林の中、5人分の足音が響く。その足音たちは、サンドスターによって引かれている気候の境界線へと近づいていき、超えたところで止まった。
「……よし。サバンナエリアに出たぞ」
先頭のバリーが振り返る。
「また助けてもらっちゃったわ、ごめんね」
「いいんだ、ともに助け合うのも必要なことだしな」
「また寄ってくださいねー」
俺たち一行は今、ミライさんたちを探して、ようやく
~数分後~
その後コアラは自分の縄張りへ、バリーは鍛錬のためにどっかいってしまったため、俺たちはミライさんを探して広大なサバンナを歩いている。といっても、ただ闇雲に歩いているわけではない。出発前に「サバンナエリアのお土産やさん兼休憩所に寄る」と言っていたから、サーバルたちの記憶や他のアニマルガールの証言を頼りに進んでいる。
「まさか迷子になるなんてな」
「でも探検してるみたいで楽しいよ?」
「お前のそのポジティブさを見習いたいよ」
なんでこんな状況でこんなゆっくりしてんだ、こいつ。焦ろとまではいかないが、流石にここまでのんびりしてると申し訳ないというか、だって絶対ミライさん心配してるぞ。あとサーバル、「見習いたい」は褒め言葉でいったわけじゃねぇからそのドヤ顔をやめろ。
「逆にあんたこそ落ち着きがなさすぎなんじゃない?サーバルははしゃぎすぎだけど」
「そんなに焦ってるつもりはないんだがな……」
「私には大分焦ってるように見えるわ」
「そうか?」
うーん、やっぱアニマルガールにしては考えすぎなのかな。カラカルもなんか気楽そうにしてるし、ゆっくりしとけばいいんだろうか。
「でも早く追いつかないと、ってのは確かね。記憶が正しければ、このままだったと思うんだけど」
なんか曖昧な返事だな……ここでさらに道を間違えるともっとめんどくさいことになるだろうし、最悪入れ違いも視野に入れて行動する羽目になるかもしれん。
「ねえねえ、それよりも……あ」
「ん、どした?」
「いや、あそこ」
そう言ってサーバルは指を向けた。その先をじっと注視してみる。あれは……結構遠くだが、なんか見覚えがある人影だった。くそ、遠くてよくわからん。
「誰かいるな」
「うん!ちょっと道を聞いてこようよ」
「そうね、サーバルのナビはあてにならないし」
「それどういうことー!」
何も間違っちゃいないし、事実だ事実。それに「聞いてこよう」って言い出したってことは、お前無意識のうちに自分でも案内能力低いって認めてることになるからな。
「ま、サーバルよりはあてになるだろうし、聞いてこようか」
「サーバルよりはって言うなー!」
事実だ事実。
取り敢えずさっきの人影に向かって歩を進めていく。近づくにつれ、大体の容姿はわかってくる、というか見た目さえわかれば俺の知り合いの中なら大体誰か判別できるし。
んで、あの白の前髪と黒の後ろ髪を持つ、服も同じように白黒のアニマルガールといえば。そう、シm……じゃなくて、アードウルフだ。
「よく見えないなあ、誰?」
「どう見てもアードウルフだろ」
「一瞬だけシマウマだと思ったくせに」
うぐっ……マジで厄介なんだが。弱みを握ったかのようにどんどん心を読んできやがるの勘弁してほしい。
というわけで、早速アードウルフの元へ。どうやら、本人は何か作るのに夢中でこちらに気づいていないようだ。
「アードウルフ!」
「きゃっ!?さ、サーバルちゃん!?」
「久しぶりね、アードウルフ」
「みんなまで、確か遊園地に行ったはずじゃ……」
うん、そうなんだよ。そのあと普通にサバンナ回りの予定だったんだよ。ただ現状その予定からは大きく外れてんだけどな。サーバルに驚かされてこちらを見たアードウルフに、今までの経緯を話しておく。
「……ってことなのよ。アードウルフはその方向とか、わかったりしない?」
「うーん、私は普段そっちは行かないから……力になれなくてごめんね」
「ううん、そんなことないよ!」
