ガチホモ英雄シモキティウス   作:mur-ju

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第12話

3月64日。

下北沢にシモキティウスたちは来ていた。

時刻は午前7時少し前。

彼らはミニバンで街中を巡回していた。

すでに朝日が昇り始め、ビルが照らされているのを見ながら、シモキティウスの「お、流してくれ」という言葉に従って、彼らは市内をぐるぐると適当に流すように運転する。

ハンドルを握るのはクボティト、助手席にシモキティウス、後席にカッツが座っていた。

下北沢はホモの聖地とはいえ一般の人間もいる町だった。

立教大学のように自治権がある場所ではない。

だから、二コニカの警察はそこら中にいた。

ここに住むホモは自分がホモであることを隠し、悟られないようにひっそりと生きることを強いられていた。

イカセ隊の一人を倒し、ひでをも倒した彼ら三人はお尋ね者であるので、より一層隠密に行動することが求められていた。

彼らは珍しくサングラスをかけ、車も裏ルートから調達したものだった。

とはいえ今回はジューンが無線で支援をしてくれていた。

逐一こちらの現在地を把握し、検問のないルートを教えてくれている。

だから楽と言えば楽だった。

シモキティウスは緊張こそしているものの、過度なものではなかったし、それは他の二人も同様なことが車内の空気からは感じ取れた。

あとは起爆する前に爆弾の場所に急行できるかどうかが問題だ、とシモキティウスは考えていた。

だが、それは唐突に裏切られることになった。

ジューンが無線で伝えてくる。

INM爆弾運搬車両を特定した、と言ってルートを伝えてきた。

ジューンは緊縛の館で常にデータを漁り監視していたのだ。

どうやら先ほど遂にそのデータを入手できたらしい。

クボティトはちらりとシモキティウスを見る。

シモキティウスは小さくうなずいた。

車はスピードを上げて走り出す。

 

 

運搬車は駅から少し離れた立体駐車場の四階に止まっているとの事だった。

彼らにとってそれは好都合だった。

道路に路上駐車しているのなら通行人や車から自分たちが襲撃するところが目立つ。

しかし立体駐車場なら素早く行動すれば見られる可能性は低い。

なにより朝の時間帯ならその可能性は更に低くなる。

目的地が見えた。

シモキティウスは用意しろ、と二人に促し、銃を握った。

車はゲートを抜け、薄暗い駐車場を登ってゆく。

一階、また一階。

そして、四階だ。

その階はそれなりの車が止まっていて、ところどころ空きがある程度だった。

これなら死角が多くなる。

四階フロアの入り口からゆっくりと車を動かしてゆく。

ジューン、車はどんなやつだ、とシモキティウス。

黒いバンだ、と帰ってくる。

目立つ車だな、とシモキティウスは思う。

案の定それはすぐさま見つかった。

クボティトに適当なところに車を止めさせ、シモキティウスは指示を出す。

バンにはシモキティウスとカッツで行き、クボティトには車で待機させた。

車のドアを開け、銃を構えながら辺りを慎重に索敵しつつ死角を選びながら二人はバンへと近づく。

あと少しの距離で一旦柱の影に隠れ、動く気配はないことを確認。

カッツにハンドサインをだして、二人同時に飛び出した。

シモキティウスは運転席を確認した。

おそらく工作員と思われる人間が乗っていた。

そいつは一瞬シモキティウスを見て驚いた顔をし、反撃しようとしたが、その前にシモキティウスは素早く引き金を引き発砲した。

窓ガラスが割れる音が響くが、この際は仕方ない。

カッツが後部ドアをこじ開け、中身を確認する。

そこには人間が一人か二人入りそうな大きなケースがあった。

シモキティウスは周囲を再確認し、これが爆弾のケースだろうかと呟きながらカッツとそれを調べる。

このケースはずらして開けるタイプの蓋のようだった。

それぞれ側面についている取っ手を掴み、その予想外の重さに悪戦苦闘しながらどうにか蓋を開けた。

しかし————。

中身がなかった。

カッツが、どういうことだ、言った。

ケースの中には3つ、物を入れられるスペースがある。

だがどれも空いていて、それぞれのスペースにシリアルナンバーが打刻されているのが見えた。

おそらく爆弾と照合して管理を確実にする為のものだろう。

カッツが声を少し大きくして、これは確かにINM爆弾のケースじゃないのか、と言う。

シモキティウスは困惑しながら、おかしいと呟く。

無駄足だったってことなのか、とカッツが言って頭をなでた。

その時、ハッとした。

スペースは3つある。

3つ。

シモキティウスは、まさかと思わず口に出る。

カッツがどうしたと聞く。

シモキティウスは早口でそれに答えた。

スペースが3つある。爆弾はここに3つあったんだ。それが今全部なくなっている。爆弾攻撃計画は2か所だけだった。なら、あと一つはどこにあるのか?

