八百万   作:Nokato

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あ、この作品はクロスオーバーだったりするので苦手な方はブラウザバック推奨です。
アンチ・ヘイトは一応つけてます。

原作崩壊がわりとあるので、というか初っ端からなんでお気を付けください。
それでもいいよという方、どうぞお付き合い願います。


面倒な日常の始まり

 

 『今年の王竜星武祭(リンドブルス)の優勝者は、準決勝で戦律の魔女(シグルドリーヴァ)を、そして決勝戦では連覇のかかったあの弧毒の魔女(エレンシュキーガル)を打倒した星導館学園の比企谷八幡』

 

 『多彩な魔術師(ダンテ)としての能力を駆使し、弧毒の魔女の能力を打ち破る』

 

 『優勝の願いは、弧毒の魔女の自由!?』

 

 

 

 ☆

 

 

 

 「んがっ……」

 

 有り難くもない初夏の眩しい日差しを遮るカーテン、あまり物も置かれていない寝室、神聖なる寝床…ベッド。そのベッドの隣に置いてあるサイドチェストの上の時計が、今日も不愉快なほどに朝を告げる。

 

 簡単に言うとアラームが、朝だよ起きろこの野郎コールが鳴っているのだ。

 

 ムクリと体を起こし、足を下ろしてアラームを止める。まだ開き切らない眼を擦り、大きく、ゆっくりと伸びをする。

 

 パキパキと鳴る背、ゴキッと痛ましく鳴る肩、漏れ出す吐息……

 

 「…はぁ、怠い」

 

 力なく肩を落とし、いつ見ても他人が一度は引いてしまう腐った目をし、朝を呪うのはこの俺、比企谷八幡だ。

 

 俺は少しの間、顔を俯かせ、今日一日の始まりを告げた、告げてしまった時計への処罰を愚考する……が、コイツに否はないので許してやることにした。

 

 自分の寛大な心を自分で称賛するとともに、ああまだ俺寝惚けてるわ…と纏まらない思考回路を完全に起こすように立ち上がる。

 寝室の戸を開け、リビングへ…そして隣接されるキッチンの方へと向かう。備え付きの冷蔵庫を開け、大量のマックスコーヒーを前に一度、これこそソウルドリンクだな…と認識を新たにし、その中の一本を取り出し、冷蔵庫の戸を閉め、缶を開封し、その中身を煽る。

 

 おはよう、クソッタレな今日。俺は完全に目を覚まし、今日の予定を頭の中で整理した。起きた時と同様の、無意識に漏れる吐息、いやため息をつき、やはり、朝を呪った。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 日課の朝のトレーニングを済ませ、朝食、シャワーの類も済ませる。その間、携帯デバイスにて昨晩のニュースやめぼしい記事などをチェックし、話題好きの同級生の話について行けるようにしておく。

 

 「…行ってきますっと」

 

 誰もいない寮の一室に別れを告げ、学園の制服を身に纏った俺は自室の戸を解き放った。

 

 3秒で一度部屋の中に戻ったのは言うまでもない。

 

 

 さて、今日の俺の予定は生徒会長に命じられた、特待転入生の学園の案内だ。こんな時期に?と思ったがどうやら説得に時間が掛かったらしい。その辺りは俺の知る所ではないのでスルー、あの会長の腹の底は見ようとしない方がいい、とは同じく笑顔の中に怪物を飼う魔王のお言葉である。

 

 …にしても、その特待転入生とやらが来る時間キッチリよりほんの少し前程度に門に着いたというのに、そしてその時間からもう既に15分以上は経過しているというのに件の彼…アレ男だっけ??まぁどっちでもいいけど。

 

 来ないんだけど???なんでいつもより割と早めに起きて動いてんのに待たせるんだよ、バカなの死ぬの?暑いんだけど……ねぇもう帰っていい?

