平凡人間の転生守護獣日記   作:風邪太郎

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前回と脈絡はないけど37話はこちらで間違いありません。


第37話 記憶のASH(欠片)しか無くても

『海』

 

 

 

 

 

この単語を知らない人間は易々とは見つからない筈だ。

 

 

どんな海でもいい。砂丘の遠く広がるなだらかな浜辺でも、どこまでも続く断崖絶壁の下で白波を立てる海岸でも、旅行者に溢れかえった温暖なビーチでも構わない。おそらくそこには美しい透き通ったマリンブルーがあるだろう。暖かで心地よい気候があるだろう。

 

そして俺、トツカも、ちょうどそんな絵に描いたような浜辺にいた。砂浜、海、ギラギラ照りつく太陽。どれを取っても模範的な浜辺。

 

 

 

 

唯、もし違う点を挙げるとするならば。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギュイイイィィィィン!

 

 

「あはははは!たーのしー!」

 

 

 

両腕に文字通り手に余らせたサイズの大型チェーンソーを持ち楽しげに振り回すサーバルと。

 

 

 

ズゴオオオォォォォ!

 

 

「待ちなさいトツカぁぁぁ!」

 

 

 

武闘アニメの攻撃技の様な構えで爆音を出しながらビーム攻撃を乱射しているカラカルが居る、というくらいだ。何もおかしな所は──

 

 

「待てぇい!おかしな所しかないだろ!そもそもなんで俺が追われなくちゃならないんだぁ!?」

「うっさいわね、あんたが勝手に私の本を失くすからでしょうがぁ!」

「だからってビームは撃つなよカラカルぅー!?」

 

 

瞬間に飛んできた6つのビームを即座に飛行することでなんとか躱す。俺の知らない間に一体何の修行をしてきたのかは知らないがビーム攻撃を完全にマスターしているらしく、その後も間髪入れずに発射してくる。それだけならいい……いや、それだけでも良くはないんだけどさぁ!

 

 

「えいっ!」

「ぬぉお!?」

 

 

カラカルの攻撃と息を合わせてサーバルがチェーンソーを振るってくるの、地味にめちゃくちゃ厄介だなんだよなぁ!

 

 

「もぉー、避けないでよ!せっかく試し切りしにきたっていうのに!」

「切掛けられて避けるなは無理があんだろ!どこで拾ってきたんだそんなもん!」

「歩いてたら見つけたの!……ダメ?」

「拾った場所に返してきなさいっ!」

 

 

どこを歩いたらチェーンソーなんぞ見つかるんだ……けもフレってそんな殺伐としたジャンルじゃなかっただろ、出てくる作品間違えてないかこいつら。新しく手に入れたところ悪いけど、今すぐにでも元作品にお帰り願いたい所存である。つか、ビームでもチェーンソーでも良いから、俺にも新要素はよ。

 

 

「…………やべっ、行き止まり!?何で砂浜に壁が!」

「さぁ、これでもう逃げられないわよ……」

「覚悟、出来てるよね……?」

「ま、待て!もう少しまってくれ!お願い、あとちょっとだけ!」

 

 

まるで用意されたかの様な巨大なコンクリートの壁を背にする俺へとじわじわ距離を縮める2人。くっ、さすがにこれは……

 

 

ドサッ

 

 

「んにゃあ!?」

 

 

突然、何か柔らかいものが頭の上に落ちてくる。髪の上からそれを掬い、目の前に持ってくると、手の中には。

 

 

「……雪?」

 

 

浜辺なのになぜ雪?というかどっから……

そう思い、上を見上げると。

 

 

「……あれ、なんか空が真っ白。てか雪も降ってきたし」

「あーはー!雪だー!」

「ちょ、お前ら何を突然」

「トツカも!わーい!」

「わ、わーい!」

 

 

って、何乗せられてんだ俺。そもそもさっきまで快晴だったのに……ってあれ、上にある白いヤツって全部雪そのもの?雨雲じゃなくて?しかもなんか近づいてきて……

 

 

「まさか、塊のまま空から落ちてきてる!?」

 

 

待て待て待てぇ!なんで塊の雪が真夏のビーチに出現する!?カラカルもサーバルもさっきまでいなかったはずのカピバラと遊んだままだし!カラカルお前そういう性格じゃないだろぉ!?さっきからこの急展開はなんなんだよぉ!ってそうだ、雪は……

 

 

「……うわっ、まだ落ちてきてやがるし!まずいまずい、このままだと埋もれ──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──やっ、やめろおおおぉぉぉ!」

 

 

バッと上半身を引き起こした。……あれ、やけに静かだな。

辺りを見回すと先ほどまでの浜辺はなく見渡す限り雪原だけが広がっている。ところどころ足跡らしき窪みがあるとはいえ、まだ降ったばかりの様に高く積もっているのがわかる。そんな中、自分は防寒着に包まれながら見事に雪に埋まっていた。

