緑谷出久の中の人   作:アニメ勢

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スタートライン

 フルカウルを維持したまま試験会場を駆け巡る。今の僕はかのトップヒーローの力、その一端を使えている。それはたった5%だけど、あの人の5%はたったそれだけでも半端ない力をもたらしている。ぶっちゃけ拳法を使うまでもない。1ポイントも2ポイントも3ポイントも、漏れなく普通のパンチで一撃だ。

 余裕がありすぎて他の人を助けたり、協力してヴィランを倒したりしている。途中でガタイのいいメガネの人がこっちを見て何かに気づいたようだったけど、一体何だったんだろう?

 

―――それはアレだ、そいつの行動を見たらわかると思うぞ

 

 あの人の行動? うーん……他の人の手助けをしていらっしゃる?

 

―――そこまでわかってて何でその先がわからないんだよ出久ちゃん……

 

 

 

その後は仮想ヴィラン退治はほどほどに、ピンチになっている人の手助けを中心にやって回った。緊張してカウントがとんじゃったけど、たぶん合格ラインは突破してると思う。会場のあちこち走り回ったけど、僕よりヴィランを倒してそうな人を見ていないしたぶん合ってる。

 

―――たぶんを多用してて不安そうなんですけど大丈夫ですか?

 

 僕の頭は学年でトップクラスなんだよ? 大丈夫だよ、きっと。

 

―――不安しかないですねぇ……

 

 そんな馬鹿な会話をしていると地面が揺れた。どこからともなく機械音が聞こえてくる。一体何が起こってるんだ? 混乱していると辺りが暗くなった。今度は一体何が―――

 

「んなっ」

―――いやお邪魔虫ってレベルじゃねぇだろアレ

 

 振り向いた先にはビルを軽々超える大きさをもった超巨大仮想ヴィランがいた。お邪魔虫(0ポイント)だ。

 そいつは腕を振りかぶっている。拳は地面に向いていて、この後の行動を簡単に予想させる。

 

「やっばい……!」

 

 着弾地点の近くにいたので全速力でその場を離脱する。

 

 

 そして、振り下ろされた拳は轟音と相応の衝撃波をまき散らす。

 

 

「おぉう、これはすっごい」

―――見てみろよアレ、移動するだけでビルが崩れてるぞ。ありゃ近くにいるだけで危険だぞ

 

 全面的に肯定する。瓦礫が降っているし、そもそもアレは0ポイント、相手をしても時間の無駄になるだけだ。0ポイントと逆の方向に走っていく受験生に僕も習おうと足を向け―――――

 

 

 瓦礫で身動きが取れない女性を見つけた。

 

 

 足が彼女の下へ動く。頭で考えることなく、脊髄反射で動いてしまった。

 

―――おい! 出久お前何して!

 

 アレはいい人なの!

 

―――いい人ってお前俺にナイショでどうやって作ったの!?

 

 校門! 転びそうになった時に個性使って助けてくれた彼女!

 

―――あぁ、いい人ってそういう……

 

 ともかく! 今は時間が惜しいから、よろしく!

 

―――ったくよぉ……

 

「しょうがない奴だなお前は!」

 

 

 

 

 

 

「くそっ! こんのぉ!」

 

 運悪く瓦礫に足が挟まってしまった麗日お茶子はどうにかして瓦礫をどけようとしていた。不幸中の幸いでケガはしていないものの、動けなくなってしまっている。個性である無重力(ゼログラビティ)を使おうにも、足を挟んでいる瓦礫の上にも瓦礫がありそこまで手が届かない。

 彼女がいる方へ0ポイントヴィランが向かってくる。それが彼女は恐ろしかった。これは試験で万が一は絶対に起こらないことはわかっているが、巨大な鉄の塊が向かって来るのは恐怖心を煽り立てる。

 頬を引き攣らせ始めた彼女に声がかけられた。

 

「そこのあんた! 伏せてくれ!」

 

 声のする方を見る麗日、するとそこにはモジャモジャ髪の少年が走っていた。記憶にある人だ。誰よりも早く合図に反応し、ものすごいスピードとパワーで誰よりも多く仮想ヴィランを倒していた人。

 彼が腕を構えながら向かってきている。その顔があまりにも真剣だったので、素直に頭を抱える。すると、

 

 斬!

