暴走してこんな作品を書いてしまったけど許してね
ま、遅文になるでしょうが―――
これは現代(いま)とは違う発展を遂げた世界の物語―――
遥か昔、この世界には多くの神々や悪魔と呼ばれる存在や神獣・魔獣などと呼ばれる存在が闊歩していた。
彼らは自らの力を誇り、相反する存在を許せず、己ら以外を排斥する為に行動を起こす。
それにより多くの戦争が巻き起こり、両者は互いに終わり所を見定める事も出来ず、結果的に多くの者達の犠牲を出して種の絶滅の危機へと瀕してしまう。
己達の滅びを理解した神代の者達が種の保存の為に選んだ選択。
それは―――己達“超常現象”とも言える存在と真逆のもの、科学と機械と言う技術であった。
神々ではなく、悪魔達でもなく、自らの恩恵と気紛れによって生み出された脆弱な人間達が自らの意志で創り上げた技術に縋らねばならないその状況こそが神代の者達の愚かさを表していると言えるだろう。
かくして愚かな戦争を生き残った神々や悪魔達。
ある者は人々の恩恵を受け、又ある者は人々から技術を奪い取り今日まで生きて来たのであった。
自ら達が生み出した訳でもない技術を再び奪い合う為に、水面下で牽制をし合いながら。
そんな彼らに待っていた現実は余りにも残酷で哀れなものであったという。
……まあ、全ての説明は面倒なのである程度は省略させてもらおう。
取りあえず理解していてもらいたいのは神々と悪魔と言うアホな連中がこれまたアホな理由で戦争を引き起こし、それに付随するようにして他の連中も争い始めたと言う事。
そして―――そういうアホな行為には必ず虐げられている者達がおり、弱者を虐げる者達には必ず罰が下ると言う事、それだけを理解しておいてもらえば充分過ぎる。
この世界には神様やら悪魔やらなどと言う存在よりも怖いものは大勢居るのだ。
中二病の若者や盗んだバイクで走りだす世代の思考しかない大人の如く、格好付けて身勝手ばかりやっている連中には理解出来ないだろうが……。
何せこの世界には『王』がいる。
勿論名ばかりの存在ではない、自らの信念を以て多くの者達と絆を育んだ優しい王が。
多くの危機に遭遇しながらも臣下や盟友たる仲間達と共に戦い抜き、己が統治する世界を守り抜いた。
そんな彼が何の因果か神々と悪魔とそれ以外の者達が争う戦場にいるなどとは誰も思うまい。
神々も悪魔達もそれ以外の存在達も知るだろう。
己達が万能な存在ではないと、己達を殺せる弱者達も居ると―――今更知った所でもう遅い。
……本人は侵略も征服も一切合切する気はないのだが。
〇〇〇〇〇
永遠に続くとまで思われた刻―――
神々と悪魔、天使と魔王、堕天使に幾重にも存在する伝説上の怪物、そして霊長最強の存在である竜。
其々が其々の目的の為にぶつかり合い、多くの被害を齎した“大戦”……その中でも特に異彩を放っていたのは二匹の龍の存在であった。
『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』―――ア・ドライグ・ゴッホ
『白い龍(バニシング・ドラゴン)』―――アルビオン・グウィバー
その力、一騎当千。
強大な力を持つ神々も魔王も歯牙にもかけず、その気になれば暴威のみで世界すら滅ぼす事が可能な存在。
当時、天使と悪魔と堕天使と言う三つの陣営が争い合っている中現れた彼らは三陣営の思惑など知った事でもなく唯只管にどちらが上かを決める為に戦い続けていた。
当人達の思惑は別として、世界を壊せる程の龍二匹が争ってれば周囲の状況など考えずとも理解出来よう。
戦いの余波だけで軍勢は薙ぎ倒され、最早戦争などしてる場合でもないと思った三陣営は互いに協力し合い、二龍を倒す間だけという形で協力し合うようになったが……まあ結果は返り討ちである。
殆どの者達が満身創痍、恐怖によって削がれた戦意。
そんな彼らなど見向きもせずに暴れまわる二匹の龍、世界の崩壊は間もなくと誰もが諦めかけていたその時。
運が良かったのか悪かったのか、運命の悪戯か地球(ガイア)意志の気紛れか……彼らの前に救世主が降り立ったのであった。
……正確に言うと不機嫌そうに目を覚ましただけなのだが。
「五月蠅せぇぇぇぇぇぇ!! 誰だ人が寝てんのに騒いでるのはぁぁぁぁ!!?」
唐突に戦場に響いた怒声―――
まるで大気を震わせるかの如き声に天使達や悪魔達、更には争い合っていた二匹の龍すらも驚いて声のした方角を見る……其処に居たのは明らかにこの混沌とした空間には不釣り合いな人物だ。
「偶の休みで皆が出払ってるからノンビリしようとしたのに、喧嘩売ってんのかゴラァ!!?