 

 「…仕方ねぇ」

 

 あまり好きではないのでこの手は使いたくはないが、デバイスを使いある女性…いや年下だし女子でいいか、女子に通話のコールを鳴らす。

 数コールもしないうちに素早く繋がった。

 

 『おはようございます、比企谷さん』

 「おはようさん、生徒会長」

 

 相手は星導館学園生徒会長、この学園の『在名祭祀書(ネームドカルツ)』、『冒頭の十二人(ページ・ワン)』。序列二位、二つ名を『千見の盟主(パルカ・モルタ)』。

 

 名を、クローディア・エンフィールドという。

 

 『あらあら、クローディア、でいいといつも申しておりますのに。相変わらず御堅いですね』

 「はいはい…んでさっそくだが」

 『もう、少しは会話を楽しんでもいいではありませんか…』

 「……」

 

 これだから苦手なんだ。俺が年下の少し弱いのを知っていて、わざと弱った声を出す。そしてアイツのようにあざといだけでなく狡猾でもあるからなお質が悪い。

 

 『まぁ、少し急ぎのようですし、今はもう許してあげましょう』

 「何で許される側なんだ俺は」

 『はい、では要件は何でしょうか?今は比企谷さんに頼んだ特待転入生の学園の案内を行っている時間では?』

 「その事なんだが、時間になってもソイツの姿が見えん。遅刻の連絡は受けているか?」

 『……いえ、来ておりませんね』

 

 と、その時。女子寮の方で何やら盛大な爆発音が学園内に響いた。

 

 オイオイ…まさかあのお姫様じゃなかろうな。

 

 「おい」

 『ええ、先輩は現場に向かってください。十中八九()()()です。特待転入生の方は私から連絡を取ってみます』

 「ったく、朝からこんな重労働とは……」

 『うふふ…彼女を止められるのは先輩だけですよ?』

 「嬉しくねぇ上に、呼び方変わってるぞ」

 『…では、お願いしますね」

 

 え?あ、切りやがった。

 あんにゃろ、ホント可愛げ無くなったな…中等部の頃はまだ可愛い後輩だったのによ。

 

 「…ま、行くか」

 

 さて、特に意味のない思考は振り落として、まずはあのお姫様の様子を見に行くか。

 

 俺は魔術師の力を行使し、手元に()()()()()()剣を握り、次元を裂き、目的地近くの座標へ飛んだ。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 「おまえ、名前は?」

 「……天霧綾斗」

 「そうか。私はユリス。星導館学園序列五位、ユリス=アレクシア・フォン・リースフェルトだ」

 

 何やら爆発音がしたので来てみれば……また彼女なのね。最近は少し大人しくしていたと思っていたのだけれど、どうやらまだまだ元気なようね。

 

 「…うーわ、雪ノ下先輩がまた悪い顔してますよ、結衣先輩」

 「あははー…ま、まぁまぁゆきのん落ち着いて」

 

 …何故そんな事を言われなければならないのか甚だ遺憾ではあるけれど、まぁいいわ。

 

 「…それより、彼女のお相手はどなたかしら。この学園の有名どころではないのは、確かなようだけれど…」

 

 そんな私の問いに、一緒に居た由比ヶ浜さん、一色さんはずっと弄っていたデバイスをもう一度注視し、首を傾げる。

 

 「それがですねー、全っ然情報がないんですよねー」

 「うんうん、在名祭祀書にも載ってないし、というかゆきのんが知らない人なんだから普通に見れる情報じゃあ分からないっていうか…」

 「雪ノ下先輩の記憶にない程の石ころなのか、ルーキーなのか。でもそんな情報すらありませんでしたよね?」

 

 その筈よね…私だって一応、個人でもそれなりの情報網を持っているし、各学園、学院の情報は見れるだけ見て記憶しているわ。

 

 「…ルーキーの線で良さそうね」

 

 だから、そう判断した。

 それにユリスさんのお相手の男子生徒の制服は、まだ真新しいもの。加えて、先程彼はその制服を主張していたようにも見えた。

 

 「ネットでもそうじゃないかって言われてますね。報道系クラブもそんな感じで実況を開始していますよ~」

 「なら、そうかもしれないわね」

 「あ、見て見て二人とも!決闘始まるみたいだよ!」

 