 

 音がした。何事かと見てみると瓦礫の大部分が()()()()()()()()()。あれほど強い増強系なのに複合型、なんて強個性なんだと呆然とする間に少年が麗日のもとに到達する。

 

「無事だな!? よしそれじゃここを脱出するぞ!」

 

 そう言って残る瓦礫をどかして麗日を抱きかかえる。

 

「え、ちょっ、えぇ!?」

「文句は後で聞くからな! 今ははよ逃げる!」

「いやちょ、ま、って速えええええぇぇ!?」

 

 

 

 

「さてさて、上手くいってよかった。後は適当に仮想ヴィラン倒して回ってフィニッシュだな。…………は? 倒したい? アレを? やはり賢いだけのバカだったか……」

 

 どうやら独り言が多い人であるようだ。

 

「でもどうやって…………あの装甲か? 舐めるんじゃねーよ、余裕だよ余裕。んで、その後は? …………まぁ、それならイケるだろうけどよ、どうやってそこまで行くつもりだ? 5%じゃあそこまで行けねぇぞ」

「あ、あの!」

「んお? どうしたんだ?」

「あの0ポイントヴィランを倒すって聞こえたんですけど……なんで、そんなことを? あれを相手にしてもポイントは貰えないんですよ?」

「あぁ、それはだね……」

 

 

「アレが暴れて困る人がいて、俺はアレをどうにかできるかもしれない。だったらどうにかする。ヒーローは困っている人を助けるものだから、らしいぜ?」

 

 

 その言葉に衝撃を受ける。

 

―――そうだ、そうだった。私はヒーローになりたくてここにいるんだ

 

「っ! だったら、私に手伝えることはありますか!?」

 

 目を瞬く少年。

 

「それは有難いけどよ、顔色ずいぶん悪いぞ? 休んだ方がよくないか?」

「大丈ー夫! なんの問題もないよ!」

 

再度、目を瞬かせる。すると少し笑って、

 

「それじゃお願いしようか。実はあいつの肩に飛び乗りたいんだが、いい方法が思い浮かばなくてな。何か良い案ない?」

「それなら私の個性がうってつけだよ。私の個性はゼログラビティって言って、手で触ったものを無重力にできるんよ!」

「おぉ! そりゃいい! 因みに解除はどうやって?」

「それも大丈夫、両手を合わせたら解除できるから」

 

すると彼は笑った。

 

「よっしゃ! じゃあ今から俺を無重力にしてくれ」

 

 

 

 

「よし、それじゃあ行ってきます」

 

 そう言って僕たちは跳び上がった。無重力だから、面白いぐらいにぐんぐん高く上がっていく。そして、彼は下にいるいい人、麗日さんに合図を送る。

 

「麗日さん!」

「うん! 解除!」

 

 重力の網に再度捕らわれる。それによって勢いがどんどん無くなっていき、ついには落下し始める。

 目指すは0ポイントヴィランの肩だ。

 

「よい、しょぉお!」

 

 狙い通りに肩に着弾する。

 その衝撃を、力の流れをコントロールし自身の力に変換する。

 膨大なエネルギーを腕に宿しながら、彼は技を放つ。

 

 

 旋風鉄斬拳

 

 

 その拳は旋風を巻き起こし、鉄をも容易く両断する。

 その名に恥じることなく彼は仮想ヴィランの首元の装甲を切り刻んで吹き飛ばす。

 よく見ると装甲だけでなく、内部も刻んでいる。流石に凄い、だけど僕も負けていない。

 

「よし、んじゃ――」

―――カッコよく決めろよ出久

 

「もちろん!」

 

 そう言って、一歩で首元まで間合いを詰める。

 足元がひび割れ陥没するほど強く踏み込む。

 先ほどと同じように衝撃を力に変える。

 師匠にしこたま仕込まれた、10年をかけた研鑽を解き放つ。

 

 

 流水岩砕拳

 

 水が流れるような澱みのない動きで岩を粉砕する拳。

 僕の拳は内部構造のほとんどを吹き飛ばす。

 

―――出久!

 

 彼の言葉に弾かれるように逆向きに走り出す。0ポイントヴィランはその体を大きく左に傾けている。直に倒れるだろう。

 それに巻き込まれたら流石に死ぬので、全力で走る。

 肩から飛び上がり、近くにあったビルの屋上に着地できた。

 

「ふぅ」

 

上手くいった。これ以上ないくらい上手くいった。アカン、ニヤけてまう。

 

―――あー、ニヤニヤしてるところ悪いけどお知らせがあるぜ

 

 ん? どうしたの?

