せっかくバーサーカーに憑依したんだから雁夜おじさん助けちゃおうぜ!   作:主(ぬし)

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まあ、僕自身が取得してる資格は普通運転免許だけなんだけどね!!


2−1 バーサーカー「私の資格取得数は53万です」

聖杯戦争二日目の夜

 

‡セイバーサイド‡

 

 

『まぁ、取り次ぎはごゆるりと。私も気長に待たせていただくつもりで、それなりの準備をして参りましたからね。なに、他愛もない遊戯なのですが———少々、御庭の隅をお借りいたしますよ?』

 

キャスター———ジル・ド・レェがその不気味な眼球をぎょろりと愉悦に歪ませる。

キャスターは何を思い違いをしたのか、セイバーをジャンヌ・ダルクと完全に思い込み、己の物にしようとつけ回していた。そして今、ここアインツベルン城にまで侵入してきたのだ。千里眼の水晶の向こうから逆探知してこちらを覗き見るという神業はキャスタークラスだからこその芸当である。

無論、天下に名高いアインツベルンの領地が、例え極東の田舎山中の小城とはいえ無防備であるはずがない。周囲にはアイリスフィールの意思によって発動するあらゆる魔術的な罠が仕掛けられているし、切嗣が仕掛けた強力な爆薬類も備えられている。横で無表情を浮かべている彼か、その配下の舞弥が手元の機器を操作すれば、凶悪な兵器が一斉にキャスターに襲いかかるだろう。彼らがそれらを使用しないのは、単にキャスターの底なしな悪辣さ故であった。

 

(人質など———卑怯なッ)

 

内心に憎悪を爆発させ、セイバーが奥歯を砕かんばかりに噛み締める。キャスターに、数十人ものまだ幼い子供たちが朧気な表情で付き従っていた。魔術で操られているに違いない。罠を発動すれば、子どもたちを犠牲にしてしまう。キャスター一人を狙うことのできる指向性の罠などほとんどないし、あってもサーヴァントには痛くも痒くもないものだ。とどのつまり、この状況は人質を利用してセイバーを誘いだすためのものに他ならない。

こちらの逡巡を見透かし、再度笑みを浮かべたキャスターがパチンと指を鳴らす。途端、子どもたちは正気に戻って邪悪な男に怯え始める。

 

『さぁさぁ坊やたち、鬼ごっこを始めますよ。ルールは簡単。この私から逃げ切ればいいのです。さもなくば———』

『ひぃっ……』

 

言い終わらない内に、ローブの裾から手をするりと差し伸ばし、手近な所にいた一人の少年の頭に手を載せようとする。赤みがかった髪の少年は怯え竦んだまま動けない。

 

(まさか……!?)

 

セイバーの鋭い直感スキルは、魔術師とは思えないその筋肉質な腕に最悪の事態を想像させる。同じ想像をしたのであろうアイリスフィールが息を呑んで目を見張る。

 

「やめ———!」

 

やめろ、とセイバーが悲鳴じみた叫びを上げかけた、その瞬間。

 

 

『グルル』

 

 

『は?』

「え?」

 

少年の頭を握り潰そうとしたキャスターの腕を、唐突に横合いから突き出たさらに太い剛腕が掴み止めたのだ。グシャリと鈍い音を立て、キャスターの腕が醜く歪む。その剛腕が纏う黒鉄の鎧をセイバーは見間違えることなどできない。それは、セイバーが今回の戦争でもっとも苦手とするサーヴァント———。

 

ジャーンジャーン!!

