平凡人間の転生守護獣日記   作:風邪太郎

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反省はしている、だが後悔は(ry


第24話 憩~Massage~

 ~サバンナ、カラカルの縄張り~

 

「じゃ、また後でなー」

「はいよ……」

 

 他のアニマルガールと別れ、草原に突っ込む。

 

「だぁ〜、きっつ〜……」

 

 ぐはっ……身体中が痛いのなんので辛すぎる……もうダメかもしれん……

 

「あら、誰かしらあの子……って、トツカじゃない」

 

 カラカルがしゃがんで顔をのぞかせる。

 

「なにその浜辺に打ち上げられた魚のようなポーズしてんのよ」

「なんだそのポーズ……じゃなくて、的確に言い表すな」

 

 そこまでひどいポーズしてるか俺。

 

「で、何があったの?あ、わかった、道中でバリーにあって練習に強制参加でしょ。それともサーバルがなんかドジやらかしたの?あとはロスっちとアフリカゾウとにまた絡まれたとか」

「全部だ」

 

 

 沈黙。

 

 

「……え、全部?」

「ああ、全部」

 

 声を絞り出してカラカルに答える。そんな面食らった顔されても困る、実際俺もなんでこうなったのかわからん。

 

「うそでしょ、だってあんた運が呆れるほどないけど、流石にそこまで引っ張りだこにされるほどなんて」

「それが本当に引っ張りだこにされてきたんだよ。ついでに言うとさっきお前が挙げた例より多くやってきてる」

 

 今朝俺は早起きしたからと散歩に出かけた。どうやらこれが今日の俺にとって最大の過ちとなったらしい。

 

 開始30分ほどでバリーに遭遇。「朝から鍛錬か、私もつきあおう!」と謎の勘違いをされた結果1時間ほど木を相手に殴る蹴る挨拶をする。必殺技の練習もしたが、バリーはあの場にいたとはいえなんで俺のあの必殺技名が普及してるのか非常に不思議だ。あと恥ずい。

 

 なんとか別れた後に今度はサーバルに会い、だだっ広いサバンナの中でカラカルに借りた本を無くしたというので探すのをこれまた1時間ほど手伝った。砂漠が美しいのは井戸を隠しているからとはよく言ったものだがサバンナは本をサーバルの寝床に隠すらしい。うん、そして今の話において俺は悪くないからその右手を下ろしてくれカラカル。

 

 そして今度は全員で2つのマフラーを巻いてフラフラと歩くヒョウ姉妹とアフリカゾウ、ロスっちことロスチャイルドキリンに出会って3秒で合体(マフラーを巻きつけられる)。感想としては暑苦しい・歩きづらい・前も聞いたがパオパオって何、以上。

 

「後はニホンオオカミと木の実集めたり、知らないアニマルガールに会ったり、だな」

「なるほどね。あんたが起きたのを5時として、今10時だから5時間?そんだけやってれば確かにそんなんにもなるわ」

「同情するなら金をくれ、つってもわかってくれるだけでもありがたいが」

 

 全身筋肉痛になるまでなんて、自分でもよくやったと思うよ、ほんと。

 

「ねぇねぇ、お金はあげられないけどさ」

 

 ぐいっ、と顔を近づけてカラカルが提案してくる。

 

 

「私があんたの体、癒してあげよっか」

 

 

 ……癒す?

 

「前セルリアンから助けたお礼か?それなら別に」

「それもあるけど、この前マッサージに関する本を借りてきたの。それでトツカには実験台になってもらおうと思って」

 

 ガサゴソ、と取り出された本の表紙には『マッサージの基本 入門編』と書いてあった。

 

「まま、ここは人助けのためと思って1つ受けてよ、ね?」

「……へぇー、カラカルってそういうの興味あるのな」

「む、何よ。文句あるならやってあげないわよ」

 

 いや、そうじゃなくてさ。

 

「もっと心理学とかそっちの方に関心持ってると思ってたんよ」

「……あんた、ほんっとうにバカね」

 

 ~内容確認中~

 

 というわけでマッサージされることになった。本には「マッサージオイル」とやらを使うものもあったが、生憎持っていないらしいので簡単なもので済ますことに。

 

「てか、マッサージすんのにオイルなんて使うんだな」

「……あんた、今変なこと考えたでしょ」

 

 はぁ?変なこと?

