IS ダークライダークロニクル   作:金宮 来人

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今回もバトル回です。
さて、誰が戦うでしょうか。
そして、その結果がどうなるか・・。
お楽しみに。

では本編へどうぞ。


19 真の終焉 中章 戦闘2

さて、さっさと始めよう。

「あなたと私(簪)は似ていた(・・・・)。」

「お前と私がだと?」

「お互い、優秀な姉を持ちそれと比較されて恨んで憎んで・・それでも血がつながっている事を悲観した。」

「それがどうした!?」

打鉄の剣を振って私を睨みつける女、『篠ノ之箒』は篠ノ之束の妹としてしか見てもらえなかった。私もロシア国家代表の更識楯無の出来そこないの妹『更識簪』としてしか見られていなかった。

「だからこそ、一つ言わせてもらいたいの。」

「さっきから、貴様が言いたい事はなんだ!?」

 

「貴女って何を目的に生きているの?」

 

「なっ!?」

「話は聞いた。元は片思いを一度した事がある。その相手が織斑一夏。それでも彼は居なくなった。それから貴女はこの学校に来て『三日月神楽』君だっけ?彼に慰めてもらって彼の隣に居た。それは恋?愛?・・まったくそうは思わないわ。貴女にとって都合のいい相手を求めているだけ。イギリス代表候補生のセシリア・オルコットもそう。ただ甘えたい相手がほしいだけ。まったくもって下らない。自分が強くなってしっかりと見てもらおうという気が無い。」

「貴様に・・貴様に私の何が分かる!?」

そう言って篠ノ之箒は剣を振ってきた。ソレを私は受けて切り払う。相手もそれを避ける。

「貴女と私が違う事は分かる!!私は自身を見てもらうために血反吐を吐きそうなほどに鍛えた!実際何度もあきらめかけた!それでも、・・『だとしても』と自身を鍛えてこの力を使える!ただもらっただけじゃない!強さを得た!私自身の心を強く持つことを教わった!」

そして正眼に剣を構える。打鉄龍剣の手には『ビートクローザー』。

 

「それが分かる『今』の私は・・負ける気がぁしない!!」

 

