緑谷出久の中の人   作:アニメ勢

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マシンガンブローに乗せられた誤字脱字報告でノックアウト寸前です
幸せ過ぎて失神しそうだからなぁ! 本当にありがとうございます!

どうでもいいことですが、短編から連載に変更しました
個人的に短編は10話以内と思っていたので

投稿した後にすぐ誤字を発見するクソ作者の鏡
バ、バレてないよね(震え声)



広場での戦い

「そんな、13号先生と相澤先生が……」

 

 飛ばされる前にいた広場に戻ってきた僕たちが見たのは、倒れ伏す先生たちの姿だった。

 僕たちは広場より高い場所にいる。状況を俯瞰的に見られるのは良いが、状況が最悪なのも見て取れる。相澤先生は脳みそヴィランに、13号先生は黒モヤヴィランにやられてしまったようだ。今すぐにでも助けに行きたいけど、今行ってもすぐに殺されてしまうだろう。

 

「だったらまずは情報収集だ。かっちゃん、この状況どう見る?」

「…………掌と脳みそはよく分からん、情報が無くて判断できねぇ。けど、黒モヤはある程度推理できる」

 

 そう言ってこっちを見るかっちゃん。僕の意見を言えと目が言っているので言葉を繋ぐ。

 

「あっちの個性はワームホールだと思う。あのモヤに触れるのがトリガーなのは間違いない。……正直スゴイ個性だよ。でも、ひとつだけ気になるところがある」

 

 言ったところで僕の首を指すかっちゃん。

 

「あいつが身に纏ってる装飾だな」

「うん。モヤに触れたらアウトだったら、アレが転移していないのはおかしい」

「てことはあの個所は触れてもセーフってことだな?」

「恐らく。首だけじゃなくて、顔と胴体もセーフなんじゃないかな」

「てことは、だ。気づかれていない今なら、あの野郎だけはぶっ倒せるってことだな……!」

 

 好戦的な笑みを浮かべるかっちゃん。手から小さな爆発が起こっているのを見るに本気なんだろう。

 正直危険な賭けだ。この推理も自信はあるけど確証はないし、失敗した時のリスクが大きすぎる。先生にかばわれていた飯田君が見当たらないのは、助けを呼びに学校へ向かったんだろう。長距離最速の飯田君であればすぐに学校に着くはず、ヴィランの襲撃にあったと知れば先生方がすっ飛んで来る。それを待つのが一番なんだろう。

 

「けどそんな時間はないよね」

―――だな。先生は動けない、生徒だけでは歯が立たない、けれど時間稼ぎはしなくちゃならん。

「だったら黒モヤを倒せそうなこの機会を逃す手はない! かっちゃん!」

「あぁ、一撃の威力はオレのが大きい。お前が囮でオレが本命、でいいな?」

「うん! それじゃあもう少し移動し―――」

 

 掌ヴィランが動いたのを視界が捉えた。その先には隠れている尾白君、蛙吹さん、峰田君がいる。皆がヴィランの動きに気づいた様子はない。

 即座にフルカウルを発動し、皆のところへ跳躍する。

 

「んなっ! おいコラデク! テメェ何処に行っ」

 

 かっちゃんの制止を振り切る。今行かないと皆が危ないっ!

 目の前に現れたヴィランに体を硬直させる皆。それを見たヴィランが嫌らしく嗤って手を伸ばす。

 

「させるかぁ!!」

「何っ!?」

 

 その手が届く前に間合いに入り込む。勢いを乗せた拳がヴィランの顔に拳を振るう。これで少なくないダメージを与えられるはず!

 

 

 しかし、その拳は黒い壁に阻まれた。

 

 

「なん、この感触は……!」

 

 まるで厚手のゴムを殴った様な感覚がする。防御されたわけではなく、僕の拳はヴィランの腹に叩き込まれている。ヴィランの顔を見るもその表情に変化はない、ノーダメージなのは明らかだ。

 

「おいおい、驚かすなよクソガキ」

 

 脳みそヴィランから跳び退き距離をとる。掌ヴィランがイライラした声色で言い放つ。その言葉は恐ろしい程殺意を帯びている。

 皆の方をチラリと見れば、逃げてくれたようで姿は見えなかった。それだけは良かった。

 

―――危険になったのが入れ替わっただけだ! 気を抜くなよ!!

