バカとラヴと召喚獣   作:はち8

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第三話 「ヤンキーだ、ヤンキーだ、ヤンキーだァ!!」

感動のFFF団設立から一夜明け、

そろそろ友達を作り始める2日目の朝。

(ちか)は女の子2人を連れて、登校していた。

 

 

「あはは、それでさ愛君。……愛君?」

「うふふふ、あれ? どうしたの?」

 

 

茶髪ロングの巨乳少女と、黒髪ショートのスレンダー美女に挟まれた、イケメン。

なんとも絵になりやがるじゃねぇか、クソ野郎!!

 

だが、そのイケメン――大浪愛は、美女の話を聞かずに前方に意識を向けていた。

その視線の先にいたのは、金髪オールバックにもみあげと耳の上を刈り上げた――俗にいうツーブロックという髪型で改造学ラン。

いかにもな、ヤンキーだった。

そして、愛が注目したのは、胸にある"F"という文字の缶バッチ。

 

望月学園は、《試験召喚戦争》が一年生から始まる。

まだ、誰が誰だかわからない状態で、人が入り乱れる《試験召喚戦争》は難しいのではないのか?

という意見が、計画の段階で上がった。

そこでとられた対処が、所属クラスをかたどった缶バッチ。

これを胸につけていれば、誰がどのクラス所属か、一目瞭然というわけだ。

 

そして、目の前の男には"F"の缶バッチがついている。

つまり、Fクラスの生徒だ。

 

 

「悪い、穂乃花(ほのか)ちゃん、咲良(さくら)ちゃん。今日はここまでね」

「「ええ~!?」」

「また一緒に登校しようね。バイバ~イ」

「んもぉ…絶対だからね!!」

「約束ですよ!」

 

 

愛は2人に手を振りながら見送り、少し先にいるヤンキーを見やる。

すげぇ…ヤンキーだよ。

周りの皆も見てるよ。だよね、見ちゃうよね。

でも、あのヤンキー…………。

――何かがおかしい。

恰好はGOOD

ポケットに手を突っ込み、肩で風を切って歩くのもOK

でも―――なんでリュック?

…似合わねぇ。見ていて滑稽すぎる。

リュック背負うぐらいなら、もう何も持ってくるなよ…。

極めつけに手作りらしき体操着袋を持っている。

 

真面目か。

 

色々とおかしいだろうが!!

なんだか混ざってはいけないもの同士が混ざりあったような、そんな感覚がする。

話しかけるしかあのヤンキーのような男が、…わからない。

愛はそう考え、後ろからヤンキーに近づき、肩を叩きながら声をかける。

 

 

「あのさ…」

「どぅっわあああああああああああ!! な、ななな、なんだお前!?」

 

 

見事な、実に見事な後ろ飛びだった。

驚きすぎて3mぐらいを、一足で飛んだのでは無いだろうか。

 

 

「や、やる気か? オ、オオオ、オレと!?」

「え? は、おまっ…や、やる気?」

「上等だぁ!! ゴルァ!!」

「はぁああああっ!?」

 

 

ヤンキーが右手を引き、愛に殴りかかっていった。

愛は避ける。

いや、避けようとした。

だが、愛は避けなかった。

ヤンキーが走っている途中で、盛大にこけた。

愛は唖然とする。

と、そこに

 

 

「くぅらァァ―――――――!! 何してんだお前らァァ――――!!」

 

 

鉄人が現れた。

 

 

「な、何をしているんだお前たちは…?」

 

 

僕が聞きたい。

 

 

 

――――――

 

 

 

その後愛とヤンキーは補習室に連行され、お昼まで勉強という名の拷問を受けていた。

 

 

「苦行だ。お昼食べられないかも…。気持ちわりィ」

「あ、あのよォ…」

 

 

補習室からFクラスまで向かう途中、一緒に向かっている隣のヤンキー君が、話しかけてきた。

 

 

「ん?」

「てめェもFクラスだったんだな。悪ィ、気づかなかった」

「いや、いいよ。結局殴られてないし」

「うぐっ……。アレは忘れてくれ…」

 

 

ヤンキーは恥ずかしそうに顔を歪める。

 

 

「そういや、てめェはどこに向かってんだ?」

「ん? 教室に決まってんじゃん」

「いやだって、靴履き替える必要なくね?」

 

 

今日は校舎裏の一画が教室だ。

 

 

「お前らァ、遅刻だぞォ!! ……って、あれ?」

「あ…雄二先輩!?」

 

 

校舎裏に着くと、雄二先輩が大きな声で驚いた。

隣でヤンキーも驚いた声を出す。

 

え? なにコレ。知り合いなの?

