せっかくバーサーカーに憑依したんだから雁夜おじさん助けちゃおうぜ!   作:主(ぬし)

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このSSは半分はネタ、半分は勢いで出来ています。原作に忠実な設定なんてどこ吹く風だし、過度な期待は厳禁です!それでも大丈夫なイケメンさんだけ見て行ってね!ゆっくりしていってね!


1−2 黒ファントムに侵入されました

‡ウェイバーサイド‡

 

 

深夜、極東日本の地方都市、冬木市の港湾区の一角を占める広大なコンテナターミナル。

魔術によって人払いがされたその地で、四体のサーヴァントが睨み合いの体制に入った。四体全てが世界に名の知れた遙か昔の英傑豪傑。総身が震え上がるほど殺気と緊張に支配された空間で、僕ことウェイバー・ベルベットはひたすら気絶だけはすまいと己を奮い立たせ、この戦争に参加していなければ決して目にすることのできない本物の英霊たちを網膜に刻みつけていく。

最初に戦っていた銀髪の女のサーヴァントセイバーと、憎っくき講師ケイネス・エルメロイ・アーチボルトのサーヴァントランサー、そして突然その場にしゃしゃり出て何を思ったのか自分の軍門に降るように言い放ち、あろうことか「物は試し」で真名をばらしてくれやがった僕のハチャメチャサーヴァントライダー。そして、自らを差し置いて王を名乗るのが気に食わないとポールの上に現れた金ピカのサーヴァントアーチャー。この戦争の根幹を作った遠坂の当主が召喚した、圧倒的な存在感を撒き散らすライダー以上の暴君。

 

「我が拝謁の栄に浴してなお、この面貌を見知らぬと申すなら、そんな蒙昧は生かしておく価値すらない」

 

アーチャーに真名を尋ねたライダーにキレた沸点の異様に低いアーチャーが、昨夜に遠坂邸で見せた多数の宝具の射出という不可解な攻撃を再現しようとする。こちらに向けられた黄金の宝具の矛先に思わず「ひっ」と情けない悲鳴を上げてしまう。

こんな展開にしてくれやがったライダーに撤退をさせようと口を開きかけ、

 

「む?」

 

ライダーが唸った。跳ね上げられた眉の下の鋭い眼光がアーチャーから外される。見れば、四体のサーヴァント全員が同じ方向に目を向けていた。全員の視線が集中する中、黒い炎を巻きあげてまた新たなサーヴァントが姿を表す。

 

「な、なんだアイツ……」

 

それは漆黒のサーヴァントだった。全身を隙なく覆うフルプレートアーマーは光すら吸収するほどに黒く、無骨な兜の目庇だけが紅蓮に燃えていた。全身から放たれる殺気と漲る魔力は間違いなくバーサーカーのものだ。

 

「……なあ征服王。アイツには誘いをかけんのか?」

「誘おうにもなぁ。ありゃあ、のっけから交渉の余地なさそうだわなぁ。で、坊主よ。サーヴァントとしちゃどの程度のモンだ?あれは」

「ま、待てよ!あいつ、幻惑の呪いか加護を受けてるみたいでよく見えないんだよ!だけど……パラメーターはほとんどAだ。それくらいなら、見える」

「あんま参考にならん情報だなぁ」

「うるさい!他の奴も似たようなもんなんだよ!……たぶん」

 

時折姿がボヤけて見えるが、英霊固有の幻惑スキルが狂化によって弱まっているのか、能力値くらいは僕にも判別できた。バーサーカークラスの恩恵を得たあの狂乱の英霊は、理性をなくす代わりにパラメーター数値が向上されている。

この場にいる他のマスターとサーヴァントも同様のようで、ゆらゆらと陽炎のようにブレて見えるバーサーカーに軽く驚きこそすれ、中途半端になっているらしい幻惑スキルはすでに看破してじっと闖入者の出方を見ている。

 

「どうやら、あれもまた厄介な敵みたいね……」

「それだけではない。四人を相手に睨み合いとなっては、もう迂闊には動けません。しかし、あの鎧、どこかで……」

 

セイバーとそのマスターが小声で何事か相談している。きっとこの厄介な状況を危惧しているに違いない。僕も早くライダーに掛けあってさっさと逃げ出そう。こいつらが一気に戦いをおっぱじめたら戦場のど真ん中にいる僕は即座に肉片になってしまう。それだけは嫌だ!ライダーが断ったら令呪を使ってでも命令を聞かせてやる!

