目が覚めた時、俺はベッドの上だった。
ベッドの上と言っても、別にまた病院なわけじゃなく、この世界での俺の家の、俺の自室にあるベッドだ。
そして何より、全身にまだ残るこの微量な痛みがあの戦いが……俺達の敗北が現実の物だったことを嫌でも実感させ、俺は自分の両膝を叩いた。
「……痛え…ちくしょう…」
…膝を強く叩きすぎたことによる痛みと、自分の力の無さにより自然と口から言葉が漏れていた。
そして俺はその晴れない気持ちのまま食卓へ向かう。
そのキッチンでは、すでに俺の母が料理を作っていた。
「あ、起きたの? おはよう大司」
「おはよう。母さん…」
「昨日は大変だったみたいね。ニュースでも話題になってるわよ。宇宙人がサッカーで攻めてきたって。お母さんもびっくりしたのよ。大司ったらいきなり運ばれてくるんだもの」
母さんに促されるままテレビを見ると、そこでは確かにエイリア学園が各所で中学校を破壊して回っているということが報じられていた。
その中には、木戸川清修の名前もあった。
……そう言えば。
「運ばれたって…誰に?」
俺は唐突に出た疑問を母さんに聞く。
俺の家を知っているのは学校でも円堂か木野くらいの物だろう。
「さあ…よく分からない子だったわね。フード付けてて顔も見せなかったし、声だって、喋ってないから分からないわ。けど、刑事さんと一緒だったのは覚えてるわね。その刑事さんがあなた達は宇宙人と戦って負けたって言ってたの」
刑事さん…てことは鬼瓦さんの部下の人かな?
確かに刑事さんなら俺の家の住所くらい調べるのなんて事無いだろうからな。
けど、もしそうだとしてどうして顔を見せない、なんて事になるんだ? 刑事さんなら別に顔くらい見せたって構わない気が…。
「……早く食べないと冷ちゃうわよ?」
「あ! いっけね…。いたたぎまーす!」
俺は母さんが作ってくれた朝食を口にかき込む。
その後、俺は雷門中のジャージに着替えた。
「それじゃあ。学校行ってきまーす!」
「あ! ちょっと大司待ちなさい!」
「ん? どしたの母さん?」
「負けた後で言うのもどうかと思うけど。……全国優勝おめでとう!」
「……ありがとう」
母さんにそれだけ言い残して俺は家を出る。
それでもやっぱり、俺の心にある暗雲は晴れない。
こんな時はやっぱり、仲間の顔を見るのが一番だ。
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そんなこんなで今、俺は雷門中に来た。
校舎も、何もかもがメチャクチャに破壊されていて前の活気的な雷門からは見る影も無い。
もちろんそれは、俺達の部室もだった。
「酷えもんだな…。こりゃ」
俺は部室の壁を一撫でする。
「神向!」
「神向くん!」
「円堂、木野。どうした? 2人揃って」
声がした方を見ると、そこには円堂と木野が居た。
「さっきまで、半田達のお見舞いに行ってたんだ。それに、ここに来ないわけには行かないもんな。あいつらさ、確かに怪我はひどかったけど、それでも皆元気だったぜ! 少林なんか俺と会ってすぐに練習しましょうって言ったんだからさ!」
円堂はそう言うと部室のドアがあった場所から中へと入っていく。壊れているとはいえ、中に入れないほど壊されているわけじゃなかったからな。
それにしても、半田達のか。
ダークエンペラーズになっちまうからな、あいつら。
多分今俺があいつらの所に行って強さを求めるな、とか言ってもきっと無駄だと思う。
……俺だって今は力が欲しいんだ、あいつらを倒せるくらいの。
「神向くん」
「木野? どうかしたのか?」
「うん。さっきのお見舞いの時、円堂くんは半田くん達を励ましてたけど……円堂くんの手、震えてた」
木野が悲しそうな目をして俺に言う。
「円堂もさ、悔しいんだよ。悔しくて悔しくて仕方がない……もしかしたら泣き出したいのかもしれない。だけど、それでも前を向かなきゃいけないんだ。あいつは、俺達のキャプテンだから」
それでも俺は木野にそう返す。
すると木野は笑っていた。
「な、何だよ? 急に笑ったり悲しんだり、忙しい奴だな」
「ふふ。ごめん、何だか神向くんが羨ましくなっちゃって。円堂くんのこと、よく分かってるから」
そんな話を俺と木野がしていると、部室の中から円堂が出てきた。その手にはサッカーボールが握られている。
その時、後ろからした物音に俺達が目を向けと豪炎寺がいた。
「豪炎寺」
「俺だけじゃないぞ」
豪炎寺がそう言って目配せした方には、鬼道と音無がこっちを見ていた。
「居たなら声かけろよな」
「話の途中だったみたいなんでな」
鬼道は俺に言ってくる。
話の途中って…、確かにそうだけどもあれ聞かれてたのかよ…。
「やっぱりここだった」
「夏未!」
円堂の言う通り、そこには夏未も合流する。
そして彼女は、自分が汚れることも厭わずに瓦礫の中からある物を拾い上げる。
それは、雷門中サッカー部の看板だった。
それを見て、俺と円堂、豪炎寺、鬼道が互いに向き合う。
