すみません、朝とか昼とか言ってたけど無理でした……
少し余裕を持って学校に着いた私は早速席に着くと、A組の自分の席にある端末を起動した。
端末の起動を待つその数秒の間で少し耳を立ててみる。
コソコソとこちらに向けられたものが目立った。そりゃ、ドイツの魔法界の頂点であるアインツベルンが同じクラスにいるとなれば目立つに決まっている。特に容姿なんて、日本ではコスプレ以外一生お目にかかれないだろう。銀髪に紅瞳なんてそんなよくある特徴でもあるまいし。
別に私は一人でも構わないし、困ることなんて何一つないんだが、せっかく同じクラスなのだから話しかけてくれたりしてもいいのに。
そんなことを考えながら起動した端末にIDカードをセットし、インフォメーションを開いた。
履修規則、風紀規則、施設の利用規約から入学に伴うイベント、自治活動の案内、一学期のカリキュラムなどを全て頭に入れ、スクロールして行く。
読むべきものを全て頭に叩き込んだ後は、コンソールからキーボードを呼び出し、受講登録や記入の必須事項などをノータイムで一つのミスなく打ち込んで行く。
最後にもう一度全ての項目に目を通す。
(総括、私が受けて得するような授業はなし。ここでのメリットといえば閲覧制限付きの文献が読み放題ってことだけね)
日本で1、2を争う進学校なのだ、魔法や授業、色々と期待など全くしていなかったといえば嘘になるが、やはり思ったとおりだった。魔法技術先進国とはいえ、所詮高校一年生でやれる分野などたかが知れている。魔法工学に至っては本格的に実施するのは二年生からだそうだ。
そんなことを考えながら内心ため息をついた。
「あの、こんにちは!私、隣の席の光井ほのかです、よろしくお願いします!」
「北山雫、です。あの、えっとよろしくお願いします……」
「あ、ちゃんと言わなきゃダメだって……」
すると隣から声をかけられた。明るいい色の髪をした子が光井ほのか、黒髪のショートの子が北山雫。なんかこの子すごくもじもじしているんですけども。
北山ってどこかで……
「はじめまして。ドイツから来ました、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンです」
「日本語お上手なんですね!」
「えぇ、まぁ。ありがとうございます」
ふと雫の方を見る。あまり表情に起伏が見えないが、その瞳は驚きのためかすこし見開いていた。
「もしかして、あの
「多分、貴方が考えているアインツベルンであってるわ」
「ほん、もの……!」
興奮のためか、雫は顔を赤くしてドタバタと自分の席まで戻って行く。バッグを持って戻ってくると、いそいそとバッグをあさる。するとバッグから一冊の本を取り出すと手を若干震わせながら手渡して来た。
「あの、今日これしか持ってないんですけど……全部、初版で揃えてます!えぇっと……さ、サイン、下さい!」
と言いながらズイと出してきた。
本の表紙を見れば『魔法工学から考察するこの先の魔法師の在り方』と
自分の研究を世に公表したいという研究職としての本能が私にいくつかの本を書かせた。どれも魔法工学についてだが、ただの論文から魔法工学を通じて考えた哲学や倫理観、他にも新たな魔法についての可能性など、根底にあるのは工学とはいえ、多岐にわたる範囲で本を書いた。この『魔法工学から考察するこの先の魔法師の在り方』と題した本はあまり上手く書けた自信がなかったので、自費出版でわずか千部弱しか世に出回ってないものだ。世間で言うところのレアものである。興味本位で本の題名から中古ショップのサイトを覗いたことがあるが、元の値段の数十倍の値段で取引されていた。
こんなものを持ち歩いて大丈夫なのかと思ったが、この本自体あまり知られておらず、ドイツでなければ知らない人の方が多い。
はず。
「ドイツ語わかるの?」
「うん、じゃなかったはい!論文の紹介でアインツベルンさんのことを知ってから、人の手が入った物じゃなくて、そのままを感じてみたいって思ったから」
「そう、すごいわ。私もこんなファンがいてくれたなんてとても驚いているもの」
「あ、ありがとうございます……」
ますます顔を赤くしている雫。このままだと顔から本当に湯気でも出しそうだ。
「サインだったかしら。喜んで書かせてもらうわ」
「ありがとうございます!!」
そんな返事を聴きながら手提げからペンを取り出すと表紙を開く。
(そういえば、サインなんて書類でしか描いたことがなかったわね……)
サインなんて書類の契約欄に書く程度で、こういったいわゆるファンサービス向けのサインは考えてなかった。
いい機会だし今日考えたものを私のサインにしようと思った。
いくら考えても仕方ないと思ったので、直感で書いてしまった。イリヤスフィールという文字を筆記体にして、全体的に丸っぽい形になるように。なんとなく可愛げが足りないと思ったのでデフォルメした猫を添えておく。最後に日付と
「どうぞ。あぁ、私今までサインとか書類契約でしか書いたことがなくって……このイリヤスフィールのサインを書いたのは貴方が初めてよ」
そう言いながら丁寧に両手で雫に渡した。
「は、じ…めて……………………ありがとうございます!!一生の宝物にします!!」
そう言って雫が涙を浮かべながら頭を下げたところで、始業を伝えるチャイムが鳴った。
文字数に関してのさまざまなご意見、ありがとうございます。
誤字脱字報告も助かっております。
えっと、結構大きな見落としがありました。
魔法師の渡航は厳禁だったのでは?というお言葉を頂きまして。
調べてみたところ、「ハイレベルの魔法師の遺伝子資源が流出することを危惧する政府により、海外渡航をも厳しく管理され、実質的に魔法師開発の国際化の時代は終わった」という記述がありました。
確かにそうですね。自国の火力と同義である魔法師を、そう易々と国外に出すわけにはいきませんよね。増して、その優秀な遺伝子を取られたりなんて……
ということや、リーナが留学してきたという例外を吟味した結果、ドイツ政府と会議していた回のお話を変えておきます。今、書いている途中なので、もうしばらくお待ちください。
大まかな設定としては、期限は三年間、性行為等遺伝子データの流出する恐れがある行動は必ず避ける、日本で公開していい魔法関係の道具及び資料は限定する。などの制約ありです。この制約を破ることでアインツベルンの全財産を政府に譲渡などの契約をした上での留学とします。
すみません、ガバガバ設定で……
もし何かあれば、また変更するかもしれません。
長々とお付き合い頂きありがとうございました。
あ、評価・感想、ありがとうございます!!