……てか此処何処だよ!? オイ、まさかまた面倒な事に巻き込んだのかよ……冗談じゃねぇぞ、最近やっと終わったばっかだろうがぁぁぁぁ!!!!」
怒気が放たれた場所に居たのは変わった衣装の青年だ。
どう変わっているかと言うと……まるで神官のような服装をした“唯の人間”である。
神だの悪魔だのドラゴンだのが争っているこの状況において、唯の人間のような存在が居る時点で極めて異質だろう。
最初の内は争いをやめていた二匹の龍だったが、どうやら興味を失ったらしく再び争い始めた。
彼らの暴威により再び周囲は吹き飛ばされ、周辺にいる者達も次々と巻き込まれて命を散らしていく。
そんな状況を垣間見た青年は先程までの不機嫌そうな表情を変え、静かに二匹の龍を見つめる。
……無表情から感情は読み取り辛いが、その奥底には“怒り”の感情が見え隠れしていた。
「オイ、其処の無駄にデカいトカゲ二匹」
―――まさか霊長類最強、いや全種族において最強のドラゴンを『トカゲ扱い』する者が居るなど思いもしまい。
二匹のドラゴンは再び争いを止めると、明らかに怒りを滲ませた表情で青年の方を向く……込められた殺意は今迄の比ではない、トカゲ扱いが逆鱗に触れてしまったのだろう。
周囲の天使や悪魔達も明らかに恐怖を表情に浮かべて青年と二匹のドラゴンを見る。
殺意を向けているのは目の前の青年であるというのに、垂れ流される殺気は心臓を握り締められるかの如く。
第三者の闖入によって理解出来た、凶悪無比な龍二匹の規格外な力と言うものを。
……だが、そんな状況を理解出来ていないのか青年は言葉を続ける。
「喧嘩すんのはお前らの勝手だが、こんな人の多い所でやるんじゃねぇよ迷惑だ」
青年の言葉に蔑んだような表情を向ける龍二匹。
見た所目の前にいるのは矮小な人間、所謂“弱者”の分類に含まれる存在。
最初こそ怒りを覚えたが、龍と言う存在にとって弱者に分類される人間など塵以下に過ぎない。
塵程度に何を言われた所で怒りを覚える必要などないだろう、それは言うなれば歩いていて雑草を踏み潰しているのと同じ……放置しても何れ戦いの余波で吹き飛んで終わりだ。
二匹の龍は三度争いを始めようとしたのだが……その前にまた青年が口を開く。
「聞こえねぇのか単細胞共、迷惑だって言ってんだよ。
それ以上、周りのモンを巻き込む様な事をする心算ならこっちにも考えがあるぞ?」
力を持たない弱者程度に何が出来るというのか。
誰もがそう思うだろうし、そもそも神々や悪魔や堕天使達が協力しても勝てなかった存在に勝てる訳があるまい。
神々も悪魔も堕天使も龍二匹すら青年に興味を無くし、再び二匹の龍によって始まると思われた破壊行為……しかしそれは思いもしない出来事によって終わる事となった。
「そうかい、なら仕方ないな。
一応俺もアッチでの出来事が切っ掛けで『守護者』になった訳だし、無為に命が奪われる行為を見逃す訳にいかないんでね―――悪いが消えて貰うぜ、トカゲ二匹」
―――言葉が終わるや否や、青年は拳を顔の前に掲げる。
甲に浮かぶのは謎の紋章、複雑な形をした幾何学的な絵柄が光り輝く。
光は彼の周囲に散らばり―――何人もの人型を形取り、光が消えた後に彼の周りには人影が増えていた。
「皆、召喚に応じてくれてありがとう」
頭を下げる青年に一人の人物が頭に手を置きながら答える。
褐色の肌に白い礼装を纏う銀髪の女性―――その手には三色の光で構成された刀身の件を携える。
「マスター、頭を上げて下さい。
我々はマスターの矛であり盾、そして共に歩むと誓った戦友ですから」
続けて肩を竦めながら口を開く人物がいた。
全身中を金の鎧で包む金髪赤眼の男―――放たれる裂帛の闘気は唯ものではあるまい。
「フン、我(オレ)を呼ぶとは随分と偉くなったモノよな雑種。
まあ良い―――久方ぶりの極上の獲物だ、我が宝物庫の鍵を開放してやろう」
更にその後ろには三人の大柄の人物達。
一人は筋骨隆々の偉丈夫、ひげ面には粗野な印象と威厳、そして不思議な愛嬌が混在する武人。
一人は巨人と見紛うほどの巨躯を持った、巌(いわお)のような男性。
一人は三只眼に全身を禍々しい刺青と黄金で彩った、漆黒の巨人。
そして最後にもう一人―――肉体と一体化した黄金の鎧と胸元に埋め込まれた赤石が目を引く青年。
彼は一度傷付いた天使達や悪魔達の方に目を向けた後、争い合う二匹の龍に視線を戻して呟く。
「ふむ……まさに危機的状況と言う奴かな?
