K66提督です
前回の投稿から早いもので2ヶ月が経過してしまいました。
もう忘れられてるだろうなぁと思っていたのですが、
たまにお気に入りの数が増えたり、閲覧数が伸びていたり。
それを燃料に、チマチマと書き続けました。
『こよみウォーズ 其ノ拾壱』
短いですが、楽しんでいただければと思います。
011
「やぁ、お嬢ちゃん。どうしたの?こんな所に独りぼっちで」
知らない男の人に話かけられた。
「気安く話かけるな」
私はいつも遊びに誘ってくる同級生のものと同じように返答した。
これを言うと皆すぐにどこかへ消えてくれる。
「えいっ」
突如、『ズビシッッ』と頭に鋭いやら鈍いやらの
衝撃が走る。
「痛ぁッッ!!?」
「ふっふっふっ、考えが甘かったな小学生!僕にはそういう拒絶は通用しない。
なぜなら日常的にそういう扱いを受けているからな!!」
振り替えるとそこには、私の頭に手刀を叩きこんで、得意気な表情を浮かべる男がいた。
……というか、本当に誰なんだ。こいつは。
「それで?小学生。なんでこんな所に独りでいるんだよ」
「1人で、帰れると思ったから」
「ふーん……で、迷子になったわけだ」
「ちっ違う!!私は迷子になんか……なって……」
冷静になって辺りを見渡すと、全く知らない道に自分が立っていることに気が付いた。
一度認識してしまうと急に怖くなってしまう。
「こ、ここは……?」
「うーん……うん、よし!じゃあ僕が家まで送っていってあげよう!!」
「おいお前様!また簡単に言いおって!!追手はどうする気じゃ!!その幼子を巻き込むつもりか!!」
金髪の女の子が男の人に怒鳴る。
……この子一体どこに居たのだろうか?
「いっぺんに喚くなよ忍、大丈夫だって。あいつらそんなに強くなさそうだったし」
「わめっ……儂はどうなっても知らんからな!!儂らに関わるということは、その幼子を『コチラ』側に引き込むという事じゃぞ!」
「あぁ、そんな事心配してたのか。なんかお前最近優しくなったな?……大丈夫だよ」
男は私の方を見るが、私を見てはいなかった。
全てを見透かすような赤い眼に背筋がゾッとした。
「この子は元から『コッチ』側だ」
「なんじゃと……?」
男の話を聞き、金髪の女の子にも見つめられる。
私ではなく、私の『奥』を見つめているようだった。
「……ふむ。まだ目覚めてはいないが確かに。目覚めればこの辺りの力関係がガラリと変わるじゃろうな」
「ここで放っておいてアイツ等に見つかる方が危険だ。この子の力が悪用されかねない」
「……そうじゃな。まぁ、好きにせい。どうせお前様は何を言っても聞かんからの」
「さて、じゃあそういうことだ、お嬢ちゃん。僕が君を無事に家まで送り届けるよ。
僕の名前は阿良々木暦、改めてよろしく」
「早苗。お嬢ちゃんじゃなくて、早苗って呼んで。オジサン」
「オジ……!?さ、早苗ちゃん。せめてお兄さんにしてくれないかな……」
「わかった……?あれ、あの女の子は……?」
「へ?……あっ、忍!潜るなよ!この子の前ではちゃんと普通のフリを――」
『いたぞー!一般人を人質に取っている!!危害を加える前に速やかに確保しろ!!』
「来たか……!忍!」
「わかっておる!」
『バサッ』
お兄さんの足元の影からさっきの女の子が現れ、背中に蝙蝠のような翼を生やす。
「――!?――!!?」
理解不能な事が立て続けに起こり、頭の処理が追い付かない。
「忍!早苗ちゃんが気絶した!!」
「暴れられるよりマシじゃ!落とさぬようしっかり抱きかかえておけ!」
「まかせとけ得意分野だ!!」
薄れゆく意識の中、二人の会話が聞こえていた……
「あう……?」
どれだけ時間が経っただろうか……気が付くと私は空を飛んでいた。
「~~~~~~!!?」
「あ、危ないって!早苗ちゃん落ち着いて!!大丈夫だから!!」
「お、落ち、おちちちちち!!?」
「あー、ダメだこれ。忍、どこかに降りれないかな?」
「どこかと言っても……む、あそこはどうじゃ」
「あれは……学校か」
「あれ、私の学校だ……」
「つまり小学校か。よし忍、あそこにしよう。早く行こう」
「儂、偶にお前様は一度退治された方がいいんじゃないかと思う時があるんじゃが……」
「なっ、違う!僕は学校に行けば早苗ちゃんの家が分かるんじゃないかと思ってだな」
「不審者が女児を連れて小学校に入っても通報されるだけじゃと思うが」
「ふふっ」
「お、ようやく笑ったな。早苗ちゃん」
「え?」
笑った……?この私が?
