サッカーやろうぜ! そうしよう!   作:ssgss

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強くなるために

『神向ーーー!!』

 

 ダイヤモンドダストとの試合を同点で終えた俺達。

 束の間の休息に浸る暇もなく俺は強く成長した仲間達に囲まれた。

 

「……ホントに久しぶりだな。みんな!」

 

 俺はみんなにそう返す。

 そんな中、鬼道にアフロディが近づいていくのが見えた。

 

「鬼道くん、君が帝国学園に居た時の事を謝罪したい。君にもチームメイトにも、本当にひどい事をした」

 

 アフロディが鬼道に頭を下げるのが見える。

 しかし、こっちはこっちでみんなからの熱に押されて近づけない。

 まあ、つまり遠くから聞こえる会話だけで判断するしかないんだけどな。

 

「……終わった事だ。それにお前も世宇子も、影山に唆されたに過ぎない」

 

 鬼道がそう言ってるのが聞こえた。

 どうやら二人の間にはもうわだかまりはないのだろう。

 

「あ、あの……神向さん!」

 

 そんな中、少し弾んだ声で俺を呼ぶ声がした。

 陽花戸中一年の立向居だ。

 キーパーとしての才だけならおそらく円堂よりも上かもしれないくらいの潜在能力秘めた選手。

 ま、当の本人はそんな事気付いてないと思うけど。

 それに、ここでは初対面だし、知らない人のふりをしないとな。

 

「えーっと、お前は…」

 

「お、俺…陽花戸中一年の立向居勇気って言います! 今は、同じく雷門イレブンの一員としてエイリア学園と戦う旅に同行させてもらってます!」

 

「なるほど。よろしくな、立向居。それで、どうしたんだ?」

 

「あの、俺と一対一で勝負してもらえませんか!? 神向さんにも、キーパーとしての俺を見てもらいたいんです!」

 

 緊張からか顔を赤くした立向居が言う。

 するとその横から円堂が顔を出した。

 

「それ良いな! やってやれよ神向、立向居は凄いんだぜ! ゴッドハンドもマジン・ザ・ハンドもマスターしてみせたんだから!」

 

「マジン・ザ・ハンドも!? それは是非見てみたいな! ……よし、やるか立向居!」

 

「…! は、はい!!」

 

 俺と立向居はすぐに準備をする。

 

「まったく、本当に円堂くんに似てるんだから…」

 

「いいじゃない。あれが神向くんの良い所よ」

 

 遠くで夏美と秋がそんな話をしているが、今は立向居との勝負に集中しよう。

 マジン・ザ・ハンドをマスターしているのは知っていたけど、実際の力はやっぱりぶつからないと分からないからな。

 

「いいか立向居。手加減抜きでいくぜ!」

 

「もちろんです! 俺も俺の全力で止めてみせます!」

 

 ゴール前に立つとそう強く返す立向居。

 さっきまでの気弱さから一変、真っ直ぐな瞳だ。

 

「じゃあ、遠慮なく」

 

 俺は縦と横、二つの回転から繰り出す竜巻の力を纏った一撃を繰り出す。

 ダイヤモンドダストから見事に1点をもぎ取った一撃を。

 

【ハリケーンブラスト!!】

 

「ハアアアア!!」

 

 俺の新必殺技、ハリケーンブラストは一直線に立向居に向かう。

 だが、彼もまた自分の全力で俺にぶつかってきた。

 

【マジン・ザ・ハンドォォォォ!!!】

 

「うおーーーーーーっ!!」

 

 間違う事なきマジン・ザ・ハンド。

 青い魔神を背に顕現させた立向井は俺のシュートに食らいつく。

 確かに素晴らしい威力のマジン・ザ・ハンド。

 だけど、こっちも全力の修行と仲間達の協力があって出来た必殺技。

 

「うわああああ…!!」

 

 そう簡単には止めさせないぜ。

 俺のハリケーンブラストは立向居のマジン・ザ・ハンドを打ち負かした。

 

「すごい……本当に凄いです! 神向さん!」

 

「おう。お前も見事なマジン・ザ・ハンドだったぜ」

 

 その後、俺達は瞳子監督に言われてスタジアムを後にした。

 まあ、俺達無断で入ってるし、いつまでもここで和気あいあいとしてはいられないよな。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

「アフロディ。俺達と一緒に戦ってくれるんだな」

 

「ああ。よろしく」

 

「歓迎するわ」

 

「感謝します、監督。失礼ながら、今の雷門には決定力が不足していますからね」

 

「言ってくれるじゃないか」

 

 笑いながらそういうアフロディに豪炎寺が言う。

 しかし、それにもアフロディは笑顔で返した。

 

「君たちの力は、こんなものではないはずだよ。僕は、君たちを勝利に導く力になりたいと思っているんだ」

 

「さっきは勝てなかったけどね。うっしっし…」

 

「こぉら!」

 

 皮肉気味に返す小暮を音無が諫める。

 

「エース…じゃなかった。クイーンの座は渡さへんで!」

 

「君は早く怪我を治さないと」

 

「さっすがダーリン優しいわぁ!」

 