良かろうマスター、かの龍達を狩るに加減は無用と言う事だろう?」
言葉が終わると共に立ち昇る裂帛の闘気。
その圧倒的なまでの闘気に今まで戦い合っていた二匹の龍も、絶望に打ちひしがれた神々、悪魔、堕天使達も一挙に表情が変わる。
これが弱者の放つ気配か―――その時になって二匹の龍は己達の思惑が違っていた事に気付いたのだ。
しかしそれと同時に彼らは笑う、本気で戦う事が出来る存在が自分達以外に居た事に。
「■■■■■■■■■■■―――――――ッ!!」
「Iskandar(イスカンダルゥゥッッ)……!!」
放たれる巨大な斧剣による暴威の如き一撃と巨大な二丁の斧による一撃。
攻撃は生半可なものは通用しない龍の鱗を削り取り、肉を抉り、二匹の龍に傷を与えていく。
有り得ない―――そう呟いたのは天使達か、はたまた悪魔達か、それとも堕天使達か。
そう、在り得ない光景だ。
神々が吹き飛ばされ、悪魔達が圧し潰され、堕天使達が食い千切られる―――彼らが協力して戦っていたのはそんな存在の筈なのに。
目の前の光景はそんな現実を吹き飛ばすもの。
全身中に傷を負い、多くの傷を負っているというのに―――その二人の巨漢は歯牙にもかけず己達の得物を振るって戦い続けているのだ。
更に其処からの光景は彼らの想像だにしなかったものだった。
「フン、まさか貴様と肩を並べて戦うとは思わなんだぞ“征服王”」
「こちらもだ“英雄王”……まあこれもまた巡り合わせと言う事だろうよ」
軽口を叩く二人、その目線は二匹の龍に向けられている。
あれ程の強大な存在を消しさるには加減など不要、故に彼らは己が持つ大軍への攻撃術を放つ。
彼らが生前使っていた、彼らが彼等である証ともいえる『宝具(チカラ)』を。
「バブ・イルよ、宝物庫の扉を開け!!
我が眼前の敵を払え―――『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』!!」
「遠征は終わらぬ、我が胸に彼方への野心ある限り!!
勝鬨を上げよ!!『王の軍勢(アイアニオン・ヘタイロイ)』!!」
金の鎧の『英雄王』と呼ばれた人物の背後に現れた空間から大量の鎖と共にありとあらゆる刀剣が撃ち放たれる。
鎖は二匹の龍を縛り上げ、放たれた刀剣は彼らの鱗を貫通し全身中に突き刺さった―――だが驚くべきはそれだけではない。
周囲が眩く光ったかと思えば、文字通り世界そのものが変化していたのだ。
其処は今迄の二匹の龍によって破壊された世界ではない。
熱風駆け抜ける広大な荒野と大砂漠―――其処に現れたのは幾千・幾万の兵団。
世界そのものを塗り替える魔術・魔法の極致“固有結界”……それを目の当たりにした事がある者は三陣営にもましてや暴威を振るう二匹の龍にもいない。
そもそもこれが一人の『征服王』と呼ばれた男によって展開されたものだなどと理解出来る者自体がこの場には居ないであろう。
「―――我が臣下達よ、蹂躙せよ!!!」
王の号令と共に放たれる幾万の投槍、それら一本一本がまるで流星の如く龍達に降り注ぐ。
本来ならば形が残る事すら在り得ない規模の殲滅攻撃ながら二匹の龍は何とか形のみを留めていた。
しかしそんな彼らに対し、無慈悲な止めの攻撃が放たれる。
「どうやらマスターの覚醒が完全ではない故に全力では放てぬがまあ良かろう。
もはや戦場に呵責なし 我が父よ赦し給え 空前絶後、終わらせろ!!『 日輪よ、死に随え(ヴァサヴィ・シャクティ)』!!」
「火神現象(フレアエフェクト)、マルスとの接続開始。
発射まで、二秒―――軍神よ我を呪え、宙(ソラ)穿つは涙の星。『涙の星、軍神の剣(ティアードロップ・フォトン・レイ)』!!」
最後に撃ち放たれるは閃光―――
巨大な槍が空間を穿ち、白い竜・アルビオンを消滅させる。
更に天空から降り注ぐ閃光が赤い竜・ドライグを飲み込み、同じく跡形もなく消し去った。
―――神々を屠り、悪魔を葬り、堕天使達を塵滅した二匹の龍。
彼らの戦いは世界の崩壊まで続くかと思われた……しかしそんな彼らは最終的には跡形もなく消し去られたのだ。
彼らは何者なのか? 世界を壊滅出来るほどの力を持つ龍達を屠る彼らをどうするべきなのか?
それはこの場に居る英知ある三つの陣営の者達でも結論を出す事など出来ないのであった。