狂気の最凶復讐鬼 ~最強の魔法を開発したので、勇者も聖女も両親も、いじめた奴らを全員嬲り殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺すことにする~   作:輪島廻

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時間軸は前話の続きです。


3、所詮人は顔しか見ていない

 復讐を誓いながらも、ルーシャは無力だった。

 

 魔法が使えるわけでもない。剣を振れるわけでもない。巧妙な罠を設置できるわけでもない。

 唯一あるのは人望だけだ。

 このままでは、魔法を使え、剣も振れ、頭も働き人望もあるブラックに勝てるはずがない。

 

 ルーシャは怒りに歯を噛み締めながら、山を下った。

 辺りは既に暗くなっている。

 

 ルーシャは、その光景を見て、シエットと遊びに行ったときのこと、初めてブラックと話したときのことを思い出す。

 しかし、それは良い記憶としてではない。シエットと遊んだときの楽しさや、ブラックに助けられたときの安堵感は全て、最後の悪い記憶のせいで朽ちてしまっている。

 そのときの情景などは思い出せても、感情は思い出せない。

 

 ――どうしてこんなことになってしまったのだろうか?

 

 ルーシャは頭の中に疑問を浮かべる。

 シエットと友達になってしまったから? あのとき山に行ってしまったから? そこで帰るのが遅くなり、道に迷ってしまったから? 助けられたとき、ブラックに惚れてしまったから? ブラックに告白してしまったから?

 

 埋め尽くすのは後悔。

 前は確かにシエットのこともブラックのことも好きだった。感情としてではなく、記憶としてそう残っている。

 

 しかし、どこかで道を間違えてしまったのだということを悟っても、もう引き返すことはできない。

 なぜなら――心の中が、復讐心に満たされているから。

 

 ルーシャはもう、復讐心が満たされるまで、止まらない。

 

 と、そこまで考えたところで、ルーシャは自分が奇異の視線に晒されていることに気付く。

 今までは、ルーシャを見るとみんなが温かい目を向けるか、優しく話しかけてくれたのに、今は誰もが気味の悪いものでも見ているかのような視線を向けてくる。

 

 物心付いたときからずっとちやほやされ続けてきたルーシャにとって、それは面白くない。

 ブラックとシエットとのことがあった後で気が立っていたこともあり、ルーシャはその奇異な視線を向けてくる村人達に叫んだ。

 

「何であたしを見てんのよ!」

 

 その瞬間、村人達はそそくさと逃げていった。

 ルーシャは首を傾げる。

 

 そして、さらに苛立ちを募らせながら、帰宅する。

 

「ただいま~」

「おかえり~、山の紅葉どうだっ……た……?」

 

 ルーシャの母親が、ルーシャの声を聞いてリビングから出てきて、そして戸惑いの表情を浮かべる。

 

「ど、どうしたの……? その顔……」

「え……?」

 

 ルーシャは、殴られた自分の顔が悲惨なことになっているということに、気付いていなかった。

 殴られたこと自体には気付いていたし、それによって多少は傷付いているのだろうとは思っていたが、流石にここまで酷いとは思っていなかったのだ。

 

「はっ、はっ、はぁぁあああああああ!?」

 

 母親に言われて、汲んできた水に顔を映す。そしてルーシャはそこに映った顔に驚き、素っ頓狂な声を出した。

 

「何でこんなことになってんのよ!」

 

 村人達の反応も、これで納得できた。

 

 元の可愛かった顔は、魔法でも使われたのか、酷く歪んだ顔になっていた。

 ルーシャは、自分の可愛い顔をこんなにしたブラックとシエットに、憤りを覚える。

 

「ふっざけんなあいつら!」

 

 どんどん怒りが強くなっていく。

 しかし、それは突然不安に変換される。すなわち、これは本当に治るのかと。

 

 すぐにルーシャは、ブラックを除いて村で一番回復魔法の腕が良い人のところに行くことにした。

 彼もルーシャにぞっこんだ。ルーシャは彼なら自分の容姿を元に戻してくれるだろうと考えていた。

 

 しかし――

 

「ひあぁぁぁああああああああ! お前は誰だ! 出てけ! てか本物のルーシャちゃんを返せ!」

 

 ――酷い言われようだった。

 このとき、ルーシャは悟った。

 

 ――ああ、みんな、あたしのことを好きだったんじゃなくて、あたしの容姿が好きだったんだ……。

 

 復讐を誓いながらも、ルーシャは無力だった。

 魔法が使えるわけでもない。剣を振れるわけでもない。巧妙な罠を設置できるわけでもない。

 唯一あるのは人望だけだ。

 このままでは、魔法を使え、剣も振れ、頭も働き人望もあるブラックに勝てるはずがない。

 

 そう思っていたが、そうではなかった。

 唯一あると思っていた人望も、本当は失われつつあったのだ。

 唯一勝る可能性があった人望ですら、ブラックとシエットに負けることが確定していたのだ。

 

 ブラックやシエットが噂を流せば、あの医者が今日の出来事を吹聴すれば、ルーシャが外を出歩けば、すぐに人望は失われる。欠片も残さず。

 

 いや、それは元々人望何かではなかった。

 容姿だけで築いた、紛い物。すぐに崩れ去ってしまう、偽物。

 それを人望と呼ぶことは、できない。

 

 その日から、ルーシャは家に引きこもった。




次の投稿は、一時間後です。

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