世宇子スタジアム。
今日も今日とてサッカー部員たちが高めあうこのフィールドに一つの轟音が轟いた。
「はあ…はあ…」
アフロディを含む世宇子の選手たちが目を向ける先では、一人の選手が肩で息をしながら立っている。
そう、現在彼らによって匿われている神向だ。
「や…」
『やったー!!』
そんな神前を見た世宇子のメンバーは同時に声を上げ、彼に駆け寄る。
「やったな神向! ついに目的の技を身に着けたんだ!」
デメテルが彼の肩を叩いて言う。
しかし、当の本人には喜びの表情はなかった。
「う、うーん…」
「どうした神向? 浮かない顔だな」
「確かに、今のが俺の目指していた技で間違いはないと思うんだけど…。多分今できたのは偶然だ。またやれって言われても出来る自信がない」
「なるほど。確かにここ数日、かなり根を詰めて練習していたからね」
「ああ。だからこっからはこの感覚をしっかり身に着けられるようにしないと」
「まったく、お前の真っ直ぐさにはいつも驚かされるぜ」
デメテルの言葉にみんなは笑った。
そんな彼らの姿につられて神向も笑う。
「さてと、俺達も練習を切り上げようぜ。またあいつらの試合を見届けないと」
そう、今日はとても重要な日であり、彼らは貴重な
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テレビに釘付けになる神向と世宇子メンバー。
その先で繰り広げられているのは、ある噂を聞きつけて沖縄に来た雷門と、さらなる強化を果たしたイプシロン―――もとい、イプシロン・改の試合である。
「また知らない奴らがいるな……それに変わるように、またメンバーが変わっている」
キーパーのポセイドンが雷門のメンバーを見て言う。
「(綱海に立向井……着実に地上最強メンバーが集まってるんだな。そして、風丸はやっぱり…)」
一人だけ事情を知る神向はその状況を歯がゆく感じている。
「それに、雷門の方が先制点を許している。状況は、あまりいいとは言えないね」
アフロディが視線を向ける先には、ベンチで佇む男。
先のイプシロン戦で唯一得点を上げた吹雪が座っていた。
「いや、それどころか雷門の圧倒的不利」
『グングニルッ!!』
画面上では、本来のポジションであるFWに戻ったデザームの必殺シュートが放たれる。
『正義の……鉄拳!!』
それに対して円堂も新たに会得した技、正義の鉄拳で応戦する。
しかし、その技はデザームの技を止める事は出来ず、追加点を許せない雷門陣営は他のメンバーが盾となってゴールを死守している状況だ。
「……楽しそうに観戦しているところ申し訳ないね」
その場に静かに渡る声。
世宇子メンバーが目を向けると、そこにはエイリア学園に協力する男の一人が立っていた。
「悪いが事情が変わってね。君の意思には関わらず私と共に来てもらう事になった。なあに心配は要らない。お友達の豪炎寺君もすぐに仲間が確保するさ」
「……」
「残念だけど、彼は君達には渡さない」
そこに強く返したのは、アフロディだった。
「ふん、神のアクアで強くなった気でいた偽物の神が何を言う」
「そう、確かに僕達は一度間違えた。だけど、その僕達をまたサッカーに戻してくれたのは彼らだ。だからそんな彼を渡すわけにはいかない」
アフロディの力強い発言で警官が男を取り囲む。
「これは…!?」
「君達が彼を見ていたことは知っていた。だからこそ、いつ接触を受けても良い様に鬼瓦刑事と連絡を取って仲間の刑事さんを配置させてもらっていたのさ」
「くっ…!」
「諦めるんだな! 豪炎寺君の妹もこちらで安全な場所に避難させてもらった。大人しく降伏しろ!」
刑事の言葉を聞いた男は完全に神前の事を諦めてその場から消え去った。
そしてそれは同時に、神向と豪炎寺が、帰るべきチームに帰れるようになったこと意味している。
「これで、もう君達を縛るものはないね」
「そうだな。ありがとう、みんな」
神向はその場のみんなに頭を下げる。
そして彼らは、再びテレビに目を向けた。
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「行け。お前を待っている仲間の元へ!」
