さっきの勝負の後、俺達は皆揃ってイナビカリ修練場にやって来た。
そして、円堂と俺は。
「もう一本だっ!」
「ハアアッ!」
俺は一心不乱に籠からボールを取り出してはそれを円堂に向けて蹴りつけ、円堂もまた余裕の無い顔でマジン・ザ・ハンドを繰り出そうとしているが、今の円堂からはオーラすら出ていなかった。
集中出来ていない証だ。
という俺もそうだ。
俺が円堂に必殺技を出さないのは、円堂の体を心配してじゃない。……必殺技が出せないからだ。
ファイアトルネードも、何度も使ったはずのデススピアーさえも途中でその威力を失う。
俺の集中力が乱れきっている証だ。
「……なんとしても完成させるんだ…!」
そして円堂はボロボロになりながら言った。
「神向くん。もう止めさせて! これ以上は円堂くんがもたないわ!」
「そうですよ! こんなにボロボロになっているのに、これ以上続けたらそれこそ試合に出られるか分からないじゃないですか!」
木野と音無が俺に言う。
だがそれでも、
「もう一本だ円堂!」
「おお!!」
俺と円堂は止めようとせず、俺は再び円堂に向けてボールを蹴り出そうとする。
その光景に二人は絶句して目を閉じようとする。
『ドラゴン…!』
『トルネーードッ!』
『『ツイン!』』
『ブースト!』
だが、二人が目を閉じる直前、俺と円堂の体は二つのシュートに吹き飛ばされた。
俺が顔を上げると、そこには豪炎寺と染岡が怖い顔をして立っていた。
「……何すんだよ二人とも…、邪魔しないでくれ」
「っ! 何でふっ飛ばされたのかも分からねえのか!?」
染岡が俺の襟元を掴み上げる。
その拍子で俺の体も上に上がった。
「落ち着け染岡」
「けどよ!」
「お前の気持ちも分かる。……神向、アフロディとの勝負の後、お前は円堂を励ましたじゃないか。そのお前が、どうしてすぐに焦るんだ?」
豪炎寺からの問いかけに答えず、俺は円堂の方をチラッと見る。するとそこでは円堂が鬼道、一之瀬と会話をしているのが見えた。
……なるほど、どうやら円堂にツインブーストをかましたのはあの二人みたいだな。
そこまで考えたところでようやく、俺は自分の頭が少しスッキリしていることに気づいた。
「…ごめん。理由は言えないけど、焦ってた」
「理由は言えないって、お前なぁ」
「……言えないなら言わなくていい。だが、焦って無茶な特訓ばかりしていても、何も身に付かない。それどころか、自分が出せるものすら出せなくなるぞ」
豪炎寺は静かに言う。
…やっぱり凄いなこいつ。
俺が必殺技を出せないのを気づいてたか。
「そういうことだ。円堂、神向」
「「響木監督…」」
「今のお前達は世宇子戦に向けて焦り過ぎている。だから、今日はこれから合宿をする」
響木監督からの提案。
既に学校への許可は夏未が取っていたらしく、もう決定しているらしい。
そして、皆は合宿と聞いてテンションを上げるが、円堂だけは明後日に迫っている世宇子戦のことで監督に意義を申し立てるも、監督から言われたのは今の円堂にはマジン・ザ・ハンドはマスター出来ないという厳しい現実だった。
さらには鬼道からも今は必殺技のことは忘れた方がいいと言われ、円堂も渋々これを承諾した。
俺ももちろん参加すると答えた。
いやー、さすがは豪炎寺先生の治療だな。
あんだけあった焦りが今はもうちっとも無いんだから、しかもそこに染岡まで加わったとなったら元気にならなきゃおかしいってもんだ。
「それじゃあ再度17時に集合だ!」
響木監督の号令の元、俺達は必要な物を取りに一旦各々の家へと帰って行った。
……さすがにちょっと疲れたから家に帰ったら寝よう。
しかも、豪炎寺達には本当に悪いことばかりしてよな。……いくらアフロディが女で驚いたからと言ってもさ。