叫んだ。本気で心の底から叫んだ!相手があの篠ノ之博士の妹だろうと、こんな歪んだ世界で歪んだまま、進んで行くなんてありえないから。

正しい世界にクロノスが戻すというなら、私も協力するだけだ。

彼は血に汚れていると言った。そんな事、私の家がそういう家だって知っている。姉がそういう事を指示してやっている事も知っている。

【だからこそ】、遠ざけたかった事を知った。ただ私を見てくれた人は近すぎて分かっていなかっただけだった。お互いに大事にしてすれ違いをしていただけだった。

それに気がつかせてくれたのはクロノスだから、彼とともに世界を正しくするために、お姉ちゃんと仲良く手を取って協力していくために・・、

「ここで貴女を倒す!!」

叫ぶと共に、それに応じるようにナックルブレイカー用に持っていた『ドラゴンスクラッシュジェリー』が赤く染まりだす。そしてそれが火を噴いた。

「うわっ!?何!?」

驚いてそれを腰から外す。

更にクローズドラゴンが声を上げる。

『Gyaoooo!!』

するとベルト脇から炎が上がる。火が出たそれはクロノスが作ってくれた試作のナックルブレイカー。そしてクローズドラゴンちゃんがそれを咥えて空へと浮かぶ。

「な。何が起きて・・!?」

「はは、暴走か!?身に合わない力を付けたから・・」

そう言っているとクローズドラゴンは何かを思うかのようにブレイカーに炎を吐いて更に強く纏わせた。

「ドラゴンちゃん!?」

『Gururu・・』

炎で燃えたブレイカーは、赤く染まり形を変えていく。それはまるで拳のように・・。

「コレは・・?」

炎が急に消えた。それを咥えてクローズドラゴンは飛んできた。その拳のような物のハンドルを握る。そして、落ちていたボトルも拾う。ボトルは赤く光り形を変える。

そしてクローザ―ドラゴンちゃんを一時的に空へ待機させる。

拳についたハンドルを握ると分かる。

コレは私自身の握り締めた拳。心を決めた意志その物。

赤くたぎる熱。それを秘めた拳。

それにフルボトルを差し込む。

赤くなったドラゴンフルボトルは堅くなったマグマの様だ。コレは『ドラゴンマグマフルボトル』だ。それを『拳』に差し込む。

『ボトルバーン!!』

更にその拳をベルトに差し込む。拳が開き中のボトルが赤く染まる。

『クローズマグマ!!』

ハンドルを回すと音声が流れる。

「変身!!」

そう言うと背後に煮えたぎるマグマの入った炉の様な物が現れる。それが傾き中身をクローズへと流す。その中から燃えるように装甲が変化して、赤やオレンジ色に燃える炎と黒く硬い装甲へと変化していく。

『極熱筋肉!クローズマグマ!!アーチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャ・アチャー!!』

「力がみなぎる・・、魂が燃える・・!!」

私は【仮面ライダークローズマグマ】へと変わった。そしてナックルを構える。

「私のマグマが・・ほとばしる!!」

ドラゴンちゃんが新たに私にくれた力、私の意思、その熱い思いをその手につかむ。

「この滾り・・誰にも止められない・・行くぞぉ!!」

相手の篠ノ之箒は剣を構える。私はブーストを吹かせて突っ込む。真正面から殴りにかかる。

「私に拳で挑むとは愚かだな!私は剣道で中学日本一だぞ!?リーチが違う!」

『ガキン!』とそのまま切られても全く装甲に傷一つも付かない。

「どうしてっ!?」

「それがどうしたぁああ!!今の私はぁ!!誰にも!止められない!!」

『ガシャァン!!』

拳の一発で相手の武器である長刀『葵』に似た刀を砕く。

「なにっ!?バカな!?量産品の『葵』ではない!これは私用の特注で作った剣の『茜』だぞ!?こんなすぐに壊れる訳がない!?」

「ふん!!」

驚いている間に殴りかかる。すると壁にぶち当たり叩きつけられる。

「がぁ!?貴様!?無手相手に卑怯な!」

「コレは戦争。汚い?卑怯?ソレで何?あなた達は人の命を奪う装備をしている。リミッター解除したってことはそういう事でしょ?なら・・」

 

「自分が死ぬ覚悟もできているんだよね?」

 

そう言いながら首に、龍剣『ビートクローザー』を添えるとこの女は顔が青くなる。

そんな覚悟もなくこんな事をしだしたのだ。クロノス風に言うと『まったくもって度し難い愚か者』だ。バカバカしい。

「あの男や織斑千冬にそそのかされたのでしょうけど・・どうせ、覚悟もなくここに来たくらいでしょうね。まったくもって潰す価値もない。」

「私の価値が無いだと!?」

「私がこの手に初めて剣を取った理由を、貴女には分からないでしょう?私は銃や薙刀の方が得意なのだけど・・」

打鉄二式の装備は入っているが・・ライダーシステムと相性が悪いので、普通の打鉄二式に換装した時にのみしか使用できない。

「ならば何故剣を取った?」

「しがらみを断ち切って自分の力で進みたいがため。姉の力じゃなく、自身が協力して手に入れたみんなの手を取ってでも、自分の未来をつかみ取るため。本当は力が必要じゃなければ私はこんな力を必要としなかった。皆と居れるだけでも良かった。でも、時代がそれを許さない。あなた達や織斑千冬、女尊男卑の世界が秩序をゆがめた。だからそれを戻すために血に汚れても、世界を戻そうとするクロノスの手を取った。そして私は彼の未来と私へのしがらみを断ち切るためにこの力を得た。貴女みたいにただ暴力のためじゃない。世界の苦しんでる人を助けるため。許される方法じゃない。だって殺しているのだもの。人を、命を奪って血に汚れているのだもの。それでも、・・汚れた事『だとしても』、私達はその先を許容できなかった。だから革命を起こした。ファントムトリガーとは、私達多くの世界を戻そうとする人間みんなの事。必要になれば、また私は無残に人を殺すだろう。でも、後悔はしない。それが私の求めた世界のためだから。私の持つ【正義】とはそうだから。クロノスはヒーローじゃない。でも、世界の未来を愁いて立ち上がった【ダークヒーロー】だよ。」「あの男が・・」