「たっくよぉ……、ガキってのはホントにイラつかせる天才だよな」

 

 ヴィランが首を掻きむしりながら呟く。掻いたところからは出血している。異様で痛ましいその姿に緊張が高まっていく。

 そして、相手の動きがピタリと止む。

 

「脳無、そのガキ殺せ」

 

 とてもあっさりとした言葉、その言葉に反応して脳無と呼ばれたヴィランが動き出す。

 瞬間、全身が粟立つ。警鐘がガンガン鳴り響き死の気配が色濃く現れる。

 瞬く間に距離を消し飛ばす脳無。振り上げられた右手は僕の頭に狙いを定めている。

 

 

 ダメだアレを喰らったら死ぬ

 どうする逸らすか

 無理だ不可能だ絶対出来ない

 なら避けるか

 ダメだ返す太刀で殺される

 じゃあどうする!?

 

 

―――出久!

「あああぁぁあああぁぁぁ!?」

 

 信じられないような絶叫が喉から出る。恐怖を振り払うように、喉が枯れんばかりに叫ぶ。

 左手を向かって来る右ストレートに沿え流れを変えようとする。しかし攻撃はビクともしない。

 ならばと右手も沿える。次いでとばかりに体全身を使って攻撃を逸らすことに全力を注ぐ。

 僕の必死の抵抗は実を結び、ヴィランの攻撃がスレスレで通り過ぎていく。風を切る音が鳴り響き、僕は攻撃の余波で真横に吹っ飛ぶ。

 

「あ、ぐっ!?」

 

 無様に転がりながらもすぐに立ち上がり構えをとる。

 良かった、何とか受け流せた。腕が痺れているけど、驚くことに被害はほぼゼロ。

 

―――よくやった! 後でキスしてやる!

 

 いやどうやってだよ。

 掌ヴィランが呆然とした様子で言う。

 

「…………は? 何で生きてんの? おかしいだろ!? 先生は不良品でも押し付けたのか!?」

 

 半狂乱に叫ぶヴィラン。けどそれもすぐに収まる。

 

「…………いや、先生に限ってそれはないか。プロヒーローも紙切れみてぇに吹き飛ばしたしな。て事はこのガキがやるのか。ちっ忌々しいガキだ」

 

 こちらを見るヴィラン。その目はギラギラと輝きながら殺意に濡れている。

 

「なに立ち尽くしてるんだ脳無、さっさと殺せ」

 

 再び動き出す脳無。今度こそ僕を殺すまで止まらないだろう。

 

―――回避だけに全神経を注げよ! それでも正直ジリ貧だけど!

 

 脳無が右の拳を振るうが、右に逸らして背後を取る。がら空きの背中に流水岩砕拳をお見舞いするが、やはりノーダメージのようだ。振り向きざまの裏拳を後ろに跳んで回避、今度はこちらから距離を詰め頭部に殴りかかる。直撃したがダメージを与えた様子はない。

 

「脳みそ直撃したはずなんだけどなぁ!?」

 

 カウンター気味に放たれた左フックを転がって避けるも、その先で蹴りが迫ってくる。それをどうにか受け止め、敢えて吹き飛ばされることで大きく距離を開けた。

 

―――いやいやいや何反撃試みてんの!?

 

 大丈夫、筋肉は裂けて骨は軋んでるけど問題ないよ。ちゃんと避けられてる、パワーは規格外だけど技術もへったくれもないテレフォンパンチ。素人の殴打なんて僕の流水岩砕拳でどうにでもできる。

 

―――アドレナリン効きすぎてハイになっとるやんけ!? 骨折ってんのに何が大丈夫なの!? どうにでもできてないやん!?

 

 それに敵の情報収集にもなる。今分かったのは2つ、打撃は無効だって事と身体能力が高いって事。打撃の無効化は個性だと思う、殴った感触はゴムみたいで全ての攻撃が無効化されてる。身体能力は正直分からない、素の身体能力にしては高すぎるし打撃無効化の個性だから異形型の個性って線も薄いし、ホントに分からない。

 

―――この状況で分析できるのは頼もしいけどさ君ィ……! ……よっしゃ腹括りなおした。こっからどうするよ、マジでジリ貧だぞ

 

 …………こればっかりは助けが来るのを待つしかない。それまで無事でいる保証はないけど、やらなきゃやられる!

