平凡人間の転生守護獣日記   作:風邪太郎

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第22話 風邪~Lullaby~

 ザーッ……

 

 

 

「やばいよやばいよ、なんか強くなってきてる!」

「とりあえずは研究所に急ぐぞ」

 

 

 俺たちはちょっとした危機に遭遇していた。

 

 

「だっ、よっ……地面がぬかるんでて歩きづらいな」

「うぇぇ〜、草が服にくっついてくる〜」

「そんくらい我慢しろ」

 

 

 ここは恒例のサバンナエリア。ここは普段はその暑さや乾燥っぷりが有名だ。そのせいか普段アニマルガールは見かけず、動物も見えるのは基本水飲み場でくらいである。

 

 が、そんなサバンナエリアにも実際のサバンナ同様に雨季がある。

 

 

 ザザーッ

 

 

「うわ、もっと強くなってきてないか?こんなん聞いたことないんだが」

「私も何回か雨季は経験したけど、今日は一段と強いね」

 

 一段とって、運悪いな俺……ついさっきまで心地よく昼寝をしていたのに、突然ザーッと降り出してきたから本当に今日はツイてない。特に俺は今回が初めてだし、対処方法が全くわからん。

 というわけで、研究所にダッシュしているのd

 

 

 ドテッ

 

 

「うみゃああああ!!」

「なんでそこで転ぶんだって俺を引っ張るなああああ!?」

 

 

 ズザーッ

 

 

 ……本当に今日はツイてない。

 

 ~研究所~

 

 

 いろいろあってなんとか辿り着けたが、数時間ずっとサバンナ走り回ってたせいで俺もサーバルも完全にびしょ濡れだ。うう、さむっ……

 

「あ、みんなここにいるね。やっぱり雨宿りかな」

「だろうな」

 

 研究所内にはいつも通りのスタッフと悪天候により暇を持て余すアニマルガールがいた。道中あまりアニマルガールには会わなかったんだが、どうやら大半はここに来たらしい。

 

「とりあえず体洗いたいし、シャワー室行くか」

「ブルルッ、私ちょっとタオル借りてくるね」

 

 そんな犬みたいに体震わせんな、雨がこっち飛ぶだろ……まぁいいや、ちゃんと戻ってこいよー。

 さてシャワー室だが、確か角曲がってずっと奥だった気が……あ、あったあった。アニマルガールも入って大丈夫だよな。

 

「……あれ、なんか案内板に貼ってある……?」

 

 ペラッ

 

『シャワー室修理につき使用不可』

 

 ……ワーオ、マジか。

 というか修理って、なんでこの最悪のタイミングでこうなるんだ。前のウォーターサーバーの時もそうだが、ここの施設肝心な時に動かない役立たずが多すぎだろ。

 

「……トツカー、シャワー室は?」

 

 暫くしたらサーバルがタオルで頭拭きながら戻ってきて、はい、と俺にもタオルをくれた。お、意外に気がきくな、サンキュー。

 

「で、その紙何?どこにあったの、向こうの掲示板?」

「んなわけあるか。ほれ、見てみろ」

 

 パッとサーバルの前に先ほどの紙を出してやる。最初は意味がわからなかったようだが、だんだんと理解したようで露骨に嫌そうな顔をした。

 

「えー、お風呂は入れないのかー。こんなにびしょ濡れなのに」

「そうは言ってもどうにもなんねぇだろ。俺は無実だからこっち向くな」

 

 だが本当にどうしたものか。この不快感のままで今日を過ごすのは辛いぞ。服を着替えたら体を拭いて、残りは……ま、あとで考えよう。

 

「なぁサーバル、せめて体拭くくらいはしたいからまずは部屋借りに「へっくしっ!」

 

 一応念のため言っておくが、今のくしゃみは俺のではない。

 

「うぅ、わかっ……ごほっ!わかった、からぁ、うぅ、さむいぃ……」

「おいサーバル、大丈夫か?さっきからくしゃみやらいろいろ酷いが」

「たじがに、そうだげ……へっくし!ど、なんか、ごほっ、寒気が……」

 