 

「ライダー、早く———

 

「誰の許しを得て我を見ておる?狂犬めが……」

 

———え゛」

 

底冷えがするような怒気を放つ声が響く。振り返れば、自分を凝視するバーサーカーをアーチャーが憤怒の眼差しで睨みつけていた。ライダーに向けていた宝剣と宝槍がバーサーカーに照準を変える。

 

「せめて散りざまで我を興じさせよ。雑種」

 

「んなっ!?」

 

英霊の最高の切り札である宝具をいとも人目に簡単に晒し、あまつさえ捨てるように射出するデタラメな攻撃。二つの宝具がバーサーカーに直撃し、ドデカイ爆発を一度起こした。爆風がぶわんと身体を叩きつけて、視覚と聴覚を奪う。

あんなものを食らえばいかなサーヴァントであっても———待てよ、“一度”?どうして爆発は一回だけなんだ?

 

「……奴め、本当にバーサーカーか?」

「狂化して理性をなくしているにしては、えらく芸達者な奴よのぅ」

「———んな、アホな———」

 

霞む視界で見れば、なんとバーサーカーが先ほど弾丸の如き速度で放たれた黄金の宝剣を握っていたのだ。他の英霊の宝具を、一瞬で掴みとり、己の四肢の延長のように操る。そんなもの、神業の域を超えている。狂化してなお身体に染み付いた武芸は、あのサーヴァントがいかに優れた英霊なのかをひしひしと伝えてくる。

 

「———その汚らわしい手で、我が宝物に触れるとは……そこまで死に急ぐか、狗ッ!」

 

「そんな、馬鹿な……」

 

白いこめかみに青筋を浮かべて怒り狂ったアーチャーの背後に、一斉に輝く宝具が出現した。その全てが掛け地なしの世界の至宝、最高級の宝具だ。

 

「その小癪な手癖の悪さでもって、どこまで凌ぎきれるか———さぁ、見せてみよ!」

 

空気を震わせる怒声を合図に、宝具の群れがバーサーカーに向かって放たれた。ズドン、バガン、と立ち並ぶ巨大なコンテナを次々と路面ごと抉り吹き飛ばし粉砕し、コンクリも鉄もアスファルトも全てを塵に変えてゆく。大音響と大閃光の連続炸裂に頭蓋の震えが止まらない。

そんな、アーチャーの有り得ない連続攻撃に晒されたバーサーカーもまた、ありえない防御を行った。襲い来る宝具をいとも簡単に切り払い、撃ち落とし、さらにはより強い宝具を選別して、即座に持ち変えて次の攻撃を払いのける。それらを全て一秒にも満たない刹那の間に何度もやってのけているのだ。当のバーサーカーの動作にも焦燥は一切感じられず、夢を見ているように流れるような練武でもってひょいひょいと疾駆している。まるで身体に染み付いた反射神経を信頼し、身を任せているかのようだ。あんなサーヴァント、絶対に馬鹿げている。

 

「———どうやらあの金色は宝具の数が自慢らしいが、だとするとあの黒いヤツとの相性は最悪だな。黒いのは武器を拾えば拾うだけ強くなる。金色も、ああ節操なく投げまくっていれば深みに嵌る一方だろうに。融通の利かぬ奴よのぅ」

 