するとカッツは、それは考えすぎじゃないか、そもそもここに3つきちんと収まっていたとは限らない、と言う。

しかしシモキティウスは続ける。

ここを見ろ、シリアルナンバーだ。おそらくこれは爆弾の管理のためについているもので、それぞれのスペースに書かれた番号に対応する爆弾が入っているはずだ。

シモキティウスはそう言って、ジューンに無線する。

爆弾の管理方法について調べさせたのだ。

答えはすぐに帰ってきた。

INM爆弾などの危険性の高い爆弾はシリアルナンバーを振って専用のケースに入れて管理するように安全手順で厳格に定められている、それがジューンの答えた内容だった。

カッツもそれを無線で聞いていた。

彼は驚いた表情で、目を見開いてシモキティウスをみつめる。

シモキティウスは思わず声が大きくなる。

やっぱりそうだ。あと一発ここにあったんだ。一体どこへ行ったんだ!?

その時、近くで誰かが走る足音が聞こえた。

彼らはビクっとして銃を構える。

一人の男が走っていた。

その背中には、あの立教大学屋上で見た爆弾を背負っていた。

シモキティウスは止まれ!と叫ぶが、男は無視して一台の車に乗り込む。

そして、猛スピードで発進した。

シモキティウスは数発撃ちこんだが、車を止めるには至らなかった。

追うぞ、と言って車へと戻る。

一連の話と様子を知っていたクボティトは、二人が乗り込むと、即座に車を急発進させた。

シモキティウスが叫ぶ。

さっきの車を追え、と。

 

 

朝のラッシュの時間帯の町を、2台の車は壮絶なチェイスを繰り広げてた。

ジューンは監視衛星にアクセスして、爆弾を持った男の車を追跡しながら、シモキティウスたちに指示を出す。

交差点を右に、さらに次の交差点を左に。

赤信号の大きな交差点を猛スピードで突っ切る。

クボティトの運転技術によって、街ゆく車の間をギリギリの幅ですり抜けてゆく。

そして車は大きな幹線道路へと入って行った。

隣の町へと向かう肩幅三車線もあるその道を、車の隙間を縫うように走る。

そして、チャンスが来た。

目の前にほかの車がいなくなった。

直線が続いている。

狙撃のチャンスだ。

シモキティウスは窓から上半身を出し、風圧に耐えながら銃を構え、相手のタイヤに照準する。

当たれ!

発砲した。

それは見事に右後輪を撃ちぬいてパンクさせる。

相手はコントロールを失って、ふらふらとしばらく走った後、路肩につっこんで停車した。

シモキティウスたちは車から降り、銃を構えながら相手に近づいた。

シモキティウスは中をのぞき、運転席で呻いている男に銃を突き付けて、観念しろと大声で言った。

男が顔を上げる。

シモキティウスは驚いた。

その顔には見覚えがあった。

いや、見覚えがあるなどというレベルではない。

そこにあったのは、彼らの宿敵の顔だった。

ウンェイ。

シモキティウスは、お前はウンェイか、と聞く。

その男は苦痛に悶えながら、ふふんと笑う。

その時、クボティトがなんだこれはと叫んだ。

振り返ると、クボティトが爆弾を抱えていたが、それは破けて穴が空いていた。

爆弾だと思っていたものは、ダンボールで作った張りぼてだったのだ。

シモキティウスはしばしそれを見つめ、男に振り向き、銃を再度突き付けてこう言った。

答えろ、お前はウンェイか。

男は荒く呼吸し脂汗を浮かべ、しばしシモキティウスを睨むように見つめてから、ふん、と言って答える。

そうだ、私は、ウンェイだ—————。

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