アニマルガールは中学生~大学生くらいの体をしている。その大きさは元の動物の大きさによって左右されるが、少なくとも「大人」の状態で現れることはない。つまり、女の「子」しかいないのだ。
……今席を立った方々へ、出口はあちらになります。
かといって、中身も完全に子供、というわけでもない。確かに大半はバカ・アホ・ドジの三連コンボだ。だが中には学者顔負けなほどの頭を持つヤツもいるし、体力に関しては等しくぶっちぎりで抜いている。
「……だからって酒を飲んでいいわけではねぇと思うが」
俺は1人、目の前に5本ほど置かれた空の缶ビールと、倒れこむ
どうしてこうなったのか。それはこの部屋へ来る前まで遡る。
「だーっ!疲れましたよ〜」
「お疲れだったな。まぁ早く終わった分いいと思って休んでこい」
「ガイドさん最近たくさん仕事あったもんねー」
フラフラのミライさんを3人がかりでもって自室まで押し込む。さすがに自分で歩いて欲しいと思ったが、モフってこなかっただけ良しとしよう。
「毎日大変だね。私たちもあんまり手伝えなかったし……」
「お前らは仕事を手伝ってたんだな。なにしてたんだ?」
「応援してたよ?このマフラーでパオパオしながらね」
そう言ってまるで手伝いになっていない手伝いを自慢するヤツと、苦笑いしながらこちらを向いているヤツが、今話し相手であるアフリカゾウとアードウルフのアニマルガールだ。
「大体、パオパオするってなんだ?今日リンゴ乗ってないけど、そのマフラーでなんかすんのか?」
「そうだよー……って、いつも乗せてるわけじゃ無いから!」
おほん、と咳払いを挟み。
「えっと、パオパオするっていうのはね。アードウルフ、ちょっといい?」
「え?あっ、うん。いいよ」
「へへっ、じゃあ失礼するねー。で、これをこーやって……はい、できあがり!」
説明しつつ、アードウルフの首にマフラーをかけていく。あ、なんかすごい嬉しそう。
「すごくあったかいんだぁ。でも、ちょっとガイドさんにはやんなかった方が良かったかもね」
「そうかなぁ。私はやってもやられても悪い気はしないんだけどね、ぱおぱお」
「ぱおぱお?」
「ぱおぱお!」
「こらこら、謎言語で会話すんな」
2人の知能が退化する前にマフラーを解かせる。こらミライさん、そんな物欲しそうな目でこっち見てもやらせんぞ。ぱおぱお。
「そういえば、トツカちゃんはなんでここに?」
「んー、お前らと似たようなもんかなー」
俺の場合、昼間にカラカルに本の返却を頼まれてスタッフ宿舎のほうまで行くと、ちょうどこれなのだ。厄介ごとの匂いを感じたけど、それも今更かと考えて諦めた。
「みなさん……今日は……ありがとうござい……グフッ」
「ガイドさーん!?」
そんな死にそうになる程でも無いだろ、2人に囲まれて嬉しそうな顔が丸見えだわ。ベットに倒れかかる演技をしてまで俺らに食いついて欲しいか。
「とにかく、そんなグデーってすんな。ほら、ちゃんと立って」
「えー、でもひどくないですか?あんなに仕事させられたら誰だって……」
「あ、じゃあ今度コアラちゃんのところに連れて行ってあげるよ?」
「ほんとー!?」
「うわっ、ガイドさんが急に元気に!」
……本当に極端な人だな。
そうしてミライさんを立たせていると、アフリカゾウが口を開いた。
「ねぇガイドさん、私ちょっと喉乾いちゃったんだけど、お水ってない?ここからいつもの水場までは遠いし」
「あ、それならウォーターサーバーが」
「確かそれ故障中だったぞ」
そこ、「えー?」って顔でみんな。俺は悪くないから。
でもさっきちらっと見ただけだったし、まぁ念のため……と見に行ったものの、やはり故障中であった。
「うーん、困りましたね。最近この部屋には戻ってなかったので、飲み物はあまりないんですよ」
最近戻ってなかったって、いったいなにを……あ。
「もしかして、あの特別招待なんちゃらってやつ?」
「はい!来るべきガイドの時のため、いろんなところを回ってたんです!」
「それで疲れてたところにちょうど私とアフリカゾウちゃんが通りかかって」
つまり単にサバンナ回りたくて仕事後回しにしてたツケが来たってことらしい。自業自得である。
「今の時間帯は仕事でほかのスタッフもいないですし、どうしましょう……」
「あのー、これってなにかな?使い方がわからないんだけど」
アフリカゾウが指を指した先は、部屋の隅の方。あの四角いフォルムは。
「きっと冷蔵庫だな。多分中に飲み物がある」
「わーい!ガイドさん、なんかテキトーにもらうねー」
「あ、だからその中は」
まったく、タイミングよく見つかるのなんなんだよ。むしろなぜさっきまで見つからなかった、てかミライさんも冷蔵庫あるならさっさと言ってくれれば……
ガチャッ
「……おい、これって」
中には、飲み物が数本入っていた。
とは、いっても。
「……全部缶ビールじゃねぇか! 」
「だから飲み物は無いって言ったじゃないですか!」
いやいや、おかしいだろ!なんでビールだけがこんな入ってるのかがまったく解せない。いや、確かに買い物してなかったからなにも無いってのならわかるよ?