『ゲェーッ!!バーサーカー!!』

『ウゴゴ———!!』

『ほ、ほわああああああ!!!』

 

水晶の向こうで乱闘が始まったかと思うと、千里眼の映像がブツリと消え失せた。膨大な魔力の塊であるサーヴァント同士の衝突の余波で観測不能になったのだ。

突然の急展開に、四人は思い思いの表情で呆然とする。だが脳裏に浮かぶ疑問は同じだった。計ったかのように同じタイミングで顔を見合わせた四人が、同じタイミングで呟く。

 

「「「「どうしてバーサーカーが?」」」」

 

 

 

 

「やっと私と目を合わせてくれましたね、切嗣!」

「え?あ、しまった!今の無し!ノーカン!」

 

 

 

 

時間は遡り、二日目の朝

 

‡雁夜おじさんサイド‡

 

 

「おじさん、朝だよ!起きて!」

「……おはよう、桜ちゃん」

「おはよう、雁夜おじさん!」

 

生きて朝を迎えられたことより、元気そうな桜の笑顔を見られたことが嬉しい。寝ぼけ眼に浮かんだ涙を寝起きのせいにして、雁夜はゆっくりと身を起こした。間桐の魔術に蝕まれたせいで、つい先日まで眠りから覚める度に死の淵を彷徨っていたというのに、今は多少の身体の怠さ以外は何も苦はない。麻痺していた左半身も少しずつだが動かせるようになっている。サーヴァントとレイラインで繋がっていることが何か効果を及ぼしているのか、それともロウソクが最後の瞬間に一際強く燃え上がるように自分も終わりに近づいているのか……。

 

(それでもいいさ。むしろ最期に全力を出せるのだから、望むところだ)

 

昨夜の戦闘のために雁夜はかなりの無茶をした。しかし、その分得たものも大きかった。早々にランサー陣営を脱落させられたのだから。バーサーカーに叱責された直後に気絶してしまったが(なぜか額が痛い)、まだ生き長らえている。この分なら、聖杯を手に入れるまではこの身体も耐えられるかもしれない。いや、堪えてみせる!!

決意を新たに聖杯に救済を求める少女を見れば、まだパジャマ姿の桜が窓から身を乗り出して階下の庭に笑顔を向けていた。乾いた唇や気だるそうな動きに違和感はあるものの、桜の容態は安定しているようだ。

 

「バーサーカー!お庭のお手入れお疲れ様ー!雁夜おじさん起きたよー!」

「庭のお手入れ……?」

 

不意に感じた嫌な予感に、雁夜も桜の後ろから窓の外を見下ろす。直後、雁夜の口から「うわぁ…」というなんとも言えない声が漏れた。

 

「見て、雁夜おじさん。すっごく綺麗になったでしょ?全部バーサーカーがしてくれたんだよ?」

「たしかに綺麗になったけど……」

 

間桐邸と言えば、近所からも忌避され、近づく者もいない不気味な屋敷として有名だ。放置され生い茂る木々や外壁を覆い隠す蔦によって年中陰鬱とした間桐邸は、その不吉で威圧的な様相から半ば幽霊屋敷のような扱いを受けていた。そう、受けていたはずなのだが。

 

「わぁ、可愛い!この木、ウサギさんの形してる!」

「こっちはライオンだ!かっけー!」

「これ鎧の兄ちゃんが作ったの!?」

「ぐるる!」

「すっげー!!」

 

屋敷がもう一つ建てられそうな広さの庭園は、見事にファンシーなお庭と化していた。

鬱蒼として陽光を遮っていた木々はウサギさんやらライオンさんやらに姿を変え、蟲や蛇の巣窟だった茂みはハート型やボール型になっている。腰の高さまで生い茂っていた雑草だらけの芝生もまるで絨毯のように均等に切り揃えられ、青々とした輝きを朝日に反射して目に眩しい。蔦で覆われていた外壁もすっかり綺麗になり、まるで建造したばかりのような鮮やかな色彩を魅せつけている。朝の澄んだ空気に満たされて眩い光に煌めく庭の様相は、まるでファンタジー世界のお城に迷い込んでしまったかのような錯覚すら感じさせる。

そして、たった一夜でお化け屋敷を瀟洒な豪邸に変貌させた当人は、通りがかりの子どもたちからの無垢な賞賛に胸を張ってその腕前を自慢していた。

 

「うごごー!」

「キリンさんだ!すごーい!」

「鎧の兄ちゃんすっげえ!」

 

