八百万   作:Nokato

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何ヶ月も空いたな…また次も開くかもだけど、すいません、めちゃくちゃ忙しいんです…これ息抜きに書きましたが、最近寝れてないんでやばい文になってそう


魔女魔女魔女と八百万

 

 

『──という訳で、今度日本でもライブするんだよ!』

 

「…ぁぁ、そぅ…」

 

『テンションひっくいなー…あ、もしかして寝起き??』

 

もしかしなくても寝起きですがなにか。

俺は午前四時(・・・・)に掛かってきた通話に出たのを後悔した。

誰だこんな時間にこの野郎消し炭にしてやろうか、等と後輩の様なセリフをグッと堪え、応じたのは間違いだった。

 

「…とりあえず、元気でやってるようで何よりだ、戦律の魔女(シグルドリーヴァ)

『んもぉー、シルヴィでいいって言ってるのに。相変わらずだなぁ』

 

電話の相手は、かの世界的歌姫であり、クインヴェール女学園の冒頭の十二人の頂点にして、知名度は俺やランドルーフェンを凌ぐ程の有名人である『シルヴィア・リューネハイム』。この電話は、彼女がついさっきライブが終わった事を報告するものであった。

 

いつもなら普通に会話し、またな、で済むのだが…今回ばかりはそうはいかない。ライブ直後でシャワーも浴びず興奮して掛けてきたのだろう、汗まみれでしかしこの世全ての美しさを集めたかのようの可憐に咲く笑顔を曇らせるかもしれんが…いや、言うべきだ。もしかしたら、このあと俺のような被害者が出るかもしれん。

 

「…なぁ、リューネハイム」

『ん? どうしたのさ』

「…ライブ、本当にお疲れ様」

『…きゅ、急に何さー!いやー照れるな、ありがとう』

「…いつもならこうやって労って話は聞ける。でもな、知っての通り俺は寝起きだ」

『え?うん、見たらわかるよー』

 

おう、そうか。

 

「そして今現在アスタリスクは午前四時すぎだ。朝日が頭見せたくらいだぞこの野郎」

『………………あっ』

「弁明を聞こう」

『興奮のあまり何も考えず掛けましたすいません』

 

よろしい。だがまぁ、仕方なかろう。こちらの時間なんて頭になかったろうし、いつもなら大丈夫だったんだしな。

 

『…ねぇ、比企谷くん、怒ってる?』

 

それに、こんなに申し訳なさそうにしてる子に俺は怒鳴ったり出来ない。

 

「いや、怒ってない。ただ眠いから、話はアスタリスクに帰ってきてからゆっくり聞く、でいいか?俺としても、お前の話を無碍にするつもりはなかったんだが、如何せん話が頭に入ってこない」

『うん…うん、そっか、また話聞いてくれるのか……うん!じゃあもう切るね!こんな時間にごめん、すぐアスタリスク戻るから、またよろしくね!』

「おう、お疲れ様」

 

………

 

「寝るか」

 

これ以上頭の回らない俺は、ただそう呟いて眠りについた。

 

結果、午前中の授業は全て寝潰し、雪ノ下の説教をくらってしまったのは俺は悪くないと思う。

 

 

 

 

 

 

そんな日の夕方、俺はまた、ランドルーフェンと会っていた。

 

場所は一般客も足を運ぶ、テラスのカフェ。前に行った場所とは違い、ここは噴水や周囲すべてが花畑という、彼女専用の様な場所であった。

 

「…紅く揺れる花もいいもんだな」

「…はい。夕陽と、風と。この愛されて育っただろう、花たちを見ることが出来て、私は幸せです」

 

深く揺れる白髪を手で抑えながら、微笑んでその光景を見る俺たち。周囲の客がざわめいて写真なんか撮ってるが、そんなに注目するものかね…

 

「…」

 

見れば、ざわつき出した客に気付いたのか、少し表情を曇らせるランドルーフェン。…はぁ。

 

席を立ち上がり、周囲に目を配り、俺の行動の意味に気付いたであろう、静まり返りカメラや端末を下ろす客たちに向かい、俺は口を開いた。

 

「…すいません、今、彼女とは大事な時間を過ごしてるんす。写真とか、遠慮してもらえたら嬉しいんで、そこんとこよろしくお願いします」

 

ぺこりと頭を下げると、一瞬またザワつくも、一様にその場を離れる客たち。えぇ…そこまでは言ってないんだけど…

 

「…」

「…ふふ」

「あ、テメ、笑いやがって…」

 

余程今の集団行動がおかしかったのか、片手で口許を隠しながらクスクスと上品に笑う彼女。俺はガシガシと頭を掻きながら席に戻り、甘ったるく仕上げたコーヒーを口に運び喉を潤して、本題に入る。

 

「…さて、予想外に静かになったが本題に入るぞ」

「…はい。今日はありがとうございます、急に呼び出して…」

「構わねぇよ。それより、マジみたいだな、あのタイラントが生徒会長を降りたってのは」

「…はい。一応、新生徒会長は私になりました」

 

エーベルヴァイン失墜。これは今、アスタリスク中を騒がせているニュースだ。かくいう俺も影星から情報を貰った時は驚いた。直後、事の発端である彼女から連絡が来たので、放課後、こうして会っている訳だ。

 

「確かに、レヴォルフは序列一位が生徒会長を選べる権利がある。だが、暫くは奴のままでも問題ないだろうって話だったろ。なんで急に奴を降ろしたんだ」

 

俺の問いに、若干顔を俯かせた彼女は、少し遅れて、小さな口を開き声を発した。

 

「…以前、私がルサールカのファンである事はお話しました…よね?」

「ん?あぁ、聞いたな。というか、今度ウルサイス姉妹と俺とで行くって話だったろ」

「…えと、……その、ルサールカのライブのチケット、実はプリシラが持ってたんです。いつも大事そうに持ち歩いてて…」

「頼んだもんな、管理出来そうだし」

 

ふむふむ。…で、これは一体何を聞かされているんだろう。本題に紐づく点が見当たらないんだが?

