「いいぞ!そうだ、そうしてハザードレベルを上げろ!お前の〈・・・〉最終段階まであと少しだ!」
そう言って私の腹に肘打ちを食らわせて、私を吹き飛ばした。
転がり、土まみれになりながらも立ち上がる。マドカが来ようと立ち上がるが、そこにエネルギーの球が撃ち込まれてマドカは後ろに弾き飛ばされる。
「マドカ!お前は、そのままそこでおとなしくしておけ!この勝負こそが世界の命運を分ける!未来を作り上げるのだ。成形、制作、創造・・それこそがビルドだ!!・・ぬぅ!?」
いきなりエボルトが膝をつく、それと同時に腕と肩の部分、後からついたパーツが消え去った。そして、増えて付いた爪が塵になり消えたその手を見つめる。
「これ・・は?」
『オレを巻き込んだんだから、その報いは受けてもらうぜ。クロノス!』
その声はエボルト・・クロノスの中から聞こえた。
「アナザーか・・。ぐぅっ!?やってくれたな!!」
そうつぶやくと今度は体に紫電が走る。それとともに苦悶の声を上げる。
そして、マドカが走って背中から羽交い絞めにして抑える。
「今だ!ラウラ!」
『この状況を変えられるのは、お前しかいない!』
アナザーとマドカの声が重なる。
『「お前のすべてで、世界を、未来を救って、明日を、未来を創り上げてくれ!」』
〈推奨BGM 主題歌「Be The One」〉
「そう・・だな。私が、ビルド・・創造、形成、創り上げる・・仮面ライダービルドだ!!」
フルボトルバスターを構えてソードモードで切る。
その衝撃でマドカは後ろに飛んで転がった。ただ、無事のようだ。
「始まりはこれからだ!私はあなたを超えて見せる!!」
そして、ハンドルを回して構える。
『ガタガタゴットン!ズッタンズタン!Ready go!ハザードフィニッシュ!ラビットラビットフィニッシュ!』
「ハァァッ・・・ハァアアアアアア!!」
ラッビトラビットフォームの蹴りが炸裂する。
「ぐぅっ!?また一段とハザードレベルが上がったな!だが、まだ足りない!それでこの俺が倒せられるものか!?」
「まだまだこれからだ!」
フルフルラビットタンクをタンクモードに変えて、再度変身。
タンク・タンクモードでフルボトルバスターをバスターモードに変えて、フルボトルバスターにフルフルボトルを差し込んでタンクの砲台も一斉射撃。
【フルフルマッチデース!フルフルマッチブレイク!!】
「ハァアアア!!」
「ぐぁああああ!?さらに強くなって・・!?」
フルフルラビットタンクボトルのエネルギーを使いつくしたので、ボトルをチェンジして缶のようなものを取り出す。そのプルトップを引き上げると差込口が下部に現れる。それをベルトに差し込む。
【ラビットタンクスパークリング!】
「・・ハザードトリガーの研究段階で作られた副産物。それでも強さは変わらない!今の私は強い!・・変身!」
ハンドルを回しフォームチェンジする。
【シュワッと弾ける!ラビットタンクスパークリング!イエイ!イエーイ!】
ビルド・ラビットタンクスパークリングフォームで、つっ込む。
「さっきのフォームより弱いフォームで来るだと!?」
「フォームは下だろうが、気持ちはもっと上だ!!」
そう言って炭酸のような泡と共に殴った時にしぶきをあげて、その衝撃はエボルト・クロノスを数歩下がらせる。
「ぐはぁ!?な、なぜそんな装備で・・この俺が押されて・・」
「今アナザーが抑えたお前は、普通のエボルトよりも何倍も弱い!そして、みんなが支えてくれる私はいつもの何十倍も強い!!意志の強さがハザードレベルを上げる!もっと強くなれる!」
「ふ、ぐぅ・・そんな程度でこの俺が・・」
「もっと見せてやろう!私たちの強さを!」
ベルトのハンドルを回すと周りに泡が現れる。
「はぁああ!!」
クロノスが蹴りで攻撃してくる。ソレを、体を反転させてギリギリでかわす。
「な!?」
【レディ・ゴー!スパークリングフィニッシュ!!】
「せいやぁああああ!!」