 と、少し一色さんのデバイスに目を落としていると、ユリスさんが私達ギャラリーに向かって武器を貸してほしいとの声を掛けてきた。剣を要求しているようね。

 

 「あちゃ、この中の誰も剣使ってないですね」

 「っていうか、皆純星煌式武装(オーガルクス)だしね」

 「予備もあるんですが、こっちは短銃ですし」

 「あたしはバスターソード~」

 「…私も短銃ね。彼に貸してあげる事は出来な…あら?」

 「もう誰か貸したっぽいですね!」

 

 の、ようね。男子生徒の手には煌式武装(ルークス)が握られていた。もう決闘は始まるみたい。

 

 にしても、こういう時彼が絶対に近くにいるはずなのだけれど…今日は何か用があるのかしら、姿が見えないわね。

 

 そう思った時、男子生徒が決闘申請受諾の宣言を行った。

 

 「(…まぁ、今は記録に専念しましょう。いい情報方が手に入ればいいのだけれど)」

 

 少しでも彼の力になれればいいしね。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 「あーあ、結局決闘始まっちまったか」

 「すいません比企谷さん、引き留めた形になっちゃって…」

 「んにゃ、気にすんな。後であのお姫様シバいとくから」

 「あ、あははは…」

 

 どでかい女子寮の一室の壁がどうせあのお姫様の能力で破壊されたであろう痕の様子を見に来た俺は、案の定壁の一面が破壊されていた現状を見て何度目か分からないため息をついた。

 そんな現場は既に風紀委員が閉鎖しており、テレキネシスの能力を持つ魔女(ストレガ)の生徒によって瓦礫は除去されていた。

 

 そしてそんな魔女やら他の風紀委員数名と動いていた一人を捕まえ、事情を聴いた。

 経緯はどうであれ、男子生徒と争いになってああなったようだ。……え、なんで男子と争いになって部屋破壊するの?つまりそれって男子が中にいたって事だよね?

 

 んだよ痴話喧嘩かよ校則違反だしそもそもあのお姫様に相手がいたのかよ負けた…とか思いつつ、一応それなりの権利を持つ俺はこの件を生徒会長のデバイスにメールで報告を入れておき、その場にいた風紀委員に指示してテープで現場を封鎖させた。

 

 「ま、もうテープも貼ったし、俺は行くわ。後は二人くらいでこの現場に誰も入らないように見張りでも置いとけ」

 「はいっ、ご苦労様でした!」

 「…いやそんな苦労はしてねぇけど」

 

 まぁいいや。

 

 「じゃあ、お疲れさん」

 

 名も知らぬ風紀委員の生徒に声を掛け、すぐ傍で開始された決闘の観戦に移る。

 

 さて、この所事件も多いし、この決闘でも何もなければいいんだが。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 「咲き誇れ──六弁の爆焔花(アマリリス)!」

 

 決闘も少し時間が経過したころ、遂にお姫様が大技を出した。

 

 ま、あの男子も中々強かったしな。意識の中の自分と現実に差異がありそうな動きではあったが、それでよくもまぁあの攻撃を捌けるもんだ。相性の良さと研究意思があるなら序列入りは確実、下手したら冒頭の十二人すら狙えそうだが…どうも、様子がおかしいな。

 

 自分の周囲の瀬戸たちが大技を前に避難を開始するが、俺はまた能力を行使する。

 

 「神聖不可侵」

 

 不特定多数へ、俺自身の星辰力(プラーナ)を使用した()()()()。ま、ほんの少しの間ではあるが攻撃を受けても大丈夫って訳だ。まぁそれなりの攻撃が来ればそれなりの衝撃は伝わってしまう訳だが…割と本気程度の爆炎位なら、結構熱い程度になり怪我をする事は無かろう。

 

 「え…」

 「これって…」

 

 ま、これ使うと俺の存在がばれるから嫌なんだが。怪我人出たら貴方がいながら…とか言われそうだし、仕方なしだ。

 

 「()ぜろ!」

 「──!」

 

 …あん?

