サッカーやろうぜ! そうしよう!   作:ssgss

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復活しました!

やっぱり主人公とか三人称以外の視点だと難しいです。



アフロディの罪悪感

 いつからなんだろう…、僕がこの夢を見るのは。

 僕は目の前に広がる真っ暗な光景を目にしてそう思う。

 そう僕はこの夢を見るのは初めてじゃない。

 と言っても、この夢に続きがあるのかも分からない。

 なにせいつもはこの真っ暗な空間を見ているだけで終わってしまうからだ。

 それにしても、この夢を見るようになったのは……そうだ、あの男。

 影山零治に唆されたあの時からだった。

 

『今よりもっと強い力が欲しくはないかね?』

 

『強い…力?』

 

『そうとも、何者にも負けない圧倒的な力! それさえあればお前達はサッカーで頂上に立つことが出来る。そして私はお前達にその力を与えることが出来るが、どうする?』

 

 …いや、唆されたなんていう被害者のような言葉は僕には口に出すことさえ出来ない。

 だって僕は、あの時キャプテンとして皆を間違った道へ進まないように止めることが出来たはずなのに…。

 くだらない勝利に縋って自ら力を望んだんだ。

 そんな僕が誰からに責められることはあっても、責めることは出来ないんだ。

 

「だからこの夢がどんな物でも。僕は甘んじて受け入れよう」

 

 僕はその空間でそう呟く。

 きっとこれは、僕に与えられた罰なんだ。

 だから僕は、これを受け入れる義務がある。

 

「……ィ……ディ……アフロディ!」

 

 そう思っていた僕の耳に唐突に聞こえてきた声。

 その声に導かれるように僕は夢の世界から脱した。

 そして、夢から覚めた僕が見たのは、心配そうに僕を見つめる彼……神向くんの顔と、外から聞こえるザーザーという雨音だった。

 今日は晴れの予報だったはずだけど、まあ予報だから外れることあるんだろう。

 

「やあ、神向くん。おはよう。今日もいい天気だね」

 

「おはようって…お前なぁ、さっき凄く(うな)されてたぞ? 何か、悪い夢でも見たのか?」

 

「悪い夢…というよりは不思議な夢だったね」

 

 僕は彼にそう告げる。

 それにしても、僕は魘されていたんだね。

 そう思って眠っていたベッドの方を見ると、ベッドの上には確かに汗でぐっしょりだった。

 

「そうか。けど、そんな夢を見るのも無理ないな」

 

「え?」

 

「だってよ……」

 

 途端に神向くんの顔がグニャリと、まるで飴細工のように溶け始め、彼の声はドロドロとした低音になりながら僕に言った。

 

「神のアクアなんていう物に頼ることしか出来ない様なズルい奴にはそんな夢がお似合いだよなぁ!?」

 

 溶けた彼の中から現れたのは、透明なグラス。

 そしてそのグラスの中には、スポーツドリンクと言われても間違えてしまうよう液体。

 だが僕はその液体の正体を知っている。

 それは間違いなく、神のアクアだった。

 

「う、うわぁぁぁぁぁ! うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 僕は知らず知らずの内に叫んでいた。

 そして場面はまたしてもあの暗い空間に戻った。

 ……罰だから甘んじて受け入れよう。

 そんな言葉を言っていたのにいざ実際に直視すればすぐに取り乱してしまう。

 こんな自分を笑うことさえ、今の僕には出来なかった。

 

「うっ…うぅ、うぅぅぅぅぅぅ……!」

 

 何も出来ない…。

 そんな無力な自分の存在に嫌気が指している僕の足元に、ふと何かが当たった。

 

「これは……」

 

 それはサッカーボールだった。

 そして、そのサッカーボールを追いかけるように僕の前に白い人影が現れた。

 

「―――――――――!!」

 

 その人影は僕に何か言っていた。

 だけど、僕にはなんと言っていたのか僕にはまるで分からなかった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「ここは…」

 

「ここはじゃねえよ。お前の部屋だろ?」

 

 自分の部屋の天井を見つめて言う僕に向かって彼はそう言った。

 

「神向くん…」

 

「よ、アフロディ。おはよう。今日もいい天気だな」

 

 笑って言う神向くんに僕はこう尋ねる。

 

「君は、本当に神向くんなのかい?」

 

「何、言ってんだ? 大丈夫か?」

 

「いいから、答えて」

 

 僕がそう言うと、神向くんは当たり前のようにこう返してきた。

 

「俺が、他の誰かに見えているのか? 俺は間違いなく俺だぞ」

 

「ふっ、ふふ。そうだね。そうだった、いきなりこんなことを聞いてごめん」

 

「いや、別に良いんだけどさ。大丈夫か、本当に? さっきも凄く魘されてたんだぜ。今だって汗だくじゃねえか」

 

 彼のその言葉で一瞬ビクッと体が強張った。

 けど、これはさっきの夢じゃない。

 

「とりあえず、汗を流す為に風呂でも入ってこいよ」

 

「そうだね。そうさせてもらうよ」

 

 彼に言われるように僕はお風呂場に向かい、そこでシャワーを浴びることにした。

 

『神のアクアなんていう物に頼ることしか出来ない様なズルい奴にはそんな夢がお似合いだよなぁ!?』

 

 もしかしたら、彼はそんなことを思っているのかな?

 あの夢の中で彼に言われた言葉を思い出して僕はそんなことを考えてしまう。

 ……聞いてみよう。

 そう思いながら僕は着替え、そしてお風呂場から出て、自室に戻る。

 

「お、早かったな。ちゃんと温まったのか? ……て、俺が言う必要もねえか」

 

 彼はまた笑いながらそう言った。

 今日の特訓を始めるためにスタジアムまでまた向かう。

 それまでまだ少し時間がある、だから聞くなら今しかない。

 

「神向くん。一つ聞いてもいいかな?」

 

「ん? うん。まあ、答えられる範囲でなら」

 

「君は……僕を、神のアクアに頼ることしか出来ないようなズルい人間だと思うかい?」

 

 僕は彼に今抱いている疑問を投げかける。

 そして彼は少しの間を置いて、

 

「そうだな。確かに神のアクアに頼ってサッカーを汚したのは許せないし、ズルい事だと思う」

 

 そう答えた。

 その時の彼の表情から、冗談でなく本気であるのがよく分かる。

 

「だけどさ、お前は自分をズルい奴だって思えたんだろ? なら、もうそんなことしないんだからそれで良いじゃん」

 

 だが彼はその直後にそう言った。

 

「君は…」

 

「勘違いするな。別に、慰めたわけじゃねえ……いや、慰めようと思ってなかったわけじゃねえから……んん、言葉って難しいな」

 

「ハッハハハ!!」

 

「な、何で笑うんだよ!? ったく、聞かれたから答えたのによぉ…」

 

 少し拗ねた感じになる神向くんに謝りながら僕達は互いに笑い合った。

 まだ神のアクアを使ったことに対する罪悪感にまだ向き合いきれたわけじゃない。

 けど、それでも今の僕は神向くんのあの言葉に確かに救われていた。

 ……ありがとう、神向くん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




……サッカーってなんだっけ?
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