 横を見ると、カラカルが目を細めてこっちを睨んでいた。……念のため言っておくが、俺は絶対に悪くないぞ。

 

「なに言ってんだ、ただベトベトして気持ち悪そうだなって思っただけだぞ」

「……え、本当にそれだけなの?」

「それ以外なんもないに決まってんだろ……暑さで頭やられたか」

「い、いや、なんでもないわよ!別に考えてないなら、それでいいし……」

 

 全く、人騒がせな……あ、これもしかして読心術を破る術を見つけたってことじゃね?

 

「というかベトベトって、あんたはマッサージオイルをなんだと思ってんのよ」

「それ以前に、オイルっつーのをよく知らん」

 

「あのねぇ……」とカラカルが呆れ返るが、俺からすればしょうがないのだ。なんてったって前世が男である故、美容には完全に無頓着だった、というか今も興味ないしな。

 

「で、何処をマッサージするんだ?やっぱり背中とか」

「それも効果あるけど、私も初心者、というか初めてなの忘れないでよ」

「あ、そうか」

 

 そういえば俺カラカルの実験台としてここにいるんだった。となれば、カラカルの性格を考えても内容に口出しはできないだろう。

 

「まずは簡単な手のマッサージからいくわ。ま、所謂ハンドマッサージってやつね。一回オペラグローブ脱いどいて、私も脱がなきゃ」

「はいよー」

 

 こうして服と認識している間は脱げるが、アニマルガールにとって服とは毛皮のようなもので、普段は感覚が存在する。そのせいもあってか最近は服を脱ぐことが少ない。お風呂、もとい水浴びもめんどくさくなって服のままやってるし。

 

「さて、始めますか」

 

 よいしょ、とカラカルが俺の隣に座る。

 

「それじゃ、右手を見せて。えーと、本には……なるほどねー、ここらへんか」

「ちょいちょい、勝手に進めないでくれ。仮にも俺は受ける身なわけだし」

 

 そんな俺の頼みも耳に入れず、右手を色々と触っていく。

 

「よし……まずはここ、手のひらの真ん中らへん。労宮っていうらしいわ」

 

 左手で押さえつつ、右手の親指でこれから押すのであろう場所をさする。

 

「ここの窪んでいるところを、ゆーっくりと、押していくからねー……んしょ」

 

 指が内側へ押し込まれ、手の中心にやわかな刺激を受ける。ゆっくりと皮膚の上を撫でられながら、手全体に感覚が広がり、疲労が抜けていくのを感じていく。

 

 スリ、スリ……

 

「ふぁ〜……なんか気持ちいいな、これ」

「それがマッサージだからね、気持ちよくできなくちゃ意味ないし……っと」

 

 スリ、スーッ……

 

 会話を混ぜつつ、手の筋肉が解されていく感覚に身を任せる。

 

「ふーっ、これでここは終わり、っと。次は……指と指の間、水かきのところらしいわ」

「ここ?ここを引っ張るってことか。でもそれ痛くない?」

「だーれが引っ張るって言ったのよ。さっきと同じく、ゆっくり押すの、押す」

 

 押さえる左手をそのままに、指が滑るように動いていく。

 

「さ、いくわよ……」

 

 するりと指の間に入った親指の腹が、優しく、それでいてしっかりと奥の方まで揉み込んでゆく。

 

 スッ、スーッ……

 

 最初に、親指と人差し指の間を。

 

 次に、人差し指と中指。

 

 そして、中指と薬指。

 