 ……うん、それもう確実にさ。

 

 

「……風邪だな」

 

 

 ~別の部屋~

 

 ピピピピッ ピピピピッ

 

「お、出たな。どれどれ見せてみ、何度だ?」

「えぅ……はい」

 

 マスクをつけたサーバルから体温計を受け取り数値を読む。と同時に、スタッフさんからもらったアニマルガール用の風邪薬も取り出す。

 

「九度八分、十分高熱だな」

 

 くしゃみや咳はだいぶ治まったが、逆に熱が出てきたようだ。

 

「状況からして明らかに風邪だ、専用の薬もらってきてるから飲んどけよ」

「……苦い?」

「たりめーだ」

「やだー!苦いのやだぁー!」

 

 こらこら騒ぐな……子供じゃないんだからやめろ、みっともない。

 にしたって、いくら雨にさらされたとはいえあの強靭な体を持つアニマルガールが、特にあのバカのサーバルが風邪をひくとは。「バカは風邪ひかない」ってよく言うのにな。

 

「じゃあ先に服着替えて、そのあと飲むでいいでしょ?必ず飲むから!」

「……飲んでくれるなら構わないけども。その代わり絶対飲めよ?」

「は、はは……」

 

 意地でも飲ませてやっからな、覚悟しとけ。

 

「そんじゃ、まず服脱がせっから上体だけ起こすぞー」

「あーい」

 

 んーと、この辺を支えて……

 

「「せーのっ」」

 

 よいこらせ……っと。

 

「それじゃ、頭拭くからなー」

 

 そばにあったタオルを掴んだまま後ろ側に回る。向けられたびしょ濡れの……黄色?の後頭部が現れたので、それ目掛けてタオルを上からかぶせやって……と。

 

 ぽふっ

 

「わふっ」

 

 そのままかき回しながら、ゆっくりと水滴を吸い取らせる。わしゃわしゃわしゃー……

 

「あふっ、ふぁ、わふぁ、ふぅ」

「声出すな、なんて言ってるか聞き取れないけども」

 

 てかなんだその声。「わふ」だの「あふ」だの、忙しいやつだな。

 

「……うしっ、これでおーわり。次は体だな」

「体も拭くの?あぅ、ふぁっくしゅ」

「って、こっちにくしゃみすんな」

 

 マスクかけてるから関係ないんだろうが。まぁ、どうせびしょ濡れなんだろうし、風邪悪化するかもしれんから着替えるついでに吹いておこうと思ったわけだ。

 

「じゃあ着替え持ってくるから、服のボタン外しとけよ」

「わかった、いしょ、よっと」

 

 えー、着替え着替え……っと、こんなんでいいか。下はスカートだから変える必要もないし、ニーソだけとって寝かせておくかね。あとタオルも濡らしておかねぇと……

 

「ボタンとれたかー?」

「とれたけど、体にくっついちゃって脱げないから手伝って」

「だぁーもう、しょうがねぇな」

 

 服くらい自分で脱いで欲しいんだが。シャツだしあんまり難しくはないけど。

 

「ん、オペラグローブに引っかかってんな。一回とってくれるか」

「オペラグローブって、この腕のやつ?いいよー」

 

 あ、今更だけど俺中身男だったな。裸見て大丈夫なのか?

 

……いやそういえば、なんかこの体になってからそういうの全く感じなくなったんだっけか。気づいたときは喪失感が半端なかったけど、今はもう慣れたし……うん、慣れたし。別に悲しくなんてないし。ぐすっ。

 つかそれ以前に、 サーバルに対してこう、色気というものを感じたことがない。

 そんなことを考えつつ、サーバルの脱いだ衣服を畳んでいく。自分で言うのもなんだが結構うまいな。

 

「……うん、おっけー、脱ぎ終わったよ。あ、この胸のやつも取る?」

「替えを持ってないからダメだ。あと単純に洗濯室に持ってくのめんどい」

「めんどいって、トツカは怠け者のアニマルガールなんだね」

「なんだって〜?(スッ)」

「あわ、待って待って!」

 

 パッと頭を抱えて身を構えるサーバルの体へ拳の代わりに濡れたタオルを当ててやる。うわ、凄い濡れてんな。てことは俺もこんだけ濡れてんのか今?