 

 へぇ、あの男子、アレを文字通り切り抜けたのか。剣の腕は、お姫様の何段も上をいくだろう───!?

 

 「チッ」

 

 あの野郎、何もんだ?決闘中に矢を放つなんて…しかもお姫様気付いてねぇし。

 くそ、これ以上目立つのは御免だが、見捨てるのも目覚めが悪い。

 

 俺は能力を行使し、またしても次元を切り裂いてお姫様の背後に移動する。

 

 「はっ?」

 「え!?」

 

 驚くお姫様と、あの矢に気付いていたらしい男子生徒が思わず、といった風に声をあげる。だがそんなものに返答するより、奴を見逃さないようにしておかねば。

 

 決闘の邪魔をする矢を素手で掴み、その方向を視る。既に犯人は逃走を開始したのだろう、その場に先程の姿は見えなかったが、ここでも能力を行使する。

 

 「魔眼」

 

 この矢が放たれた『線』と、その発射先の点を繋ぐ。その発射先の点が今どこにあるのかを探知。…チッ、破壊したのか、バラバラになってやがる。もう後は追えんか…

 

 「うわぁ!?」

 「ばっ、きゃあ!」

 

 何、俺の意識外から追加攻撃か!?と思い急いで振り返る。

 

 あ。男子生徒がお姫様を押し倒したのか。なんだなんだ……………はっ???

 

 「いててて…ご、ごめんよ!今ユリスの後ろから飛んできた矢から、キミを守ろうと…!」

 「いつつ……なっ、攻撃だと?」

 「う、うん。その、突然現れたその人が俺より先にユリスを護ってくれたんだけどね、ははは…」

 

 あ、はい、どうも。

 

 「そうだ!なんだか見た顔だったんだが……うぇッ!?は、八幡先輩!?」

 「…よう、そしてじゃあな」

 「ま、待ってください!一体何が…」

 

 ナニってナニでしょ…君ら、外でもそういうことする関係だったんでしょ?お邪魔虫は退散するから、その、どうぞ続けてください。

 

 「先輩!?なんでそんなコソコソ逃げるんですか!?」

 

 と、押し倒され、()()()()()()()()()()というどう考えても事案である格好から、お姫様は顔だけを俺に向けてそう叫ぶ。

 なんで、か。その理由を教えてやろう。逢瀬の途中だったとしても、一国の王女が外で男と変態的行為をする、しかも公衆の面前で。というのはあまりにも…外聞的に良くないだろう。

 

 いちゃついてるところ申し訳ないが。

 

 「なんでってお前…胸、胸」

 

 ダメでした。お前胸揉まれてるし今からエロイことすんだろ?関わりたくないから退散しまーすっ☆なんて言えませんでした。

 

 だが、俺のこの短い言葉を聞いて、男子とお姫様は揃って胸を見る。

 

 男子の手が置かれた、お姫様の胸を。

 

 「……あ」

 

 いち早く現状を理解した男子が、急ぎ飛び退いて弁明を開始。

 

 「ご、ごめん!いや、あの、俺は別にそんなつもりじゃ全然なくて!」

 

 ふと、その時、いつの間にか戻ってきたギャラリーたちが盛り上がり始める。

 

 「ひゅー!すげえ度胸だな!」

 「情熱的なアプローチだわー」

 

 変態的の間違いでは?」

 

 「違います!」

 

 おっと声に出てたか。

 

 「お、お、お、おまえ……!」

 

 怒りで星辰力が制御できなくなっているのであろうお姫様の周囲に炎がざわめく。御愁傷様です。

 そのあまりの迫力に声が出せなくなっているのか、男子生徒は首を横にぶんぶんと振るだけの始末。

 

 「はいはい、そこまでにしてくださいね」

 

 …ん?

 

 さあこれからもう痴話喧嘩に関わらないでおこうと逃げ出そうとした時、深く落ち着いた声とともに、パンパンと手を打つ乾いた音が鳴り響いた。

 

 

 

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