ここはとある場所にあるスタジアム。
その誰もいない観客席には十一人の人影があり、その十一人の前には重厚な宝箱のようなものが置いてある。
「総帥。お待ちしていました」
その中の一人、金髪の長い髪をした者が観客席に続く通路に言うと、その中から靴音を鳴らしてある男が現れる。
その男とは、帝国学園元監督の影山零治だった。
「FFを制する者は誰か!?」
『もちろん! 我ら世宇子中!』
影山が聞くとその場の十一人は一言一句違わずに言う。
「頂点に立つ者は誰か!?」
『もちろん! 我ら世宇子中!』
再び影山が聞くとまたしてもその十一人は言った。
「私は勝利しか望まない! だが泥まみれの勝利など、敗北も同然! 完全なる勝利!」
影山は拳を握り力説していく。
「圧倒的な勝利のみを欲している! その勝利をもたらす者だけが、神のアクアを口にするがいい」
影山が言い終わると、前に置いてある宝箱が開き、中から液体窒素と共に十一個のグラスに入った水のような液体が姿を見せた。
そしてその十一人……世宇子イレブンはその液体に手をかける。
「さあ、私に勝利をもたらす者は誰か!?」
影山の声に反応するように十一人は一斉に液体を飲み干し、入っていたグラスを床に叩きつけて割った。
その光景を見ていた影山はにやりと笑い、
「アフロディ」
十一人の中の一人、先ほどの金髪の長い髪をした人物を呼んだ。
「はい。何の御用でしょうか、総帥?」
「近々、雷門中に向かえ、タイミングはお前に任せる」
「それは、宣戦布告、ということでしょうか?」
アフロディが聞くと、影山は再び邪悪な笑みを浮かべ、
「いや、忠告をしに行け。戦っても無駄だとな」
と言った。
「承知しました」
そしてアフロディも笑いながら影山に言う。
だが、この時は二人とも予測していなかった。
アフロディと呼ばれたこの
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一方雷門中は今日も今日とて特訓していた。
そして、その熱は今までの比ではない程だ。
「円堂くん達必死ね。神向くんまで笑ってないんだもの」
その様子を見ていたマネージャー三人のうち、木野が言う。
彼女の言うとおり、普段の練習なら笑顔を零すはずの円堂や神向ですらこの練習中は未だに一度として笑っていないのである。そのせいなのかどうかは知らないがチーム全体の緊張が走っている。
「でも…なんて言ったらいいんでしょうか。…私達ってただ見てるだけであそこに参加出来ないって言うか」
「もどかしいの?」
「そう! それです!」
音無に言った後、夏未は皆の練習風景に目を向ける。
「でもあそこまで無理しなくても…、決勝戦で何があるか分からないし」
「夏未さん、何だか皆に試合してほしく無いみたいですね」
「そ、そんなこと無いわ…!」
夏未は若干顔を赤くして音無に言う。
その様子を見ていた木野は二人に提案した。
「じゃあ、皆に気持ちよく練習してもらうために……やりますか!」
「やりますか!」
「えっ、どういうこと?」
木野の言葉を理解した音無と、理解出来ていない夏未と共に三人はサッカー部の部室へと向かう。
「「こういうこと!」」
そこには既にご飯が炊かれていた。
そして二人は炊きたてのお米を夏未に見せて説明する。
「皆お腹空かせてるんだから」
「おにぎりの差し入れですよ!」
二人は簡単に言うが、夏未は引き攣った笑いを浮かべて冷や汗をかいていた。
そう、何故なら二人と違って夏未はおにぎりを握ったことなど無いのだ。
「熱いから気を付けてね。……熱っ、熱っ」
だが、そんなことを知らない木野は馴れた手付きでおにぎりを握っていく。
「熱〜い、熱っ、熱っ」
そして夏未の右隣では音無が同様におにぎりを握る姿がある。
「ほら、夏未さんも」
「え、ええ…」
木野に促されるまま、夏未はしゃもじを手に取る。
おそらくこの時、この場に神向や鬼道、豪炎寺などがいればこの後に起こることに想像がついて止めることが出来たのだろう。
しかし、その彼らは現在練習中。
止める者がいないが故に、必然的にその悲劇は起こった。
「熱ーーーーーい!!!! 熱っ! 熱っ! 熱っ!」