 

―――これってヒーロー科の試験だろ? てことはヒーローに反するような行為は減点対象になると思わないか?

 

 確かにありそうだね。でも、僕たちそんな行為一切してないよね?

 

―――後ろ、見てみな

 

 言われて振り返る。そこには僕たちが倒したヴィランがビルをなぎ倒しながら倒れるところだった。

 ……うん? ()()()()()()()()()()

 

―――ヒーローって器物損壊に気を付けながら活動してるよな? じゃあ、これは結構一大事なんじゃ

 

 や

 

「やっちまったぁぁあぁあぁぁ!?」 

 

 

 

 

 

 

 筆記は完璧でした。でもヒーロー科は実技重視なんでオワタ。

 ゼログラビティに副作用でもあったのか体が重い。足跡が陥没してる気がしないでもない。まったくもー麗日さんはおちゃめだなーあははははぁぁああ。

 

―――こいつは重傷だな……

 

 

「おいデク!」

 

 

 唐突に声をかけられる。振り返ると見知った顔があった。

 

「かっちゃん」

 

 爆豪勝己。僕の幼馴染。

 金色の髪を伸ばして後ろにひとまとめにしている。顔は整っていて、赤い瞳は勝気につり上がっている。その瞳の中には強い意志を覗かせる。中学生にしては発育は良いほうだろう。いや、中学生の発育事情なんて知らんけど。

 簡潔にまとめると、レベルの高い幼馴染美少女がいた。これで口が悪くなかったらさぞやモテただろうに。……そういや、そこがいいって息巻いてた連中がいたな。わかりたくない世界だ。

 かっちゃんはこちらにガンをつけている。いつものことだがキツい、精神的にキツい。特に今は。

 

「どうしたのかっちゃん、何か用?」

「っ……! テメェ……まあいい。で、どうだったんだ」

「えっと……何が?」

「っ、だから、試験だよ試験! 受かってる自信はあるのかって聞いてんだクソナード!」

 

「え、心配してくれてるの? ありがとうかっちゃん」

「なんっ、ちげぇよぶっ殺すぞ!?」

 

「あはは、うん。筆記は完璧だったんだけど、実技でやらかしちゃって……正直微妙なラインなんだ」

「……ちっ、そうかよ」

 

 そこで会話が途切れる。何か言いたげな雰囲気なので言葉を待つ。

 

「オレは雄英に行く。そこで一番になって、ゆくゆくはNo.1ヒーローになる。」

 

 ゆっくりと、言い聞かせるように言葉を重ねる

 

「だから、お前も来い。オレと同じところに来い。」

 

 瞳の奥にあった強い意志が表に出てくる。それは彼女の感情につられるように爛々と輝く。彼女の纏う空気と絶妙にマッチしているそれは彼女の魅力を何倍にもさせる。

 そして、こちらに指を突き付けて言い放った。

 

「お前を倒すのは、このオレだ!」

 

 そう言って彼女は背を向けて去って行った。

 かっちゃん、君は……

 

―――あいつ帰り道逆じゃね? かっちゃんマジおちゃめ

 

 本人の前では絶対に言わないでね、まだ死にたくないんだ。

 

 

 

 

 

 

 入試からしばらく経った。今日中にでも結果が届くと思うんだけど……

 

―――お前もママンも心配し過ぎだって。ウロチョロすんなって歩き回るな、壁ドンは経験したことあるけど、下の階からの床ドンとか初めてで怖かったんだぞ

 

 ご、ごめん。

 

 そろそろ12時を回ろうかという時間。あれから鍛錬したり、師匠と鍛錬(サンドバッグごっこ)したり、師匠のお兄さんと鍛錬(タコ殴りの刑)したりしていた。

 あいつら鬼か。

 そして、あの人とは連絡すら繋がらない。……考えたくないけど見捨てられた、とか。

 

―――それはねぇよ。たとえ落ちてたとしても、あの人は連絡もせず捨てはしねぇって。それに、あれも持ってるしな

 

 だといいんだけどね。

 するとドタドタと騒がしい音が聞こえてきた。

 

「いっ出久! 来た! 来たわよ!?」

 

 母さんの手には雄英の封筒が握られていた。

 

 

 

 僕の部屋に入り封筒をあけた。中にはよくわからない機械が1つ。やっべここで最後の篩にかけるとか流石雄英やでぇ……。使い方わからんオワタ。

 

―――落ち着け阿呆、横っちょに何かボタンがあるはずだからそれ押しとけ

 

 そうなの? じゃポチっと。

 

『私が投影された!!』

 

 !?