 また一方では一之瀬と浦部がそんな会話をしている。

 まったく、少し合わないだけで賑やかになったもんだ。

 

「よーし、エイリア学園を倒すためにもっともっと強くなろうぜ!」

 

『おお!』

 

 みんなに言う円堂。

 それに返す俺達。

 だが、強くなるだけじゃダメだ。

 俺達は変わらなきゃいけない。

 

「瞳子監督。俺、今日の試合で思ったことがあるんです」

 

「奇遇ね。私もよ、円堂君」

 

「はい?」

 

「……貴方には、キーパーを辞めてもらうわ」

 

 瞳子監督の発言。

 それは一同に衝撃をもたらす言葉だった。

 もちろん、円堂にも。

 

「監督…今、何て?」

 

「キーパーを辞めろと言ったのよ」

 

 さっきまでの緩み切った空気から一転して緊張が走る。

 しかし、そこに切り口を入れたのは塔子だった。

 

「私は反対です! このチームのキーパーは、円堂しかいません!」

 

「だよな。いきなり無茶苦茶だろ」

 

「俺も嫌っス…」

 

 それに綱海、壁山も続く。

 

「……勝つために、キーパーを辞めてほしいの」

 

「勝つために?」

 

「俺は監督の意見に賛成だ。今日の試合を見れば、特にな」

 

「俺もだ」

 

 俺と鬼道は監督に賛同する。

 それにもまたみんなは驚いた。

 

「俺達は地上最強のサッカーチームにならなければならない。円堂が必殺シュートの度にゴールを空けるのは大きな弱点だ」

 

「けどよ、それは神向が帰ってきたからアイツが攻撃に参加すればいいんじゃねえのか?」

 

「だが、敵はおそらく神向へのマークを厳しくしてくる。今日の最後のようにな。そんな時、神向と同じ様に連携技に参加できる円堂がいることは大きなアドバンテージになる。そしてそれは同時にこの弱点を克服することに繋がるんだ」

 

「それで、円堂にどうしろって言うのさ?」

 

「変わってもらうんだよ。円堂に」

 

 鬼道はそう返す。

 そして円堂に続けて言った。

 

「円堂。お前はリベロになるんだ」

 

「リベロ!?」

 

「リベロ……ってなんだ?」

 

「リベロとは、自由という意味を持つイタリア語で、ディフェンダーでありながら攻撃にも参加する選手の事を意味します」

 

 リベロの意味を目金が綱海に説明する。

 まあ綱海はちょっと前までサッカーの事を知らなかったんだ。

 リベロについても知らないのは無理ないよな。

 

「けど、キャプテンがリベロになるとして、誰がキーパーをやるのさ?」

 

「そうっスよ。キャプテン以外に雷門のゴールを守れる人なんて…」

 

「それなら、一番良い奴がいる」

 

 今度は俺がみんなの前に出る。

 そして、その人物に声をかける。

 

「なあ、立向居」

 

「え!? お、俺ですか!?」

 

「ああ。今日、お前のマジン・ザ・ハンドを見て分かった。これから俺達がエイリア学園を倒すためには、お前にキーパーとして成長してもらう必要があるんだ」

 

 俺の言葉を聞いた円堂が静かに顔を上げて言った。

 

「分かった。神向と鬼道が言うなら、間違いないな。俺やるよ、勝つために、もっと強くなるために、リベロになる! だから立向居、雷門のゴールは任せたぜ」

 

「円堂さん…」

 

「安心しろ。お前一人に強くなれなんて言わない、俺達も全力で協力する。その為に強くなって帰ってきたんだからな」

 

「私からもお願いするわ」

 

「神向さん、監督……分かりました! 俺、精一杯頑張ります!」

 

 こうして、円堂がリベロ転向し、立向居が俺達のゴールを守る事になった。

 この変化は、雷門イレブンにとってまさに革新と言える事だろう。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

「もう行っちゃうのー?」

 

「は、はい。希美さんにもすごくお世話になりました」

 

 その夜。

 俺は照美の家で最後の夜を過ごしていた。

 まあ、希美さんは凄く悲しい顔をして泣いてた……ってか現在進行形で泣いてるんだけど。

 

「母さん。わがままを言ってはダメだよ」

 

「だってー、もう司くんは家族みたいなものだし」

 

 ちなみに希美さんには俺の偽名の件は伝えてある。

 けど、当人曰くこれで呼ぶのが慣れたから家に居る間はこの名前で呼ばせてほしいそうだ。

 お世話になりっぱなしだったし、そのくらいのお願いを聞かないと怒られるだろう。

 

「あ、そうだ! 二人がお付き合いをすれば、またいつでも司くんが家に来れるんじゃない?」

 

「ぶーーーっ! か、母さん!? いきなり何を!?」

 

 照美は口に含んでいた水を勢いよく噴き出した。

 俺、俺は平然としてるよ。

 ウン、ダイジョーブダイジョーブ。

 

「そんなのいきなり言っても迷惑だろ!?」

 

「ええー、名案だと思ったのにー」

 

「……ぷ、アッハハハハハ!!」

 

 俺はそんな二人のやり取りを見て久しぶりに大きく笑った。

 

 

 

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