平凡人間の転生守護獣日記   作:風邪太郎

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第39話 いつかRAIN()が止まれば

──貴女はもう皆の仲間ではなくなった。

 

 

 

 

ちがう。

 

 

 

 

 

──貴女はずっと一人きりだった。

 

 

 

 

 

こわい。

 

 

 

 

 

 

 

──貴女はずっと依存してた。

 

 

 

 

 

 

 

 

やめて。

 

 

 

 

 

 

 

 

──貴女はずっと──

 

 

 

 

 

 

 

 

いわないで!

 

 

わたしがわるかったから、ぜんぶわたしのせいでいいから、おねがい……それだけは、ききたくないの!だから、いわないで!

 

 

もう、やめて…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………こえ、きこえない。

 

わたしは、なに?なんていおうとしたの?

 

 

……ちがう。わたしはしりたくない。しらない、わからない、しりたくなんてない……いまはそれでいいから。

 

 

 

 

 

 

 

 

…………っ、せなか、ちょっとあったかい。

 

……まさかさわられて……なにかがわたしをさわってる……!?いや!なんなの!?

 

なにをするの、こわいよ!

 

 

やめて、やめてよぉ……!

 

 

 

 

 

 

どうして、なんで──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ちょいちょい、聞こえてますかー?」

 

 

 

 

 

──だれの、こえ?

 

 

 

ゆっくりと、うしろをむく。

 

そしたら、わたし、いつのまにかずっとみつめられてた。

 

でもそれは、さっきのだれか(カラカル)でも、さっきのなにか(セルリアン)でもなくて。

 

 

 

 

 

「あれ、やっぱこの()だ。なんで……じゃなくて」

 

 

 

 

 

きれいで、まっしろで、やさしくて。

 

 

 

 

 

 

「どうも、俺はトツカ。大丈夫みたいだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

しらないだれかの、かお だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────

──────────────────

──────────────────

──────────────────

──────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ……え……?」

「なーに、安心しろって。ちょっと担いでるだけだから」

 

 

口の回らない少女を抱えながら座らせて、俺の脱いだコートなりなんなりを羽織らせる。なんたってこの寒い空気の中だ、薄手の衣服では凍ってまともに話だってできやしないだろう。あ、さすがに全部はあげないよ?俺だって寒いし。転生したって図太さだけは変える気毛頭無しだかんな。

 

 

「ほれ、まぁマシにはなったかな。後ろ、失礼するぞ」

「ん……」

 

 

取りあえずまだ自力では動けなさそうなので、背中合わせになるように座る。暫くして、一回り小さい背中が寄りかかる感触を感じた。

 

 

「あ……ごめ、なさ……」

「いやいや、いいのいいの」

 

 

なかなか申し訳なさそうな顔を解かない彼女だったが、数秒経ってから俺が本当に気にしていないと納得したのか静かに俺へ寄りかかった。

 

さて、どうしてここに俺が居るのかなんだが、それについて話すと少々長くなる。

 

 

 

 

~回想~

 

 

 

『これ……足跡、か』

 

 

雪原にあったヒトの足形のような小さい窪みの連続。かまくらから続いていること、二人がいないことから、それが二人の足跡なのではとアタリをつけていた。

 

 

『二人分あるし間違いないか。実は動物の足跡でしたとか、そんなんだったらマジに笑えないかんな……?』

 

 

最初はそれを追う様に進んでいたのだが、途中からやっぱり飛んで探した方が上から見えるし効率良いとおもったので、おおよそ数分歩いた後に翼を出して空高くへと飛翔。

 

 

『さーて、カラカルはどこに……ん、あれ、何かが飛んで……やばっ、落ちてないか!?』

 

 

勿論、落ちたのがなんなのかは解らなかったが、まぁそこは猫故の好奇心でつい知りたくなってしまうもので、カラカルのことも忘れて真っ先にその場へと急行。

 

 

『……あぁ、落ちたのはこれか……って、アニマルガールじゃねぇか!しかもこの娘、どこかで見たような……ちょいちょい、聞こえてますかー?』

 

 

そうして木葉の隙間を通り抜けて着地した俺の目に写ったのは、やはり真っ白で可憐な、アニマルガールの少女なのであった。

 

 

 

 

~現在~

 

 

 

 

とまぁこんなことがあった訳だが、とにかくまだ把握しきれていないことばかりなのが現状だ。この今の状況とか、カラカルのこととか、なんでこの娘がここにいんのかとか。かまくら作っとけば問題ないと思ったのに、俺の寝てる間に何があったらこうなるかなぁ……カラカルもいないし。

 

ただまぁ、質問したいのは山々なんだけど……

 

 

 

 

 

「………………」

「………………」

 

 

 

 

き、気まずいッ…………!