 

 

「お前、城東田(じょうとうだ)か?」

「せ、せせせ、先輩がなぜココに…!?」

「まぁ、いい。早く来い! 授業始まってんぞ!」

 

 

んお、そうだった。

今日は午後から《試験召喚システム》の授業だった。

 

 

「うおっほん! それでは、授業を始める」

 

 

僕らは、空いているスペースに座る。

 

 

「まず、《試験召喚システム》とは何か、ということについてだ。姫路、説明してくれ」

「は、はい。《試験召喚システム》とは、学園長が科学とオカルトと偶然によって作り上げたものです。召喚獣を召喚する場合は、先生方の立会いの下、フィールドを張ってもらわなければ召喚できません。しかし、例外として坂本君の持っているような、白金の腕輪があれば話は別ですが……」

 

 

僕らの前で、移動用黒板を用いながら説明しているのは、雄二先輩と瑞希先輩。

書記である美波先輩が、瑞希先輩の言葉を黒板に書いていく。

 

 

「それじゃ、実際に《試験召喚獣》を見せてみるか。明久! 秀吉! 頼む」

「オーケー」

「了承した」

 

 

新たに前に出てきた明久先輩と秀吉先輩が、召喚獣を出し、僕らに見せてくれる。

 

 

「「試験召喚獣――――」」

 

 

2人の先輩が声をそろえて言う。

僕らは、その光景に息をのむ。

 

 

「「――――試獣召喚(サモン)っ!!」」

 

 

『おおォォ……』

その瞬間、どよめきが起こる。

先輩らの()び声に応じて、先輩らの足元に幾何学(きかがく)的な魔法陣(まほうじん)が現れる。

雄二先輩の展開した召喚フィールドの下、システムが作動した証拠だ。

そして、姿を見せる召喚獣。

現れたのは、特攻服に身を包み、木刀を持ったとても小さな、80センチほどの明久先輩。

そして、これまた小さな、薙刀使いの秀吉先輩。

 

 

「これが、戦争で使う召喚獣だ」

「この召喚獣を用いて、敵クラスの代表を補習室送り、つまり戦死させれば勝ちとなります」

 

 

現れた召喚獣の上には、何やら数字が浮いているのを僕は見つけた。

 

 

『Fクラス  吉井明久  &  Fクラス  木下秀吉

  現国     48点  &  63点        』

 

 

「この、上に表示されているのが召喚獣の強さを示す点数だ。文月系列特有の試験形式、時間制限あり、問題無制限。その試験で得た点数が、ここに表示される」

 

 

雄二先輩が、加えて説明してくれる。

時間制限あり、問題無制限。

つまり、実力さえあれば、何点でもとれるということだ。

 

 

「それじゃ、お前らも召喚してみろ」

 

 

その言葉を機に、クラスの奴らが次々に召喚する。

僕はどうしようかなと、ふと横を見た。

すると、隣で先ほど『城東田』と呼ばれていたヤンキーが、ブルブルと、ブルブルと震えていた。

 

 

「だ、大丈夫か?」

「だ、だだだ、大丈夫だ。あんま、なめんじゃねェよ。このオレを…………!?」

 

 

瞬間、城東田の震えが段階的に増えた。

いや、もう振動がこちらに伝わってくるほどだ。

 

理由はすぐに判明した。

雄二先輩がこちらに向かって歩いてきた。

 

 

「おう! 愛、それに城東田」

「こんにちはです」

「ち、ちちち、ちはーっす!」

「お前もFクラスだったんだな。なんで昨日はいなかったんだ?」

「き、ききき、昨日は、せ、せせせ、先生に捕まっていました」

 

 

緊張、または恐怖で、城東田は声まで震えている。

 

 

「あの、2人はどういった関係で?」

「ん? そうだったな。まだ言ってなかったか、城東田は俺の後輩だ。な!」

「は、ははは、はい。城東田強羅(ごうら)だ。夜露四苦(よろしく)!!」

「お、おう。大浪愛だ。よろしく」

 

 

城東田強羅?