この戦いをふむふむと冷静に分析してくれやがるライダーの台詞に耳を傾けていると、唐突に爆音が止まった。アーチャーが宝具の全てを射出し終えたのだ。急激に静まる夜気の中、ひゅんと風切り音を立ててバーサーカーが何かを投擲し、アーチャーの足場のポールをバラバラにする。足場を寸断される前に驚異的な俊敏さで跳ねたアーチャーがガシャンと鎧をカチならしてその場に着地する。

ブチブチ、という布の切れるような音が聞こえた気がした。再びバーサーカーに向けられたアーチャーの双眸は憤怒に見開かれていた。

 

「痴れ者が……。天に仰ぎ見るべきこの我を、同じ大地に立たせるかッ。その不敬は万死に値する。そこな雑種よ、もはや肉片一つ残さぬぞ!」

 

「「「「「………!!」」」」」」

 

その場にいる全員が息を呑む。アーチャーの背後の空間に、30を超える超常の宝具が出現したからだ。いつも偉そうにふんぞり返っているライダーすら目を見張るほどの有り得ない光景———大量の宝具の一斉解放の前触れに、僕の意識はスパークを起こして今にも落下しそうだ。

だが、

 

「……貴様ごときの諌言で、王たる我の怒りを鎮めろと?大きく出たな、時臣……」

 

おそらくマスターが制止に入ったのだろう。アーチャーは宝具の解放を止めた。だがマスターの言葉を持ってしても怒り冷めらやぬアーチャーは、背後の宝具を消すとさも忌々しそうにふんと鼻を鳴らして踵を返す。

 

「……命拾いをしたな、狂犬」

 

興味も失せた、というような傲岸不遜な横顔をバーサーカーに向けると、アーチャーが居並ぶ三体の英霊をじろりと流し目で睥睨する。

 

「雑種ども、次までに有象無象を間引いておけ。我と見えるのは真の英雄のみで良い」

 

心底偉そうに言い放つと、アーチャーは音も立てずに霊体化してこの場を後にした。いなくなったことを確認した途端、ぜえと大きな息が漏れる。いつの間にか息をすることを忘れてしまっていた。息をできるうちにしておこうとぜーはーと何度も深呼吸をする。これから何度呼吸が止まることになるかわかったもんじゃない。

 

「フムン。どうやらアレのマスターは、アーチャー自身ほど剛毅な質ではなかったようだな」

 

何を呑気そうにニヤニヤしながら顎を撫でてやがりますかコイツは。まだあのバーサーカーが残ってるんだよ!

 

「心配するな坊主。どうやら次の相手はもう決まっているようだぞ?」

「へっ?」

 

兜の目庇の中でギラギラと光る真っ赤な双眸が、すかさず次のターゲットに向けられる。まるで最初から狙っていたのはお前だとでも言うかのように、アーチャーから奪ったままの宝剣の切っ先をセイバーただ一人に向ける。いきなり鋭い視線を投げつけられたセイバーがぐっと表情を険しくして剣を構えなおした。

 

「……Hi……」

 

地の底から湧いたような戦慄の声で、バーサーカーが低く唸った。初めて耳にするバーサーカーの声音は、ぞっとするほど掠れたものだった。

何の予備動作も見せず、ズドンと後方に爆煙を巻き上げたバーサーカーが一瞬でセイバーに肉薄する。野獣じみた乱暴な動きから放たれた一撃は、しかし、芸術の如き冴えを見せてセイバーの防御の剣に振り下ろされる。

火花を上げてぶつかり合った宝剣を中点に、兜をビリビリと震わせる声量で狂戦士が叫び声を上げた。セイバーの鼓膜を破らんばかりのその絶叫は、狂おしいほどの激情に満ち満ちていた。

 

「Hinnnyuuuuuuuuuu!!!!」

「んなっ!?」

 

鎬を削る狂戦士から発せられた雄叫びにセイバーが目を白黒させ———

 

 

 

 

 

あいつ今、「貧乳」って言わなかったか?

 




かっこいいバーサーカーだと思った?残念、カッコ悪いバーサーカーちゃんでした!

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