雷門にやって来た俺は、合宿の付き添いということで校門の前に立っていた菅田先生に連れられて体育館へと入った。先生の話では俺が最後だったらしい。
皆に会ったらまずは謝ろう。
そう決めていたはずなんだが…。
「おい待ちやがれ! 栗松! 壁山! 少林! マネージャー!」
体育館に入った俺が見たのは、鬼の形相で追いかける染岡から逃げる栗松、壁山、少林、音無の1年ズや、持参した低反発枕を半田に触らせる宍戸に寝るとき用と言って限定品の帽子を持ってきて影野に自慢するマックス、メガネに至っては全くもって意味がないであろうプラモデルを枕元に並べており、その雰囲気は合宿というよりもお泊り会だった。
そして、その横では円堂が呆れていた。
あの感じだとまだ気持ちが落ち着いていないみたいだな。
そして、そこから俺達は夕食を作り始めた。
「わあ! 豪炎寺先輩って料理も出来るんですね!」
「よく妹に作ってやってたからな。それに、神向だって上手いじゃないか」
豪炎寺と音無はピーラーでジャガイモの皮を剥いていく。
その途中で豪炎寺が俺に言ってくる。
ちなみに俺は今人参の皮をピーラーではなく包丁で剥いていっている。
「そうか? ……まあ、小さい時から母さんの手伝いでよく料理してたからな。この程度なら基本技能ってことで」
俺が言うと音無は尊敬の目を向けてくれる。
そんなに誇れることでも無いので、却って恥ずかしいな。
「ようやく、いつもの調子に戻ったみたいね」
「お、夏未! ……何持ってるんだ?」
「お塩、だけど?」
待ってくれ。今俺達はカレーを作ってるんだよな?
カレーに塩? お前はカレーを辛いとか甘いとかの食べ物じゃなくてしょっぱい食べ物にしたいのか…というかこいつはすべての料理に塩を振りかける気か? 塩は万能調味料じゃないんだぞ…?
「……どうだ神向。たまにはこういうのも悪くないだろ?」
「監督」
響木監督が俺に笑ってそう言う。
そして俺は監督の前に行き、頭を下げた。
「すいませんでした。俺、自分のことばかりに目が行って、皆がどんな顔をしているのか、まったく気にしてませんでした」
響木監督は、
「それに気づけただけでも十分だ」
とだけ言った。
それを聞いて俺も頭を上げる。
だが夏未だけは一人離れた場所で大介さんの特訓ノートを眺めている円堂を見ていた。
「けど、肝心の円堂くんがあの調子じゃ」
夏未が呟く。
「夏未。ちょっと皮剥きやっててくれ。ピーラーの使い方は豪炎寺と音無から教わってな」
「え?」
「大丈夫。サッカーバカを元気づけるには、これが一番だからな」
俺は困惑する夏未にそう言ってサッカーボールを転がした。
「円堂」
「神向、どうしたんだよ?」
「いや、かなり精神的に参っちまってるみたいだったからさ。久しぶりに、何も考えないサッカーをしようぜ」
ちっとも笑わない円堂に俺が言うと、円堂は俺から目を離してまたしても大介さんの特訓ノートを見る。
「ダメだ。今はマジン・ザ・ハンドを完成させることに集中しないと…。これが無いと、世宇子に勝てない」
「そうか?」
「そうかって…、そうに決まってるだろ! 世宇子のアフロディ。あいつは、必殺技すら使ってないのにあんなに強烈なシュートを繰り出してきた。もしあいつが必殺技を使ったら、ゴッドハンドじゃ止められない」
…俺もさっきまで周りが見えなくなるくらい焦ってた身だから円堂にあまりとやかく言えるような感じはしないけど、
「それじゃあ円堂、俺と勝負しようぜ。ルールは簡単。俺が3本シュートを撃つ、もちろんお前はキーパーとしてそれを止める。先にお前が2本止めたらお前の勝ち、逆に俺が先に2本決めたら俺の勝ちってことで、今だけはマジン・ザ・ハンドのことを忘れろ」
やっぱり辛そうなお前を見るのは堪えるよ、円堂。
だから、お前が辛い時は俺、俺達が何度でも励ましてやるよ。
それが雷門サッカー部だ。
「…分かった」
そして俺と円堂はユニフォームに着替える。
だがその途中、夏未が俺に話しかけてきた。
「何をしているのあなた達は!? この合宿の意味を分かってるの!? 今すぐやめなさい! これは理事長の言葉と思ってもらいます!」
「止めたって無駄だ。俺の時もそうだった」
しかし、そんな夏未に俺に代わって響木監督が言う。
「円堂と神向。二人揃って何度も押しかけて来てな、挙げ句の果てには勝負だと言って俺を監督に連れて来た奴らだ」
「監督…ですが…」
「やらせてやれよ。これが俺達にとって一番良い方法なんだ」
「ああ。サッカーで悩んでいるなら、その悩みはサッカーで晴らしてやる。それが円堂にとって一番良い方法だ」
響木監督に続くように豪炎寺と鬼道も夏未に言う。
すると夏未は納得して引き下がる。
それを見て俺も不思議と笑っていた。
「そう言えば、円堂と勝負するのは初めてだったか?」
俺が円堂に聞くと円堂も少し考えてから答えた。
「そうだな。神向のシュートは何本も受けてるけど、いざ勝負ってなったら、これが初めてだ」
最強のキーパー円堂守との勝負。
……ワクワクする! 転生してからこんなにワクワクする出来事は初めてだ!