「わ、笑ってない!」
「女の子は笑ってる方が可愛いと思うな、僕は」
「うるさい!」
「そろそろ着陸じゃ。あまり暴れると叩き落すぞ」
ゆっくりと屋上に降り立ち、ようやく地面に足がつく。
安心感が凄い。
「ふぅ、サンキュー忍。お疲れ」
「ふん、疲れたわい。二人のお荷物をぶら下げて飛ぶなんぞ二度と御免じゃのぅ
ということで儂はしばらく寝る。よほどの事がない限りは起こすでないぞ」
忍と呼ばれる女の子は文句をいいながらまたお兄さんの影の中に入っていった
「あの……忍ちゃんって……」
「あー、えっと……」
「吸血鬼じゃ。儂もこの男もの」
お兄さんが言い淀んでいると、忍ちゃんが影から頭を半分出してそんなことを言った。
「あっ、おい忍!もう少しオブラートに包むというか段階を踏んでだな……!」
「そんなめんどくさいことせんわ」
「きゅ、吸血鬼って……」
「えっと……影に潜んだり、色々変身したり、何もない所から色々作ったり、後は……」
「人を、襲ったり……するの?」
お兄さんから距離を取る。
仲良くなれると、少しでも思った私が馬鹿だった。
所詮この人達からしたら私達なんて、食べ物にしか見えないんだ。
「しないしない!僕は人の血は吸わない!!」
「でも、それじゃ何を食べて生きてるの」
「……同属、僕と同じ吸血鬼だよ。だから僕は吸血鬼ハンターも吸血鬼もどっちにも狙われて――っ!」
『Om te snijden Dáinsleif』
「危ない!!」
突然屋上から校内に繋がる扉が吹き飛び、私に向かってくる。
「キャァァァ!!」
『怪異――
『ガシャアッ!』
扉がひしゃげる大きな音が聞こえる。
目を開くと、そこにはお兄さんの大きな背中が。
「お兄さん!!」
「――おもし蟹』……良かった。ケガはなさそうだな」
「あ、ありがとうございます……」
「?急に素直になったな」
「弁当を守るのは大変そうだな。阿良々木暦」
扉の飛んで来た方向。
校舎の中から真っ赤なマントを纏ったおじさんが現れる。
「……僕は人は食わねぇよ。誰だお前は?」
「名などとうに捨てた……商売仲間には『ダインスレイブ』と呼ばれているがな」
「商売、ってことはヴァンパイアハンターか」
「いや失礼、商売では語弊があるな。これは私の生き甲斐、存在意義と言ってもいい」
「存在意義……?」
「我が身と我が剣は強者の血を好む。噂の吸血鬼コンビと殺り合えると思いここまで来たが……」
赤黒い眼に睨み付けられ、体がすくんでしまう。
「ひっ……」
「その娘の『中身』の方が強そうだ……」
「待てよ。早苗ちゃんに手は出させねぇ。僕が相手になってやるから、かかってこい!」
「…………」
ニヤリ、とマント男が不気味に嗤う。
「いや、その必要はない」
「……?」
『Zwaard is wordt uitgestoten uit de schede』
床のタイルを砕き、一振りの剣が飛んでくる。
危険を自覚した時には、既に刃は私の頭を貫こうとしていた。
「早苗ちゃん!!!」
世界がゆっくりに見える。
しかし体は動かない。
あぁ、これが死ぬ瞬間なのか。
走馬灯らしきものも頭をよぎるが、これといった思い出はない。
唯一出てくるのはお兄さんとの少しの会話のみ。
あぁ。
出来るならば。
この人ともっともっとお話したかった。
もっともっともっと、笑いたかった。
もっと……
『ザクッ』
肉を抉る音がはっきりと聞こえる。
視界が真っ赤に染まる。
お兄さんの泣きそうな顔。
マント男の残酷な嗤い顔。
太陽のような金の髪。
夜空のような青い髪。
「私達の可愛い娘に……」
「随分とお痛をしてくれたじゃあないか」
聞き慣れた、優しい声。
「「絶対に許さんぞ、人間!!」」