 

「はぁー、気持ちいー……ひんやり冷たいし、なんかスッキリしてくる」

「そりゃよかったな、ういしょ……よし、背中はもう十分拭いたな」

 

 拭き終わった背中にワイシャツを被せてやる。これで第一目標はクリア、だな。

 

「ありがとー、お礼に今度は私がトツカのこと拭いてあげるよ!」

「構わないが、風邪が俺に移るからまた今度な。それよりも約束、守れよ?」

 

 んな「えっ」みたいな顔すんな。体拭いたら薬飲むっつったのお前だろ。

 

「うぅ、粉薬は私一番嫌いなのに……むっ、背に腹はかえられぬ!一番サーバル、行きますっ!」

「そんな体操選手みたいな前振りいいから。はい、これ水」

 

 水入りのコップを受け取りつつ鼻をつまみながら薬を飲むサーバル。それを見ながら、カラカルがいたらめちゃくちゃ笑い転げるんだろうな、なんて思っていた。

 

 ~数時間後~

 

 雨雲のせいで外の明るさの変化がわかりにくかったが、おそらく今は夜の時間帯なのだろう。だって俺が眠いし。

 

「ふぁ〜あ、トツカ、眠くなってきたね」

 

 マスクの下から欠伸が現れ、つい俺もつられてしまう。

 

「ふぁ〜あ……そうだな」

 

 なんせこの数時間ずっとつきっきりの看病だったからな……他の奴らもお見舞いに来てたが、その度に前やったテレビゲームだのなんだので遊ぼうって言っては俺が制止することになってたから重荷でしかなかったからな。

 

 

「お前は病人な訳だし、今日はもう寝とけ。子守唄でも歌ってやろうか?」

「あ、私トツカの歌聞いてみたいな」

 

 げっ、まじか……んー、墓穴掘っちまったな。

 

「……今回だけだぞ、他のやつには内緒な」

「とくにカラカルには、でしょ?」

「わかってるならよろしい」

 

 さて子守唄ねぇ。俺が知ってんのってゆりかごの唄くらいだけど、別にこいつら知らなさそうだしいっか。

 

 えー、おほんっ。

 

 

 

 

 

 

 揺り籠の唄を

 

 

 

 金糸雀が歌うよ

 

 

 

 ねんねこねんねこ

 

 

 

 ねんねこよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ねぇトツカ」

「んぁ、なんだ?」

「……ふふっ、なんでもないや。ありがと」

「……なんじゃそりゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~数日後~

 

「わーい、治ったー!これでもう薬飲まなくていいんだよね!」

「普通それを喜ぶか?」

 

 ま、なんにせよ病気が治ったのは良いことだ。さすがに数日も俺が看護することになるとは思わなかったが、これにて一件落着と……

 

「ふぇっくしゅ!」

 

 ……正直に言おう。今のは俺のくしゃみだ。

 

「あ、トツカ今くしゃみした?ってことは風邪ひいたんじゃない?」

「うぅ、なんかさむい……ってことは、お前からうつっ、へくしゅ!移ったってことか、ぶるるる……」

 

 寒気がやばい……まさか俺まで風邪にかかるとは。

 

「あ、そうだ!今度は私が看護してあげるよ」

「サーバルが介護とか不安しかないのですがそれは……さむっ」

「む〜、私だってできるもん!えーっと、お薬飲ませて寝かせとけば良いんだよね?」

「やっぱ不安しかねぇ!はっくしゅん!」

 

 

 

 その後、俺が健康になるまで数週間かかった。

 

 

 




▶︎おめでとう! トツカ は トツカママ に しんかした!
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