 最後に、薬指と小指。

 

 ギュッ……

 

「んしょ、っしょ……ここには、自律神経の、ツボがあるのよ」

「ふぇー……」

 

 カラカルが話しかけるが、頭がぼーっとしてほぼ聞き取れない。快感を与える親指だけでなく、それを支える他の指やしっかりと握る左手の体温も、安心感を与え、眠気を誘発させる。

 

「はぁ〜……なんか眠くなってきた……」

「まだ寝るのはだーめ、これからやってみたいことたくさんあるんだから」

 

 うぇ〜?こんな眠いのに寝るなって鬼畜すぎだろ、日課の昼寝もしてないってのに……文句言えないけども。我慢できるかどうかわからないけど、頑張るしかないか。

 

「さて、仕上げに親指の付け根。こっちには肩凝りのツボがあるんですって」

「肩凝りか、言われてみると今日は肩凝りひどいな」

「そうなの?じゃあおまけで後で肩のマッサージもやってあげるわね」

「お、サンキュー」

 

 この体になってからはそういう疲労とは無縁だったが、今日ばっかりはキツイのなんのだからな。

 

「えーっと、ここね。そいっ」

「んっ……」

 

 親指の根元の周りに手の暖かみが直に浸透してくる。

 

 スッ、スッ

 

 最初は、撫でさすられ。

 

 スーッ、ギュッ

 

 少しづつ、優しく押し込まれる。

 

「んっ、んっ……と」

 

 親指を動かし続けた筋肉の凝りがなくなり、血が段々と巡ってゆく。

 

「いしょ……うん、こんくらいでいいんじゃないかしらね」

「あ、終わり?じゃあ次は肩の」

「あんたには左手がないのかしら?まだ肩はお預けだから」

 

 別にないわけじゃないが、眠すぎて頭が回らないんだよ。現に言い返す気力すら残ってないし……ふぁ〜あ。

 

 手を持ち替えて、先ほどと同じ順にぐいぐいと柔らかく揉まれてゆく。

 

 手の平の真ん中、水かき、親指の付け根。

 

 右手の時と同じ感覚が体を走る。やべ、本格的に寝るわこれ。

 

「ふっ、さ、これでいいわ。お待ちかねの肩のマッサージよ、それが終わったら今度は……」

「肩で終わりにしてくれ……俺の精神が持たない……」

「えー、しょうがないわね。また今度付き合ってよ」

 

 文句をたれつつも背中の方へと回るカラカル。そのまま肩へ触る──と見せかけて、先に首の根元の方を支えるように掴む。

 

「先に準備体操みたいに頭ぐるっと回すわよ。ほら、ゆっくりいくよ」

「はーい、んっと」

 

 体操の時よりもさらに遅めに、首の根元を動かしてぐるりと一周。ほぐす前に筋肉をできるだけ柔らかくするためとのこと。

 

「んで、まずはここ、首の2本の筋。ここをこーやってつまんで」

 

 スッ、と首が引っ張られる。かと思えば、そのまま上から下へと血を流すように揉み込まれる。優しく刺激され、強張っていた肩の筋肉が緩む。

 

「そしたら、今度はその筋の外側の生え際あたり、天柱ってところ押してくからね」

 

 今度は親指をさらに根元へと押し当てる。先ほど癒されていたさらに外がギュッと揉まれ、良い感覚を感じる。

 

「あっ……あ、あっこれいい!なんかすごい気持ちいい、うん、そ、そこそこ」

「はいはい。ここらへんかしら、ういしょ。てか、そんなに気持ちいいわけ?」

 

 結構気持ちいいぞこれ、肩あたりの緊張が一気にスーっと消滅していく感じ。まじか、正直マッサージなめてた。ちょっと今のは大げさだけど。

 

「ここ、眼精疲労にもいいらしいわね。あ、この耳の後ろあたりなんてどうかしら。風池ってやつ」

「ふぇ……あ、そこも結構いいかも、てか良い」

 

 めっさ気持ちええ……俺なんか爺さん婆さんみたいになってね。

 

「それと、肩こりならこの耳たぶの上の肩こり帯も良いらしいわ」

 

 え、耳?

