アフロディが切り開いた1点。
それは同時に、ダイヤモンドダストに彼女を警戒させることを意味している。
「見せてやろう。絶対零度の、闇を…!」
ガゼルの合図で雷門からボールを奪い取るダイヤモンドダスト。
マスターランクチームの真の力を見せんとばかりに先ほどまでとは打って変わっての強烈な攻めにあっという間にガゼルへとボールが渡った。
「凍てつくがいい!」
「来い!」
円堂とガゼルの一騎打ち。
【ノーザン…インパクト!】
強力な冷気を帯びたシュートが円堂に迫る。
【正義の鉄拳!】
「うおおおおおおおお!」
円堂もまた全力を込めた正義の鉄拳で迎え撃つ。
しかし、ガゼルの強力なシュートの前に敗れてしまった。
『!!』
「……」
円堂がゴールを割られたことに驚く一同。
そんな中、神向とアフロディは互いに目くばせする。
そしてそこで前半終了のホイッスルが鳴った。
「この程度とは、ガッカリだね」
ガゼルのそんな言葉と共に。
「凄いシュートだった…」
「円堂さん…」
円堂を心配する様に立向井が言う。
だが彼の心配とは裏腹に円堂は笑顔だった。
「心配するな。究極奥義に完成なしだ!」
「後半からは俺もガンガン攻めていく。みんな、守りは任せたぜ!」
神向がDF陣営に言う。
「おう! 任せてくれ!」
綱海が強気に返し、雷門メンバーは後半に備えた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そうして迎えた後半戦。
前半からさらに試合の勢いは加速していく。
雷門が攻めればダイヤモンドダストも攻める。
一進一退の攻防の中アフロディが活路を開いた。
「神向くん!」
「よし!」
DFラインから大きく上がっていた神向にボールが渡る。
そして彼もまた離れている間に身に着けた必殺技をダイヤモンドダストのゴール目がけて放つ。
ボールに強烈な縦回転をかけて跳ね上げ、そして次に横回転をかけたボールは凄絶な竜巻を作り出した。
「こ、これは!? なんと、神向の新たなシュート技だ!」
神向はその嵐による風の力を右足の一点に込めた。
【ハリケーン……ブラストォォォォォ!!】
【アイス…ブロック!】
キーパーのベルガは冷気でシュートを凍らせるが、その勢いは止められない。
ボールはそのままゴールへと突き刺さる。
「よーっし!」
「ゴール! 神向が新必殺技で見事にゴールを決めました! 雷門ここでついに勝ち越しです!」
雷門イレブンが神向に駆け寄り喜びを共にする。
もちろん、シュートを決めた神向自身もだ。
「……こんな、事が…」
その様子を見たガゼルは激しく動揺する。
そして彼は、二度と神向、アフロディ、豪炎寺の三名にシュートをさせない事を決意する。
「さあ、試合は再びダイヤモンドダストのボールで再開です! おっと、ダイヤモンドダスト、神向、アフロディ、豪炎寺の三人に激しいチェック! パスはすべて弾かれてしまいます!」
「こっちだ!」
「そして再びボールはガゼルに、これは……前半で正義の鉄拳を打ち破った時と同じ状況です!」
またも行われる円堂とガゼルの一騎打ち。
ガゼルも出し惜しみなく必殺技を放つ。
【ノーザンインパクト!】
「今度こそ、止めてみせる!」
それに対して円堂も再び正義の鉄拳の構え。
「正義の鉄拳!」
前半戦のラスト同じお互いの最強技のぶつかり合い。
しかし、その勝敗はまたしてもガゼルへと軍配が上がりゴールを許してしまう。
「ご、ゴール! 再び正義の鉄拳が破られた! 恐るべし、ガゼルのノーザンインパクト!」
「思い知ったか!」
ガゼルは打ちひしがれる円堂に強く言う。
ここまで勝負において熱さを出すのは、彼にとってもおそらく初めての事だっただろう。
「ここに来て勝ち越しを同点に戻されるのはキツイな…」
「ああ。……なんとかして、奴らよりも先にもう1点を取らなければ」
「ならば!」
一之瀬が円堂と土門を見る。
その真意に気付いた二人も頷き、試合は雷門ボールで再開する。
「一之瀬!」
