ドシッとした重量感を感じ背中を見る。
そこにあったのは、何の鳥のものはわからないものの確かに「翼」と言える、かなりの大きさの物体。
「……マジか」
「トツカ!大丈夫かい!」
声がしたと同時に、サーバルを追っかけるセルリアンの数が減る。先程大型セルリアンを相手していた、ヒグマとバリーのペアだ。
「あっちは?」
「片付いたよ。あと君ってそんな翼ついてたっけ」
「それに関しては話はあとだ。サーバルを何とかするぞ」
「そうだよ、早くしてー!」
このまま見てるのも面白そうだが……っと、危うく脳がカラカルに汚染されるところだった。
「とにかく、俺に任せろっ!」
思いっきり背中の翼をはためかせ、空へと飛翔する。そしてセルリアンの群れへと飛び込み、
「うにゃにゃにゃにゃー!」
パッカーン!
勢いをつけた俺の殴り(と言う名のネコパンチ)、そしてヒグマ達の攻撃によって、セルリアンは全滅した。
「は〜、助かったよ〜」
ヘナヘナと座り込むサーバルの元へ翼をしまいながら向かう。この翼意外と操作性いいな。
「すごいな、今度手合わせしないか?」
「私も戦いくなってきたね」
「丁重にお断りさせていただきます」
さすがにあんたらに勝てる気はしないからやめてください。
「ねえ、あれなんて技にするの?」
「技名とか別に良いだろ」
それとお前はネーミングセンスないから変につけてほしくないってのもあるからな。
「じゃあ『にゃんにゃんネコパンチ』とかは?」
ほーらやっぱりクッソダサいじゃねぇか!
「だいたい『にゃんにゃん』って何から取ったんだよ」
「ん?トツカは攻撃する時そう言ってたぞ」
えぇ……にゃんにゃんって、本格的に猫と化してんじゃねえか、逆に呆れてきたんだけど。
「そうだ。君たち遊園地に行ったって聞いてたけど、戻ってきたのかい?」
「あ、それはな──」
完全に忘れていたことを伝えようとしたとき、車両のエンジン音と聞き慣れた泣き声が近づいてきた。
「みなざぁぁぁぁぁん!!!たいじょうぶでずがぁぁぁぁぁ!!!」
……うん、本当にゴメンよ。後で好きなだけモフっていいから。サーバルを。
~数分後~
紆余曲折を経て、ようやく目的地のサバンナエリア中央部に到着した。一応、途中のどったんばったん大騒ぎはあったが時間通りではある。
俺はこれからリュウと予定があるから、昼飯のピザまんを食いつつサーバル、ミライさん、カラカルと歩いている。
「カラカル、足はもう良いのか?そんなひどい怪我でもなかったとは思うが」
「ええ、大丈夫よ。流石にアイツラに囲まれたときは焦ったけど、コアラのおかげでなんとかなった」
そうか、それなら良かった。怪我に気づいたときは本当にどうしようかと思ったけど、心配いらないようだ。
「それと、あんたにも世話になったわ。助けてくれてありがと」
「俺は何もしてねぇよ」
平静を装っていつものように返したが、内心ちょっと照れていた。
なんたって普段こういうこと言わないやつだからなぁ、急に言われるとなんかどう返したらいいのかわからん……
「あら、照れてるなんて珍しい」
「なっ!?別にそんな……ハッ、読心術!」
「読心術って……あんたは私の事読心術使いかなんかとでも思ってんの?」
実際読心術使いまくってんじゃん、俺はこのごろそれが悩みになってんだよ!
そんな会話をしながら歩いていくと、研究所が見えて来て、中から一人の研究員が出迎えた。
「やあ、待っていたよ。僕も今昼食を終えたところなんだ、
「
頭の上に「?」を浮かべているリュウに苦笑いを返す。あんまり深くは詮索しないでくれ、俺にもわからないから。
だが、サーバルを現在進行形でモフるミライさんは口を開いた。
「ほんとにどこ行ってたんですか!サバンナ移動中すごい心配してたんですよ!?」
「まぁ落ち着いて」
「しかもセルリアンの目撃情報で駆けつけたらちょうどそこに居合わせて、カラカルさんに至っては怪我まで!」
だからゴメンて。サーバルのことモフらせてんだからいいだろ?
