俺達は鬼道に促されるまま、帝国学園の前に来ていた。
「帝国学園…か」
「思ったよりも早くまたここの門をくぐることになったな」
俺たちは高くそびえる帝国学園の門構えを見てつぶやく。
「あまりいい思い出が無いっス……あ、き、鬼道さん今のは…!」
「……気にするな」
鬼道は俺たちよりも一歩先に帝国学園へと歩を進めていく。
まあ壁山の気持ちも分からなくはない。
帝国とは最後に思いっきりいい試合が出来たのは良いが、その試合も最初は影山の邪魔が入った訳だしな。
「ま、俺たちも観光に来たわけじゃないんだ。さ、行こうぜ」
俺は皆にそう促して鬼道の後に続き、それぞれのユニフォームに着替えて帝国のグラウンドへと足を踏み入れる。
ひとしきりその光景を眺めた後、鬼道が円堂と土門に言う
「円堂、土門……デスゾーンをやるぞ」
「デスゾーンを? いやけど、円堂のじいちゃんの裏ノートに書かれてる技の方がいいんじゃねえか?」
「デスゾーンだ」
土門の意見を押し切って鬼道が言う。
「やろうぜ、土門! 鬼道には、何か考えがあるんだよ」
「円堂……なるほど、でなきゃ帝国まで来るわけないか。よし、乗った!」
鬼道の真剣な眼差しを受けて円堂が、円堂から熱意を受けて土門が鬼道の提案に乗った。
その後俺たちは練習前のアップを始める。
「どうだ立向井、ムゲン・ザ・ハンドのイメージは掴めそうか?」
「い、いえ……まだ全然」
そんな中俺は立向井に聞いてみた。
ムゲン・ザ・ハンドがどういう技かは知っているが、どう教えたらいいかとかは分からない。
だから俺に出来るのは、こうして立向井が変に背負い込まないようにすることくらいしか出来ないからな。
「そうか……ま、焦るなよ。円堂だってゴッドハンドを覚えるまでに何度も何度もボールとぶつかったんだ。お前もそうやってぶつかれば、必ずモノに出来るさ」
「…っ! はい!」
立向井は一層の笑顔でそう答えた。
「まあ、円堂の場合はボールよりもタイヤとぶつかってる時間の方が多かったかもしれないがな」
「はは、言えてら」
そんな俺たちの会話を聞きながら前を走っていた豪炎寺に言われてしまった。
そんな折、アフロディがベンチに座る吹雪を見て聞いた。
「どうして彼は、練習しないんだい?」
吹雪についての事情を知る面々が一度顔を見合わせる。
そして、決心したようにアフロディに向き直った。
「実は…」
円堂はアフロディに吹雪の事情を話した
「え、心の中に2つの人格があるせいでサッカーが出来なくなっている?」
「ああ、けどアイツは残るって決めた。サッカーが好きだから、どんな事があってもサッカーを続けたいって思ってるんだ。だから俺たちは待つことにした。吹雪が自分の力で復活する事を信じて」
その言葉を受けてアフロディは吹雪に向き直っていた。
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「俺と鬼道と土門はデスゾーン、立向井はムゲン・ザ・ハンド……他の皆もそれぞれのメニューで特訓だ!」
『おおー!!』
円堂の指示の下、俺たちは特訓を開始した。
俺も、早いところ【あの技】を物にしないとだが、今は―――
「よっしゃ立向井! 今日もムゲン・ザ・ハンドの特訓、やってくぞ!」
「神向くん」
立向井のムゲン・ザ・ハンド習得に力を注ごうとしていたところをアフロディに声をかけられた。
「ん? どうしたアフロディ?」
「君は今はあの技の事を考えているんじゃないかい?」
「……流石にお見通しか」
「今、このチームは確かな攻撃力を手に入れた。そしてそれは円堂くん達の特訓で更なる物になるはずだ。だけど」
「だけど?」
「このチームの攻撃力と防御力、それを盤石にする為の繋ぐ力がまだ不足している。それを補うには君の力が、君自身の進化が必要なんだ」
俺自身の進化、か。
「神向! 何だか知らねえけど、お前の特訓があるならそっちに集中しろよ!」
「綱海…」
「こっちの事は俺たちに任せな!」
綱海の言葉で立向井の方を見ると同意するように首を縦に振っていた。
その言葉に押され、俺は一歩、その場を離れる。
「分かった。じゃあ立向井の方は任せたぜ!」
綱海達にそう言い残し、俺は自主練をするメンバーに俺自身のトレーニングメニューを伝えて協力してもらうことにしたのだった。