 

 

 

見知らぬ誰か(一応会ったときは気絶してたから実質初対面)と二人きりなんて、流石に気まずすぎる……思えばこれまで赤の他人と会った時はサーバルだのなんだのと第三者が一緒にいたんだった。となると、初対面の相手と面と向かうのはかなり久々でして。

 

 

「……(ちらっ)」

「…………」

 

 

くっそぉ、チラ見しても背中合わせだから相手の表情がわかんねぇ、さっきからこの娘も無言を貫き通してるし……ああもうっ、さっきは普通に話せてたのにぃ!お、俺から話しかけるべきなのか……!?

 

 

「あ、えっと──」

「ねぇ」

「は、はひぃ!?」

 

 

 

どうしようかというところでいきなり声をかけられ、思わず変な声を出してしまった。

 

 

 

 

「……もうこれ、いいよ」

「……ふぇ?なっ、うおっ」

 

 

 

かと思えば、背後に座っていたはずの少女は立ち上がっており、首に巻かれていたマフラーを、そっぽを向いたまま手だけこちらに向けて差し出した。

 

 

「いや待てって、まだ動けるような体力じゃないだろう」

「へいきだよ。それにわたしのことも、もうほおっておいて」

「んな訳にも行かないだろ、なんで」

「……だって、わたしはあなたのなかまじゃない。あなたもわたしのなかまじゃない」

 

 

それに……と続けようとして、口をつぐんでしまった。眼に映る光が、若干だけ、弱くなっていた気がする。しかしそれを確認する前に、彼女の顔は俯いて見えなくなってしまった。

 

 

「……あなたこそ、どうしてたすけるの」

「それは……」

 

 

んー……言われてみれば理由なんざ考えたことがない。別に前世も今世もお人好しってわけでもないし、頼み事された時だって「仕方なく」やるのであって嫌だったり面倒な時はスルーしてたし。うっわ、考え直すととことんクズっぽい性格してるな俺よ……

 

 

「えーっと、それはだな」

「たすけてくれなくたって」

 

 

安易な考えでもいいからとなんとか答えようとしたとき、突然に彼女の声が遮った。吐き捨てるような、どこか鋭い辛さを感じさせる声色だった。

 

 

「たすけてくれなくたって、ほうっておいてくれたってよかったのに。わたしは、どうせひとりなんだから」

 

 

口調は少しずつ荒さを増していき、勢いも段々と強くなってくるのに、声は相変わらずにか細くて儚い。それがなんだか、とにかく痛々しかった。

 

 

「あのままどうにでも、なってしまえばよかったんだよ。もうどうせかわれないなら、なにもしりたくない」

「おいおい、いきなりどうして……」

「だって、もういやなの!」

 

 

大丈夫かと後ろを振り向くタイミングで、一層強く言い放った。

 

 

 

「あなたにたすけてもらったら、わたしはまたかってにだれかを『なかま』だとおもうかもしれない……ほんとうはひとりのくせに、かってに『なかま』だとおもいこんで、めいわくをかけるだけ。わたし、なにもしんじたくない、しんじられないの……」

 

 

続けて放たれる一つ一つの言葉に、相当の想いを感じさせられる。その想いが持つ重圧感に飲み込まれそうになるのをなんとかこらえて、ゆっくりと顔を覗く。

しかし彼女は俯いたままで、やはり表情は見えない。

 

 

「……きっとあなたにも、めいわくかけるだけだよ。ほら、これもかえすね」

 

 

一人思い悩む俺をよそに、彼女は着せられていた上着を脱ごうと奮闘し始める。

 

……が、袖に腕が絡まってなかなか脱げていない。ごめん、そういう雰囲気じゃないんだけどちょっと可愛く見えてきた。やだ、なにこの娘あざとい。

 

 

「……じゃなくって脱ぐな脱ぐな、その服じゃ寒さに耐えられないって」

「さむいのはなれっこだし……いっ」

「わわっ、ちょっとぉ!?」

 

 

しかし疲労が溜まった足でいつまでも立てている筈もなく、急いで振り返った俺の方へ倒れ込んでしまう。勿論受け止めることには成功した。改めて触ってみれば余りに華奢な身体に「どうしてこれまで耐えられたのか」と驚かされる。

 

彼女の髪の隙間から、小さな顔が見えた。

 

 

 

「おねがい……もう、おわりにさせて……」

 

 

 

その顔に、一線の涙の筋が通った。

 

眼が離せなかった。こういった感情をなんと形容するべきなのかは解らなかったが、とにかく胸が苦しかった。ただ、こんな涙に流されて消えてしまいそうな顔は、してほしくなかった。