「これ飲めるの?……あれ、開かない」
「あ、ほら、ここにあけ方が書いてあるよ、この通りに」
「っておい、お前らが飲めるもんじゃ無いからしまっとけ」
勝手に缶を開けようとしていた2人を制止する。こらミライさん、あんたもだかんな。
「こりゃ買ってくるしかなさそうだな」
「じゃあお金はそこからとってくださいね、あとお店は一階です」
「いや俺が行くわけでは」
「じゃあ私、アードウルフちゃんとガイドさんで3個ね」
「え、俺の分は?」
「お願いしますね」
……あ、はい。行ってきます。
~現在~
「んで、結局我慢できずに飲んだと?」
「そうりゃよー。とちゅかちゃんものむー?」
アードウルフ、お前舌回ってないし。
「それよりもほら、水を飲め水を」
そう言ってビール缶を向けてくるアードウルフに買ってきた水入りペットボトルを尻尾で渡す。……この尻尾、俺の手より器用なんじゃねぇのか。今度から尻尾で字を……はさすがにやめよう。
「あとおまえらビール持ってきていいとは言ってないぞ」
「なんで?まだまだ飲むから必要だよー」
まだ飲むって、アフリカゾウお前顔真っ赤だぞ。
とにかく、このままだとここで一夜過ごすことになる確信がついた俺は、ほか三人と先ほどより大きめの部屋に移動しているというわけだ。
「だって普段外に出さない運営が悪いんですよー!あんな部屋にずっといたら病気になっちゃいますー!」
「そうだよー!よくわかんないけど、うんえい?っていうのは悪い動物に違いないねー!」
そしてミライさんとアフリカゾウの2人はなぜかジャパリパーク運営陣に対する愚痴を大声で喋っている。それ言ってて大丈夫なのか?
「このおさけって、ほんとーにおいしいよ。トツカもほらー」
「ぐ……」
たしかに、言われてみればこの体になってからまだ一回もお酒は口にしていない。たばこは前世から吸ってなかったしお酒も言うて飲んでたわけではないが……
「一杯だけなら大丈夫れすって!」
「……まぁそうだな。できるだけ注意はするが」
このまま俺まで酔ったら明日部屋の中で折り重なって寝ている形で発見されかねないが……少しなら、うん、少しくらいなら。
「……それじゃ一本」
「あ、待って!」
アードウルフ達は俺が開けようとした缶に、それぞれ自分のをカン、とぶつけた。
「こういう時は、かんぱい、っていうんだよ」
酔いで仄かに紅い頬が、天使のように小さく笑った。
「お、おう……」
普段見せない積極的な姿勢に、つい意識してしまう。
……酔ってんのかな、俺。
~数時間後~
結論から言って、俺自身はなんともなかった。尤も他3人はひどい有様だが。
因みに飲んでる途中で「猫って酒飲んでよかったっけ?」と思ったが、自分がピンピンしてるあたりどうやら杞憂に終わったらしい。よくよく考えれば、前世でも飼ってた猫が俺の缶ビールの残り舐めてて平気だったこともあったし、多分問題ないんだろう。
だが、問題はこっちだった。
「布団敷くの忘れてたなんてな」
ミライさんの寮部屋では小さいし同室のリザさん(ミライさんの親友のスタッフさん)に迷惑がかかりそうなので布団であるこっちに移動したわけだが、空き缶も転がってて一回掃除せんといけなかった。
「しかも俺以外は全員熟睡……っとぉ、これでおっけぃ」
ふぅ、ようやっと終わった。アニマルガール化の恩恵ってのもありそんな重くはなかったが。
「でも結構疲れたぁ。こりゃ明日は筋肉痛だな」
まぁ──
「すぅ……すぅ……」
「はぁ……ん……」
こんなかわいい寝顔見せられて、断る奴いないだろうけども。
「──おやすみ」
アフリカゾウ「うっ……な゛ん゛か゛き゛も゛ち゛わ゛る゛い゛」
アードウルフ「だいじょうぶー!?」
主自身が酔ったことがないため、酔いの表現がひどいのはご了承ください。