旧フランス領のボルドー。
ここにオーダーメイドの騎士たちの本拠地、円卓がある。
かつては黄金の葡萄畑として著名だった地方の一画。
そこにBorsの他、二騎が立っていた。
「よぉ、マルコ」
円卓を訪れたヨームが声をかけたのはマルコ=ハルベルト。
二騎のうちの一騎、Garethの騎士である。
「ヨームか、何かあったのか?」
騎士たちは基本的に円卓へは現れない。
というよりも、守護領域から離れられないのだ。
理由は勿論、M.A.R.I.A.だ。
彼ら騎士がいなければM.A.R.I.A.を止めれるものはいない。
「旧ロシア領に飛行型が現れた」
「は? 冗談じゃなく?」
ヨームの報告にマルコは目を見開く。
「冗談でエリア空けねぇよ。お前はどうしたんだ?」
軽口を叩きながらマルコに問う。
マルコも同様、理由無く自身のエリアを空けることはない。
「Garethの整備さ。タテコマ博士がここに来てるって聞いてな」
なるほど、とヨームが頷く。
彼らが駆る騎士の整備は彼女でなければ出来ない。
「セミスはどうした?」
ふと気付き、マルコが問う。
人型で意思を持つメイド、セミスの姿が見えなかったからだ。
「Borsで待機してるとさ。非常時に備えるんだと」
「人型はいいなぁ...自分の意思でサポートしてくれるんだからよ」
マルコが駆るGarethのメイドはAI型。
装着し騎士の操作の補助をするだけのものだ。
それぞれの騎士に合うメイドタイプをトライ&エラーで選んだとはいえ、人型の性能は群を抜いている。
AI型は気候を選ばないが衝撃に弱く、戦闘では回避を優先しなければならない。
結果的に長期戦になることも多かった。
「まぁまぁ、AI型の方が安全ではあるだろ」
たしかにとマルコは思う。
人型の欠点は感情が存在するため、コミュニケーションが必要になることだ。
AI型と違い、自動で回避することもない。
「ぉ、あれは...」
言葉を交わしながら進んだ先には二つの影があった。
長い廊下で立ち止まってまで話し込んでいる。
「博士! ミヤビ!」
ヨームの声に振り返ったのは二人の女性。
黒く長い髪を後頭部で結んでいるのがタテコマ博士。オーダーメイドの製作者だ。
対称的に黒い髪をベリーショートで切り揃えているのがミヤビ。もう一つの騎士、Arthurの騎士である。
「あぁ、来ていたのか...何かあったか?」
ミヤビが話を切り上げて二人に近付く。
「俺は緊急案件の報告に、マルコは整備だとさ」
「そうか、GarethはAI型だったな。クレハ、早急に頼む」
「了解しました、姉さん」
タテコマ博士は表情なく答える。
姉と呼ばれたミヤビは僅かだが微笑みを浮かべ頷く。
ミヤビの本名はミヤビ=タテコマ。
クレハ=タテコマ博士の姉である。
元は三姉妹だったそうだが末妹はM.A.R.I.A.出現の直前から行方不明になっているという。
その時のショックでタテコマ博士は感情が希薄になってしまっていた。
「で、ヨーム。貴方の報告を聞こう」
博士に促されて立ち去るマルコを尻目にミヤビがヨームの前に立つ。
「何があった」
ヨームは先ほどマルコに話した状況をミヤビに伝えるのだった。
用語や色々紹介
円卓の騎士:Gareth《ガレス》
シューレとガーディアンを持つ。
全体的に琥珀色一色で染まっており、旧イタリア領の守護を務めている。
搭乗者はマルコ=ラインバッハ。
薄い金髪の白人。マメな性格をしており、オーダーメイドも小まめに整備している。定期的にタテコマ研究所を訪れるほど。
旧ドイツ領出身で、オーダーメイドの搭乗者には立候補した。理由は友や家族を護るため。
円卓の騎士:Arthur《アーサー》
シューレとガーディアンを標準装備とし、槍型武器『エリン』を持つ。
頭から足の先まで白で染まっている。
搭乗者はミヤビ=タテコマ。
黒髪ベリーショートの東洋人。男性のような話し方をする。
性格は真面目で冗談を冗談と思わず、お堅いとまで言われている。
旧ニホン領出身で人型メイド《ミュー》に選ばれた。
守護エリアは旧フランス領。
タテコマ博士《クレハ=タテコマ》
オーダーメイドの製作者。
黒い長髪を後頭部で結んでいる。
人型のメイドを生み出すほど頭は良いが、妹を失ったショックで表情や感情が希薄になっている。
普段は旧ギリシャ領にあるタテコマ研究所に籠っているが、用があると円卓まで出張る。
円卓
旧フランス領にある騎士達の本部。
普段からミヤビが詰めているが、騎士やクレハも度々訪れる。
簡易的な研究施設もあり、タテコマ研究所の支部としての面もある。