 

「…そのプリシラが、昨晩イレーネを探しに歓楽街に足を運んで、襲われたんです。偶然にも、うちの序列二位が通りがかって助けたらしいのですが…」

「なんだと?」

「…続けます。その二位が言うには、黒猫機関の仕業だ、と。荷物は残念ながら捨てられ、暴れたせいでカバンの中のチケットは消滅…普段はタイラントの声にも耳を貸さず、好き勝手暴れている彼ですが、好みらしいプリシラが襲われたとの事で一緒に奴を殺そう、という話になり…」

 

物騒な、流石レヴォルフだぜ…しかもあそこの二位って言ったら、レヴォルフ最大派閥の不動のドンだろう。凄まじいな。

 

「まぁ、殺しは今は目立つしやめておこうという運びに。なので、これ以上私も友人に手を出されないよう、早めに手を打ちたかったのです」

「…なるほどな」

 

アカン泣きそう。ランドルーフェンが友達の為にちょっと暴走しちゃって恥ずかしいのか指をもじもじさせながら顔を赤くするまで成長して……八幡感動しちゃったよ!

 

「…」

「…ぶふぉっ」

「…!わ、笑わないでください…!」

「ふはっ、ははは…いや無理だろ。『勢い任せにやっちゃって案の定大事になったけど理由はクラスメイトであり友人であるプリシラが襲われて腹立っちゃった』……はぁ、笑った笑った」

 

ああもうわかったから、そんな顔をするな。なんだかおかしくなった俺は、ポンポンと彼女の頭を撫で、堪えきれぬ笑を零す。暫くはこの状態が続いたが、今度こそ真面目に話をする。

 

「で、どうすんだよ。確か直近で会議もあるし、会長変更に伴う忙しさもたんまりだろ??」

「…あぁ、その辺りは例の、二位がやってくれてます。嬉嬉として仕事を奪いに来るので、こうして騒動の初日でも会いに来れたんです」

「あぁん?マフィアのドンが、積極的にぃ?」

 

怪しいな。レヴォルフの序列二位、ロドルフォという男は快楽主義でんな面倒な事に手を出さないはずだ。

 

と、思っていた俺だが、理由を聞いたら何も言えなくなった。

 

「…その、プリシラが口説かれてしまって。彼女は彼女で受け入れ態勢なのですが、悪い人は苦手ですという言葉にやられた彼は、マフィア総まとめで歓楽街の非合法施設を潰して回り、書類作業を一心不乱にやっています」

 

まぁうん、惚れた弱味は誰にでもあるよな!頑張れロドルフォ・ゾッポ!応援してる!

 

 

 

 

 

『…なるほどな。とりあえず『金枝篇同盟』とやらといきなり事を構えるような事態でないのはわかった。報告感謝するぞ比企谷くん』

「うす。まぁあのタイラントに代わって、今度はあの序列二位が頑張ってるみたいですし、ランドルーフェン自体に影響は少なそうです」

『まさかあの男がなぁ…俄に信じ難いが、つい先程彼のグループ『オモ・ネロ』の構成員が非合法な取引現場によく使われる場所や、歓楽街オススメの逮捕場などをリストアップして持ってきた』

「えっ」

『大至急確認すれば犯罪の数々、出るわ出るわ。お陰で大忙しだよ、こちらは』

「なんかすいません、大丈夫すか?」

『状況は芳しくないな。しかし君や彼女が謝る必要は無い、これでアスタリスクの闇を大きく削ぎ落とすことが出来る』

「…あ、じゃあ俺手伝いますよ」

『何?』

「俺なら空間転移も出来ますし、一度に大量に人を捕獲する事は可能です。ヤバめな現場を教えてもらえば、俺が処理を…」

『馬鹿者か君は。そんな危ない事をさせるわけないだろう。…と言いたいが、済まない、警備隊長として正式に依頼しよう。しかし君は私とペアだ、戦闘は私に任せて、君はあくまで拘束や転移の集中してくれ』

「了解っす」

『作業効率が上がるのはいい事だ。報酬は…あのMAXコーヒーとやらを箱で買ってやろう』

「ほら急いでくださいリンドヴァルさん!!行きますよ!!」

 

「…君、仕事場といえ、レディの部屋によく無断で入ってこれるな」

「マッ缶!!箱!!マッ缶!!」

「はぁ、わかったわかった…あぁ、そのコーヒー、私も貰うぞ。癖になる味だな」

「俺ァ……アンタにずっとついていきます……」

「うむ、ついてくるがいい。では行くぞ!」

 

 

 

この日、歓楽街の膿はほぼ全て、最大最強のマフィアと2人の最凶によって除去されたという。

 

 

 


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