「まず1本目! 行くぞ!」
軽いドリブルを挟んだ後、俺は円堂が守るゴールに向けてシュートした。
だが、そのシュートコースは円堂に読まれており、容易く止められてしまう。
様子見の1本目だったけど、あんなに簡単に止められると結構悔しいものだな。
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神向と円堂の勝負を他のメンバーは気にしていなかった。むしろ、これから食事なのにサッカーするなんて元気ですね…くらいの感覚だ。
「まずは円堂が先制か」
「だが、神向の奴もあれは止められることを知った上で撃っているだろうな」
そんな中、鬼道と豪炎寺だけは真剣にその様子を見守る。
「やるな円堂」
「本気なんて出してないくせによく言うぜ……まだ手が痺れてる」
神向も円堂も互いを褒めている。
しかし、様子見の1本目が終わり、次から二人の本当の勝負が始まった。
今度の神向はボールをヒールリフトで上に高く上げ、
『ファイアァァァァトルネード!』
右足に炎を纏いながら回転し、上げたボールを撃つ。
『熱血パンチ!!!!』
円堂はそのシュートを弾くために右手に気を込めて前方に放つが、神向の放ったファイアトルネードの方が威力が上であったためにゴールを許してしまった。
「どうだ! 今度は俺の勝ちだ!」
神向が笑う。
するとそれを見ていた円堂も釣られるように笑っていた。
「やっぱり凄いな神向は! けど、勝負はまだまだ終わってない!」
「……それでこそ円堂だ」
勝者を決める最後の1本。
その勝負はやはり二人のこの技だった。
『デス…スピアァァァァァァ!!!』
神向はまたしてもボールを高く上げると今度はそのボールを両足で挟み、ボールに強い回転をかけてからゴールへと向かわせる。
そのボールは、最終的には黒い槍へと変貌した。
『ゴッド…ハンドォォォォォ!!』
円堂も手に溜めたエネルギーから生み出された巨大な手によって神向のデススピアーを止めにかかる。
……二人の技は、まさに拮抗していた。
デススピアーがゴッドハンドを押したように見えれば、円堂も強い力で押し返す。
その勝負の果て、円堂のゴッドハンドが砕けると同時にボールに込められたデススピアーの威力も無くなり、ボールは上へと弾かれ、グラウンドの外へと飛んでいってしまった。
「勝負は、俺の負けだな。おめでとう円堂」
神向がそう言ったことにより、この勝負の勝利は円堂が手にしたのだった。
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いやー、勝てると思ったんだけどな。
さすがは円堂のゴッドハンドだ、ますます威力が上がってやがる。
「悪かったな円堂。いきなりこんな勝負仕掛けちまってさ」
俺は歩きながら円堂に言う。
そして円堂は俺に笑いながら、
「いや、ありがとう神向。おかげで何か見えた気がする」
と言ったのだった。
その後俺達は夕食を食べ、壁山がお化けを見たと騒ぎ、半田が影山の仕業なんじゃないかと言って皆で調べに行ったところそれ響木監督に呼ばれていたイナズマイレブンOBの人達であり、OBの皆さんは円堂のためにマジン・ザ・ハンド養成マシンを持ってきてくれていたのだった。
まあ、俺は円堂がマジン・ザ・ハンドを頑張る間、世宇子の奴らに点を取られないようにDF陣と徹底的に練習したがな。
これは、チームで一番突破力があるのが俺だからという風丸のアイデアだ。
そして、時間が流れ、とうとう世宇子との試合当日となった。
次回からいよいよ世宇子戦開始です。
さあ、主人公と再び邂逅した時の彼女はどんな感じなんでしょうか!?