じょうとうだごうら…。

上等だ、ゴルァ!!

 

………………………………………。

 

 

 

――――――

 

 

 

放課後。

校舎裏にクラスメイト全員が、集まっていた。

代表の樹咲(きさ)ちゃんが、前に立つ。

……今日も可愛い。

メイクはしているんだけど、それがしつこいほどの厚化粧じゃなくて、むしろ樹咲ちゃんの可愛さを引き立てるナチュラルメイク。

ふんわりとした長い髪の毛を、ひとまとめにして右側に流し、左耳のピアスを見せつけることによって、大人っぽさをアップさせている。

つまり何が言いたいかというと、樹咲ちゃんは今日も可愛い。

 

 

「えーと、本日は昨日決まった対Aクラスの試験召喚戦争について、話し合いたいと思います」

「「「うぃーっす!!」」」

「それではまず、戦闘部隊総隊長の愛さん、どうぞ」

「ああ」

 

 

僕は、皆の前に立ち言った。

 

 

「率直に言う。今の僕たちでは、Aクラスには勝てない」

 

 

どよめきが起こる。

そりゃ、そうだ。

Aクラスに勝とうとしてるのに、Aクラスには勝てないなんて。

 

 

「この学園で、力である学力が、文字どうり桁違いなんだ。当たり前じゃないか?」

『確かに』

『頭がいいなら、このクラスにいないしな!』

『ま、おれはちょっと、調子が悪かっただけだけどな』

『嘘つけ』

『ああ、俺もだ。ちょっと、頭痛がしてな』

『そうそう、少し頭が悪くなったんだよな』

『俺も俺も』

『おれもだ』

『俺もだよ』

 

 

その瞬間、クラスで言い訳大会が始まった。

うむ、予想以上にひどい。

まるで小学生だ。

 

 

「だからだ、僕は、真っ向勝負、正々堂々、学力で勝負するのでは無く――――」

 

 

僕はそこで言葉を切り、悪い顔で言った。

 

 

「――――卑怯に、卑劣に、姑息に、汚く、学力以外の手で戦おうと思っている」

 

 

教室を見回すと、皆が笑っていた。(女子を除く)

この時、僕らの心は一つだった。

目的のためには手段を選ばない。

皆、いい笑顔だ。

 

 

「具体的には、情報や、人数、精神面などでだ。けど、僕らにはそれすらできない。だから、まず"E"クラスを狙う」

 

 

今度はどよめきが起きない。

皆、真剣な顔で聞いてくれている。

 

 

「FFF団の活動で集まった女子の連絡先を使い、僕なりに情報を集めてみたところ、"E"クラスは機械に強いやつが多いらしい。ま、簡単に言うとジミーズのたまり場だ」

『団長! ほんとに情報を集めてたんですか?』

『というか、愛さん! 女子の連絡先を持っていても、仲良くなれません!』

『兄弟! 助けてくれー!! おらに女子を!!』

 

 

話が大幅に脱線してしまった。

ちっ、伏せておくべきところだった。

先ほどから、FFF団に対する抗議の声がやまない。

……あっ! 団長は僕のことね。

 

 

「落ち着けお前ら! いいか、仲良くなれないのは相手がまだ、Fクラスのことをよく知らないからだ。もし、お前らの前に見知らぬ女子が現れ、いきなり話しかけてきたらどうする?」

『『『人通りの少ない、裏路地に連れ込む!!!』』』

「そうだろそうだろ。僕もあの時はびっくりしたものだ…………って、

 えええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!! …………………あっ…(察し)」

 

 

そうだった。

こいつらはそういう奴だった…。

 

 

「…女の子はそうはいかないんだよ! 初見の男にはある程度の警戒心を持つものなんだ。だからこその《試召戦争》で、FFF団、さらに"E"クラスだ。いいか? 学力最底辺の僕ら"F"クラスが、学力が力である《試召戦争》で勝てばどうなる?」

『見直すんじゃないか?』

『少なくとも、興味は持つだろうよ!』

『もしかしたら、話してみたいとか思われちゃうんじゃねぇの!?』

『『おおおおおぉぉぉぉぉぉ…!!』』

「さらに、戦果を挙げたものには、僕が女子にちらっとだが、紹介しとく」

『ええ、ちらっとかよ』

 