 

 裏谷君は折れたと言っているけどまだ折れてはいない、ただ罅が入っているだけだ。とは言ったもののあと2回か3回腕を使えば折れるだろう。折れると同時に僕の命もポックリ逝きそうだから回避優先で動くしかない。……あのスピードを避け続けるのは難しいけど。三度脳無が動き出す。

 

 真っすぐ向かって来る脳無だったが、突然その半身を凍てつかせ停止した。

 

「え」

「はぁ?」

 

 驚いた僕とイラつく掌男が同じ方向を見る。そこには轟君がいた。

 

「無事か、緑谷」

「とっ轟君!」

―――お、おおぉぉ!! 流石イケメン登場シーンもイケメンだぁ!! 好き! 惚れた! 後でキスします!

 

 キスするのは僕なので止めていただきたい。

 いや、でも正直助かった。脳無はその活動を完全に停止させている。氷結は効くようで凄いほっとする。これで脳無は行動できない。この戦い、我々の勝利だ!

 

「はぁ」

 

 掌男が息を吐いた。残るはコイツだけ、こちらにはクソ強轟様がいらっしゃるおかげで負ける気がしない。

 

「本っ当に……ガキって奴はよぉ…………」

 

 

「さっさとそいつら殺せや脳無ゥ!!」

 

 

 脳無が凍った半身を自ら砕いた。

 

「え!?」

「っ! 何考えてんだこいつ!」

 

 体の半分を失った脳見が倒れ伏す。いや、砕いたのは左半身で心臓部分までも砕いてしまっている。これじゃ自殺じゃないか! このヴィランは一体何をして――、そこで思考を中断させられる。

 脳無が、脳無の砕けた半身が、見る見るうちに再生しているから。

 

「うそ、でしょ……。再生の個性まで持ってるなんて、そんな、反則……」

 

 絶望感からか声が漏れ出る。

 

―――規格外のパワー、打撃の無効化、心臓を失っても無事ですむ再生能力。確かにこれはオールマイトじゃないと対処不可能な案件だな

 

 いつも明るい声を出す裏谷君も、今は声が硬い。気付くと腕が震えていた。今更ながら敵の強大さを知り、怖がっているんだ。

 

―――しっかりしろ出久! 自分じゃ敵わないヴィランが出てくるなんて、ずっと前から分かってただろ!! ビビッてちゃ何も出来やしない!

 

 ……そうだった。何を恐れてるんだ僕は! 僕なんかちっぽけな存在だって分かってるだろ!

 頬を叩いて切り替える。大丈夫、何なら10年間も僕たちより強い人と稽古してたんだ、今更だ! そうこうしている内に脳無が完全復活した。回復した脳無は轟君に向かって走り出す。

 

「くそっ」

 

 氷を生み出す轟君だけど、脳無は走る衝撃だけで粉砕、何事も無かったかのように進み続ける。脳無を足止めできるのは轟君だけ、脅威と判断したから先に潰す気なんだ! そうなったら僕たちの勝機はゼロになる。それだけは避けなければ……!

 走り出すも到底間に合う距離ではない。だったら、裏谷君!!

 意識が切り替わる。表が裏に、裏が表に。切り替わるタイミングで生じるタイムラグがこの時だけはゼロに近い時間になる。

 

「やらせるかよぉ!!」

 

 裏谷君が腕を振り下ろし旋風が脳無に迫る。風は脳無に容易く追いつき、脳無の()()()()()()()()()

 

「え」

 

 足をなくした脳無は転がっている。それよりも、攻撃が通用した?

 

「え~っと……。効果は薄いだろうけど、せめて牽制にでもなりゃいいな~って思ってたんすよ。だから結構本気でやりましたよ? でも効き目があるなんて聞いてないっす」

 

 裏谷君が気の抜けた声を出している。あんなに硬い声だったのに驚きの変化だ。

 そんな事より何で効いたんだ? 流水岩砕拳は無効化されて、旋風鉄斬拳は有効? 2つの違いと言ったら……。

 

「ま、まあいい! 効果があるって分かったんならこっちのモンよ!」

 

 起き上がった脳無の右足を切り飛ばす。脳無はこちらを見ていて、明らかにタゲは僕たちに向いている。

 状況の変化をよそに、ある考えを閃く。そうか、だからあの感触だったんだ! 裏谷君!

