ガチホモ英雄シモキティウス   作:mur-ju

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最終話

シモキティウスの放った銃弾はノボォー背負っているパワードスーツの制御装置を正確に撃ちぬいた。

途端にノボォーの背中から伸びる機械の触手たちは、その頭脳を失いダラリと垂れるように力なく機能を停止してゆく。

ノボォーは驚愕したように口を目を開け、それからその表情は悔しさと怒りを混ぜたものに変わっていく。

しかしその目は決意めいた輝きをちらつかせているように見え、シモキティウスを鋭くにらむ。

クボティトはそれに気づかず安堵したように息をつきながら、銃を構え直してノボォーに言う。

「あ~もう・・・もう抵抗しても無駄だぞ!」

クボティトは拘束しようとノボォーにゆっくりと近づく。

だがノボォーはそれをなんとも思っていないかのように独り言のようにつぶやく。

「あーもうめちゃくちゃだよ」

その表情は薄笑いさえ浮かべている。

シモキティウスは違和感をぬぐえない。

こいつはまだ手を残している。

シモキティウスはそう直感し、離れろクボティトと叫ぶ。

だが次の瞬間、ノボォーはビクンと体をそらす。

そして―――触手が再起動する。

ダラリと地面に垂れ下がっていたそれは、急に息を吹き返すように力強く、そして瞬間的に伸びをするように動くと、今度は勢いよく動き出す。

それはノボォーのすぐ近くにいて、油断していたクボティトをあっという間に捕らえ、摘まみ上げる。

クボティトはバタバタと手足をむなしく動かし「フザケンナヤメロバカ!」と叫ぶが、どうにもならない。

シモキティウスは反射的にノボォーを撃つが、なんとそれは触手にガードされて弾かれてしまう。

先ほどを圧倒的に上回る反応速度。

ノボォーがニヤリと笑い、触手がクボティトを放り投げる。

クボティトは柱に叩きつけられた。

「おい...いってぇ...かみやがったな...」

クボティトがか細い声で呻くように言う。

全く噛まれてないのに噛みやがったなとおかしいことを言うことからも、もはや意識を失う一歩手前なのは明白だった。

シモキティウスはクボティトに駆け寄ろうとするが触手に阻まれる。

クボティトを助けに行きたいが行くことができない寸止めのような感覚にシモキティウスは歯を噛み締める。

そんな彼を横目でほくそ笑みながら、ノボォーはクボティトへと歩み寄る。

そしてノボォーは倒れて伏せたまま動けないクボティトの傍らで歩みを止め、キモオタのようなニヤニヤ笑いを浮かべ、クボティトの片足首を片手でつかみ、なんとそのまま持ち上げて言う。

「無駄な抵抗しやがって...」

ノボォーはクボティトを片手で持ち上げたまま、ホテルの一階から屋上までを貫く吹き抜けまで歩いて行った。

シモキティウスは何をしようとしているのか直感的に分かった。

それはクボティトもそうだっただろう。

「逆さづりをしよう(提案)」と言い、ノボォーは吹き抜けの縁に立ち、クボティトをぶら下げるようにして、フハハ怖かろうと笑う。

クボティトの眼下にはベストホテルの一階が見えていた。

一階に見えるエントランス。

その中央にには剣を掲げる巨大な黄金の像が立っていたが、ここからではそれがミニチュアのように感じられるほど高い。

シモキティウスは、クボティト!と叫んで近づこうとするが、そのことごとくを触手に阻まれた。

ノボォーが勝ち誇ったように、そしてクボティトを恐怖に突き落とそうとするかのように言う。

怖いだろう。手を放してやるぞ。そら、そら、そら!

これでお前は終わりだ!とノボォー。

だが、クボティトはそれでも勇気を失っていなかった。

そうだ、これで終わりだ、俺もお前もな!とクボティトは言い、手に何かを握っているのを見せる。

それは、グレネードだった。

それを見た途端にノボォーの顔は凍り付いて、慌ててクボティトの足から手を放す。

だが遅かった。

クボティトが「卍解~!」と叫んだ瞬間、爆発。

その炎と破片が猛烈にノボォーを襲う。

ノボォーを守る触手は爆発によって完璧に制御を破壊され機能を失い、ばたり、と床に落ちていく。

クボティトは、爆散していた。

血が飛び散っているのをシモキティウスは見た。

ノボォーが顔を両手で覆い呻いていたが、その体にもクボティトの返り血がしっかりとかかっていた。

シモキティウスは少しの間呆け、クボティト、と呟いたのち、怒りがこみ上げる。

ノボォー。

ヒラーノを殺し、カッツを殺し、今クボティトの命まで奪ったこの男。

絶対に生かしてここから出さぬ。

シモキティウスは拳を握りしめると、咆哮を上げノボォーへと突進した。

ノボォーはそれに気づき、なんとか息を整えて、転がっていた木片を手にする。

そして、その木片で力を振り絞りシモキティウスへ突きを放つ。

それはシモキティウスの左ひざに突き刺さった。

だが、怒りが頂点に達したシモキティウスにはその痛みはなかった。

渾身の力を込め、ノボォーの顔面を殴る。

顔がへこみ、歯が何本も抜けるほどの強烈なパンチは、ノボォーを情けない声で呻かせた。

シモキティウスは更に追い打ちをかけてノボォーの腹を殴る。

ノボォーは上半身を屈ませ、おええ、と嘔吐する。

そしてシモキティウスは最後にノボォーの股間を殴りつけた。

ぎゃああとノボォー。

シモキティウスはノボォーのむなぐらをつかみ、持ち上げた。

その状態のままノボォーがクボティトにやったように、吹き抜けの縁まで持ってゆく。

ノボォーの顔を見る。

そこには先ほどまでの余裕の表情はなかった。

弱い呼吸を繰り返しながら、ノボォーは力なく言う。

悪かった。

助けてくれ。

お前たちに被せた罪も、ホモコーストもやめさせる、と。

シモキティウスはノボォーに言いたい言葉がたくさんあった。

罵詈雑言、思いつく限りの悪態、そのほとんどをノボォーに対し言ってやりたかった。

だが、シモキティウスは一言だけこういった。

「俺は、ホモだ。お前みたいな不逞な輩を見逃すわけにはいかねぇんだ」

そして。

シモキティウスは手を放す。

ウワー(コ)という叫びが吹き抜けにこだまする。

そして、ドスンというような音が響いた。

ノボォーは、一階にある剣を掲げた黄金の像の、その剣に突き刺さって絶命した。

その像は外国のゲイをモデルにしたもので、象の説明欄にこう書かれていた。

ビリー・へリントン像。

 

 

シモキティウスはノボォーの最後を見届けたあと、そこに座り込んだ。

全て終わった。

長かった。

ふと思い出す。

そういえば、カッツから葉巻とライターをもらっていたな。

シモキティウスは懐からそれを取り出すと、慣れない手つきで火をつけ、吸う。

パトカーのサイレンが遠くに聞こえる。

おそらくここに向かってくるのだろう。

自分はきっと逮捕される。

だがそれは最早どうでもよかった。

これから先のことは、時代が決めるだろう。

ヤ・ジュ―、ミュラー、キムル、ヒラーノ、カッツ、クボティト...。

みんな。

全て、決着したよ。

シモキティウスは涙でかすんでぼやけたタバコの煙をみる。

それはまるで、彼らの魂が天に昇ってゆくように見えた。

 

 

ガチホモ英雄シモキティウス。

完。

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