 

どこからか、不満の声が上がった。

まったく、わかってない奴だ。

 

 

「おいおい、女子をなめるなよ? 女の子ってのはな、会話が大好きなんだ。暇さえあればおしゃべり、おしゃべり。その日見たもの聞いたもの、なんでもすぐ会話に出す。だからちらっと話すだけでも十分なんだよ」

『『『おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…!!!』』』

 

 

ふふふ、あんまり話し過ぎて、僕の女の子が他の奴に興味を持たれても困るからね。

だから、少しだけだ。

でも情報が広がるのはほんとだ。

だから、戦果によって女子に流す情報の量を変えようと思っている。

 

 

「最後に"E"クラスを選んだわけだが、"E"クラスの生徒は機械が得意だ。特に、情報端末――パソコンやケータイに長けた生徒がいると聞いている。"E"クラスを落とし、配下に加えれば情報収集や情報操作はお手の物だろうさ。………言ってる意味が分かるか?」

『……………?』

「自分の好きな噂を流せるってわけだ」

『『『……………っ!?』』』

「さぁ、やろうぜ!! 僕たちの野望(ゆめ)のために!!!」

『『『っしゃぁ!!!』』』

 

 

そして、僕は一人の男子生徒を見て言った。

先ほどから興奮しまくっている、ヤンキーに。

 

 

「というわけで、城東田! "E"クラスに宣戦布告に行って来い」

「え、ええ!?」

 

 

城東田は、驚きすぎたようで、いきなり立ち上がった。

そのせいで、城東田はクラスの皆の注目の的になる。

 

 

『な、なんだアイツ』

『なんだも何もないだろう…。あの姿だぞ?』

『言わずもがなだな。あいつは…』

『『『ヤンキーだ!!』』』

 

 

皆の視線に当てられて、城東田はオロオロし始めた。

まったく…。

 

 

「皆知らないと思うんで、紹介しとく。コイツの名前は城東田強羅。見ての通りヤンキーだ。さらに、恰好がヤンキー過ぎて入学式の日――つまり、昨日さっそくバカの代名詞である《観察処分者》に認定された。コイツなら適役だろ?」

『ああ、宣戦布告なんて朝飯前だろうよ!』

『頼んだぞ、城東田!!』

『その眼光で、ビビらせて来い!!』

「あ、あああ、あわわわわ………」

 

 

なんで、こいつがビビってる!?

どうした、城東田?

お前ヤンキーだろ!! 絶対!

恰好が気合入りまくってんじゃん!

 

 

「お、落ち着け城東田。お前ならできる。いいか、お前は"E"クラスに行き、宣戦布告を伝えろ。伝えるだけでいい。何も危険なことはない。大丈夫だ、わかったか?」

「お、おう」

「まさか、できないなんてことはないよな?」

「じょ、上等だぁ!! ゴルァ!!」

 

 

城東田は、叫びながら突っ走っていった。

そして、僕は皆の前から退場し、樹咲ちゃんが、改めて前に立った。

 

 

「では、城東田君がいない間に、作戦の説明をします」

 

 

 

――――――

 

 

 

「お、戻ってきた」

 

 

皆に作戦が伝わり終え、だらーっとしてると、城東田が戻ってきた。

その顔には、向かう前とは違い、自信に溢れていた。

 

 

「くっくっく。…あーっはっはっはっはぁ!!」

『…は?』

 

 

僕らの教室を、一瞬の静寂が支配した。

 

 

「オレは、ヤンキーだ。泣く子も黙る、恐怖のヤンキーだ」

「……は?」

 

 

コイツ何言ってんだ?

みたいなことを、クラスの皆が同時に思った。

 

 

「ヤンキーだ、ヤンキーだ、ヤンキーだァ!!」

 

 

見た目が危なすぎるという理由で、入学式の朝、職員室に呼び出され、バカの代名詞である《観察処分者》に認定された、城東田強羅。

やはり、奴は、バカだ。

そう、バカなんだよ。

ヤンキーだろうが、何だろうが関係ない。

とりあえず、バカという属性の集まりが"F"クラスなんだ。

 

そこまで考えた後、調子に乗りすぎて本物の族が集う廃工場に向かおうとしたバカを、殴って止める。

 

