「ねえ、あんたが来た時なんか見かけない顔の子いたわよね。知り合い?」
「あー……あいつのことか」
『じゃ、また後でなー』
俺がカラカルに発見される前、突然話しかけられたのだが、知ってのとおりその時恐ろしく疲れていたからその時は適当に繕って……
「あ、そういえば後で会う約束してたな」
「ほーん、待ち合わせってことね。何時頃なの?」
「確か午前11時」
うん、11時に研究所戻るって話だったような……ん、カラカル?
「おい、なんか変なとこあったか?」
「……今、正午」
……え。
「やべえ、全然間に合わねぇじゃねぇか!まだ待っててくれると……いや、それはそれで申し訳ないな」
「相手の子多分あんたのこと探し回ってるかもしれないし、入れ違いのことを考えてもじっとしていた方が……」
「おーい、探しに来たぞー」
声がサバンナに響く。その方向にいたのは、背丈の小さい女の子。そのパーカー風のジャージは手が通るべきところがペンギンの羽のようになって指が出ず、前髪はおデコを出してぴょんと嘴のように一房垂れている。
「まったく、時間になっても来ないから結構心配したんだからな……って、なんで膝枕されるんてんだ?」
「いや、本当にごめん、カラカルにマッサージ受けてたら眠くなっちゃって」
本当だ。不可抗力だったんだよ。だからそんな目でこっちを見るでない。
「えーっと、あなたは?私はカラカル、よろしくね」
「あ、まだ名乗ってなかったなー」
多分カラカルがさっき見たっていうアニマルガールで、俺も今日会ったばかりの少女は口を開く。
「私はジャイアント、ジャイアントペンギンのアニマルガールだ。よろしくなー」
「ジャイアント?あなたちっちゃいのにジャイアントって名前なのね」
「あんまり大きく見せてるわけじゃないんだけど、なんか周りからは『先輩』って呼ばれるんだよなー」
先輩、か……ん、ジャイアントペンギンってゲームにいたっけ?俺の記憶も確かじゃないからよくわからん。全く使えないな、俺の前世の記憶……寧ろ足枷になってる気もしてきたぞ。
「だが、私みたいなのは結構新鮮だろう?この手の形とか他の奴には多分ないからな」
「そうね、ペンギンのアニマルガールって初めて見るしおもしろいわ」
よく見てなかったけど言われてみれば面白い形……じゃないじゃない。
「で、ジャイアントペンギン、だったな。俺に用があるんじゃないのか?」
「あーそうそう、新しい守護けものが現れたって聞いて気になってきたのさ。ボーラーの代理なんだってな」
「え、待って話についていけないんだけど!」
ジャイアントとナチュラルに会話をしていると、状況を飲み込めていないカラカルが間に割って入ってきた。まぁ当たり前だよな、何にも言ってなかったし。
「ボーラーってのは、ほら、この前遊園地で俺と歩いてたあの金髪の」
「金髪……あぁ、あのカンガルーの子!へー、あの子守護けものだったのね」
気づいてなかった、というよりあいつら言ってなかったな。そんな意外そうな目をするなよ、ボーラーのプライド丸つぶれだぞ。
「ん、でもその話は守護けものや俺の知り合いしか知らないと思うんだが」
ジャイアントはどっかで耳にしたってこと?でも様子を見に俺のところへ来たんだよな。そもそもボーラーのことを知ってる奴も限られてるし……いや、そういえばあの2人旅してたな。だったらどっかで会うか。
「ボーラー本人から話を聞いたのさ。あいつ普段おちゃらけてるのに、私が来るといっつもハクの後ろに隠れるんだよな」
「本人から……てことは、あの2人とは知り合い?」
「おう、たしか2年くらいの付き合いだぞ」
話によると、元はナカベチホーの中に縄張りがあったが、今はいろんなところを回って暮らしているらしい。中でもコクリュウ神社にはよく寄るとのこと。
「私が初めて行った時にはボーラーとハク、ハクの姉妹合わせて5人くらいそこに住んでて騒がしかったよ」
「姉妹って、あの白い子姉妹だったのね」
「まあな。だが今となってはハクの姉妹はみんな別のところに旅に出るって言って、それきり帰ってないはずだ」
なるほど、ボーラーとハクは二人暮らしか。それならハクが1人にされることをよく怒ってたのは納得行く、というかあいつ中身は小学生だな。
「ハクは4人姉妹か。他の奴の名前はなんていうんだ?」
「えー、まず長女がコクリュウ神社の持ち主コクリュウだ」
