平凡人間の転生守護獣日記   作:風邪太郎

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第21話 カコ博士~Suspicion~

 最近、疑問に思っていることがある。カコさんについてのことだ。

 

 疑問と言っても別に深いことではなく、ましてやカコさんのことを疑っている、というわけでもない。期限付きとはいえ俺のデータもしっかりと取ってくれているし、コミュ障のせいで普段話さないものの仕事は真面目にこなしてるらしいし。あと仕草が可愛い。美人。

 

「……なんか途中から変人になってるぞ俺、しっかりしろ俺」

 

 とにかく、不思議に感じたことがあったわけだ。幸い、今はカコさんのことをよく知っているというミライさんが休暇ということでちょうど隣にいる。基本俺に愚痴ってるだけだが。

 

「というか、前酒に酔ってた時も思ってたけどそれ聞かれたらマズいんじゃないのか」

「あ、確かにそうですね」

 

 今気付くなや。しかもそのまま愚痴を続けるっていう。だが俺はさっきからそんな運営への不満より気になってることがあるんだ。

 

「いやぁー、最近は本当に仕事が多すぎて……って、どうかしましたか?さっきからずっと前をボーッと見て。何かあったんですか」

「んぇ?ああ、それねー」

 

 ミライさんとカコさんは古くからの友人なんだそうで、なんでもジャパリパークのパークガイドを目指したのもカコさんの影響が大きいらしい。

 

「ミライさんってカコさんと仲いいんだよな?友達らしいが」

「突然ですね……はい、小さい頃に動物園で色々教えてもらったのがきっかけで」

 

 へぇー、動物園で出会ったんだ。正直あんまりイメージつかないが。

 

「教えてもらったってことは、2人はどっちかっていうと先輩・後輩みたいな仲なんだな」

「まぁある意味そうですね。初めて会った時、カコさんに園内にいた動物の解説をしてもらったんです。普段とは違ってマシンガントークでしたよ」

 

 まぁ、それだけ付き合いが長ければこの疑問も数秒で片がつくだろう。

 

「なぁ、カコさんって──」

 

 俺は、思っていたことをそのまま口にした。

 

 

「──人間じゃないよな」

 

 

 沈黙。キョトンとしたミライさんを表すならその言葉が適切だったろう。

 そして。

 

「──ぷっ、あはははは!」

「おいおい、あんまり大きな声を出すな」

 

 そのまま堰を切ったように笑い転げた。いや、あのね?確かに俺の言い方も悪かったけどさ、そんな笑うところでもなくない今の。

 

「はは、ごめん、なさい、ふふ、でもその、人間じゃないって……ぷぷ」

「……ミライさんなんか勘違いしてない?」

 

 別に俺はカコさんのことを地球外生命体とも未確認生物とも言ってないからな。勝手にミライさんが妄想しただけであり、俺は知らないからな。

 

「だって人間じゃないって、確かにカコさんは動物の話になると普段の性格からは考えられないほどのけもの好きになりますけども」

「そのことを疑問に思ってたわけじゃないし、だいたいそれミライさんも大概だぞ」

「へ?」

 

 いや、「へ?」ちゃうがな。むしろ今まで自覚なしであの痴態を晒してきたことに驚きだよ。

 

「え、じゃあどういう意味で言ったんですか?」

「自分の性格に関してはノーコメントか……これは前にカコさんとリュウとで色々話し合ってた時のことなんだけどさ」

 

 ~数日前~

 

 研究所内で、俺はいつものようにカコさんやリュウと検査という名目の会話をしていた。

 内容、と言っても大層なことを話していたわけではないが、ある時それが動物の話題につながったわけだ。

 

「……って感じでこの職に就いたんだ。ここの子達の名前を覚えるのには苦労したよ」

「むしろ覚えられたのか、すげーな」

「いやいや、そんなことないさ。周りのみんなの方が覚えるの早くて、何度かいじられることもあったくらいで」

 

 謙虚だなぁ……俺なんてゲームやってたけど5割も覚えてないかもしれん。コンプできなかった、ってのも一因ではあるが。

 

「それにカコ博士に比べたら僕なんて到底足元の塵にさえ及ばないさ。動物好きの僕の友達でさえ、慕ってやまないからね」

「えっ!?わ、私ですか……?」

 

 先程まで俺の尻尾を心地よさそうに触っていたカコさんは、ビクッと体を跳ねさせた。尻尾撫でてもらうの気持ち良かったんだが……いかんいかん、思考が猫化してきてた。

 

「カコさんは、どうしてジャパリパークの研究員……てか、副所長だっけか。この仕事に就いたんだ?」

「ここに就いた理由……」

 

 うん、聞いといて悪いけど実はだいたいわかってるんだよな。日頃の感じから推察は……あれ?

