緑谷出久の中の人 作:アニメ勢
USJ襲撃事件は雄英の教師陣が駆けつけた事により解決した。A組の生徒20人の内、怪我を負ったのは僕だけだった。ヴィラン連合と名乗る集団の大半は頭数を揃えただけのチンピラで、雄英の生徒の相手を務めるには力不足だったらしい。……まぁ負傷した人の度合いは酷いものだが。
相澤先生と13号先生はICUに運ばれる程の大ケガで、特に相澤先生は後遺症が残るらしい。お見舞いに来てくれたクラスの皆が教えてくれた。
僕も内臓を手酷くやられたみたいで3日間目を覚まさなかった。心配させた様で、母さんは病室の床を水浸しにする勢いで泣いていた。母さんだけじゃない、クラスの皆に心配かけた。特に仲の良い麗日さんや飯田君、尾白君にも泣かれてしまった。
……もう涙を見ないで済むように強くならなきゃ。
今の僕は入院中だけど、あと数日で退院できる程度には回復している。できるなら今すぐ退院して鍛練したいんだけど……。
―――目を覚ましたてまだ2日なんだから。あんまり無茶しちゃイカンぞ君
分かってはいるんだけどね。USJ襲撃事件で僕たちの力不足を実感させられたから。早く修行したいんだ。
―――その事なんだけどさ出久、ちょっと相談があってよ
そこでドアがノックされた。裏谷君との話を中断して入ってくるように促す。
「やあ緑谷少年、元気かい?」
「オールマイト!」
「目覚めたばかりなのに事情聴取に協力してくれてありがとう。お陰で有力な情報を得られたと言っていたよ」
「いえ、力になったのならよかったです」
トゥルーフォームで来てくれたオールマイトと話を続ける。僕のケガの具合、クラスメイトの状況、オールマイトと脳無の戦い。僕としては脳無との戦いについて詳しく聞きたかったけど、なぜか恥ずかしがってあまり話してくれなかった。何でだろう?
―――あー、アレじゃないか? 生徒が頑張ってるのに遅れたのを恥じてるんじゃないかと
な、なるほど。オールマイト責任感強そうだしあり得そう。
「さて。緑谷少年、実は大切な話があってね。私と君たちに関する、大切な話だ」
「オールマイトと僕たちに……。つまり」
「あぁ、君の個性、ワン・フォー・オールにまつわる事だよ」
オールマイトの真剣な様子に姿勢を正す。今この時に話すという事はヴィラン連合に関係しているのだろうか?
「まず確認させて欲しい。掌を幾つも着けたヴィラン、死柄木弔は先生と言っていたんだね?」
「は、はい。先生は欠陥品でも寄越したのかって怒鳴ってました。……あの、それとワン・フォー・オールにどういった関係が」
「……少しの時間だけだが、相澤君の意識が戻ったんだ。その時に当時の状況を聞けてね。相澤君によれば死柄木はこう言っていたらしい」
『今のオールマイトなら殺せる』
「っ! それって!?」
「あぁ。今の私の状態について知っていると見て間違いない」
「でも! でも、その事を伝えたのは……」
「私の親友と恩人を除けばヒーロー科の教師だけだよ」
「じゃあその中の誰かが裏切ったんですか!?」
「そんなワケないさ。あの中に裏切り者がいるとは考えづらい」
「じゃあ一体誰が」
オールマイトが左脇腹を押さえる。その服の下には痛々しい手術痕がある。
「まさか……」
「そう。そのまさかさ」
オールマイトは立ち上がり、窓から外を眺める。夕日が薄暗くなった空に映えている。綺麗だが僅かに不気味さを感じさせる空だった。
「私が生涯を懸けて追い求めていた宿敵。呼吸器官半壊、胃の全摘出という代償を払う事で打倒できた、いや打倒できたと思っていた巨悪」
「オール・フォー・ワン。奴がヴィラン連合の首謀者だ」
「それじゃあ緑谷少年、お大事に」
「はい。ありがとうございました」
オールマイトが帰っていく。ドアが閉まり足音が去っていくのを確認してからデカデカと溜息を吐く。
聞かされた内容は壮絶だった。正直、僕には荷が重い。
―――個性を引き継いだからなぁ。こればっかりはしょうがない、義務だと思っとけ
オール・フォー・ワンについてはオールマイトが必ず倒すって言っていたから心配してないんだけど……
―――死柄木か
うん。死柄木はオール・フォー・ワンを先生と言っていた。
―――つまり奴は俺たちと同じ立場なんだな
……だね。僕たちも死柄木も生徒って立場で、次世代を担う立場にある。
―――『君たちの宿敵として死柄木が立ち塞がるかもね』か。不吉な事言ってくれるねぇ
…………裏谷君。
―――どうした
入院しててもできる鍛錬って何があると思う? あんな話されたからさ、少しでも長い時間訓練していたいんだ。
―――……そっか、そうだよな。俺も同じ気持ちだぜ! ところで、相談したいって言ってたこと憶えてる?
あ。ごめん忘れてた。
―――おいおい……
ほ、本当にごめん。で、どうしたの?
―――いやね、脳無にやられたあの蹴りについて聞きたいんよ。……あの時、もしお前が表に出てたら捌けたか?
僕が? …………たぶん、できた。その代わりに両腕を犠牲にしてたと思う。
―――両腕を犠牲にしたのは俺も同じさ。俺の場合、そのうえで重症負っちまったし
それは仕方ないよ。旋風鉄斬拳は攻撃主体の拳法で防御には向いていないから。
―――けどあの時、腕だけでも出久が使っていたら結果は変わっていたとは思わねぇか
それは、まぁ……そうかも知れないけど。でもあの時は主導権を交代する時間どころか主導権を分割する時間もなかったし……
―――そう。どちらも一呼吸のタイムラグが生まれちまう。んで、そのラグは近接格闘において致命的
だから一戦の交代は最低限にしてるじゃないか。
―――それじゃダメなんじゃないかって話。今はこれで良いけどよ、今度いつ脳無みたいなヴィランが現れるかもしれない。そうじゃなくてもタイムラグがなければ、もっと気持ち良く戦えると思わねぇか
………。
―――それに、あー………
どうしたの?
―――いや、ね。……前に言ってくれたよな、俺たちは2人で1人だって。アレ結構嬉しかったんだぜ? だから、その、自分の体なのに自由に動かせないって何かこう……イヤじゃん?
ぷっ、あはははは!
―――何わろてんねん! 何か可笑しい事言った!?
ごめんごめん。ただ珍しく恥ずかしがってるからつい。
うん、じゃあ特訓しよう! 目指すはタイムラグの消滅!
―――よしきた! でもどうやって特訓するんだ?
え? そりゃもう延々と主導権の変更をするだけでしょ?
―――え? アレ繰り返すん? アレって少し痙攣するぞ?
うん? それがどうしたの? 他にやり方なんて思いつかないよ。
―――そうなんですけどね。ただ痙攣してるとこを看護師さんに見つかりでもしたら、お医者様がすっ飛んで来るぞ? 大丈夫? またママン泣かせたりしない?
…………大丈夫! 根拠はないけど大丈夫!
―――そうか! 根拠はないけど大丈夫そうだな!
数日後、看護師さんに見つかって入院が延期された。
看護師
先生!!緑谷君が泡吹きながら打ち上げられた魚みたいに!!
緑谷ママ
泣きすぎてティッシュ5箱使った