「持ち主?」
あ、コクリュウ神社ってハクのもんじゃなかったんだ。はーはー、だから「ハク」なのに「コク」リュウ神社だったんだな。なんか不思議だと思ってたんだが、そう考えるとあいつも俺と同じ代理みたいなもんなのか。
「コクリュウってことは全般的に黒い毛皮なのかしら。龍姉妹ともなると長女としてまとめるのも大変そうよね」
「ああ、でもあいつ姉妹の中では結構しっかりしてるぞ?プライド高い割にハートがガラスなのが玉に瑕だが」
「プライド高いやつってみんなそうだと思うけどな」
そういや俺の高校にもいたなー、無駄にプライド高いくせに心弱いやつ。てかこの際どの学校でも探せばいる気がする。
「そして、次女がセイリュウ。聞いたことあるだろ?」
「あるも何も、セイリュウってたしか四神ってやつよね。守護けものでも偉いっていう」
「長女のコクリュウじゃなくて次女のセイリュウが守護けものか、普通逆だと思ってた」
「それ口には出してなかったけどコンプレックスにしてたからな。しっしっし」
やめてやれと言いながら笑うジャイアント。お前絶対それでバカにしてたろ、なんとなくわかった。あのドSカラカルでもそんな残虐なことしないと思……
ゴンッ
「いっっっってぇぇぇ!?」
「誰がドSよ、このバカ!」
また心を読まれた!?ぐっ、回避術は身につけたはずなのに……はっ、まさかあれは俺を試していただけとでもいうのか!?そうでなかったら……まさか、俺がただ回避できたと思い込んでただけ?なにそれものすごく恥ずい。
「あっははは!な、仲良いこったな、くふっ」
「こんな他人のこと偏見してくるやつとどこが仲良く見えるのよ、ほんっともう!」
「だからって頭グリグリすることないいい痛い痛いって!」
それはサーバルにやるもんだろ普通……ってこれなんか前にミライさんも似たようなこといいいいだだだだだ!
「だってさ、その見事に怒られてるとこなんてとこなんか最高に似てるんだよ」
「似てるって、誰に」
「そんなのボーラーとハクに決まってんだろ?ほらその頭グリグリする体勢なんて完全に……ぷっ、ははは!」
おいジャイアント、お前何腹抱えて笑ってんだ!めっちゃくちゃうぜぇぇぇ……!
「くくっ……き、気を取り直して。三女はセキリュウ、こいつはちょっと人見知りで恥ずかしがり屋なやつだったなー。神社留守にするときもセイリュウと一緒に出てったし」
「いててて……ま、まぁ妹キャラにはよくあるパターンだな。所謂内気妹ってやつか」
てか、その流れで行くとハクって末っ子だったのな。どやってる雰囲気だだ漏れだし長女かと思ったが、あれか、ウザい系のそれ?いや、なんか微妙にニュアンスが違う気がするしなぁ。
「へー、アードウルフと性格似てるかもね。あの子も最初はずっとサーバルの背中に隠れてたし」
「酔った時を除くけどな」
頭にハテナマークを浮かべる2人を置いておきつつ、あの時のアードウルフの顔を思い出す……と赤面してしまいそうなので、慌てて止めた。
「ま、私もそのうちの一組と一緒にホッカイチホーのほうまでは行ったことあるぞ。一緒に温泉入ったりもしたな」
「あ、確かキョウシュウにも温泉あったわよね。あの雪山エリアのやつ」
「そうなのか、じゃ帰りに寄ってみるかなー」
言われてみればあったな温泉。俺はまだ一度も行ったことないけど。
というか雪山エリアって絶対寒いよな……この体、暑いのも寒いのもやけに耐性ないから行きたくてもいけないっていうか。
「お前らも一緒に行くか?」
「無理無理、あんな寒いとことか絶対行かねーよ。というかお前は……あ、ペンギンだから大丈夫なのか」
「しっしっし、そーいうことだ」
なんか羨ましいなペンギンの身体。俺もペンギンのアニマルガールに転生させて欲しかった。
「えーっと、旅に出る前はナカベチホーにいたのよね。その時は何をしてたの?」
「私が住んでたのはその中のペンギンアイランドってとこ。あそこには同じペンギンのアニマルガールがいたんだ」
へー、ペンギンが他にも。誰がいるんだろ、俺あんまり動物詳しくないから、ペンギンといえばオウサマペンギンくらいしか思い浮かばない。
「そいつらと一緒に暮らしてたってことか?なんかこう、ペンギンなかまー、みたいな感じで」
「そうだが、私がよく会うのはPIPのやつらとかだな」
ぴっぷ?