ちなみに、アードウルフが驚いた時にチラッと見えたのは、分厚い本とそのページに乗っていた花だった。綺麗な花だったが、押し花でも作ってたのだろうか。
「アードウルフはさっきまで何を?」
「私も気になる、何してたの?お昼寝かな」
「あ、えっと」
いや、別に無理に答えなくても構わないが……と思っていたら、どうやら決心がついたらしく、ガサゴソと何か取り出した。
「その、サーバルちゃんとカラカルちゃん、トツカちゃんに、これを作ってたんだ」
その手に握られていたのは、先ほど見えた分厚い本と、やはり同じくその本に乗った花。おお、改めて見るとなかなかに綺麗だな。
「すごいわ、押し花?」
「うん、この間教えてもらって。どう、かな?」
スタッフさんに教えてもらったのか。結構うまくできてるし、形も見事に保たれてる。こんなに綺麗に残すのはさすがに難しいんだろうな、俺は押し花なんぞしたことないし知らんけど。
サーバルもその美しさに魅入られたらしく、早速そのうちの1つを剥ぎ取ろうとしたところをカラカルと俺ですぐに止めてそっと手に持たせてやると、目をキラキラさせた。
「すっごーい!とっても綺麗だよ!」
「ああ、綺麗だ。練習したのか?」
「うん、みんなに喜んでもらいたくて。えへへ」
俺も(自分の手先の不器用さでは取れないので)アードウルフにとってもらった。
細かく見るとよりわかるんだが、やっぱり練習してるんだなぁ。友達のためにここまでできるっていうのは、普通に尊敬だ。あと、単純に嬉しい。
「今度教えてもらっていいかしら、楽しそうだし」
「うん、いいよ!い、いつならこれる?」
あ、なんか女子会みたいな会話が進んでるわ。高次元すぎて入れそうにねぇ……
ところで、この押し花意外と数がある。多分自分の数を含めてるんだろうな、いち、に、さん……あれ、5つ?
「トツカ、どうかしたの?」
「いや、押し花の数が」
俺たち全員で4人だから4つだと思ったんだが、他にも誰かいるのか?いや、でもさっき俺たち3人にっ言ってたような……
「ほんとだ、私たちとあと1人分だね」
「きっと、誰かに届けるんだろ」
誰なのか気にはなるが、まぁいいや。せっかくこんな綺麗なもんもらったんだ、届けるくらいなら手伝えるだろう。アードウルフの方へ行き、その旨を伝える。
「なぁアードウルフ、この押し花、もしあげる相手がいるなら届けてくるぞ」
「え、いいの?」
「うん、こんな素敵なプレゼントも貰ったし、お返ししないとね」
今回ばっかりはサーバルの言う通りだ。その思いは、俺たち2人とも確かだしな。
「2人とも、ありがとう!」
「それなら、私はアードウルフに押し花のこと聞いておこうかしら」
「その間にチャチャっと行ってきちゃうね」
「そんなに時間も取れないしな」
あんまり時間かけすぎると、またパップの時の二の舞となるからな。今度からは腕時計でも持ち歩こうか。
「えーっと、それはこの前助けてもらったお礼に、ヒグマさんにあげようと思ってたんだ。多分向こうの方にまっすぐ行けば、見えてくるはず」
「よし、向こうの方だな」
「行ってくるねー」
「2人とも気をつけなさいよー」
気をつけなさいとか、母ちゃんかお前は。そんな思いを抱いたらカラカルにバレるのは目に見えていたから、すぐに方向を確認し、押し花をそっと持って出発する。
「ヒグマに会うのは結構久しぶりだねー」
「そうなのか?この前普通に歩いてたけど」
「歩いてたってことは、散歩でもしてたのかな」
「武器を出してたし、ある意味パトロールの方が正しいかもな」
受取人の話題を話しつつ、俺たちは草原の中へ足を踏み入れた。
サ「えー、いいじゃんパンツの柄くらい」
ト「よくないから拒否してるんだよ、頭使え」
ア「トツカちゃんも嫌がってるし、あんまり追求しなくとも」
カ「あ、トツカのパンツは白よ」
ト「はぁ!?なんでそれ知ってんだ!」
アードウルフちゃんは推しキャラなので登場させました。