道有人による作戦なのでしょうか!?』
角馬の実況と同時に試合が始まる。
最初のキックオフは雷門から始まるものの、やはりそれぞれの息が合わずにまったくパスが通らず、あっという間に千羽山にボールを取られてしまい、防御に回るもそのクリアしたボールも雷門陣は取れずに千羽山のシュートチャンスとなってしまう。
『シャイィィィィンドライブ!!!』
ゴール前が眩い光で包まれ、円堂もたまらず目をつむる。……そして千羽山が放ったシュートはゴールへと吸い込まれる
「させるかぁぁぁぁぁっ!!!」
前にDFの位置にいた神向がシュートをカットした。
そして、ボールはゴールを大きく飛び越えてピッチの外へと弾き出される。
(……ちぇっ、いつもの調子でカットしたと思ったんだが…まだ力が入りすぎてたか)
だが、神向は先取点を防いだにも関わらずその結果に満足していなかった。
「サンキュー神向。助かった」
円堂が神向に手を差し出す。
そして神向も差し出されたその手を掴んで立ち上がる。
「いや。こうなることを予測していて俺をDFに置いたのは、鬼道だ」
「鬼道が?」
「ああ」
そして次の瞬間、神向と円堂は同時に笑い、
「「見せてもらおうぜ。天才ゲームメーカーの戦術を!」」
同時に言った。
その二人の言葉を彼が聞いていたのかは分からないが鬼道は雷門イレブンへと指示を出す。
「栗松。お前はいつもより三歩下がって守れ」
「え?」
「そして松野。いつもよりも豪炎寺には三歩、染岡には二歩半先にパスを出せ」
「はぁ?」
鬼道からの突然の指示に最初は困惑するマックスと栗松だったが、その指示をすぐさま飲み込んだ。
その様子を見て神向は鬼道から誰よりも早くに指示をもらっていた日のことを思い出した。
その日、神向はただ一人響から呼び出され、雷雷軒に来ていた。そして店内に入った神向が一番最初に目に入ったのが、響と話していた鬼道だったのだ。
話していた内容を聞くと、鬼道が雷門に転入するということを聞き、さらには前半はじっくりと雷門イレブンのことを見て情報を手に入れろと響に言われて10分で十分だと言い返したことを聞いた。
そして最後に神向に、
【千羽山との試合。お前は最初DFとして参加しろ】
と言ったのだ。
そして神向が弾き出したボールは千羽山のコーナーキックから再びスタートする。
そこからの試合は鬼道の力の片鱗を敵も味方も全員が見た。
千羽山のボールをカットした栗松が土門にパスをしようとした時も、土門がマックスへパスしようとした時も鬼道の適切な指示により最初はまるで通らなかったパスが通り始め、気づけば雷門陣は千羽山陣のゴール前へと迫っていた。
「松野! 染岡へパスだ!」
「……二歩半先!」
マックスは先に鬼道から言われた歩数分、染岡の前へパスを出す。そのパスは見事に染岡へと通った。
「ドンピシャだ…!」
『ドラゴンクラァァァッシュ!!』
染岡のドラゴンクラッシュが千羽山ゴールへ迫る。
『薪割りチョォォップ!』
だが、千羽山キーパー綾野がこれをライン外へと弾き飛ばす。
「くっそ! また決められなかったか!」
「染岡! ドンマイドンマイ! 今決められなくても次決めればいいんだ!」
悔しがる染岡に神向が遠くから言った。
そんな彼に染岡は笑って返す。
「鬼道! 凄いじゃないか! やっぱりお前は天才ゲームメーカーだな!」
「ふ、あれがゲームメイクと呼べるならな」
「ん? どういうことだよ?」
「お前達は自分の力を分かっていないんだ。いくら強くなったと言っても、それには個人差が存在する。……普段の調子でパスを出していれば必ずそこには狂いが生じる。俺はそれを修正しただけだ」
鬼道は雷門メンバーにそう言うが、実際それは生半可なことではない。長く時間を共にしてきた雷門同士でさえ感覚を掴めていないのだから。
「だけって、だったらもっと凄いぜ鬼道! ちょっと一緒にプレイしただけでそんなことが出来るなんて! やっぱりお前は大大大大大天才だよ!」
円堂がその気持ちを鬼道に伝えると、他のメンバーも同意する。……ただ半田だけは、まだ鬼道が雷門に入ってきたことに納得できていないようだった。
そして、鬼道の肩を神向が叩いた。
「な? 面白い奴らだろ?」
「神向。……ああ」
だが、そこから千羽山の鉄壁のディフェンスが始まった。……試合が再開し、再び雷門にシュートチャンスが訪れる。
『ドラゴン…』
『トルネェェェーーード!』
ドラゴントルネード千羽山ゴールを襲う。
『無限の壁!』
……キーパー綾野を中心とし、DF二人との三人連携技により、綾野の後ろから石造りの壁が何重にも現れ、そしてドラゴントルネードをいとも容易く止めた。
……今度はライン外へと弾き飛ばしたのではなく、文字通り完璧に止められてしまったのだ。
どうでしょうか? 必殺技の名前だけを出すのではなく、より力強く撃っていることを表現したいと思ったんですけど…。
そしていつになったら自分はこの小説のヒロインを出す気なんでしょうね? こんなに省いているのにまだヒロインの学校の名前しか出てませんよ?