 

「お、おうどうした出久。何かいい作戦でも思いついたか?」

 

 それもあるけど、何で旋風鉄斬拳が効いたのか分かったよ!

 

「おぉ! で、なして効いたん?」

 

 無効化だと思ってたあの個性は、おそらく吸収の個性なんだ。殴った時のゴムみたいな感触、あれは本当にゴムみたいに衝撃を吸収してるからあの感触だったんだ。だから凍らせる戦法が有効だし、衝撃を一点に集中させれば限界を超えてダメージを与えられたんだ!

 

「なるほどなぁ。でもね、考察は後にして作戦考えてくれませんか?」

 

 もちろん考えてあるよ。脅威と感じる方に向かうなら、その脅威が2人いればいい。動きを止める轟君と、ダメージを与えられる裏谷君の2人が居ればどっちに攻撃すればいいか迷うはず。それでどっち付かずの状況にすれば封殺できるはず!

 

「お、おう? でもそんな簡単に引っかかるか? 敵さんもそこまでバカじゃないと思うんだけど」

 

 脳無は絶対に掌ヴィランが命令してから動いてる。命令を聞いてから動くロボットみたいなモノなんだ。だから単純な動きしか自分ではできない、はず。

 

「でもよ、相手は人……。いや、そうか、怪人ってまさか……」

 

 ……うん、たぶん字が違う。怪人じゃなくて改人、改造人間なんだ。

 

「―――俄然負ける訳にはいかなくなったなぁ……!」

 

 語気を強める。彼の熱に当てられてか、こっちまで勝ちたいという気持ちが高まっていく。

 うん! その為には脳無に的を絞らせないことが重要だよ。轟君と常に対角線上になるように動き回って攻撃された方をフォロー、というか手足を奪って注意を惹くんだ。

 

「よし来た、轟! 作戦伝えるぞ!」

「……はぁ、いいよ。だいたい分かってるから。それに敵の目の前で作戦バラしてどうすんだよ」

「そ、それもそっすね……」

 

 再生した脳無が吠えて僕たちに向かって来る。

 

「っしゃぁっ!」

 

 横なぎに腕を振るい風を起こす。足を狙ったソレは跳んで躱されるも予測していたので、上空にいる脳無を切り裂き、伴う暴風で押し返す。そして着地したところを轟君が凍らせた。的を絞らせないように走り回る裏谷君と轟君。作戦を伝えていないにも関わらず、轟君は完璧に動いてくれた。

 それからは脳無を封殺することに成功していた。

 切り裂いては凍らし、凍らしては切り裂いて。たった2人、いや僕も入れて3人の共同戦線は上手く嵌った。特に轟君が凄い。裏谷君は微妙に脳筋だから僕が指示を出し、轟君がサポートしてくれている。あと少しでもタイミングがずれたら危ない場面が沢山あった。裏谷君も活躍している、彼の脳無をも両断する攻撃は大いに時間稼ぎしてくれて助かっている。普段は攻撃力が高すぎるから、と抑えているモノを全力で扱えて心なしか嬉しそうだ。

 ここで脳無が大きく腕を打ち出し、衝撃波を放ってきた。

 

「んなこともできんのかよっ」

 

 裏谷君はそれを後ろに跳んで回避。続けられる衝撃波ラッシュもバク転を繰り返し回避する。

 

「!? 何してる!」

「あっヤベ」

 

 !? 轟君と射線が重なっちゃった!?

 猛ダッシュで向かって来る脳無、それを見た裏谷君はそれに向かって走り出した。

 え、なにやってるん?

 

「おいバカ何やって――」

「信じてるぜ轟ぃ!!」

 

 そのまま僕たちは走る。あと数瞬で激突する瞬間にジャンプして脳無の頭上に跳び上がる。そして僕たちの体に隠されていた氷に脳無は捕らわれ、ついでとばかりに裏谷君は腕を切り落とした。

 

「今のは危なかった!」

 

 ほんとにね! 周りをよく見ろって僕に言ったのは君だからね!?