 

 

「……夢か。さっきの」

 

 

そりゃそうだ。そういえば俺たちは今雪山の中で、吹雪が過ぎるのを待ってて、ここには俺しかいなくて……

 

 

「……あれ」

 

 

 

…………みんな、どこ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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サバンナエリア観測所、時刻18:02。

 

満天の星を浮かべた夜空の下に建つこの建物は、休憩スペースから聞こえる職員・アニマルガールの話し声がうるさいことで、ほんの少しだけ有名である。

 

その日もまた、休憩スペースで過ごす数名により、もう午後6時であるにも拘らず、賑やかな会話の声とゲーム機が奏でるSEやBGMで埋め尽くされているところであった。

 

そして、その数名とは。

 

 

「わぁー、このチェーンソーすっごい強いよー!」

 

 

格闘ゲームでなぜかチェーンソー使いを操るサーバルキャットのアニマルガール、サーバル。

 

 

「むぅ……やはり、こういうのは慣れるまで難しいな」

 

 

コントローラーをくるくる回して眺めているバーバリライオンのアニマルガール、バリー。

 

 

「そう?わたしはすぐ慣れたけどねー」

 

 

椅子に座った二人の後ろでゲーム画面を見ていたアフリカゾウ。

 

 

「はは、彼女達ったら本当に元気だねー……あれ、通信来たよミライ」

「えー、雪山エリアから、だって。リザは何の報告だと思う?」

 

 

さらにその後ろで他施設通信用パソコンを覗く、ミライたち職員二人組であった。

 

 

「あ、ねえねえ、雪山エリアの温泉宿ってゲームコーナーがあるんだって。私まだ格闘ゲームしかやったことないから、どんなのがあるのかすごく気になるなぁ」

「うぇー、そうなのー?私も行けばよかった……」

 

 

コントローラーを手に持ったまま、サーバルはモニターを置いてある机にべたりと突っ伏し、バリーは呆れたような顔をしてコントローラーを置くと、そのまま視線だけサーバルの方へ向けた。

 

 

「まったく、今ので何回同じことを言ったと思ってる。愚痴を零してないでシャキッとしたらどうだ」

「えー、でもバリーだっていろんなゲーム、やってみたいでしょ?シューティングとか、アクションとか、もぐらたたきとか」

「おい、最後のは違うだろう」

 

 

「はぁー……」とため息をついてより一段と机に張り付くサーバルに、バリーとアフリカゾウは互いに顔を見合わせ、「はぁー……」と、やはりこちらもため息をついた。とてもではないが、やってられない──

 

 

 

ガタン

 

 

 

「みゃっ、なんの音!?」

 

 

 

 

その時、彼女達のちょうど真後ろから椅子が倒れる大きな音が鳴り、小さなフロア中に短く反響した。

 

 

「……ミライ、大丈夫だよね。焦らないようにして」

「う、うん……そう願ってる」

 

 

見れば、先程まで椅子に座ってパソコンを見ていたミライが、そのモニターの前で立ち尽くしていた。地面には立ち上がった反動で椅子が倒れている。恐らく音の原因はあれであろう。

 

 

「スタッフさん……なにが、あったの?」

「あ、皆さん……いえ、何でもないんです」

『大丈夫ですか?』

 

 

ノートパソコンに内蔵されたスピーカーから、聞き覚えのない声が聞こえる。見れば、モニターには縦長の真っ黒な長方形が映されていた。中心には白色の太文字で『SOUND ONLY』とだけ書いてある。

 

 

「あ、はい、大丈夫です。続けてください」

『わかりました、報告を続けます。もう一度言いますが、電力は復旧済で、現在は──』

 

 

 

なんの話なのか、聞いてはいけないと思いつつも、3人はつい聞き耳をたててしまう。

 

そして、聞いてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『──雪山エリア内の森林にて、発電施設へ向かったまま通信途絶のアニマルガール2体を、捜索中です』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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雪山エリア温泉宿、時刻17:59。

 

スタッフルームの一角、外部との通信用機材のうち一つに向かって、一人の職員が大声を放っていた。

 

 

「電源も既にオンになってて、後は二人が帰ってくるのを待ってて──」

 

 

ブツッ

 

 

「なっ!トツカさん、トツカさん!?答えてください、お願いです!」

 

 

悲痛な叫びが部屋のなかを木霊する。対してヘッドセットから聞こえてきたのは、無情で単調な、連絡の途絶えたことを示すザラついたノイズの音だけだった。

 

 

「クソッ……」

 

 

やるせなさと悔しさに取り憑かれて、両腕をおもいっきり机へと叩きつけた。ゴンッという重い音と共に、顔を俯かせ机に押し付けて表情を隠す。

 