 

 カラカルの手を確認しようとすると、そっと手が伸びてきて──

 

「んにゃっ……」

「あら、可愛い声出すのね」

 

 ……こいつ、わざとやりやがったな。

 

「ふふっ、ごめんごめん。で、ここが肩こり帯ね」

 

 気にしないかのように耳たぶを揉んでいく。血行が良くなる感覚が伝わってくる。

 しばらくそれらの快感に浸っていると、突然肩の筋肉に衝撃が来た。

 

 トン、トン

 

 後ろで、カラカルが手を組み、甲で肩を叩いてくれていた。

 

「なんだ、肩たたきしてくれてたのか。ありがとな」

「べ、別にお礼なんて良いわよ。折角だしサービスしてあげたってだけ」

 

 まぁ、ありがたいからなんでも……かまわ……な……

 

 

 の  の  の  の  の  の  の

 

 

「肩たたきもこんなんで良いかしら。まだまだあるからねトツカ……トツカ?」

 

 あら、反応がない……

 

「すぅ……ん……」

 

 って、寝ちゃったか。

 

「もう……寝るなって言ったのに、本当にしょうがないバカね」

 

 だいたい座ったまま寝るってどんな大技よ……そんな体勢で寝たらまた体痛め──

 

「……んにゃ」

 

 ドサッ

 

「きゃっ!?」

 

 うわ!?こっちに倒れこんできた!というかそのまま私の腿の上にダイレクトインしてくるとか……

 

「……あら、意外と可愛い寝顔」

 

 ……ま、本人は色々あったらしいし。膝枕くらいは勘弁してあげましょうか……

 

 

 の  の  の  の  の  の  の

 

 

 ~数時間後~

 

 ん……あれ、ここサバンナ?なんで……あ、そうだ、確かカラカルにマッサージを受けて……て事は、俺あの後寝たのか。

 

「睡魔には勝てなかったか……」

「あら、おはようトツカ。もう昼頃だろうけど」

 

 上から声が聞こえ、首を上げて確認すると、そこには腕時計を覗くカラカルの顔があった。

 

「あ、カラカル……すまん、なんか寝てたみたいだ」

「良いの良いの、その代わり面白いこともできたし。はい、これ開いてみて」

「?」

 

 手渡されたのは、なんということもない、先ほどのマッサージの本だ。

 だいたい開くって、俺の手先の器用さじゃ無理なんじゃないのか。最近はだいぶマシとはいえ、誰かにめくってもらわないといけない時もあるし。

 

「どうせできるわけ……」

 

 ペラッ

 

「……あ、できた」

「ふっふーん、どうよ、この私の力は!」

 

 いや、そんな驚くことでもないけど。

 

「私の力って、寝てる間に一体何したんだ」

「簡単よ、手先が器用になるツボを押したの」

「え、そんなツボあんの!?」

 

 何それツボ超有能。もうこの際万物に効くんじゃなかろうか。

 

「ただ定期的にやんないと効果がなくなることも……」

「え、ちょ、教えてくれ!どこ、どこ押せば良いんだ!?」

「待ちなさいってこら」

 

 待ってられるか!こっちは今後の人生かかってんだよ!

 

「ま、まぁ、そうね。わ、私に、またマッサージしに来てくれれば、か、考えなくもない、なんて」

「行きます!行かせてください!」

「即答!?……とにかく、今度教えるからそれまで待ってなさい」

「絶対な!絶対だぞ!」

「わかってるわよ、もう、なんというか……」

 

 

 その時の俺はどうやってそのツボを教えてもらうか思索しすぎて、カラカルの呆れさえ聞こえなかった。




次回からはできるだけ3000字近くに抑えようかと。
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