 

 

「あ……ごめん、わたし、どうして……」

「……すまん」

 

 

ザクッ

 

 

「……ううん、あなたのせいじゃな……え?」

「いや、そう言われてもつい言っちまうっつーか」

 

 

気が付けば謝っていた。何に、どうして謝ったのか自分でもわからないが、多分無意識に言っていたんだろう。彼女に必要な言葉はもっと他にあるだろうに。

 

 

ザクッ

 

 

「やっぱり……なにかが」

 

 

ほんっと、なにやってんだよ俺……あれか、このタイミングでまたコミュ障(前世からの引き継ぎ特典)かよ畜生。俺が欲しかったのは転生特典の方なんだけどなぁ。

 

 

ザクッ

 

 

「……っ!」

「いやほんと、すまない。それ以外はなんも思い付かないっつーか、えと、言葉にすんのムズいなこれ……」

「ま、まって……」

 

 

ただまぁ、そうは言われても何か言わなきゃ俺の気がすまないというか……いや変に言わない方がいいのかもしれねーな。

 

 

 

ザクッ

 

 

 

「あ、なっ……!」

「……ん、どした?」

 

 

さっきから反応がおかしくない?なんか顔についてんの?ずっと怖がるような顔でこっちを見るもんだから慌てて自分の顔を触ってみるが、今度は首を振って指を指してくる。

 

 

 

ザクッ

 

 

 

「だ、だって、あぁ……っ!」

「……え?」

 

 

そしたら急に目を瞑ってしまう。なんだなんだ、そんな忙しなくコロコロと表情変えて。

 

 

 

 

ザクッ

 

 

 

「なぁ、なんかあったのか?」

 

 

 

ザクッ

 

 

 

より近くへ顔を近づけてみる。若干背丈に違いがあるため足元の影が重なり大きさを増す。

 

 

 

ザクッ

 

 

 

そして影は、俺の作る影より大きくなっていく。まるで『背後にいる大きなモノの影が映っていく』かのように。

 

 

 

ザクッ

 

 

 

「いや、だめ……っ!」

「だめって何が──」

 

 

 

そして──

 

 

 

 

 

 

ドザァァァアアアッ!

 

 

 

 

 

 

巨大な紫の触手が、地面に叩きつけられた。雪原は大きく凹み目に見える程に潰されている。

そしてその場所、つまり触手が狙った場所とは、俺らが居た場所──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ばーか」

 

 

──正確には、つい先程まで(・・・・・・)居た場所だ。

 

 

 

「え……なん、で」

「知ってるか?猫っつーのは相当耳がいいんだ。それこそ人間が聞き取れる音の距離の4、5倍は遠くの音だってキャッチできる、例えアリが芝生を歩く足音ほど小さくてもな。雪を踏むレベルに大きな音なんざ別のことに集中してたって聞こえるさ」

 

 

少女を抱えながら目の前に佇む紫色の怪物、セルリアンにそう説明してやる。まぁ、解るとは思ってないけど。ちなみに最後は脚色だ、俺は没頭すると実は他の事は耳に入らない。

 

 

「んでまぁ瞬発力だって勿論だから、てめぇのすっとろい攻撃程度──」

「あっ、まえ!」

「──ほーらよっ、と!」

 

 

続けざまに飛んでくる触手もジャンプで躱す。さらにそのまま木々を通り抜けて進み、奥の方で少女を降ろす。

 

 

「……さて、動かないでくれよ。あんな啖呵を切ったからには、戦ってやらねぇとな」

「ま、まってよ!べつにたたかわなくても」

「わりぃ、そうもいかない。アイツもうこっちに気がついてやがる」

「そうじゃない!なんでわたしのことたすけるの!?」

 

 

……あー、そういえばそんなこと聞かれてたな。だが残念だったな、答えは既に考案済みだ。

 

 

「……それはな──」

 

 

爪を尖らせ、翼を造り出す。

 

 

 

 

「──俺が『けものを守護(まも)るけもの』だからだ」

 

 

 

 

我ながら妙にカッコつけて言い放ってみた。ちょっと恥ずかしいとは思うけれど……まぁ感傷に浸っている余裕はない。気持ちを切り替えないと。

 

 

 

「けものを、まもる……?」

「そそ、まぁ参考程度にな。さぁーてと……いきますか!」

 

 

 

言い終わってから間髪入れずに、脚へ込めた渾身の力を全て解き放つ。柔軟に木々の隙間を飛び行く勢いに身を任せ、俺は全速力で持ってセルリアンへと跳躍した。




雛祭りの日(何ていうのか忘れた)だけど特に変わらず平常運転でした。
次回、約20話ぶりの戦闘シーンです。
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