その後も俺達は各々練習を続け、一日が終わった。
その夜、俺と円堂はイナズマキャラバンの上で話し合っていた。
「そっか。俺がチームを離れてる間、そんな事があったんだな」
俺は円堂から奈良で離れて以降の事を聞いた。
エイリア学園との試合は中継されてたけど、それ以外の事。
影山の新・帝国学園の事や、新たな仲間たちの加入。
―――仲間たちの脱退の事。
知っているとか、いないとか、そんな事は関係なくここまで一緒に戦ってきたあいつ等の事を思うと胸が痛い。
「それより俺も驚いたんだぜ? まさか神向がアフロディと一緒に居るなんてさ」
「ああ、俺も匿ってくれる先を知った時は驚いた。けど、世宇子の皆も、アフロディも真剣だった。真剣に自分達のした事と向き合って、俺の練習に付き合ってくれたんだ」
俺は夜空を見上げながら言う。
すると、後ろから俺達を呼ぶ声がした。
「キャプテン、神向先輩」
「おう、壁山か」
「どうした、こんな時間に珍しいな」
そして、俺達は壁山も交えて再度話した。
「俺、やっぱりまだ不安っス」
「まだそんな事言ってるのか?」
壁山の言う不安とは、円堂がキーパーから転向する事だ。
「だって…、俺が今まで頑張って来れたのって、キャプテン後ろで俺たちみんなを見守ってくれたからだって。でも今日分かっちゃったんっス。今はもう後ろには立向井くんが居て、キャプテンが居るのは隣っス。それがちょっと違和感というかキャプテンがゴールに居ないのってやっぱり緊張するっス…!」
「しっかりしろよ、壁山! 新しいものを認めて、人は進化していくんだ!」
「進化っスか?」
「そうだ、今度は進化したお前が立向井を安心させてくれよ。立向井はお前と同じ1年だけど、雷門イレブンって意味ではお前の方が先輩なんだから。だから頼むぜ、先輩」
「円堂の言う通りだ。それによ壁山、円堂がゴールに居てくれるからって言ったけど。それは俺も同じなんだぜ」
俺は二人の間に割って言葉を挟む。
「俺も鬼道も豪炎寺もお前や他のDF陣がゴール前に居てくれるから安心して攻めていけるんだ」
「神向先輩…、キャプテン……分かったっス。立向井くんの事は俺に任せてほしいっス」
「おう」
「任せたぜ、先輩」
俺は壁山の肩を叩いてそう言った。
とは言ったものの俺も自分の特訓を頑張らないと。
明日は夜も練習だなこりゃ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
翌日も円堂、立向井はそれぞれの技に向けて、他の皆も各々の課題へ。
「いいか立向井、今日からは俺もガンガン必殺技を打ち込んでいくからな!」
「はい、神向さん! よろしくお願いします!」
「とは言ってもよお神向。流石にそれはキツすぎるんじゃねえか?」
俺と立向井のやる気に対して綱海は言う。
しかし、
「大丈夫っス! 何かあったら、俺が立向井くんのフォローをするっス」
壁山がやる気に満ちた表情で言う。
「壁山」
あの臆病だった壁山がここまで言う様になるとは、やっぱり円堂は凄いな。
「へえ、なら俺も遠慮なく行くぜ。いいな立向井!」
「はい、綱海さん! 望むところです!」
その言葉通り、俺と綱海は遠慮なく立向井の待つゴールに必殺技を打ち込んでいく。
時にはそのまま、時には壁山や他のDF陣がシュートの勢いを減らして。
これによって立向井だけではなく守備力の強化にも繋がっていった。
そうして再びの夜―――。
俺は皆が寝静まった頃合いに、一人で特訓を開始した。
雷門が変わって強くなるために、俺もここで満足するわけにはいかない。
そう思って蹴りだしたボールは突然横から現れた影によってカットされる。
「鬼道…」
「こんな時間まで練習とは、精が出るな神向」
鬼道は器用にボールを操り、まるで取って見ろとでも言わんばかりだ。
「面白れえ、やるか」
俺はそれに乗せられて鬼道からボールを奪いにかかる。
「どうしてみんなに隠れて練習を始めたんだ?」
「皆には目の前の事に集中してほしいんだ。それに、今は立向井と円堂の強化が最優先、俺まで皆の時間を取るわけには行かないから……な!」
鬼道が蹴り上げたボールを取ろうとジャンプした俺。
しかし、それを鬼道に読まれていたらしくボールはカーブを掛けて俺から離れていった。
「だっは…今のはやったと思ったのに」
「気にするな。俺も以前、一之瀬に同じことをやられたからな」
鬼道はボールをキープしながら言う。
そこで俺達は練習を一段落し、グラウンドに腰かけて話し始めた。
昨日は円堂、今日は鬼道、明日は豪炎寺とでも話すのか俺は?