「ぐわぁああああ!?」
カウンターのように飛び上がりながらも上段回し蹴りで頭部に蹴りをぶち込む。
クロノスに当たった、足の蹴った先からもスパークリングの衝撃があり、それによって頭から地面にたたきつけられて地面を転がる。
「ぐぅ・・このようなことが・・」
そう言うと黒いパネルが胸から吐き出されて、クロノスが仮面ライダーエボルト・ブラックホール・エボルコブラに戻った。
「力が抜けるだと・・?」
そう言って頭を振っているうちに力のなくなったスパークリングボトルを抜いて最後の変身をする。
「私は、いつも誰かの後ろでついて歩いていた。初めは織斑千冬の力にあこがれて、次はクロノス兄さんの心にあこがれて・・。」
手を前に出して握る。
「そして、そんな私はみんなの力になるために自分であることを誓った。弱かっただけの私はずっと下を向いていた。その場でしゃがみこんでいた!でも今は、みんなの思いを受けるために私は立ち上がった。だから、私はここにいる。皆の力を支えるために。明日を作り、それをつかみ取るために!!」
二つのボトルを振る。そしてベルトに差し込む。
【ラビット!タンク!ベストマッチ!!】
「さぁ・・最後の実験を始めよう!」
力強くそのハンドルを回す。
【アーユーレディ!?】
「・・変身!」
【鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イエーイ!】
体を引きずるように立ち上がったエボルト・・クロノスはベルトからエボルトリガーが落ちて、普通のエボルコブラになる。
「ここまで追い込まれるとは・・こうなれば・・」
そう言って一度体を丸めた後、一気に胸を張るようにする。
するとそこから黒い空間が生まれ、アナザーイチカが吐き出された。
「もうそいつはいらん。用済みだ。」
そう言ってハザードトリガーをつけてもう一度変身する。さらに黒いパネルを取り込み、エボルト・怪人形態になる。
「ダメージは仕方ないが・・それでも力はまだこちらが上だ!すでに力は使い果たしているだろう?」
「そうでも無いぞ!」
そう言って取り出すのは更識姉妹の使った二つ、マグマナックルとブリザードナックル。
それを両手に持ってとびかかる。
「フン!セイ!ハァアアア!!・・ぐは!!」
「ウッ・・、おっと、ぐぁ!?・・このっ!」
そう近接の応酬をしてどちらにもダメージが入る。
「さすがだなラウラ・・しかし、俺は世界を破壊する力を内包して・・ぐぅ!?これは・・?」
初めは多少なダメージしか食らっていないような反応なクロノスが急激に苦しみだす。
「それは・・あなたの作ったこの二つのおかげだ。簪の姉に追いつきたいという『熱い思い』、楯無の妹の為なら他の何もかもでさえ敵に回してもいいという『冷徹な思い』、二つの武器は熱と冷気。つまり急激な温度差が起きているんだ!」
「・・ぐぅ、それも踏まえてのその二つと言う事か!?よく考えたものだ!」
「そして、今の体になら届く!」
二つのナックルを投げてハンドルを構える。そしてハンドルを回しながら思いを込めて、ハザードレベルを上げる。
「さぁ、最後の実験だ!これからの蹴りにどれくらい耐えられるか!!その実験を、始めようじゃないか!」
【レディ・ゴー!・・ボルテックフィニッシュ!】
「はぁああああああ!!!セイヤァアアアアアアアアアアア!!」
「ぐぅ、ぐおぉぉおおおおおおおおおおお!?」
初めは両手でクロノスは受けたが、少しすると片手がはじかれて残りの片手でさらに受けるが、それもはじかれる。そして胸の真ん中に蹴りが当たると、そのまま地面をすべるようにしてクロノスは後ろに吹っ飛び、それと共に蹴りはさらに威力を増す。
「最後の!一撃だ!」
そう言って左足のキャタピラを地面について減速、一度クロノスから足を離してもう一度加速してラビットの足で反動をつけて飛び上がり、両足で蹴りを決めた。
「ぐはぁあああ!!」
