第7話 サバンナ観光の
あくる日の朝。太陽はこれでもかとギラついて、ようやっと辿り着いたこの建物の中にさえ強烈な日差しが当たっている。それこそ、外は煉獄と見間違うほどの相当な暑さになっている。おまけに空気がすっかり乾燥しきっていて、一度出れば喉が渇きに悲鳴をあげるほど。
尤も、ここ「サバンナエリア」ではこれが普通なのだ。てか、もう慣れた。
「……そしたらさお腹が真っ白で羽は青色な鳥がいたの!これもうガチな話だから」
「えー、それほんとー?なんか怪しい……あ、おはようございます」
「あら?あ、トツカさんか。おはよ、早いね」
「ん、おはよー」
そんなわけで、俺がこの世界に転生して数週間が経った。最初の数日こそ新たな生活に戸惑ったが、さっき言った通り今ではこの生活にも慣れてきて、うまく適応している。といっても、基本的にはサバンナエリアのどっかやここら辺の施設、アトラクションなどなどを寝床にできるようになった、という程度だが。
「なんの話してたんだ?鳥がどうこうって言ってたけど」
「そうそう、雪山エリアの温泉宿ってあるでしょ?あそこにいったら真っ白な鳥がいたんだよ!あーあ、ミライも来れば良かったのに」
「私はリザとは違って暇じゃないのー。ガイドって意外と忙しいんだから」
何より、知ってるアニマルガール、そしてスタッフさんもかなり増えた。例えば、今目の前にいるミライさんとリザさんもそうだ。が、ここの人たちは基本積極的に接してくれる。そのおかげで、こちらとしても居心地がいい。ただなんで会うたびにモフってくるのかはわからん。やめてください。
「えー、なんでれふかー?」
「単純に鬱陶しいからなんだが?」
「いいじゃーん、減るもんじゃないしさー」
「サーバルにやりゃいいのに……」
会話の通り、挨拶したばかりなのだが既に
「んで、今日はどしたの?昨日も言ったけど、猫だからって一日中ゴロゴロはマズイよ〜?」
「あのな、今回はバリーの見舞いっていう正当な理由があるから。で、あいつどこ?」
「あー、それなんだけどさ……バリーさん、今朝縄張りに戻ったんだよね」
悲しき人間の性故か、はたまた「コミュ障」という名の前世からの引き継ぎ特典故か、転生して数日はスタッフさんとすら話にくかった。だがいつの間にやら羞恥心とかは消えたようで、今ではこうして気軽に話し合っている。
「え、マジ?あいつ、右足の怪我はまだ治ってなかったはずだが」
「んー、なんでも『心強い
「アニマルガールって治癒能力高いし数日経てば治ると思うわよ。気になるなら探してみてもいいんじゃないかな」
ちなみに今話題に出ている「バリー」なる人物もまた俺の知り合いで、だいぶ前、サーバルがドジやらかして木の枝に挟まってた時に助けてくれて知り合った「アニマルガール」である。んで、話の流れからわかると思うけど、昨日それほど大きくはないものの右足に怪我をしたのだった。
「わざわざ見舞いにきてくれる人がいるなんて、バリーさんも幸せ者ですよねー。それも『天使の猫』さんが来てくれるわけですし」
「……『テンシネコ』じゃなくて『ツバサネコ』の方で呼んでくれないか?なんか中二病っぽくて恥ずかしいんだが」
で、今出てきた固有名詞だが、こちらは知り合いのアニマルガールのことではない。
これは──
──何を隠そう……これこそ、この『俺』の正体ッ!
俺は『ツバサネコ』のアニマルガールだったのだッ!
……うん、完全に滑ったねごめんなさい。
まぁとにかく、俺は『ツバサネコ』というUAMとやらのアニマルガールだったわけだ。よりにもよって未確認生物に転生って……アニマルガールじゃなかったら相当辛いパターンだぞ。
それで『ツバサネコ』の特徴なんだが、まぁ俺と同じく「羽の生えた猫」である。ねこひふむりょくしょう?とかいうのが原因じゃないかって言われてるらしい。……え、それだけ?
そう、これだけである。このUMA、本当にただ羽が生えた猫ってただそれだけなのだ。伝説がいるわけでもなければ古来から言い伝えられたわけでもない。別に嫌というわけではないんだが、なんというかなぁ……そもそも正体がこんなお気楽に判明してしまっていいのか。もっとこう、緊迫した状態で「実は俺は○○のアニマルガールだったんだよ!」みたいな展開が欲しかった……え、そんな重要でもない?そっすねすいません。
あと、データベースには飽くまで「イエネコのアニマルガールの特殊系」として登録されている、らしい。確かにツバサネコはイエネコに羽が生えたUMA、なのだが……最早登録名にすら使われてないし。
「……ところで、仕事ないのか?つってももう10時頃だが」
「私は、これからガイドがありますので。さっき連絡を入れて、これから向かうところなんです」
「私は普通に休憩中。まったく、事務方ってホント暇なんだよねー。トツカさん一緒に来ない?」
「遠慮させていただきたいと」
「うぇー、けちだなぁ」
サーバル達に初めて会った時にもらって以来ずっと食べているジャバリパーク製造のピザまんを食べながら適当に返事をする。なるほど、今日はミライさんはガイドでいない、リザさんたちも仕事で暇はなし。あ、それならバリーに……いや、
「あ、じゃあガイドさんについていっていい?」
「うみゃみゃみゃっ!?」
ちょっ、まっ、えぇ!?サーバル!?お前今どっから出てきた!?いやさっきまでここに居たの3人だったはずじゃ……いくらなんでも神出鬼没すぎないか……?