「何を考えていたんだ?」
そんな俺の考えを見透かしたように鬼道が聞く。
「いや、昨日も円堂とこうして空を見ながら話したなと思ってさ」
俺はそんな中、鬼道に聞いた。
「なあ、本当に気にしてないのか?」
「何がだ?」
「アフロディの事」
正直俺達の中で、一番アフロディと確執があるのは鬼道だ。
ダイヤモンドダスト戦では一緒に戦ったけど、俺みたいにしばらくの間一緒に居たわけじゃない。
だから
「本音で言うなら、何とも言えないな」
俺の考えを遮って鬼道が言った。
「円堂から、新・帝国学園の話は?」
「聞いた。そこに佐久間と源田が居たって言うのも」
「……二人は俺に、俺だけが世宇子への雪辱を果たして勝利の喜びを味わえたと言った」
「でもそれは」
「事実さ。お前たちとするサッカーは楽しい、だが、決してあいつ等の事を忘れられるわけじゃない。だから、あいつ等があんな考えを持ってしまったあの試合を、あの時の事を許せたわけじゃない」
鬼道の本音。
ここに照美が居たら、多分こんな話は出来ていないだろう。
「だが、ダイヤモンドダストとの試合の後に言った通り、アフロディもまた影山に利用されているだけだったと知った今では、憎しみは無い」
「そうか」
「ああ、だがこれだけは言える。雷門のユニフォームを着ている以上、アフロディも俺と同じチームで、仲間だ。それになによりお前と円堂が信じている以上、俺も信じるさ」
「……へへ、お前も段々円堂に似てきたな」
「ふっ、そうかもしれないな。だが、お前ほどじゃないさ」
そんな話の後、俺は再び特訓を再開した。
俺の役割を果たすための、技の習得に向けて。
一回は上手くできたんだけどなあ…。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その翌日。
「いくぞ円堂!」
「来い!」
連日の通りタイヤで腕を固定された円堂にボールを放つ。
その時、円堂の体から
「力の流れが、変わったね」
「ああ。どうだ円堂?」
それを間近で見た俺が円堂に聞く。
「この感じ、これだ!」
円堂は嬉しそうにそう返した。
そんな円堂の言葉に練習を中断して全員が駆け寄ってくる。
その中で一番に円堂に聞いたのは、立向井だった。
「円堂さん、掴めたんですか!?」
「ああ、体中熱くなってきてるんだ」
「なら、必殺技で試してみるか」
「おう、頼む!」
「よし、一之瀬、神向手伝ってくれ」
「ああ」
「分かった!」
鬼道に促されるまま俺と一之瀬が位置に着く。
そして円堂も、タイヤを脱ぎ捨てて準備は万全だ。
「さあ来い!」
「こいつを撃ち返すパワーがあれば本物だ…!」
鬼道の口笛に合わせて俺と一之瀬が走り出す。
その後地面から現れた5匹のペンギンと共にボールは撃ち出される。
【皇帝ペンギン!】
【【2号ぉぉぉぉ!】】
そのボールを俺達でさらに加速させて円堂に放った。
「よおし、来い!」
そのシュートに対して額にパワーを溜める円堂。
すると、さっきよりもハッキリと、そして何より力強く発現した巨大な手に、俺達は驚いた。
「たあああああああ、でりゃああああああ!!」
円堂の掛け声に合わせるように手は拳を握り、皇帝ペンギン2号にぶつかり、そのボールを撃ち返して見せた。
惚れ惚れする程見事なヘディングだった。
「……よっしゃー!」
一瞬の沈黙を置いて叫ぶ円堂。
「やったな円堂!」
「すげえじゃねえか!」
「キャプテン流石っス!」
円堂の新たな必殺技誕生に喜ぶ一同。
「閃きました! この絶対的なパワーによるヘディングを、メガトンヘッドと名付けてはいかかでしょうか?」
「メガトンヘッドか、その名前もらったぜ」
目金に対して円堂は笑顔で返す。
「円堂さん、俺も究極奥義ムゲン・ザ・ハンドの習得頑張ります!」
円堂に負けじと意気込む立向井。
そんな彼に円堂は静かに頷くと、今度は鬼道が言った。
「円堂、まだまだパワーアップを続けるぞ」
「おう、何でも来い!」
「エイリア学園のマスターランクチームに勝つのに、俺達に限界があっては困る。もう一つ、必殺技を身に着けてもらうぞ」
「おう! 何でも……ん? その必殺技って?」
「ふっ、鍵は帝国学園にある」
驚く円堂に、鬼道は笑って返した。
若干のネタバレですが、神向がアフロディと付き合うのは驚異の侵略者編が終わってからです。
さすがに世界の危機で付き合ってる暇はありませんし、あげませんから!