とうとう、ダメージが許容範囲を超えたのか、エボルト・怪人態から光があふれてエネルギーが辺りを覆いだす。そして、衝撃で地面を転がり遠くで地面に伏せた。
「はぁ・・はぁ・・。これで終わりだ。」
そう言って私は変身を解いた。すべてのエネルギーも使い果たした。
「・・くく・・よくぞ・・、よくぞ俺を超えたな・・ラウラ・・。」
地面に転がっていたエボルトが起き上がりながらもそうつぶやく。エボルトの体が元の人の形となり、クロノスの姿に戻ると光の粒子を放ち始める。
「これで世界は救われるんだな!?早くそれを・・」
「もう、始まっている。エボルトとなった俺を倒すことで、そのエネルギーはもう一つの世界を融合させる。俺たちがしてきたことがなかった新たな世界へと生まれ変わる。」
そう言って先ほどの光った場所から大きな竜巻ができ始めていた。
「そ、それはどういう事だ!?クロノス!?」
世界を破壊するという言葉は!?そう思っているとエボルトから噴き出すエネルギーの竜巻がだんだんと大きくなり始める。
「・・もう、俺たちの世界は手遅れだ。ならばなかったことにしてリセットするしかない。そのためにはエボルトの力を使い、俺たちの居る世界【A世界】と別の世界【B世界】を合わせて、新たな世界【Cの世界】を作る必要があった。・・そのためにはエボルトとなる怪人が必要だ。誰かがやらねばならんなら、その役目はダークライダーを統べた俺がするべきことだ。」
「「「きゃぁああ!?」」「「うわぁあああ!?」」
とうとう更識姉妹にシャルロット、マドカと鈴音が竜巻に巻き込まれた。中心の此処はまだ何とか耐えれるが、体の軽い私ではその場にいるのがやっとだ。
「・・じゃ、じゃあ初めっから・・」
そう言った私の頭に温かい手が乗せられた。ゆっくりと撫でられる。涙が止まらない・・。
「こうなることは想定済みだ。新たな世界で、幸せを見つけろ・・ラウラ。」
そう言って私の腕を掴んだクロノスは、エネルギー吹き荒れる竜巻へと私を投げ入れた。
そこで私の記憶は途切れた
◆
さて、これで終わりだ。すべて・・終わった。
「じゃぁ、クロノスはどうなる!?オレはどうなるんだ!?」
アナザーが俺に聞いてくる。
「お前を取り込んだ時に、織斑一夏の構成物であったものをお前に与えた。もう立派な人間だ。アナザーイチカ・・いや、『織斑一夏』か・・。お前もきっと向こうの世界で一人の人間として生きていける・・。」
「クロノスはどうなる。オレは人としてならこの後のクロノスは・・」
「俺はここで世界をつなげるエネルギーとなり、消え去ることとなるだろう。それが俺のシナリオだ。・・さぁ、もう終わりだ。」
「オレが代わりに、お前の代わりになるから・・」
そう言ってアナザーは一歩前に出る。
「お前は新たな【織斑一夏】として、生きていけ。クロノスとして生きてきた以上、俺はもう、イチカではないからな。アナザーであってもお前は一夏だった。」
そう言って俺は変身用の道具が入った端末をアナザーに握らせて、掴んでいたその手を思いっきり振ってアナザーを竜巻へと投げ入れた。
「クロノスーー!!?」
「あばよ、・・相棒。」
見えなくなったあと、竜巻の荒野で一人エネルギーを吹き出して立つ。
金色の粒子へと変わりながらそれでも空を見上げた。
「新たな世界を形成、創造し・・幸せにな。」
◆
宇宙が光り、世界の二つが重なり合う。
しかし偶然、・・否、そこに引き寄せられるようにして現れた【終末の世界】を再構成する世界があり、三つの世界は一つになる。
一人は闇の力を正義に使う『仮面ライダー』。
一人は自身の半身を失った『闇の王の仮面ライダー』。
そして、元の普通の世界に降りるはずだった『音の錬金術師』。
それは偶然か、はたまた必然か。
世界は一つになり物語りは創造される。
これにて、この物語は終焉を迎えました。
そして、コレは新たな世界への布石。
では、また『次の世界』でお会いしましょう。