「ここだよ」
あれから結構な時間をかけて、俺達はようやくアフロディの家へとたどり着いた。
……これじゃあ地区予選で世宇子と当たる筈ないな。
間違いなく稲妻町とか帝国のある地区とは別になってるもん。
そして、肝心のアフロディの家の外観はというと、おおよそ一般家庭とは言えないほど豪華だった。
いつの日か鬼道の家に円堂共々お邪魔したことがあったが……さすがにあれ程では無いにしろ豪邸と呼んでも差し支えないだろう。
「……凄え」
それを見て俺はその一言しか言えなかった。
「まあ、ここに住んでるのは2人だけなんだけどね」
アフロディはそう言いながら自宅へと入って行く。
そして俺もその後に続くように彼女の家へと入った。
そして、
「いらっしゃーい!」
「むぐぅ!?」
ドアが閉じるとほぼ同時に俺の顔面は突如として発生した柔らかさに包まれた。
嬉しい気もするけどそれ以上に苦しい! このままじゃ窒息する!
「照美から話は聞いてるわよ。自分の家だと思って、ゆっくりしてね!」
「むぐー! むぐー!」
「あ! ごめんなさい、私ったら舞い上がっちゃって…」
ようやくあの息苦しさから解放された俺が最初に見たのは、申し訳なさそうにしている女性と頭を抱えているアフロディの姿だった。
その女性は、肩ほどまでの金髪と、吸い込まれそうなほどに綺麗な紅い瞳をしていて、横にいるアフロディと比較してもよく似ている。……ということはこの人が。
「紹介するよ、向くん。僕のお母さんだよ」
「初めまして。照美の母の、
うん、なんとなく予想は付いてたけどマジでお母さんなのね、もうお姉さんでも通用するよ。
「あら。嬉しいこと言ってくれるわね。お母さんますます好きになっちゃった!」
思ってた事が口に出てたのかよ!?
という暇もなく、俺の顔は再び希美さんの柔らかな物体……というかその胸に包み込まれた。
この人が本当にアフロディのお母さんなのかよ!?
娘とえらい性格に差があるぞ!?
「お母さん…、さすがにそれはやり過ぎだから」
「あぁ…」
アフロディの手によってようやく俺は解放される。
ああ……苦しかった。
「ぷはっ! ああ…助かったぁ…」
「ごめんね。司くん。苦しかった?」
希美さんが俺の顔を覗き込んでくる。
きっと本当に申し訳ないと思っているんだろうけど、声色があまり変わらない……てかアフロディと結構似てるから姿を見ないと違和感が尋常じゃない。
「さあ、向くん。君の部屋に案内するから、僕について来て」
「お、おう、サンキュー」
アフロディに手を引かれて俺は階段を上がっていく。
「行ってらっしゃーい」
その最中にも希美さんの声が聞こえていた。
「お母さんは、昔からあんな感じの人でね。基本的にマイペースなんだけど、それでも君のことは知っているから、悪く思わないでほしい」
「いや、別にそんなことは思うわけないだろ。いい人じゃねえか、ちょっと突然のことで驚いただけ」
俺がそう言うと、アフロディは小さく何かを呟いた。
彼女がその時なんて言っていたのかは分からないが、ただ今はひたすら眠くなっているのを感じる。
「それじゃあ、ここが君の部屋だから。しばらくの間は好きに使ってくれて構わないよ」
「分かった。本当にありがとな」
「気にしないで。それじゃあ、これから夕食だから準備が出来たら呼ぶよ」
アフロディはそう言ってその場を離れる。
そして俺はその部屋に入って中を確認する。
部屋の中はやけに手入れが行き届いていて、壁にはFFのポスターが貼ってある。
「はは、まるで円堂とか俺の部屋みたい…」
そこまで言いかけ、俺は言葉を途切らせる。
円堂……それにエイリア学園に立ち向かうために日本各地を旅する仲間は今どうしているんだろう?
原作通りなら染岡が豪炎寺の不在を許せていないと思うけど…みんなの中にまだ俺は居るのかな?
そうだとしたら、それは嬉しいことだな。
俺はベッドに横たわり、天井を見つめながら今は会えない、会うことが出来ない仲間達のことを考えていた。
ヤバい……このまま寝ちまいそうだ…。
「向くん。食事の用意が出来たから出てきてほしいんだが」
すると、部屋のドアがノックされて外からアフロディの声が聞こえてきた。
「あ、ああ。分かった、今行く」
俺は自分の眠気を気合で抑えながら部屋の外へ出た。
次回、一緒に食事