 

(帰ってくるの、ずっと、待ってて……)

 

 

「……胸、苦しさで、いっぱいで……っ!」

 

 

それでも溢れ出す感情を抱えきれず、小さな呟きとなって心から漏らしてしまう。誰にも聞かれることのない、小さな声だった。

 

 

「…………おい、サバンナエリアの施設全般に連絡をいれておいてくれ。それが終わり次第、設備の再点検に……」

「…………」

 

 

自分へのものも含めたその場に飛び交う指示は、どうしようもない苦しさに暮れる暇も与えてくれない。それに、今はそんな暇をとれるような状況ではないと、自分でもわかっている。

わかっているのに、どうしても、受け入れられない。

 

 

「……おい、聞こえているか?」

「……はい。わかってます。大丈夫です」

 

 

だが、そうしていても時は刻々と過ぎるのみだ。ならば、今やらなければならないことをやるしかない。

なんとか勇気を振り絞って、モニターを睨みサバンナエリア観測所との通信回線を探す。

 

その中で、思い出してしまった。

 

 

(……トツカさん達がいたのも、サバンナエリア)

 

 

ふと、作業を再開しようとした手がピタリと止まる。

 

今、やらなければならないことをしている。

でも、自分はやりきれるだろうか。

もし、彼女達の親友がいたら、何と言えば──。

 

 

(……ああ、もうっ!今はただ、あの『帰ってくる』って約束、信じるっきゃない!)

 

 

恐怖に一旦支配されかれた身体をなんとか奮い立たせて、作業へと戻る。いつも通りで良いのだから。

 

連絡先の施設へ呼び出しを掛けて、相手が出るのを静かに待った。

 

 

『……こちら、サバンナエリア観測所です。何か連絡があれば伝達します』

 

 

来た。深く息を吸い込むと、呼吸を整え、ヘッドセットのマイクに向かってゆっくり喋り出す。

 

 

 

「はい、こちらは雪山エリア温泉宿のスタッフです。これから伝える内容の連絡を、お願いします──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「…………それは……本当、なんですよね?」

 

 

 

 

サバンナエリア観測所、時刻18:03。

 

人気が少なく静けさが広がる部屋に、椅子に座っていたミライの微かに震える声が響き渡った。パソコンの通話画面の前に居た誰もが、驚きを隠せず、固まってしまっていた。

 

 

『……はい、アニマルガールとは通信途絶のままです。今は、各エリア研究所に連絡しつつ、こちらで捜索を行っています』

「待ってよ!その『通信途絶したアニマルガール』って、誰のことなの!?」

「落ち着けアフリカゾウ、今は連絡中だ。邪魔をするんじゃない」

 

 

画面を食い込むように覗き込んだアフリカゾウを、バーバリライオンのアニマルガールのバリーが、傍で共に報告を聞いていたスタッフと諫めた。その間に、横目で奥で静かに立つ少女の様子を盗み見る。

 

その少女──サーバルは、ただ、俯いていた。

 

 

「えと、現在は電力が既に復旧済みなんですよね」

『一応は。発電施設も宿も、損害は飽くまで軽微、電源を入れに行ったチームも帰還しています。……彼女たちを、除いて」

「……そのアニマルガール二体の、登録ナンバーを報告してください」

「ちょっと、リザ、それは」

 

 

アフリカゾウが落ち着きを取り戻した頃合いを見計らって、アフリカゾウを抑えるのを止めて質問した。空気が張り詰める中、返答はなかなか来ない。

 

 

部屋に、沈黙が流れる。

 

 

『……わかりました。ナンバーは……』

 

 

暫くして、モニターの向こうの職員は意を決するように、小さな声を絞り出した。その数字を聞いた二人の顔が、だんだんと驚きの表情に埋め尽くされ、青ざめていく。

 

 

「スタッフさん、今の数字は……」

「……トツカさんと、カラカルさんのナンバーだね」

「そんなっ……」

 

 

アフリカゾウが一歩後ずさる。バリーも一瞬動揺したものの、すぐに驚きを隠し、もう一度サーバルをそっと見る。変わらず顔は下を向いていて、表情を読むことはできなかった。ただ、肩が少し震えているように見えた。

 

 

『報告は以上です。何かあれば応答しますが』

「なら、探索情報についてなんですけど。彼女たちが見つかり次第、こちらへ連絡を入れることはできますか」

『尽力はします。捜索隊からの連絡も、出来るだけ優先的にそちらへ送るよう掛け合いますが……他に、何か』

「では、私からも一つ」

 

 

厳かに口を開いたバリーは、一瞬だけちらとサーバルを見ると、覚悟を決めて画面へと向き直した。

 

 