「俺は、エイリア学園を許さない! サッカーは何かを壊したり、人を傷つけるためにするんじゃない! 宇宙人に本当のサッカーが何か、教えてやる!」
「俺もだ。やろう円堂!」
「俺もそのつもりでここに来た。もう一度奴らと戦おう。そして勝つんだ!」
「やられっぱなしでなんて終われないからな。今勝てないなら、あいつらに勝てるようになるまで強くなるだけだ!」
「神向、豪炎寺、鬼道……。よし! やろうぜ!」
意気込む円堂と俺達。
そんな俺達の耳に、あの試合でかろうじて入院を逃れたメンバーも現れる。
染岡、風丸、栗松、壁山、土門、一之瀬、メガネ。
そして俺達4人、これが、これから地上最強イレブンを集めるにあたっての最初の11人だ。
その後、俺達は響木監督と日来校長に連れられて地下にある施設へと向かい、そこには理事長である雷門総一朗がいた。
そして理事長は、地上最強のメンバーを集めることを伝え、円堂が自分達がエイリア学園を倒すと告げる。
「うむ。君達ならそう言ってくれるだろうと信じていた。よろしく頼む」
「はい! よーし! やろうぜ皆! 日本一の次は、宇宙一だ!」
『おおーーーーーーーーー!!!!!!!!』
「準備が出来次第出発だ。円堂、頼んだぞ」
「え? 頼んだぞって監督は?」
響木監督が言ったことに風丸が聞く。
「俺は行かん」
すると響木が自身の不参加を告げた。
もちろん、これは俺以外のメンバーは唖然とする。
「響木監督には、私から頼んでいる事があるのだ。これもエイリア学園と戦うために必要なことでな」
「そんなー! じゃあ俺達監督無し?」
「理事長〜…」
「俺、監督居ないなんて嫌っス!」
「俺もでやんす!」
響木監督が居ない…その事が不安なメンバーが口を出す。
だが、響木監督は心配するなと伝えると、俺達の後ろに設置されたエレベーターが開き、その中から1人の女性が姿を見せる。
「紹介しよう。新監督の吉良瞳子君だ!」
円堂達は驚いていた。
そりゃ、いきなり知らない人が監督だなんて言われたら驚くわな。
「ちょっとガッカリですね理事長。監督が居ないと何も出来ないようなお子様の集まりだったとは、思いませんでした。本当にこの子達に、地球の未来を任せられるんですか? 彼らは一度、エイリア学園に負けているんですよ!」
瞳子新監督が理事長に言う。
「だから勝つんです! 一度負けたことは、次の勝利に繋がるんです!」
そう言うと瞳子監督は俺達に振り返り、自分のやり方は今までとは違うから覚悟しておくようにと言ってきた。そして、俺達は一度それぞれの家に帰り、長く険しい旅をするための準備を整えることになった。
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「と言うわけなんだ、母さん。いつ帰ってこれるかは分からない。けど、エイリア学園を倒したら必ず帰ってくる」
俺はそれまでの経緯を母さんに話した。
隠せるようなことでも無いし、そもそも隠しちゃいけない事だ。だから全部話す。その上で了承を貰わないとダメなんだ。
「……そう。ついこの間まで、サッカーに夢中なただの子どもだと思ってたのに、いつの間にかこんなに大きくなってたのね」
母さんは俺に笑いかける。
そして、次にこう言った。
「いいわ。あなたが思ったようにとことんまで頑張りなさい! あなたを信じてくれている友達を裏切らないように!」
「おう!」
その後、俺は支度をして家を出る。
そして、少し進んでから通りを曲がったところで、俺は停止した。
何故ならそこには…。
「神向大司君ですね」
「お前は…!」
そこにはサングラスを掛けた長身の男が立っていたのだ。
「私はエイリア学園の志しに賛同するもの。君に少しお願いがあるんですよ」
男は俺にそう言う。
「お願いだと? エイリア学園の仲間なんかの頼みを聞く義理は無い!」
俺は男にそう返す。
「まあまずはお話をしましょう。と言っても、さっそく本題に入りますが。率直に言います、豪炎寺修也くんと共に、エイリア学園に入ってほしいのです。最悪説得してくれるだけでも構いません」
……!
この野郎! 俺がそんな頼みを聞くとでも思ってるのか!?
俺は目の前の男に今すぐにでも殴りかかりたい衝動に駆られる。だが、男はそんな俺の気持ちなど考えもせずに続ける。
「断るようなら。豪炎寺くんの妹さんがどうなるのか分かりません」
夕香ちゃんが…!?
こいつら、知ってはいたけどこれほどまでに下衆野郎だったとは…。
「それに、豪炎寺くんの方にも私の仲間が向かっているでしょう。……まあ、すぐには返事など出来ないでしょうから今日のところはこれで帰りますよ。……それでは、良い返事を期待してますよ。神向大司君」
男はそれだけ言い残してその場を去った。
俺が後ろを振り返った時には、男の姿は無かった。
……豪炎寺、お前はこんな気持ちを1人で抱えてたんだな…。
その後、俺達は理事長から緊急招集をかけられた。
以前ある感想の返信で書いたのですが、オリ主は沖縄に行きません