「元、織斑一夏。私が集めた情報だと彼は昔から悪を許さなかったらしいね。貴女の方が知ってる事だと思うけど。話で聞いたのは、その頃には力がなくて死にかけて、今の力を経ても自分なりに考えた【正義】をなそうとした結果がこれ。今あなたに剣を突き付けた状態なの。」

悪を持って正義を成す。ヒーローでも・・ダークヒーローな彼を見て私は正義を考えた。自身の正義って言う物は何か・・。その結果、私は立ち上がった。

「・・この状況は一夏の願いの結果なのか・・。」

「そもそも彼は織斑千冬にさえいじめられていたの知ってる?」

「な!?千冬さんにか!?そんな馬鹿な!?」

そうか、知らなかったのか・・。まぁ、自分の都合の悪いところを見ようとしないようだししょうがないかもしれないか・・。

「姉にさえ【落ちこぼれ】、【クズ】【駄目な奴】と言われ続けて生活してきた彼の心はどうだったでしょうね?しかも、その時に一緒になって竹刀で人を脅す女子がいたらしいし。」

「ソレは・・私の事なんだな・・?」

「自覚があるならまだマシ。投降して。これ以上は無益なのは分かったでしょう?」

「し、しかし、私が裏切ったら、三日月が・・」

「知らないの?あの男、女子の敵だよ?この学校に入学してハーレム作るって思っているらしいし。」

見せてもらった画面には醜悪な顔が映っていた。

「なんだと!?そんな馬鹿な!?」

「篠ノ之博士が監視カメラで見たときに言っていたし、その映像も残してあるよ。あの男は信用できない。貴女、騙されていたんだよ?私も確認した。確かにある意味その遺伝子は重要かもしれない。そうやって残すのも確かなことかもしれない。でも、女の子を思いのままに食い漁るという醜悪な目的のある男の遺伝子なんか、私なら絶対に嫌だよ。」

「そ、そんな・・。昔の・・一夏の、かっこよかった頃に・・剣道が強かった頃に似ていたから・・憧れて・・一夏が居なくなってしまったならと思っていたのに・・。」

茫然としているままの篠ノ之箒の首元に拾い直した剣を突き付けていた私は剣をさげると、篠ノ之箒は機体を解除して地面に手をついてうなだれた。

「では私は何のために・・。私の思いは間違っていたのか・・?私の・・」

「これから、貴女も考えればいい。私と一緒だから。姉と仲直りするも、喧嘩してしっかりと決別するもよし。それが貴女の選択ならそれが貴女の人生になるから。」

「私の・・人生?」

私は機体を解除して、膝をついて手を持ち支えて体を起こし上げる。

「まだ私達はやり直せる。貴女はまだ汚れていない。私はこの道を貫くと決めたけど、貴女の道はまだ選べる。一度でいいから束博士と話をしてみよう?それから決めていいんだから。・・姉と喧嘩して、それから仲直りした私が言える事だから。」

「・・分かった。投降する。」

「信じてくれて、ありがとう。」

「私は篠ノ之箒。お前の名は?」

「更識簪。」

「そうか、更識・・。仲介は頼む。」

「わかった。悩むのも青春。命短し、恋せよ、乙女。私達はまだ若いんだから、色々とあるんだよ。そこらへんもしっかり博士と話すと良い。経験者は語る。」

私は新しく変身して、一合打ち合うだけで戦闘終了した。私とこの人を戦わせたクロノスの思惑が分かった。彼女と私は似ていたから。せめて少しでもやり直せる機会を与えたかったようだ。彼はどこかやはり甘い。

 

「だけど、その甘さは・・嫌いじゃない。」

元織斑一夏、クロノス・クロニクルは三日月神楽と相対して立っていた。

【クロコダイルローグ】の姿で、紫色に輝く腕を組んで立っているだけのクロノス。反対に赤色と言う専用機で剣を構えた三日月神楽。

「・・何とか言ったらどうだ?」

「別に。お前に対して何も思う事など無い。雑魚ナメクジが粋がっているにすぎない。他が済めばお前はどうせ無力だしな。一人で対抗するような根性もない屑に対して何かする意味もないが・・」

「何だと!?」

そう言って三日月は剣を振りかぶり、瞬時加速【イグニッションブースト】を吹かせて一瞬で距離を詰める。

(勝った!!)

