第17話 診断~Psychopath~
「ねぇ、これ見てよ!」
午後3時ごろ、inジャパリパークキョウシュウチホーサバンナエリア研究所休憩スペース。
俺とリュウは、サーバルが持つスマホの画面に表示された文字をよく読み、目を丸くした。
「「……サイコパス診断?」」
~説明中~
「なるほど、つまり僕のケータイを勝手に使っていたらこの怪しいサイトに辿り着いたんだね?」
「そう!よくわかんないけど、面白そうだなーって」
おう、それ以前に勝手に他人のスマホをいじっていたことに関しては言及しないのな。リュウが何も言わないからいいが、カラカルだったら間違いなくすっ飛ばされるぞ。
「それで、研究員さんやトツカはわかるの、これ?」
「ま、見たことないわけではないな。これに似たようなのは知ってるし、やり方も同じだと思う」
えーっと、どれどれ……うん、リュウがスクロールするのを見た感じ、やっぱ普通に質問に答えてその結果で判断ってだけみたいだな。
「あー、これは単純にお題の質問に対して自分の考えを出すっていう、いわゆる心理テストだ」
まぁ、その答えがもしも書かれている答えと合ってしまったら……という趣味の悪い遊びである。
「へー、面白そうだね。やってみたらどうだい?」
「あ、じゃあ研究員さんもやろうよ。私もやってみたかったし、大勢なら楽しいからね」
やろうよって、仕事が残ってるんじゃないのか?さっきからデスクの上の書類減ってないし。
「大勢、か……そうだ、他の子のところにも教えに行くってのはどうかな。僕は仕事で無理だけど、さっきの質問内容はコピペしたから持っていっていいよ」
「え、いいのか!」
まじか、いいやつすぎるだろリュウ!一度無断使用されているされてんのに、俺なら二度と貸さないが。
「あ、それいいね!トツカもいい?」
「別にいいぞ」
だが、サバンナエリアって広いしなぁ。どこに誰がいるかなんてわからないんだが。
~数分後~
だがそんな不安は杞憂だった。歩いてすぐ、金色の大きな毛の目立つ少女を木陰に見つけ、早速向かう。
「おーい、らいおーん!」
「うにゃ……なに?」
ライオン、そう呼ばれた彼女は、眠たげにこちらに振り向く。
「久しぶりだな、ライオン。ちょっと遊びに付き合ってくれないか?」
「トツカ、久しぶり。いいけど、できるだけ早く……ふぁ〜あ」
快諾しつつ、気持ち良さげに欠伸をする。にしても昼寝、ちょっと羨ましい……じゃなくて。
「それでは、質問1!」
気を取り直して宣言し、質問文を読み上げてゆく。
「バルコニーにいたあなたは、外で男が窃盗するのを目撃しました。その後男はこちらを向き、指を一定方向に動かしています。男の意図は?」
「うーん……映画とかなら、『待ってろー』とか」
「えー、怖すぎるよー!私は『見なかったことにしてー!』って頼んでるんだと思うな」
おうおう、皆様考えられますねぇ。っつーかサーバル、見逃しては流石に通じないからな。お前だって普段カラカルに見逃してもらえず怒られてんじゃん。
「それでは、サイコパスの場合は……」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、脅すように低い声で発表してやる。
「……あなたのいるのが何階かを数えている、でした」
その瞬間、答えを楽しみにしていた2人の背筋が凍りついていくのが見て取れた。
「あわ、あわわわわ……現実的で怖いよ……」
「ゾワッとしたろ?」
でもそこが楽しいんだけどな。とくにサーバルなんてさっきっから震えてばっかりだし、これ、クセになるかも……じゃないじゃない、肝心のライオンは……
「へー……むにゃ……」
「あ、もう寝てるー!んもう、マイペースだなぁ」
~移動中~
さらに歩くこと数分、早速
「ほう、診断か。なかなか面白そうだ」
「楽しんでくれればこちらとしても嬉しいからな」
「怖くもあるけどねー」
挨拶もそこそこに、サーバルが文を読み上げる。
「バリーは人をその人の家まで送ってあげているよ。でもその人は無礼で不愉快で、懲らしめたくなっちゃった。なのにちゃんと家まで送り届けて何もしませんでした。なーんでだ?」
「原文を脚色すんな」
原文ママで読め、ママで。とにかく、バリーはどう回答すんだろうな?大方予想はつくけど。
「うむ、やはり相手が無礼とはいえ忍耐も礼儀の1つ。我慢したのだろう」
うん、そう来るよね。とくに礼儀を重んじるバリーならそう答えると思ってたよ。だが残念、それじゃあ一般人の回答なんだなぁ。
「では正解はー?」
「正解じゃなくて、サイコパスの回答な」
正解なんてないし、むしろ当てちゃダメなやつだし。
タメによる沈黙が流れた後。
「……デデン!一度相手の家まで行って、下見……」
………
「し、下見に、行ったんだよ……」
「自分で言ってて怖くなったとはいえ最後まで言い切れよ」
とにかく、今度襲うために下見をしに行った、というものである。バリーならきっと「それこそ無礼だ!」とか「正面から戦え!」とか言いそうだが、どうだ?