「ガイドさん!ちょ、ちょっと離して!体の至るところの毛を触り尽くしたからもういいでしょ!?」
「いいえ、私の心配に比べればまだまだ足りません!」
……俺じゃなくてサーバルを生贄にだしといてよかった。あれ絶対生きて帰れないやつだわ。
「カラカル助けてー!」
「もうちょっとこのまま見てるのも面白そうだし、我慢してねサーバル」
「そんな〜!?」
カラカルもS状態だし……あ、ミライさんこっち見た。完全に獲物を狙う狩人の目になっていらっしゃる。今日は研究所に泊まろっと。
「は、はぁ……だいぶ色々あったんだね」
「自分でも信じられないくらいにな」
もとは遊園地エリアではぐれただけのはずなんだが、どうしてこんなことになったのか。パップには悩まされるわ、セルリアンには襲われるわ。
「あ、完全に忘れてた。ミライさん、セルリアンに関する報告書、あとで提出していいただけますか?」
「了解です!たっぷりモフってから作成します!」
「モフってからってどういうことー!?」
「ガイドさん、ちょっと羨ましいかも……」
そう言って3人はガイドの続きへと戻っていった。サーバル、強く生きるんだぞ。
そうだ、どうせ検査するなら今日の翼のことでも聞いとくか。
「リュウ、確か守護けものは体の姿を変えられるんだよな」
「そういう目撃例もあるね。ただ守護けものに出会うことはなかなかないから、あまり調査は進んでいないんだ」
守護けものってそうそう人前には出ないのな。あれ、俺はめちゃくちゃ人前に出るけどいいのか?
「君も体が100%けものプラズムだけど、まだできないんだろう?」
「ちょうど今日姿を変えられたんだけど」
「えっ」
「えっ」
大胆に告白。からの沈黙。いや、事実である以上「冗談だよ」とかで返せないんだよ。気まずすぎるのでなんとかして……
カタッ
沈黙を破ったのは、リュウでも俺でもなく、何かが落ちる音だった。
その音の方向にいたのは、深い緑色の髪を持ち、リュウと同じく白衣を着た女性。当てはまる容姿といえば一人──
「えっ……あっ……?」
「あ、カコ博士」
「けものフレンズ」登場キャラクター、「カコ博士」。
まぁ俺はともかく相手にとっては初対面だから知らない体を装って話しかける。
「ひえっ!ひゃ、はい!なんでしょうか!」
「そこまでかしこまらなくても……あ、カコ博士とトツカは初対面だよね」
「そうだな。彼女は?聞いた感じだと博士らしいけど」
まぁもう誰かわかってんだけどな。あれ、でもカコ博士ってキョウシュウチホーにいたっけ?寧ろ副所長とかそんな感じの偉い人だったはずじゃ。
「彼女はカコ博士。ここジャパリパークの副所長で、今日からしばらく君の調査担当だよ」
……へ?ちょ、調査担当ぅ!?
「え、それってどういう」
「運営の方から許可をもらったんだ。これまでは非公式だったけど、あっちも興味を示してくれたみたいで。ただ、本来くるはずだったスタッフが怪我をしたらしくてね、それでカコ博士に来てもらったんだ」
え、じゃあこれからは公式ってこと?なんかこう特殊な機械にぶち込まれたりとかサンプルを取られるとかそんなことになるの?どこのホラー映画だよってなるからやめろください。
「まぁこれからもやることはほぼ変わらないし、基本は観察して報告書書くだけだから。気楽にしてればいいよ」
「お、おう」
それならいいんだけど、いやそんなゆるい調査でいいのかジャパリパーク。
取り敢えず、これから世話になる人だ。挨拶くらいは済ませてしまおう。
「ツバサネコのトツカだ。これからよろしく、カコ博士」
「あ……よ、よろしく……です……」
……そんな隠れないでくれないだろうか。哀愁漂うから。
力関係的には「本来のトツカ>ヒグマ、バリー>今のトツカ」です。これ以降のトツカの力の覚醒はかなり後になるorそもそも覚醒しない予定です。