「それで、姿を変えられたというのは本当なのかい?」
早速新たな能力を試すために対物理衝撃用実験室?とやらへと向かっている途中、リュウがその能力の真偽を質問した。ま、確かにこれまで一度もこんな守護けものらしい能力を使ったことはなかったし、疑いたいのはわかる。だがな。
「そもそも本当じゃなかったら、今そのたい……」
……決して忘れたわけではないぞ?ただちょっと引っかかってるってだけで……
「た、対物理衝撃用実験室……」
「そうそれ、そこに向かってないだろ?まぁ、とりあえず俺を信じておけって」
カコさん、フォローありがとうございます。でもできればもう少し大きな声で言ってくれませんかね。あとちっちゃくガッツポーズするのめちゃくちゃかわいいなおい。
とにかく、こうして部屋を取っといてくれるってことは、リュウも少なからずは信じてくれているようだし。
「ごめんよ、守護けものに触れられる機会はそうそうないから、少し興奮しててね。カコ博士もですよね?」
「えっ?あ、はい……すいません、か、考え事してて……」
カコさん、いくらなんでもコミュ障すぎだろ……もうちょっとフリーでいいんだぞ?いや、こういうのって俺の方から話しかけないとダメなパターンなのか?
「カコさんはなんか気になることってないか?答えられる範囲なら答えるけど」
「し、質問ってことですか?」
「そうですね、僕もカコ博士の質問をちょっと聞いてみたいです」
カコさんってこう、すごいことしてたような記憶があるからな、なんだったか忘れたけど。アニマルガールは人類には未知の存在だし、科学者としてやっぱ気になることとかあると思うんだよ。きっとザ・サイエンティストって感じの質問が
「あの……し、しっぽ……触ってもいい、ですか……?」
「……あ、どうぞ」
……俺の中のカコさんに対する何かが壊れた。だいたい、それ質問じゃないし。あ、でもしっぽ触らせてくださいってお願いしてる分突然襲うように触ってくるミライさんよりはマシだな(錯乱)。
まぁイヤというわけではないので、そっとしっぽを差し出す。カコさんの目がちょっと嬉しそうに輝いたのを確認しつつ、な。
「じゃ、じゃあ」
モフッ
「んっ……」
「あ、だ、大丈夫?痛かったとか……」
「別に問題ないから、そのまま触ってていいぞ」
痛いなんて全然、むしろ結構優しく触ってくれた。いや、いつの間にか周り気にせず両手でモフってるあたりはなおしてほしいとは思うが。
「か、カコ博士も動物好きなんですね……」
「はぁ、モフモフ……え、あっ動物は好き、です」
ようやく我に戻ったか……あんまり触りすぎてると時間経ちすぎちゃうし、何よりも今日は色々ありすぎて疲れてるから早めに寝たい。まだ昼間だけども。
しばらく歩くと、目の前に「対物理衝撃用実験室」と書かれたドアが現れた。早速リュウが鍵を入れ、ガチャン、という音とともに扉が動く。
「さて、ここが対物理衝撃用じっけ……」
言いかけたリュウの口が突然止まった。おいおい、何があったんだ?さっさと翼出して観察して終わりでいいじゃ……
「……うわ」
「これ……」
中を見て思わず声が出た。なんたってこの中、おそらくもう使えない実験用器具であろうものが散乱しているのだ。そりゃ、誰がどう見たって第一印象がこうなる。
これ、ガラクタ置き場じゃん。
~数分後~
「お前の『公式』発言は信じていいだろうな?」
「いやー、まさかこうなるとは……」
別に外でやるのが嫌ってわけではないんだが、いくらなんでもあんな部屋を使う予定だったなんて思うとな。なんかゲームのコントローラー?みたいなのまで散乱してたし。
「トツカ、頼むよ」
「よ、よろしくお願いします」
「おう、よーく見とけ」
えーっと、あの時はどうやったんだっけ?確か武器をイメージしたような気がするな、じゃあ翼をイメージすればいいってことだな。えー、翼、ツバサ……
「あっ、あ!できてる!」
「え、できてる?本当か!?ふっふーん、どうだ!本当だったろ?ちゃんと翼を出してやったぜ!」
ふーん……っと、つい大人気なくはしゃぎすぎてたな。すこし自重しなければ。
「えーと、まずは翼の形状だね。でも片翼なんてまた珍しいな」
「俺のイメージどうりに作られて……って、片翼!?」
マジで!?急いで背中を……本当だ、片方しかない!え、なんで!?ちゃんと両方ある状態をイメージしたはず……
「多分、まだ使い慣れていないのね。訓練すれば思い通りに変えられるわ」
その時、草を踏みしめる音とこれまで聞いたことのない声が後ろから聞こえた。
そこにいたのは、ローブのような服を着た、カンガルーのような耳と尻尾を持つ金髪の女性。
「初めまして、私の『代理』さん。それはそうと──
………
いや。
「……誰?」
「えー!?セイリュウたちから何も聞いてないの!?私よ私!」
オレオレ詐欺か!だから誰なんだよ!あとカコさんとリュウが完全に置いてけぼりだから!