沖縄で鬼瓦刑事から協力を頼まれた人物である土方がフードの男に言う。
そしてその言葉を受けた彼は、雷門とイプシロン・改の試合が繰り広げられているスタジアムに走る。
そしてスタジアムでは、今まさにデザームが最後の得点を決めようとしていた。
【グングニル!!】
デザームの必殺シュートが円堂に迫る。
「(究極奥義は…未完成。ライオンの、子ども…)」
円堂は正義の鉄拳を記した大介のノート見た時に書かれていた言葉。
そしてこの後半戦が始まる前に立向井から言われた言葉を思い出す。
「(ライオン…子ども…そうか! そういう事だったんだな、じいちゃん…! 究極奥義が未完成っていうのは、完成しないって事じゃない! ライオンの子どもが大きくなるように、常に進化し続けるって事だ!)」
【正義の鉄拳!】
さらに大きくパワーアップした正義の鉄拳。
その勢いは、デザームのグングニルを難なく跳ね除けた。
「何っ!? パワーアップしただと!?」
「そうだ。これが常に進化し続ける究極奥義、正義の鉄拳だ!」
「楽しませてくれるな。だが、技が進化しようと、我らから点を取らない限り、お前らに勝ち目はない」
「……点なら、俺が取る」
円堂が弾いたボール、その先で立っていたフードの男が言う。
円堂が、雷門中のみんなが聞きなれた静かな、そして熱い声で―――。
「あれは…」
男はフードを脱ぐ。
そしてフードの下からは彼らがこの沖縄に来た理由である炎のストライカー足りうる人物が姿を見せた。
「豪炎寺!」
そう、一度彼らの元から神前と共に離れた雷門のエースストライカー豪炎寺がそこにいた。
「……待たせたな」
「…へへっ、いつもお前は遅いんだよ!」
「ご、豪炎寺さんが、豪炎寺さんが……帰ってきたっすー!!」
豪炎寺の復活。
その事実だけで雷門には活気が戻った。
「監督!」
「選手交代。10番、豪炎寺修也が入ります!」
浦部と交代して入る豪炎寺。
その鋭い眼光にデザームは警戒する。
「豪炎寺修也…っ!」
ホイッスルと共に再開する試合。
豪炎寺はすばやくイプシロン・改からボールを奪い、ゴールに迫る。
そしてすぐさま彼は必殺技を放つ。
【ファイアトルネード!!】
パワーアップした豪炎寺の必殺技に反応の出来ないゼルはあっさりとシュートを許す。
そして雷門のみんなが確信した。
豪炎寺もまた、雷門から離れている間に大きく進化していると。
「ポジションチェンジだ! 私がキーパーに戻る! そして豪炎寺修也、貴様を止める! お前らのすべてを叩き潰す!」
イプシロン・改のボールで再開するも、豪炎寺に負けじと活気づく雷門陣営はあっさりとボールを奪う。
そしてボールは、再び豪炎寺に渡る。
「来い!」
その言葉に返すように豪炎寺の後ろから炎の魔神が現れる。
それは豪炎寺ごとボールを上に跳ね上げ、豪炎寺は遥か上空からオーバーヘッドキックを放つ。
【爆熱……ストーム!!】
豪炎寺の新必殺技がデザームに迫る。
それに対してデザームはかつて一度だけ吹雪に使用した自身の最強技で迎え撃つ。
【ドリルスマッシャー!!!】
デザームの手のひらから出現した大きなドリルは豪炎寺のシュート受ける。
両者の必殺技……その凄まじいパワー同士のぶつかり合いだが、豪炎寺はどうなるか分かっている様にデザームに背を向けた。
そして彼のシュートは、デザームのドリルスマッシャーを完膚なきまでに打ち破った。
こうして、雷門はイプシロン・改に勝利したのである。
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「まさか、彼があそこまで力を付けているとはね」
帰り道に着くアフロディと神向。
その途中でアフロディが言う。
「ああ、俺もビックリだ。けど、今のアフロディ……照美も負けてないと思うぜ」
「僕も?」
「ああ。なにせ、ここまでずっと俺と一緒に特訓してきたし、間近で見て来たから保証する」
「ふっ、ありがとう」
そうやって笑いあう二人の少年少女の姿を、夕日だけが知っていた。
「(けど、次はマスタークラスが相手か)」
神向はその中でも、次の相手向けて静かに闘志を燃やしていた。
そして、もうすぐ近くに帰ってくる仲間たちに話したいことがたくさんあると思いながら。