「トツカたちは、いつ頃帰ってくると予想する?スタッフさんの個人的な意見でも構わないが、聞かせてほしい」

『それは……正直、予測がつきません。ただ、あの森でアニマルガールの肉体に損傷があった事例はあまり無いので、問題無いとは思いますが』

「そ、そっか……それならトツカもカラカルも、ちゃんと戻ってくる、よね」

「……いえ、そうとも言い切れません」

 

 

アフリカゾウの安心も束の間に、ミライの声が遮る。

 

 

「いくら頑丈とは言え森の中では何があるかはわからない。特に夜は、どんな動物がいるか把握できません」

「それにこの時期だとセルリアンのことも関わってくるからね。実際にセルリアンがなんかしたって報告はないけど、危険だ」

「……やはり、そうなるか……」

 

 

静かな呟きを最後に、場が静まり返る。全員の不安感と、諦めの思いだけが残っていた。誰も声を出せず、スピーカーから流れるスタッフの音とノイズだけが響いていた。

 

 

 

『…………でも──』

 

 

 

突然、自信を持った声色が聞こえる。その音で、視線が無意識の内にもう一度モニターに戻った。サーバルはまだ、地面を眺めていた。

 

けれど。

 

 

 

 

『──彼女達は、必ず帰ってきます』

 

 

 

 

その言葉に、確かな覚悟を感じたのも、また彼女だった。

 

 

「……それは、どうして」

『えと、実はカラカルさん達が出発する前、二人と約束したんです。自分でも、根拠は無いけれど……』

 

 

絶対に、帰ってくる。そう信じていると、静かに語った。

 

 

「──それなら、大丈夫だよ」

 

 

続いた声はスピーカーからではなくつい後ろの──サーバルからだった。その顔は俯くこと無く前を見据え、信頼に満ちた眼差しをしていた。

 

 

「スタッフさん、トツカは『帰ってくる』って約束、したんだよね?」

『確かに。間違いなく』

「うん、よかった。それならもう、後は待つだけだね」

「ねえサーバル、それって」

 

 

不自然な会話に困惑し、アフリカゾウが言葉の意味を問う。サーバルは、静かに微笑んで頷いた。

 

 

「大丈夫。私、二人は約束を守るって、信じてるから。だってカラカルは几帳面だから、こういうのは守るに決まってるし。トツカは……まぁ、お世辞にも几帳面とは言えないんだけど。それでも」

 

 

 

一旦言葉を区切り、ゆっくりと目を閉じて想いを巡らす。脳裏に浮かぶたくさんの光景を、そこで経験した思い出を、そのなかにいつも居てくれたあの友達の顔を、瞼に焼き付くほどに強く。

そして、その輝くような顔を見て、確信する。

 

 

 

 

「トツカは、『The Man Of His Word(約束を守る男)』だから」

 

 

 

 

その言葉が、今は全てだった。何故だか知らないが、いつの間にか皆が、その言葉に納得していた。

勿論、不安が無いわけではなかった。何かしらの根拠が有るわけでもなかった。

 

 

「……でも、そうだよね。あの二人の大親友がそう言うんなら、大丈夫に決まってる!」

「アフリカゾウさんの言うとおりだね。まぁ、今は信じてみよっか、その約束」

『はい、お願いします……って、もう結構時間経っちゃった。次の施設に連絡するので、通信きりますね』

「あ、待って」

 

 

通信を終わろうとしたところに、サーバルが声をかける。

 

 

 

「……ありがとう、スタッフさん」

『……お礼をするのは私の方ですよ。ありがとう』

 

 

 

数秒経って、ピコン、という音と共に画面が真っ黒へと切り替わる。暫くの時間、それぞれが、自らの不安と想いを静かに心の中で巡らせていた。

 

 

「……ううん、きっと大丈夫だよね。だって、あの二人なんだもん。きっと、大丈夫」

「でもまだ帰ってきた訳じゃないから、気は抜けないけどね」

「ああ。これからが本番になる……でも今は、二人を信じたいが」

 

 

そんな中で、サーバルは壁の方へ歩いていき、小さな窓側で止まった。

 

 

「……あれ、サーバルさん、どうかしたんですか?」

「あ、ガイドさん。いや、どうしもしないんだけど、何となく」

「そうですか……あれ、そういえばサーバルさん、さっきトツカさんのこと『男』って言いませんでした?」

「んー……」

 

 

ミライから窓の外へと視線を移し、数秒だけ静かになる。次いで何か思い出したようにくすっと笑って、笑顔のまま向き直した。

 

 

「……さぁ、どうだろうね」

「どうだろうねって、どっちかわかんないじゃないですか」

「うん、私もわかんないや」

 

 

そうしてまた窓の外を眺める。その顔に、微笑では無く、真剣な表情を宿して。

 

瞳に写った夜空には、砂のように散らばる満点の星空と、真白く美しい満月が漂っていた。

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