バーサーカーが宝具化した漆黒の高枝切りバサミを閃かせた途端、庭の一角に新たな動物が誕生して子どもたちの歓声が響き渡る。その黄色い声に、雁夜はげんなりと顔を歪ませて頭を抱える。相棒の邪気のない行動にはだいぶ馴れてきたと思っていたが、どうやらまだまだのようだ。

 

「おいこら、バーサーカー!無闇に人前に出るんじゃない!お前、自分がサーヴァントだって自覚あるのか!?」

「きゃー!ゾンビだー!」

「顔半分がゾンビのお化けが出た—!鎧の兄ちゃんやっつけて!」

「誰がゾンビだ!まだ辛うじて生きてるわ!つーか、お化けはそっちの鎧の方だ!」

 

逃げてゆく子どもに喚き立てる雁夜を見て、桜がくすくすと忍び笑いを漏らす。桜は雁夜とバーサーカーの掛け合いを漫才のように思っている節がある。雁夜としては本気で怒っているわけだが、桜の笑顔を見ると怒りも霧散してしまうのだった。

 

「うごごご〜」

「はいはい、おはよう!庭はもういいから、早く中に入ってくれ!」

「バーサーカー、お腹すいたよー」

「ぐるる」

 

庭から手を振ってくるバーサーカーに適当に手を振り返す。いつの間にかバーサーカーの言わんとすることがなんとなく理解できるようになったのは、やはり馴れのなせる技かもしれない。

のっしのっしと台所に向かうバーサーカーの姿を見届け、雁夜も階下に降りることにする。ため息を吐き出すと、空になった腹がぐぅと音を鳴らした。そういえば、ひどく腹が空いている。昨夜の戦闘で魔力を大量に消費したせいかもしれない。とにかく、何か腹に入れたい。美味しいものを口にしたい。昨日のグリーンカレーの美味を思い出し、口内がじわりと潤う。今朝の朝食を予想するのに胸が高鳴ることなど生まれて初めてだった。

 

「今日の朝ごはん、なんだろうね?おじさん」

「うーん、なんだろうな。でも、きっと美味しいよ」

「私もそう思う!」

 

二人でにこやかに階段を降りる様子は、傍から見れば仲睦まじい父娘にしか見えない。事実、本人たちも互いをそのように考え始めていた。これでご飯を作ってくれているのが母親であれば完璧なのだが。

 

 

 

「そうそう、バーサーカーって造園技能士の資格も持ってるんだって!」

「ぐるる(肯定)」

「……もうツッコまないぞ」

 

 

‡アサシンサイド‡

 

 

「ば、バーサーカー陣営に、ぐすっ、動きは、あ゛り゛ま゛ぜん゛……!」

『……お前、本当に大丈夫か?他のアサシンと交代した方がいいんじゃないか?』

「大丈夫でずっ!」

『そ、そうか。監視と報告は怠るなよ?』

「ばい゛っ!我が主っ!」

 

明らかに涙声のアサシンの返答にドン引きしつつ、「今度マーボーの差し入れでもやろうか」と柄にもないことを思いながら綺礼は通信を終えた。

激しく嗚咽に震えるアサシンの視線の先では、バーサーカーが庭の掃除と手入れにこき使われ、子どもたちにからかわれ、マスターから罵声を浴びせられていた。バーサーカーの苦労と屈辱を思うと、情に厚いこのアサシンは涙せざるを得なかった。

 

(バーサーカー、頑張れよ……!)




皆、いくらガソリンスタンドで洗車させればいいやって思っているからって、あまりに汚い車は掃除に凄く手間取るからちょっとは自分で掃除をしような!放置しすぎて車の床が砂場になってたり、砂利が敷いてあったり、ピスタチオの殻やでかいカメムシの死体が散乱しまくってたりする車はスタンドの店員もさすがにドン引きだよ!お兄さんとの約束だ!!
そして先月は巨大なランドクルーザーがやって来て「水垢落としとポリマー掛けと手洗い洗車をしといてくれ。15時までに」と言ってきたよ。お前今13時だってわかって言ってんのかよぉおおおお!!

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