そう思った瞬間には目の前からクロノスが居なくなっていた。

「な、んだと!?」

「どうせ、そんな事だと思った。勉強しないな貴様は。ふん!!」

加速した瞬間にその直線上からどけていた。一直線にしか進めないイグニッションブーストは確かに早いが、タイミングさえ分かれば種が割れている。対処さえまったく難しくは無いのだ。

「がはぁ!?」

剣を振りかぶるために前傾になっていた腹にクロノスの拳が突き刺さる。

腹を押さえてその場にうつ伏せになる三日月。

「つまらんな、本当に。」

それを見下したように言うクロノス。ソレに腹が立った三日月は剣を支えに立ち上がる。

「な、舐めてんじゃねぇぞ!?俺は主人公だ!この世界じゃ俺が強いんだぁ!?」

剣を振りかぶった三日月に対してまったく焦ることなく、ベルトのボトルを入れ替える。

『ディスチャージボトル!ダイヤモンド!』

クロノスの前にエネルギー体のダイヤモンドが表れる。それに剣は弾かれる。

「何だこれは!?」

「ふん、やはりつまらんな。はぁ!!」

「がぁ!?」

ダイヤモンドを砕いて放射するとその破片に巻き込まれて吹き飛ぶ。

「こ、こんな武器もあるのか!?」

「ただのボトルの性能だよ。せやぁっ!!」

再度展開したダイヤモンドの盾でシールドバッシュをくらわせる。

「ぐあぁぁああ!?」

勢いよく転がる。地面にこけたままのそいつに飛んで、スタンピングをくらわせる。

「ふん!」

「がぁっ!?ごぉっふ!!」

踏みつけたまま体重をかける。

「どうしたよ、正義の味方?正義が勝つんじゃないのか?お前が主人公なんだったらぁ、勝ってみろよ、三下ぁ!?」

「ぐあぁぁああ!?」

一度足でけり上げて反転して回し蹴りで飛ばす。その先でふらふらと立ちあがる。

「ま、まだ、おれは・・」

『クラックアップ・フィニッシュ!!』

「終わりだよ・・お前は。」

加速をつけて近付き、一回転して脇腹に回し蹴りをくらわせる。

「ぐはぁ!?」

「噛み砕けぇ!!」

更に反対からも蹴りをくらわせて挟む事で足からワニの顎型のエネルギーが出現。それに挟まれて機体がはじけ飛ぶ。

「がぁぁああああああああ!?あがぁぁあああ!?ぐぼぁがはっ、がふぅっ・・」

肋骨の下部が砕けて肺に刺さったのか、地面に向けて吐血する。

「生きているとは幸いだな。まぁ、苦しみが続くだけだが。・・雑魚は雑魚らしく、そこでそのまま悶えてろ。」

俺は変身を解いて黒いコートを羽織る。砕けた機体から落ちたコアを拾い上げる。

「所詮、正義を名乗る奴に真実など見えてはいない。俺は悪であり、自己満足のためにやっている。それが、正義などと言うよくも分かってないものを、振りかざす奴には気に入らんだけだ。どうせ、この世には完全に理解される事などはありはしないのだから。」

俺は最後の仕上げのためにマドカの元へと歩いた。他のアリーナに移り、そこで何をしているかはクロコダイルローグに送信されていた。

 

これで、俺の目的は終わる。

その終焉を決めるのは・・、

俺じゃない。

 

「さぁ、ここからが本当の戦争だ・・。愚かな姉よ、その身に刻むがいい。」

 

お前自身が関係し、一度は信じた者につぶされる。

・・その苦しみをなぁ。

 




篠ノ之箒  信じた心を折られながらも、新しい道を見つける。
クズ主(笑) 存在自体が屑故に、その身に酷い苦しみを味わう。肋骨が数本折れてます。

さて、次回は最後に残ったアイツが戦う。
誰と?それは見てからのお楽しみ。

では次回。
シーユーネクストステージ。

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