「……ほ、ほう、そそそそうなんだな……」
……あ、こういうのダメな性格だったか。
「バリーは怖い系はダメだったんだな。サーバルに似たような感じかな?」
「そ、その……あまり慣れていないものでな」
「大丈夫だよ、私もとっても怖かったけど楽しいし!」
いやー、前のセルリアンとの戦闘でも果敢に戦ってたから、こういう一面があるっていうのは初めて知った。いや、単にアニマルガール自体が怖いの苦手系のヤツ多いだけかもしれんけど。
「よし、次はどの子に質問しに行こっか。バリーは近くに誰かいるか知らない?」
「それなら、向こうでさっき3人ほど見かけたぞ」
向こうか……そんな遠くないし、ささっと行っちまおう。
~数分後~
そんなふうに考えていると、おそらくその3人であろう集団の声がした。
「あれ、トツカにサーバルじゃん」
「なんか面白そうなの持ってるね。それ、この前言ってたスマホってやつだよね?」
「みんなー、もっとゆっくり行こうよー」
その3人とは、アミメキリン・ケープキリン・ロスチャイルドキリンのキリン三姉妹である。
話によれば、暇だからということで適当に散歩してたらしい。それでも暇だったらしく、こちらの誘いにも二つ返事でOK。
「……って遊びだよ!やり方はわかった?」
「ま、だいたいわかったよ。とにかくその答えを当てればいいんだよね?」
「だから当てるんじゃないんだっての」
なんでそんな当てたがるんだ。
「おほん、気を取り直して質問3。
あなたたちは、おもちゃを大切にするよう訴えかけるブログを作ります。どんなおもちゃの写真を載せますか?」
「そうだねー、私はおもちゃで遊ぶ写真かな。遊べて写真も撮れて一石二鳥!ってね」
「私もアミメキリンちゃんやロスっちちゃんと遊べたらいいかなぁ」
これまた平和な回答だな……てかケープキリン、お前ただ他2人と遊びたいだけじゃねぇか。
「ちなみにサイコパスの答えは……」
「私はー、おもちゃをばらばらにして行った写真を逆の順番に貼ればー、おもちゃを直してるみたいになっていいと思うよ」
そうそれ、おもちゃを壊していく写真を順番を逆にして……ん?
「え、今なんて……?」
「だから、ばらばらにする写真を反対の順番で載せるんだよー。その方がたくさん見てもらえるし、後でまた直せば、遊べるでしょ?」
「おー、アッタマいいねー!」
え……?いやお前、だってそれまんまサイコパスの回答じゃねぇか!
いや待て、たまたまだろう。そもそもアミメキリンはそんな危ないやつではないし、適当に言ったのが当たったってだけのはず。
「……アミメキリン、5000円でピコピコハンマー買うなら、5000円と500円のやつどっち買う?」
「んーっと、安い方をたくさん買って、このマフラーみたいにぺちんぺちんするかなぁ」
……あ、間違いない。
「……お前が言ったの、全部サイコパスの回答だぞ」
その後、ジャパリパークにアミメキリンを怒らせてはいけないという噂が立った。
アミメキリン「サイコパスってなんなのかしら?」
これから10話ほど、今回のような1話完結型にしてみようと思います。