城東田は、大方"E"クラスに行ったら恰好だけで相手にビビられ、調子に乗ったんだろう。

まったく、バカめ…。

 

その日は、そこで解散にしようとした。

いや、したのだが、

 

 

「皆、少し待ってくれないか?」

 

 

明久先輩が、僕らを引き留めた。

 

 

 

――――――

 

 

 

一夜明け、ついに僕らの初陣となる"E"クラス戦当日。

本日は《試召戦争》ということで、2階の空き教室が"F"クラスの本陣となった。

そこで僕らは開始時刻を各々の方法で待っていた。

 

あるものは音楽を聴き、

あるものは戦国雑誌を読み、

あるものはダンスを踊り、

バカどもはその周りを囲み、

あるものは髪を整え、(手が震えている)

あるものは睡眠をとり、

 

僕らは初めての《試召戦争》に(かか)わらず、リラックスしていた。

理由は昨日、明久先輩たちが言ってくれた言葉。

 

 

「いいかな、皆。明日は《試召戦争》、緊張もあると思う。でも、気負う必要なんかないんだ。

 …これは、雄二が僕らに行ってくれた言葉なんだけど、

 『いいか、お前ら。ウチのクラスは――最強だ』」

 

 

明久先輩が言ってくれた、雄二先輩の言葉は、不思議と僕らをその気にさせた。

 

 

「この言葉を信じて進めば、"A"クラスなんか、必ず勝てる。だから、頑張れ!!」

「が、頑張って下さい、皆さん!!」

「"F"クラスならできるわ、ウチは信じてる!」

「じゃが、明久も言った通り気負い過ぎは良くないのじゃ、気楽にいけ」

「いつまでも上に居座り続けるあいつらに、一発ギャフンと言わせてやれ!!」

 

 

明久先輩に続いて、激励の言葉をくれる、文月学園2-Fの先輩方。

そしてついに、僕の尊敬する師・ムッツリーニ先輩の番になった。

 

 

「…………いいか、愛」

 

 

皆、"寡黙なる性識者"と呼ばれる康太先輩が、僕の師匠であると知っているため、黙ってその続きを待っていた。

僕も心して、その続きを待った。

 

 

「…………おっぱいに、上等も下等もない。巨乳も貧乳も美乳も垂れ乳も、全てのおっぱいは等しくおれらの愛しいおっぱいだ。……それを忘れないでくれ」

『『はいッ!!』』

 

 

新たな名言が生まれた。

 

 

何が言いたかったのかは、一夜明けた今でも、良くわからない。

けど、師匠の言葉だ。

心のノートにキッチリと、メモしてある。

 

そして、時刻は09:55。

開戦5分前だ。

"F"クラスの代表である樹咲ちゃんが、教室の前に立った。

そして、言う。

 

 

「良いですか? 開戦前で、何かいいことを言って皆の士気を上げた方がいいと思うんですけど、何も思いつかないので、私の好きな戦国武将の言葉を引用します。

『為せば為る 為さねば成らぬ成る(わざ)を 成らぬと捨つる人のはかなき』

これは、武田信玄の言葉です。意味は、強い意志で取り組めば、どんなことでも実現できる。しかし、取り組まなければ何もできない。努力すればできることを、諦めて行動しないのは、人間の弱いところだ、です。

この言葉通り、強く、猛猛しい意志を持って、"E"クラスを叩きのめしましょう!!」

『『よっしゃァァ!!!』』

 

 

樹咲ちゃんは、僕らの汚い声に少し、驚いたようだ。

 

 

「樹咲ちゃん。僕らの士気は十分上がったよ」

『おうよ! その武…なんとかは、知らねぇけどよ、いいこと言うじゃねぇか』

『ああ! 俺らの勝ちは、戦国の時代から約束されてたってことだな!!』

『オレラのこの気持ちは、誰にも負けない強い心だからなァ!!』

 

 

そして、時刻は10:00。

樹咲ちゃんは、鋭く指示を出す。

 

 

「全部隊出陣! 各自作戦通りの配置についてください!!」

 

 

僕らは、勢いよく教室を飛び出した。

そう。

ついに、

 

 

「開戦だ」

 

 




なかなか《試召戦争》が始まらないことに、若干の焦りを抱いておる作者でございます。
ですが、次回からやっとはじめられそうです。
なので次回も読んで下さると光栄の至りでございます。
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