「私は……」
ゴツン!
突然、見知らぬ誰かの頭にこれまた見知らぬ誰かの拳が落ちた。
「こーれー!どこへ行っておったのじゃ、せっかく旅に来たというのに勝手にどっか行きおってー!」
「わー!痛いって!ごめんね、ちょっと気になる子がいたから!」
拳でグリグリしているのは、頭から長い尻尾みたいなのが伸びてる、10年位前のJKみたいな白い服を着た青い目の子。
……え、なに?突然出てきて迷惑してくるって、新手のいたずらか何か?
「えー、あなたたちはどこから?見た感じだとアニマルガールだと思うんですけど」
「お、お主はここの職員か。すまぬ、こいつが急にどっかへ行ってしまってな(グリグリ」
「ぎゃー!」
めちゃくちゃグリグリされてんな……俺もサーバルにやったことあるけど、さすがにあそこまで強くはやらんぞ……?
「おほん。わしの名は『ハクリュウ』じゃ。それで、この不届き者の名が『ボーラー』」
「いたたたた、よろしくね」
ボーラー……?なんか聞いたような……
『……昔はボーラーが担当だったんじゃが……』
「あ、なんかあの赤い子が言ってた俺の前任者!」
「前任者って……まぁその赤い子、多分スザクの言ってたそれよ」
なるほど、あの「代理さん」ってそういう意味だったのか。それならそうと早く言ってくれりゃあいいのに。
「アボリジニの、神話に出てくるカンガルー……だった、と思う」
「そうじゃ。そしてわしこそ龍の中でも最速の龍!敬意を持って『西海白龍王
「あ、ハクって呼んであげてね」
「って、お主はまた余計なことをー!」
こいつら、仲がいいのか悪いのか。しかし今度は、ボーラーはハクの攻撃をかいくぐってこちらに問いかける。
「ところで、能力を君はまだ使いこなせていないんだよね?それなら早速特訓しようよ。代理とはいえ私の後任だから、どうしても放っておけないし」
「これ、あまり迷惑をかけるでない、さっさと行くぞ」
特訓?別に俺はそんなのしなくても……
「いや、守護けものの生態に触れられるチャンスだ!トツカ、早速受けてくれ!カコ博士、録画!」
「準備OK!」
はぁ!?てかなんで妙にやる気満々なのカコさん!?
「じゃいくよー!まずは足をしっかり曲げてジャンプ!ほらやって?」
「な、なんで俺まで……んしょ、とおっ!」
なんだこれ、本当に特訓なのか?どう考えてもカンガルーダンスだろ!あとハクもなんか可哀想な奴を見る目してないで助けて!
~数時間後~
「すげー、コントロールできてるー(疲れのたまりすぎによる幻覚)」
「いや、そんなわけないじゃろ」