狂気の最凶復讐鬼 ~最強の魔法を開発したので、勇者も聖女も両親も、いじめた奴らを全員嬲り殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺すことにする~ 作:輪島廻
ソータは、諦めた。
限界まで悩んだ。やれることは全てやった。それでも、道は残されていなかった。
「豚がいるぅ! 私、本物の豚初めて見た!」
街を歩けば嘲笑。
「何でてめえがここにいる!? 店が汚れるだろ!? お前に出す料理はない! 帰れ!!」
店に入れば罵倒。
「こんな遅くまでどこをほっつき歩いてたのよ!」
「遊んでないでその体をどうにかしやがれ!」
家に帰れば説教。
前はかわいいと言いながら頭を撫でてくれた村人達も。
子供のときは毎日笑いあっていた親友も。
今ほど太っていなかったときに将来を誓い合った元カノも。
俺を産み、以降ずっとソータを養っている両親でさえも。
その全員がソータをバカにする。
元親友はいつしかソータを殴ってストレスを発散するようになった。
昔は、相談なんかは親身になって聞いてくれ、それに対して適切なアドバイスをくれたりした。ソータを外に連れ出して、日が暮れるまで一緒に遊んでくれた。
それなのに、気付いたらそいつにとってのソータは「親友」から「道具」になっていた。
しかも、ソータ以外の人にはむしろ前よりも良い顔をしていて、さらに確かな実力があったために《勇者》という称号を与えられるまで成り上がっていた。
《勇者》の次に思い出すのは元カノのことだ。
『将来はソータくんのお嫁さんになるの!』
あの頃、秋のだんだんと沈むのが早くなってきた燃える夕日と、だんだんと色づいてきた鮮やかな紅葉を背景に、そう言った元カノ。
あの頃の無邪気な彼女の顔を忘れられない。
それが、今となっては殺人大好きな殺人鬼だ。その上サイコパスな《勇者》と付き合ったりしている。
元カノが元親友とヤっている現場を見たときの絶望感は、今でも鮮明に、ソータの脳内に刻まれている。その現場というのが、ソータと彼女が将来を誓った山の山頂だったということも、この記憶を印象付けた要因の一つである。
……何で外でヤっているのか問い質したかったが、絶望感に浸っている間にどこかへ行ってしまった為に実行には移せなかった。
そして今、すっかり変わってしまった彼女は、《勇者》パーティーの《聖女》として名を馳せている。
ソータの両親は、いつからかソータに飯と部屋だけ与えあとはほとんど関わらないようになった。
ソータ達親子が関わるのは、両親がもっともらしい言葉を並べてソータに説教を垂れるときだけだ。これがただのストレス発散なのだということは誰の目からも明白なのだから、苛立たずにはいられない。
――デブってだけで何でこんな扱いなんだ!
自分の境遇を呪った。
――俺だってこの体に生まれたかった訳じゃなかった!
自分の体質を呪った。
そんな負の感情は、ソータの心を汚し、溜まりに溜まっていった。
そして、負の感情が限界まで溜まりきったとき――――全てを思い出した。
地球という別の星での出来事を。
そこで誓った復讐を。
――あぁ、そうか。地球だけじゃない。ここの人間も同じか。
この日から、ソータはベッドと書物しかないとても狭い部屋で、一つの研究を始めた。
脂肪のせいで活躍できないのなら、脂肪がなくなればいい。逆に脂肪を力に変えられれば、ソータに敵はいなくなる。
幸い、地球での記憶を取り戻した為に、脂肪の知識はいくらでもあった。
前世であれば絶対に脂肪が力になるなんてことはなかったが、ここは異世界。魔法という便利なものがある。これとソータの持つ前世の知識を組み合わせれば、かつてない魔法が完成することは必至だった。
――そして三年間ほどの期間、一度も家から出ることなく引きこもり、その間ずっと研究に熱中し、やがてソータはひとつの魔法理論を完成させることに成功する。
前よりも脂肪が増えたが、この魔法が完成したからには、むしろそれは喜ばしいことだ。
《脂肪魔法》。
ソータは完成させた魔法にそう名付けた。
この魔法を使えば、脂肪を意のままに操ることができるようになる。
一見大したことのないこの魔法。しかし、その実、この魔法は恐ろしい効果を持つ。
体脂肪には筋肉の三倍以上、一グラム当たり七キロカロリーのエネルギーを溜め込むことができる。
ソータは体重二〇〇キログラム、体脂肪率六〇パーセントという驚異的な数字を誇るので一二〇キログラムもの脂肪を持つことになる。これを計算すると八四〇〇〇〇キロカロリーものエネルギーを蓄積していることになる。
そして、エネルギーは熱にも光にも動力にもなるし、この世に存在するあらゆる物はエネルギーを持つことによって成り立っている。もう一つ、ソータの研究の中で明らかになったこと。エネルギーは、魔力にも変換することができる。
脂肪とはエネルギー。エネルギーとは万能物にして物質構成の要。
何にでもなれる万能物であるエネルギーを、ソータは《脂肪》として腹に溜めこんでいたのだ。
そして、脂肪を意のままに操れることはエネルギーを操れることと同義。つまり、この魔法さえ使えれば、電気だろうが炎だろうが動力だろうが魔力だろうが、全てを自由に操作することができる。
この研究が完成したとき、ソータは自分の才能に恐ろしさすら感じた。
デブを舐めたやつらはデブの素晴らしさを知り、デブを貶した自分達を呪いながらデブに殺されるのだ。
そして宗太《ソータ》は再び復讐を誓う。
――舞台が地球だろうが異世界だろうが、自分を苦しめた奴らを全員痛め付けて殺してやるのだ、と。
序章終了、次話から一章に入ります。
次の投稿は、一時間後です。
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