事前に水をつけていた木野や音無と違い、水無しで炊きたてのお米をそのまま手の上に乗せた夏未はあまりの熱さに思わずその場で手を振って冷ます。
それにより、部室内は米まみれになっていた。
「夏未さん、もしかしておにぎり握ったこと無いの…?」
「夏未さん、お嬢様だから…」
「ごめんなさい」
木野と音無は苦笑いをし、夏未は再び赤面した。
そして二人は夏未を椅子に座らせ、木野が茶碗を二つ手に取った。
「じゃあここは男子達に習って。必殺!」
『ダブル茶碗!』
「これに、ご飯を少しよそうでしょ? 片っぽを被せて、振る! こうすると」
音無が木野の持っていた茶碗の片方にご飯をよそい、もう片方の空いた茶碗でその茶碗の上に被せて振ると、そこには多少不出来な形ではあるがおにぎりが出来ていた。
それを見た夏未も感心する。
「形はある程度出来てるし、少し冷めてるから後は手にお水をつけて、お塩もちょっとつけて握ればいいの」
「はい! 出来ました!」
その後、二人から教わった方法で夏未もおにぎりを作っていき、ようやく完成したのだった。
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「中々決まらないな…」
「ああ。あと少しのはずなのに、どうして出来ないんだ…」
俺と豪炎寺はファイアトルネードDDを完成させるために何度も何度も特訓していた。
だが、結果はすべて失敗に終わる。
俺は段々と苛立ちを覚えてきていた。
「焦るな神向。まだタイミングが完璧に合っていないだけだ」
「…そうだな。焦ってたって成功なんてするはずねえもんな。……悪い」
「皆ー!」
「おにぎりが出来ましたよー!」
そんな俺達の元に木野と音無の声が聞こえてくる。
「手洗ってくる。……ついでに頭も冷やしてくる」
俺は豪炎寺にそれだけ言って手洗い場へ向かう。
そこには既に鬼道がいた。
「鬼道…」
「神向か。どうした? 最近お前までらしくないじゃないか」
……さすが、頭脳明晰な鬼道には筒抜けか。
「円堂には焦るなと言ったのに、きっと俺も勝たなきゃいけないと思ってるんだろうな。次の世宇子中との決勝戦」
俺は手を洗った後に自分の頭に水をかけながら鬼道に話した。
「それは俺も同じ気持ちだ。俺も世宇子に勝つために雷門に来た。そして今、その世宇子へのリベンジは目前まで迫っている」
「…………」
「だが、そんな時こそ、お前や円堂がいつも通りでなくてはならない。雷門の精神的主柱であるお前達に余裕が無くなればチームプレーが悪くなるからな」
鬼道から言われたことは正論過ぎて俺は何も言い返せなかった。……まあ、俺が雷門の精神的主柱かどうかと言われたらそんなことは無いはずなんだけどな。
「そうだよな! 頭冷えた! サンキュー」
俺と鬼道はその後円堂達他のメンバーが手を洗い終えるのを待ち、マネージャー達が作ってくれたおにぎりを腹一杯になるまで食べた。いやー、やっぱりあいつらの作るおにぎりは美味いわ!
……夏未の作ったおにぎりがやたらしょっぱく、円堂はそれでも美味しいとフォローしていたが、円堂……時には、言わないと駄目なこともあるんだぞ。
そしてその後、俺達は再び練習を再開した。
「豪炎寺、もう一度ファイアトルネードDDだ!」
「おお!」
「来い! 豪炎寺! 神向!」
「「ハアァァァァァァァァァァァァァ!! 行けぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」」
「マジン・ザ・ハンド!!」
俺と豪炎寺は同時に飛び上がり、俺は右脚、豪炎寺は左脚に炎を纏って同時にシュートするも、その炎はゴールに届く前に消えてしまう。
そして円堂は右手を上に上げ、体から黄色のオーラを溢れ出しながらその手を眼前へと差し出し、俺達のシュートを完全にキャッチしてみせた。
「くそ、まだタイミングが合わないか」
「俺もだ。今のはただボールの勢いがぐんと落ちたのを取っただけで、マジン・ザ・ハンドを完成させたわけじゃない」
「…………もう一度だ」
「「おお!」」
結局その後、マジン・ザ・ハンドもファイアトルネードDDも完成することは無かった。
……そしてその次の日、俺は驚愕することになった。
次回、マジでお待たせしました