「会いに行くと結構面白くてな。普段忙しいんだが、たまに練習見て欲しい、なんて言われたりして、しかもなぜか先輩って呼ばれるから面倒なとこもあるけど」
「ちょいちょい、それ誰なんだ?」
忙しい?練習?体操選手とかか?でもアニマルガールってみんな体操選手レベルでの運動能力持ってるし、いったい……
「なんだ、知らないのか?
ジャパリパークの、アイドル?
「あ、聞いたことあるわ。ペンギンアイランド出身のアイドルグループ、前にガイドさんが話してたわね」
「そんなのあるのか。ん、ペンギンアイランド出身ってことは」
「そう、私と同じだな」
まじか、意外とすごいやつだったんだな。さすが先輩と呼ばれるだけある。
「そんな、尊敬するような眼差しで見られても困るぞ。それにあいつらも裏では結構ゆるいし」
「でも普通にすごいと思うわよ。アイドルと一緒に過ごしてたなんて」
前世の世界だったら間違いなくニュースに載るな、こいつ。
「それでそれで、他にはどんなところ行ったの?」
「あぁ、他にはな……」
~数十分後~
かれこれ何分か経ってしまった。ジャイアント曰くそんな時間を取るつもりはなかったらしいが、これに関しては俺たちが質問しすぎたってのも要因の1つだししょうがないか。あとなんか会話って始まると止まらないよね。
「んじゃ、私はここらでお暇させてもらうとするかね。これから久しぶりに会いたい人もいるし」
「そうか、ま、縁があったらまた会おうな」
「いろいろ聞けて楽しかったわ。またね、ジャイアント」
「おう、またなー」
そう言ってテクテクと歩き出すジャイアントだが、数メートル行ったところで「あ、そうだ」と引き返してきた。
「トツカ、耳貸してくれ」
「いいけど……なんで?」
「まま、大先輩からの忠告ってやつだ。しっしっし」
そっと耳に顔を近づけてくる。その言葉は──
「……お前の元動物、
──その言葉は、俺をとてつもなく動揺させるには、十分すぎるほどだった。
「なっ、お前」
「しー、静かに。ひそひそしてる意味なくなっちゃうだろ?」
ジャイアント本人は依然にやつき顔だが……こいつ、まさか俺が転生者ってことを……?いや、その話はまだ誰にもしてないはず……じゃあどうやって?
ともかく、俺が元男ということだけは隠し通さねば!俺が変態と思われる前に!
「けものプラズムの量は多くとも、UMAは神格じゃないからな」
「そ、そそそんなに珍しいか?うおお俺みたいなやつ」
やややばいいい、きき緊張して声ががが……
「……お、もしかして本気にしたか?」
……え?
「実はな、適当に言っただけなんだよさっきの。理由も一瞬ででっち上げただけだし、ま、ドッキリだいせいこー!ってとこだな」
「お、おう……?」
は、はぁ……助かった、のか……?
「じゃあ、今度こそ本当にさよならだ。また会おうなー!」
「そ、そうだな」
そう言い残し、小さな先輩は軽快なステップで行ってしまった。
「トツカ、何の話だったの?」
「……なんでもねぇよ」
「ちょっと、少しくらい教えてくれたっていいじゃない、もー」
……なんとなく、ボーラーの気持ちがわかった気がする。
先輩の口調再現難しかったです。