―――!?

 

 オールマイト!? オールマイトナンデ!?

 

『実は来年度から雄英の教師になるんだよ! 小粋なサプライズってやつさ!』

 

 サプライズ過ぎて言語機能が一瞬乱れた。

 

『さて、ではさっそく結果発表といこうか。緑谷出久君、君のヴィランポイント53! 素晴らしい記録だぜ』

 

 そう言ってサムズアップするオールマイト。思わず笑みがこぼれる。と、ということは……!

 

『だが残念かな、最後の0ポイントヴィランで街に大きな被害を出してしまったね。我々ヒーローの本質はヴィラン退治というより人助けなのは知っているね? そういった意味では君が出してしまった被害は少々大きすぎた。 緑谷出久君、マイナスポイント30。』

 

―――――…………。

 

『よって君のポイントは23、これだけでは不合格だ』

 

…………わかってはいた。わかってはいたが、これは…………。

 

『そう、()()()()()()!』

 

 オールマイトの言葉に顔を上げる

 

『それがこれ! レスキューポイント! ヒーローの本質は人助け、それを頑張った人を評価しないなんて、あるかって話だ。』

 

『緑谷出久君、レスキューポイント50! つまり、君の合計ポイントは73! 文句なしの合格だ!!』

 

 オ、オールマイトォ…………!

 

『緑谷少年、君と初めて会った時、君は私に言ったね。無個性でもヒーローになれるかと。私はそれに無理だ、諦めろと言った。今でもその言葉は間違っちゃいないと思ってる。ヒーローの現場は危険と隣り合わせだからね。……そんな私に、君はこう言った。それでもヒーローを目指すと、私の様などんな時でも笑っていられる強いヒーローを目指すと。ヒーローの本質は人助け、そしてそれの下支えはどんな逆境でも挫けない不撓不屈の精神! 私は君の心意気を買ってるんだぜ! そして君は困難を払う力を手に入れた。だから――』

 

 

『来いよ、緑谷出久! ここが、君のヒーローアカデミアだ!!』

 

 ~~~っ!!

 

 

 

「やった! やったよ母さん! 僕、うかっ受かったよ!! 雄英に合格したんだ!?」

「ほ、本当!? よがっだ、よがっだねいずぐ~!!」

「あははは! 泣きすぎだよ!」

「う、うん。そうだ! 今日はお祝いしなきゃね! 特上カツ丼作ってあげる! そうと決まればお肉買ってこなくちゃ!」

「よーし! 僕が連れ行くよ! そっちのほうが早いし! フ ル カ ウ ル !!」

―――いやちょ、それはマズい! それはアカンで出久!

「今なら何だって出来る気がする!」

―――個性はらめぇぇぇ!




このお話の大元は出久にもっと早く背中を押してくれる人物がいたら、という妄想です。
それがナニカと悪魔合体して二人羽織緑谷が完成しました。どうしてこうなった。

緑谷出久
流水岩砕拳の使い手
拳法に求められてた筋肉がしなやかさを重視していたからか、聖火を継ぐ器足りえなかった
が、下地は出来ていたので筋トレは5か月で終了して残りは個性の制御訓練をしていた
え?5か月の成果が5%フルカウルはショボいって?たぶん新米教師オールマイトのせい


旋風鉄斬拳の使い手
憑依失敗した影響か前世の記憶の大部分が損傷している
もちろんヒロアカのことも憶えてない
出久が勉強してる間もずっとイメトレしてたから技の練度は出久より上
でも、出久の方が戦闘が上手いから勝率は五分

かっちゃん
原作のかっちゃんが余りにもヒロインムーブしてたから(偏見)いつのまにかTSしてた
幼い頃から出久に触発されて鍛えている
某火星のメガネ美女みたいな戦い方をする、ミカエルズハンマーかっこいい

オールマイト
だいたい原作通りに力を継承させた
出久の師匠の名前を聞いたことがある気がするけど何故か思い出せな――いや、これは、思い出したくない、のか? ダメだ、思い出そうとすると震えが止まらない
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