華麗なUターンを決めた台風さんですが、皆さまは大丈夫でしょうか。
僕はあの進路を見て、暦捕まえて攫っていった文さんにしか見えませんでした。
さて、今回の話なのですが、少し戦いから離れて昔話を、と。
あんまり長くしないつもりではありますが、今回と次回は確実に使います。
バトル展開ばかりで読んでいて飽きてしまうのを防止したい
(というかなにより僕が飽きる)という狙いがあります。
それでは、『こよみウォーズ 其ノ拾』!
今回も楽しんでいただけると幸いです!
010
霊夢さんと別れてから10分は経っただろうか?
そろそろ第3陣が参戦したはずだ。
比那名居天子さんと風見幽香さん。
どちらもかなりの実力者だけど、この大会の『真の目的』ではライバルから除外される。
ならばここは出来るだけ戦闘にならないよう、遭遇しないようにするのが吉だ。
触らぬ神に祟りなしである。神は私だけど。(フフッ)
「なーんて、独り言も増えてきますねぇ……」
夜も更け、辺りは真っ暗。
流石に私も眠いので、山の各地に設置されている祠の中、
いわゆる神域に入って今日は眠る事にした。
『寝泊まりする所がある』
他の出場者には出来ない、私だけの特権。
地味だがかなり重要なアドバンテージだろう。
「おやおや、随分と過ごしやすいですねぇ、ここは」
そうでしょうそうでしょう。
何せ私達守谷一家への信仰で満ちた空間ですからね……
「って、ええ!!?」
突如現れた色白で黒い髪の女の子。
どことなく暦さんの雰囲気を感じるような……?
「女の子の顔を見てそんなに驚くなんて、失礼しちゃうなぁ」
「あ、ご、ごめんなさい」
あれ?なぜ私は謝っているのだろうか?
不法侵入したのはこの子なのに。
「ところであなたは……?」
「申し遅れました。私、阿良々木先輩の高校の後輩で、忍野扇と申します
以後お見知りおきを、東風谷早苗さん」
「はぁ……」
あれ、私名前言いましたっけ……?
「はっ!もしやあなた……!?」
「おや、思いのほか勘が鋭い……」
「私の信者の方ですね!!?」
「え」
「なるほどなるほど。私がここを開くときに巻き込まれてしまったんですね。
いやぁすみません、偶にドジってやっちゃうんですよ『神隠し』」
ドジで神隠しなんてされたらたまったものじゃないけど
「あの」
「安心してください!夜が明けたら必ず里まで送り届けて差し上げますから!
たった一人で森をさまよって疲れたでしょう?
この神域は外から入ろうとする邪な物を通さない結界で守られていますから、
ゆっくり休んでくださいね」
「あぁ……そうですね、じゃあお言葉に甘えて」
「よかった!実は、話し相手が欲しいなぁって思ってたんです!
えーっと、忍野さんは……」
「私の事は扇ちゃんとお呼びください。
幻想郷にはその呼び方ではややこしい事になる男がいますので」
「そうなんですか?じゃあ扇ちゃんも私の事は早苗ちゃんって呼んでくださいね!」
「分かりました。早苗さん」
「早苗『ちゃん』って呼んで!」
「早苗さん」
「『ちゃん』って……!」
「早苗さん、先ほどは何を聞こうとしたんですか?
何やら私に質問しようとしていたようですが」
「え?……あぁ!そうそう!扇ちゃんさっき自己紹介の時に、
暦さんの高校の後輩って言ったじゃないですか。
それで、扇ちゃんも幻想入りした外の子なのかなって」
「いえ、『私』はこの幻想郷出身ですよ」
「え?でも高校の……」
どういうことだろう?幻想郷に高校は無いし、そもそも暦さんは外の高校出身のはずだ。
幻想郷から外の高校に通っている、という線はかぎり無く薄いだろう。
最近、幻想郷と外の世界を行き来する能力を持つ子が現れたとも聞いたけど……
「そんなことより早苗さん」
「え?」
「あなたの事を聞かせてくださいよ。あなたとあの男、阿良々木先輩がどこで出会ったのか。
馴れ初めを聞かせていただきたいです」
「な、馴れ初めですか。そんなに大層な物語でなくていいなら……」
「ぜひ」
「あれはまだ私が外の世界にいたころでした――」
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神社の長女として生まれた私は生まれつき、
神の声(諏訪子様と神奈子様)を聞くことができた。
巫女として育てられた私は、周囲から『奇跡の子』と呼ばれ、大事に、過保護に守られ生きていた。
外は危険が多いから、と神社の敷地から出ることは許されず、
ころんで怪我するといけない、と外では走ることすら許されない。
まだ幼かった当時の私は、それに何の疑問も持たなかったし、何の不満もなかった。
おかげさまで私は小学校に入るまで、怪我も病気にも一度もならなかった。
健康に、すくすくと育った私は、見事に歪んだ子供へと成長していた。
近所に私立の小学校がない。という理由で、私はごく普通の公立の小学校へ入学した。
完全に歪みきり、生意気な子供に成長していた私は、
小学校でも存分にその歪みっぷりを発揮した。
登下校は車で送迎。
体育の授業は「危ないから」と参加せず。
昼休みの時間、「遊ぼう」と誘ってくれた子に対して「凡人が気安く話かけるな」と突き放す。
当然そんなヤツに友達ができるわけもなく、6年の間、私は独りで学校生活を送った。
そして、小学校卒業が間近の日。
思えばあの日、車の故障がなかったら。
止める使用人を置いて、私が一人で帰ろうとしなかったら。
あの人が話かけてこなかったら、私はあのまま独りぼっちのままだっただろう。
「やぁ、お嬢ちゃん。どうしたの?こんな所に独りぼっちで」
初めて歩く通学路で、小学生の私は知らない男の人に話かけられました。