 

「いや、ホント悪かったって」

 

 

「いいなぁ、弱い者いじめかぁ?」

 

 

 真横から声がする。ザラついた嫌な声が。

 

「俺も混ぜてくれよ」

 

 掌ヴィランがそこにいた。

 さっきまで遠くにいたのに! こいつも身体能力が高い!

 ヴィランに右腕を捕まれる。

 

「こんのっ」

 

 振り払おうとするも凄い握力で離れない。

 すると、掴まれた部分から腕が崩壊し始めた。

 

「いい加減に、しろや!!」

 

 掴まれた右腕の指を勢いよく下ろす。ヴィランの左肩を大きく切り裂いて血が噴き出る。

 

「痛ってぇ!」

「離れろって言ってんだ!」

 

 がら空きの腹部に蹴りを入れられたヴィランは吹き飛んでいく。僕は右の前腕を見た。ひび割れ、皮膚が崩れ落ち、筋肉が露出している。このケガは相澤先生の!? このヴィランがやったのか!

 

「あぁ、ホントに痛ってぇなぁ――」

 

 吹き飛びながらヴィランが笑っている。それはとても不気味で―――

 

 

「そう思うだろ、脳無」

 

 

「裏谷!!」

 

 轟君の声に反応し振り向く。

 すぐそこまで脳無が迫っていた。

 

 突然動きが緩慢になる。僕たちだけじゃない。脳無も、轟君の口の動きも、吹き飛ぶヴィランも、全てスローモーションだ。

 漠然と、これが走馬灯を見る前兆であると理解する。だけどそんなモノを見ている暇はない。過去の記憶を見ても打開策は浮かばない。だったら今、この場を見る!

 スローモーションになった脳無の攻撃は、確実に当たる。回避は望めない。

 防御は間に合うだろうが、それは気休め以下の効果しかない。ならどうすか。

 

「―――――」

 

 裏谷君が叫ぶ。

 旋風鉄斬拳は攻撃に特化した拳法だ。やられる前に殺れ、を地で行き、そのあまりの攻撃性能にセーブしながら使用しないと相手を殺してしまう程で、ヒーローには向いていない拳。

 だが、その攻撃が防御に使われたら? ()()()()()()()()を行ったとしたら?

 向かって来る右ストレートに合わせるように両腕を突き出す。

 両腕は狙った通りに拳を真正面から受け止める。

 肉がブチブチと裂ける音がする。

 骨がバキバキと砕ける音がする。

 崩れた腕から血が噴き出し顔を濡らす。

 

「―――――」

 

 裏谷君はまだ叫ぶ。

 手首を合わせるように受け止めた両腕を、拳の上で滑らすように回転させる。

 指に纏わりつく風を解き放つ。

 脳無の腕から血が噴き出し地面を濡らす。

 輪切りになった腕が幾つも散乱する。

 

 世界が速さを取り戻していく。僕たちと脳無から出る血が辺り一面を赤色に染め上げる。腕の痛みが襲ってくる。

 緊張の糸が切れた。裏谷君はできることを全てやり尽くした。そのおかげで脳無の一撃を防げたんだから。

 

 ドンッと音がした。脳無の足が地面を砕いた音だった。

 そこでようやく気づく。脳無の、もう1つの能力。

 自身の半身を躊躇いなく砕いたのも、手足を切断されても臆することなく向かってきたのも。

 痛みがないのだ。痛みがないから怯まないんだ。

 だから、これも当然の事なんだろう。

 

 脳無が右足を弓なりになるまで後ろに引く。

 溜めた力が解き放たれる。

 こちらにそれを防ぐ術はない。

 

 

「―――……………ちくしょう」

 

 

 爆弾でも受けたかのような衝撃が腹を貫く。

 視界が物凄い速さで流れていく。

 その中で掌ヴィランの笑みだけが酷く鮮明に見え―――

 

―――それも水飛沫で見えなくなった。




9割書き終わった時点でアニメを見る機会がありました
視聴前:よっしゃこれで流れを知れるぞ
視聴後:流れ違いすぎワロタ
次までに言い訳考えときます……

裏谷
瀕死

緑谷出久
裏谷君!

????
光が来る
膨大な熱を伴って
希望の灯がやって来る
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