鬼道から一之瀬への強いパス。
そして円堂と土門も前線へと駆け上がる。
「おい! ゴールはどうすんだよ!?」
その様子を見た綱海が言うが当の円堂は既にハーフラインを超えている。
【フローズンスティール!】
「うあああっ!」
だが、今まさにザ・フェニックスを撃とうとした瞬間ダイヤモンドダストのクララによりボールが奪われてしまった。
「これは…!?」
その様子を見たアフロディが後ろを見る。
そこにはキーパー不在のゴールが
「危ない! 円堂がゴールを空けている!」
「こっちだ!」
クララが円堂の横をすり抜けるようにガゼルへとパスする。
しかしこれは間一髪、綱海によって阻止されボールはラインを割った。
「サンキュー! 綱海!」
「いいって事よ!」
「……土門! 一之瀬! 次は決めようぜ!」
「「ああ!」」
アフロディ鬼道に近づいて言う。
「連携技は、円堂くんがゴールから離れすぎる。あまりにも危険だよ」
「分かっている。しかし時間が無いんだ。時には危険を冒さなくてはならない時もある」
「……円堂くんが攻撃に加われるからこその、大きな落とし穴だね」
試合再開。
ボールを奪った雷門は鬼道へとパスをする。
「神向、豪炎寺!」
鬼道が言う。
しかし、神向にはダイヤモンドダストが三人がかりでチェックについており動けない状況だ。
「くっ…円堂!」
「おう!」
「あー、再び円堂がゴールを飛び出した! これはイナズマブレイクの体勢です!」
鬼道がボールを上空に蹴り上げる。
しかし今度はそれをアイシーが見事にカットしてみせた。
これに驚く雷門イレブン。
しかしすぐさまアフロディがアイシーの前に立ち進路を塞いだ。
「円堂くん戻れ! 早く!」
「こっちだ!」
円堂が戻るのと同時にガゼルへとボールが渡る。
そして
【ノーザン……インパクト!!!】
ガゼルはハーフライン手前からシュートを放つ。
このままではゴールに戻る前に点を決められてしまう。
そう判断した円堂はその場で正義の鉄拳の構えに出る。
【正義の鉄け…】
「ダメだ円堂! そこはペナルティエリア外だぞ! ハンドになる!」
そう、円堂の立っている場所はペナルティエリアから大きく離れた位置。
しかし眼前にはガゼルのシュートが迫り、右手にはすでにエネルギーが溜められている。
迷った末に円堂が取った行動は、
「ちゃああああああああっ!!」
ヘディング。
ハンドせず、しかしガゼルのシュートを止める為にとっさで出た行動ではあったが、その時円堂額から溜め込まれていたエネルギーが手の形として出現し、ガゼルのノーザンインパクトを弾いてみせた。
『!?』
「な、なんと…円堂がヘッドで守ったー! ダイヤモンドダスト、得点ならず!」
そこで試合終了のホイッスルが鳴る。
同点、勝つこともなく、負ける事も無いまま試合が終了した。
「なんですか…今の?」
「新しい…必殺技?」
ベンチでは木野と音無がそう話す。
「そこまでだよ。ガゼル」
そんな時、その声は静かにスタジアムに響いた。
そしてその人物はゆっくりとグラウンドに姿を見せる。
「ヒロト!」
「やあ、円堂くん」
「……」
「そっちの彼が、君が前から言ってた神向くんだね。ホント、円堂くんの言ってた通りだ」
「何しに来たんだ?」
「心配しないでよ。今日は君達と戦いに来たんじゃない。俺ももっともっと強くなった君達と戦いたいからさ、なってくれるよね? 円堂くん」
「当たり前だ! エイリア学園を倒すためなら、俺達はいくらでも強くなる!」
「いいね、俺も見てみたいな。地上最強のサッカーチームを」
「……本当に思っているのか?」
円堂が静かに聞く。
すると、ヒロトという少年は少し寂しそうに返した。
その時、もう一人の少年も去り際にやってくる。
「またね、円堂くん」
「(あれがジェネシスのキャプテンと、プロミネンスのキャプテンか)」
神向はその様子をただ黙って見ていた。
「円堂守! 次は必ず、君達を倒す!」
ガゼルは去り際、そう強く言い残すのだった。