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そして家に帰り、母さんに合宿のことを伝えた後、俺はすぐさま眠りについた。
そこまでは覚えているんだが…、
「どうしてまた俺はここにいるんだ?」
「よっ、久しぶりだな」
俺は今、俺をこの世界に転生させてくれた神様とまた会っていた。
いや、正確には目を開けたらまたあの空間で、目の前にこの人が居たってだけなんだけどさ。
「俺からのサプライズ特典。喜んでもらえたか?」
「サプライズ特典?」
何だサプライズ特典って? 俺がデススピアーを修得できたこととかかな? だったらすぐにでも会えば良かったのに、てか転生させてもらった後なのに会えるんだ。
「女になったアフロディと会っただろ? あれが俺からのサプライズ特典だ」
そんな俺の考えはすぐさま消え、代わりに、
「てめーの仕業かこの野郎!」
俺は神様に突っかかっていた。
「おーおー元気だなぁ。さっきまであんなに焦ってたのに、そんなに嬉しかったのか?」
「確かに嬉しいもある。それは認めよう。……だが! それ以上に今はあんたへの恨みだらけだよ!」
「何でだ?」
何で!? 何でと聞いたか今この神様!?
「そんなことしたんなら早々に言ってくれりゃあ良かったじゃねえかよ! おかげでこっちは女の子にキック力で負けた挙げ句、チームメイトにまで迷惑をかけるようなアホになっちまったじゃねえかよ!」
そう、俺が焦ってた本当の理由はこれだ。
アフロディが原作同様に男だったならあの負けにも納得が行くどころか負けないようにと頑張れたんだが、女の子に負けたとあっちゃあ面目丸潰れだよ。コンチクショー!
「ああ、あれか。確かにあれは見ていてみっとも無かったな」
ぐっ…! この神、ストレートに言ってきやがる…。
まあみっともねえのは認めるけどさ……ああ! 今思い出しても死にたくなる! アフロディの胸を揉んじまった自分も、さっきの練習でらしくなく焦ってた自分も!
「けどまあ、いいじゃねえか。人間らしくてさ」
「え?」
「焦って、無茶して、頑張って。そしてやり過ぎたら友達が止めてくれる」
…ば、バカな。
あの神様が、まともな事を言っているだと!?
「おい今失礼なことを考えただろ」
「あ、バレたか」
「お前…。はあ、まあいい。もうすぐ現実のお前も目覚めるだろうし、最後に俺から言うことがある」
「あ、俺からも言うことが。先にいいよ神様」
「神ってのは、お前の言った通り完璧な存在じゃねえし、なったって別にいいもんじゃねえ。つまらないだけだ。だからよ、神なんてものに囚われてる奴らを救ってやれよ。それが俺からお前に言える最後の言葉だ」
「最後? 別にまた夢の中で会いに来ればいいじゃねえか」
俺が神様に言うと神様はそっと首を横に振る。
「いいか。俺がお前に会えるのは、お前を転生させたあの時と、転生させてからの1回ずつなんだよ。だからもう会えない」
そして続けて言った。
そうか、じゃあやっぱり最後に言うのはこの言葉でいい。
「分かった。その言葉はしっかり覚えとくよ。それじゃあ俺からも……俺をこの世界に転生させてくれてありがとう」
最後に神様の笑顔を見て、俺は自分の部屋の天井を見上げていた。
……俺が世宇子の連中を救うか。
やれやれ、とっさで引き受けちまったけど、あの神様結構難易度高いこと言ったんじゃねえか?
俺は円堂みたいに世界を変えるような力なんて持ってないと思うぞ?
などと、どうでもいいことを考えながら、俺は自分の荷物を持って雷門中に向けて歩き出したのだった。
書いてて分かった。
このオリ主シリアス似合わねえわ。