 

「…………」

「……おーい、カコさん?カコさーん?」

「カコ博士、どうかしましたか?」

「ふぇっ!?あ、いや、なんでも」

 

 そんなに悩む事か?あ、あれか、恥ずかしいんだな。性格考えればあり得る話だった。

 

「えーっと、私は、もともと子供の頃から動物が好きで、ここに入った……です」

「つまり小さい時からずっと動物に関しては無敵とか、そんな感じか」

「ち、違います!確かに動物は好きですが、そこまでは……」

 

 そう言って顔を赤くし、俯いてしまう。見てるままってのもそれはそれで味があるが、俺もそこまで鬼ではないんでな。

 

「じゃ、せっかくだし動物……そうだな、この前ゲームしたジャイアントパンダについて教えてくれ。まさか知らないなんてことないよな、なーんて」

「あ、いえ!そんなことないです!ジャイアントパンダは古来貘に間違われたこともあるほど有名で……」

 

 おうおう、ちょっと煽ってやっただけなのにすごい話すな。さすが動物好きの名は伊達じゃないって所か。取り敢えず話に入ってはこれたようだ。

 

「実はジャイアントパンダは指が7本あるって知ってました!?あれはもともと物をつかむために発達したので厳密には指じゃないんですけど」

「ああ、聞いたことありますね、『偽の親指』でしたっけ」

 

 ……カコさんは話に入れたけど専門的になりすぎて逆に俺が入れなくなった。

 まぁ別に本人が楽しければ構わな……

 

 

 パタパタ

 

 

「……ん?」

 

 瞬間、俺の目がカコさんの頭に何かを捉えたような気がした。

 

 

 パタパタ

 

 

 そして、二回目の視認で確信に変わる。

 俺は、見てしまった。

 

「え……」

 

 カコさんの頭にある尻尾の形の髪飾りが。

 

「あわわ……」

 

 

 パタパタ

 

 

 確かに跳ねたのを──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~現在~

 

「きゃああああ!?」

「だーから、大きい声を出すなって」

 

 最初は爆笑で、次は悲鳴て。つっても俺にとってはそれこそ恐怖体験だったが。

 

「というかそれで『人間じゃない』ですか……でもそれって本当ですかね?私もカコさんと話したことはありますけど、そんなとこ見たことないですよ」

 

 あり、ミライさん見たことなかったのか。あの髪飾りについてなんか知ってると思ったんだが。

 

「えー、でも俺も確かに見たはずなんだよな。なんなら今からでも確認しに行くか?」

「今からって、どこにいるかわかるんですか」

「たぶん研究室。違ったら捜索……の必要はないみたいだ」

 

 はてなマークを浮かべて首をかしげるミライさんに、ほれ、と指を指す。流れからわかるとは思うが。

 

「あ、カコさんだ!久しぶりですー!」

「えっ!?っとと、ミライ!」

「また会ったな」

 

 こちらに気づいたカコさんが書類を拾い上げつつ走ってくる。あ、本人いるし直接聞く?いや、さすがにそれは失礼だな。

 

「っと、トツカさんもここに……」

「普通にトツカで呼び捨てで構わないぞ」

 

 あと前から思ってたが敬語もいらない、と伝えておく。慣れないだろうけど頑張ってくれ。

 

「ミライ、キョウシュウの方にいたのね……というか、いたなら知らせてくれれば」

「あ、待ってください!ちょっと質問があるんですけど」

 

 あ、バカ待てって!

 

「カコさんの頭のソレ、動くんですかっていたたた!それはサーバルさんにやるやつじゃないですか!」

「あのなぁ、親しき中にも礼儀ありって言葉知ってるかゴルァ?」

 

 サーバルの同類かあんたは。カコさんも笑ってないで何か言ってやりゃいいのに。

 

「それで、この、これが動くかどうかって?」

「ん、まぁ単刀直入に言うとそうなんだが」

 

 俺は結構疑問だったが、カコさんは即答だった。

 

「そんなことはない、かな。お店で買った、普通のやつ、ですし」

「あ、そうなんだ」

「ほら、やっぱり私の言った通り違ったじゃないですか」

 

 ぐ……言い返せない自分が憎い……

 

「言った通りって、どういう?」

「そうだ、ジャイアントパンダさんのことを話してたんです!」

「違うからな?」

「ジャイアントパンダさんは尻尾が黒いと思われがちですが、実はクリーム色なんですよ!」

「そうそう、よく汚れが原因で尻尾の黒いぬいぐるみもよく見るけど、実は白いのよね!」

 

 あ、カコさんが飲み込まれた。こりゃ俺はもう入れな……

 

 

 パタパタ

 

 

「……この音は」

 

 え、まさかカコさん……あれ、動いてない。

 

 

 パタパタ

 

 

 また聞こえる……じゃあどっから?

 

「……まさか」

 

 恐る恐るミライさんの方を向く。

 

 そして、目に入ってきたのだった。

 

 

 パタパタ

 

 

「えっ──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミライさんの帽子についている2枚の羽根が、パタパタと動くのを──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




というわけでカコさん回でした。カコさんはミライさんの前なら普通に話せるっていうのを表現したかったんですが、僕の稚拙な文章力ではダメでした。ここも要勉強です。
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