旧世界の文明が微かに残る旧エジプト領。
騎士達が護る領土の中では比較的、静かな領土である。
「カリーシュ、周辺の様子は?」
腰までの長髪を三つ編みにした女騎士は、Lamorakに声をかける。
『ご安心を、マム。周囲にM.A.R.I.A.の反応、及び転移反応ありません』
返るのは独特の話し方の女性の声。
「引き続き警戒頼むぞ」
『サー』
カリーシュと呼ばれたメイドは再びLamorakに意識を沈める。
女騎士はため息をつきながら周囲を見渡す。
広がるのはどこまでも続く砂の海と、旧世界の遺物である三角形の遺跡。
名前は知らない。話だと旧世界の王族の墓だという。
「遺跡か...本来なら護るべき物なのだろうな...」
だが、今は護る余裕はない。
いつか平和になった時、その時は全力で護ってみたいと思う。
『マム』
「何があった?」
突然の呼び掛けに何時でも動けるように身体に力を込める。
『500m程先にKayの反応が』
「Kay...? カインがどうして...」
彼女の頭に浮かぶのは無愛想な男。
仕事関係以外ではこんな所に来ることはないはずである。
『私は如何致しましょうか』
「あぁ、すまない。カインの相手は私がする。警戒を続けてくれ」
『サー』
既に肉眼で確認できる距離にいるKayに手を挙げる。
敵対の意思無し、来ても良い、という合図だ。
とは言っても旧エジプト領のみのルールなのだが。
寄ってきたKayから、黒い髪を短く刈った男が降りてくる。
Kayの騎士、カイン=ハロルドである。
「ミーシャ=キルシュタイン、話がある」
「いちいちフルネームで呼ぶな、カイン」
カインの一言目で既に疲れたような顔をするミーシャ。
「すまない。緊急連絡だ」
「緊急...?」
「旧ロシア領に飛行型が現れた」
本気で相手にしたくなさそうだったミーシャが顔をあげる。
「ロシアに飛行型...? そんな馬鹿な。飛行型はアメリカ、日本のみだっただろう?」
M.A.R.I.A.は複数の種が有り、その中でも特に強力な飛行型は奪還を放棄した旧アメリカ大陸、撤退を余儀無くされた旧日本領にしか出現は無かった。
それが旧ロシア領に現れたという。
「もしかしたら、M.A.R.I.A.が本格的に攻め始めたのかもしれない」
「なるほど...つまり、今は平和なこの旧エジプト領にも飛行型や重装型が現れるかもしれないと」
「理解が早くて助かる。連絡は以上だ」
カインは素早くKayに乗り込む。
「待て、カイン」
そんなカインをミーシャが呼び止める。
「...?」
M.A.R.I.A.の出現が少ない旧エジプト領にLamorakがいる理由があった。
それはM.A.R.I.A.の研究の為である。
激しい戦闘故に残骸にしかならないM.A.R.I.A.だが、その残った残骸から正体を探る研究をミーシャは行っていた。
「たまたま確保できたM.A.R.I.A.を解体したときに分かったことなのだが...どうやらM.A.R.I.A.から噴き出す赤い液体は血液と同じ成分だ」
「...有人機の可能性がある、か...」
「皆に伝えてくれ」
「分かった」
ミーシャとの会話を終えると、カインはKayに乗り込み立ち去っていく。
『マム、どうしました? 』
「苦手なんだよ、機械的でな」
『なるほど』
ミーシャの感情に敏感に反応したカリーシュたが、ミーシャの回答に納得し、自身の任務へと戻る。
「有人機の可能性...はは...可能性じゃなく、有人機だよ、カイン。我々が戦っているのは人類だ...」
振り返った先には小さな砂山。
そこには解体したM.A.R.I.A.が埋まっている。
「伝えない方が良いのだろうな...」
偶然、形を残して撃破出来たM.A.R.I.A.。
装甲をバラしていた時、発見してしまったのだ。
目隠しをされ、口にチューブが繋がり、全裸で拘束された女性を。
衝撃で気を失っていたが、その後の救命活動により救うことが出来た。
だが目覚めた彼女から聞けたのは、悪夢のような事実だった。
戦っているのが軍人であったなら、どれだけ良かったことか。
あろうことかM.A.R.I.A.に乗せられているのは――
無実で投獄され、流刑とされた罪人だったのだ。
暗い話にするの大好きぃ!
さぁ、今回の設定です
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円卓の騎士 Lamorak《ラモラック》
シューレを2本とガーディアンというオーソドックスな騎士。
パイロットはミーシャ=キルシュタイン。
腰までの長い金髪を三つ編みにまとめた白人女騎士。
男性のような話し方をし、男性顔負けな戦闘力をもつ。
旧エジプト領の守護を受け持っており、個人的にM.A.R.I.A.の研究を行っている。
結果的にM.A.R.I.A.の正体を知り、精神的にダメージを負っている。
メイドは人型のカリーシュ。
軍人のような言葉を使うが、旧世界時代の書物で読んだだけの似非言葉。
本人はカッコイイと思っている。
円卓の騎士 Kay《ケイ》
ミドラーシェという大剣のみを持つ。
ガーディアンは無い。
パイロットはカイン=ハロルド。
旧トルコ領を守護する騎士。
黒い短髪、褐色肌の生真面目な男。
相手をフルネームで呼ぶ癖がある。
Kayの騎士となってから各地を転々としていたが、騎士が揃ってからは旧トルコ領を専門で護っている。
連絡役などを進んで買って出る仕事人間。
メイドはAI型のコルン。
重装型M.A.R.I.A.
複数のビーム砲を持っており、激しい攻撃を展開する。
機動力は高いが装甲は脆く、破壊は容易。
無実の罪人シェルコゥ=トゥリア
ミーシャが救ったM.A.R.I.A.のパイロット。
療養中であるが、少しずつ、ミーシャに情報をもたらしている。