「みゃみゃみゃなんて、意外に可愛い声出すじゃない」
「カラカルもいたのか」
「暇だったからサーバルについてきたの」
いや、本当に自由奔放だなお前ら……元が動物だし、そういう生活を送っているわけだから当たり前なんだろうけど、こればっかしは慣れないな。
「それで、ついていってもいい?」
「ついてくるって、ガイドに、ですか?うーん、大丈夫なんですかねそれ……」
「13条の第2項がグレーゾーン、って感じ。でもま、大事にならなきゃいいんじゃない?たかが国内向けツアーなんだしさ」
「たかがって、なんかあったら怒られるの私なんだけど!」
なんかジャパリパークの規則らしきものについて難しい話をしているが、掻い摘んで言えばおおよそオーケーってことなんだろう。そこらへん無知だからよくわからないけど。動物園、というよりサファリパークってどういう組織してんのかわかんないし。
「……まぁ、ついて来るだけならいいと思います。いいですよ」
「じゃ、今日のやること決まりね」
「要は邪魔にならなければいいわけだな」
「そそ。それじゃ皆さん、いってらっしゃいねー」
「わーい!行ってきます、スタッフさん!」
さてさて、と。ここには慣れてきたとは言ったが、ジャパリパークのガイド、意外とどうゆうのかわかんないんだよな。あれ、俺たちってむしろガイドさんに紹介される側じゃ……ま、いっか。
~数十分後~
「……あっちが入り口、こっちはメインストリート……で、ここが日の出港か」
俺たちがついたのは、遊園地に併設された港「日の出港」。ここはアンインチホーとキョウシュウチホーを繋いでいる「カンモン橋」と同じく、他のチホーとを繋ぐ数少ない場所であり、キョウシュウチホーの玄関口とも言われている。
「すごい、観覧車があるよ、早く乗りにいこ!」
「はしゃがないの、あんた目的忘れてないかしら?」
「ははは、元気ですね」
そんな日の出港だが、実は研究所からは少し遠い。研究所はサバンナエリアにあるのだが、日の出港へはサバンナエリアを出て一度遊園地のある林を通り抜ける必要がある。幸い俺たちはミライさん達の職員寮にいたからそれほど遠くなかったのだが。
「問題は、この後の検査に間に合うか、なんだよな」
「あ、午後1時頃から、でしたっけ?多分間に合うと思いますよ」
「でも結構距離ありそうだし、早めに抜けないと……」
向こうのスタッフ、リュウもそんなに暇そうじゃなかったしな。
検査は俺の方から頼んでやってもらっている。その関係上俺が守護けものであることも伝えていて、そっちも興味があるってことでわざわざ時間を割いてもらっていた。飽くまで個人的な研究テーマらしいから本腰を入れたりっていうのはないらしいが。
「いえ、今日はサバンナエリアをバスで横断する予定だから大丈夫だと思うんです」
「そうなのか?ってことは研究所にも?」
「研究所自体には行きませんが、お昼にその近くのお土産やさん兼休憩所へ行くので、それなら間に合うかと」
ああ、なんだ、それならよかった。
ここはアソ山から出ているサンドスターとやらによって小さいながらも気候が分かれているため、サバンナエリアや森林エリアなどに分かれてるわけだが、遊園地はサバンナエリアと雪山エリアのほうへ繋がっている。……なんか俺の知ってるキョウシュウチホーと違う。
とにかく、それで雪山エリアの方だとかなり距離が開くところだったんだが、話の通りなら時間の問題は解決、って感じだな。よしよし、後は気楽にガイドについていくだけだ。
「トツカー、一緒に行こうよー、面白そうだよ!」
「駄目よ、間に合わなくなっらどうするの」
「あ、そろそろ始まるので、向こうの方で待っててもらってもいいですか?」
「ってことだ、行くぞー」
「むぅ、トツカはわかってくれると思ったのにー!」
すまんな、だがそろそろ始まるみたいだからそっちに意識を向けないと。動物園はあまり行かなかったから、ガイドなんて予想できないな……特にここ、なんかサファリパーク的なのらしいし、いったいどうなるのやら。
少し待つと、船の方から何人かがやってきた。多分ここが集合場所なんだろう、ミライさんがお客さんらしき人々に集まるよう声をかけている。
だが、最近こう人の多い状況に出会わなかったから、前世で見飽きてたと思ったのに意外と新鮮味がある。サーバルはさっきから海の方ずっと見てるけど。お前泳げないだろ。
「みなさーん、それではガイドを開始します!」
ミライさんの大きな声が響いた。目をやると、一応アイコンタクトしてくれたので、こちらも親指を立てサインを返す。
「あ、始まるわよ」
「みゃっ、もう出発?」
「んなわけねぇだろ」
こういうのはまず前置きをしておいて、その上でガイドするものなんだよ。まぁ俺も「これいる?」っていつも思ってたことがあるが、そこはしょうがないってことで。
「あ、あなた今この前置きいらないって思ったでしょ」
「は!?なんでそれが」
「ふっふーん、秘密よ」
「ガイドさんなに話してるのかな?」
くっ、カラカル読心術でも持って……おっと、話が逸れたな。
よくミライさんの声を聞き取っていく。まだジャパリパークの説明を始めるところのようだ。
「最初に、皆さんにお聞きしたいことがあります。皆さんは──
──『けもの』が、お好きですか?」
ガイドとかよくわからないので、完全に妄想です。リザさんに関してはモブキャラなのであんまり出番はないと思います。しょうがないね()
※12月7日 大幅に書き直し